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第十七話 直哉の覚悟

◆その日の夜


「はぁ、やっぱりお茶はうまい」

直哉は本日の疲れを感じながら、寝るために心を落ち着かせていた。

そこへ、

「お兄ちゃん、居る?」

リリが物陰から聞いてきた。

「居るよ、お茶を飲んでる」

「あのね、話があるの」

そういいながら物陰から出てきた。

「どうしたの?」

リリの真剣な顔に直哉は見とれながら聞いていた。

リリはゆっくりと直哉の横に座ってきた。


直哉はリリのお茶を入れ、少しの間二人はお茶を飲んでいたが、

「さっきの話はリリのためなの?」

と聞いてきた。

「さっきの話って?」

直哉はとぼけてみたが、

「王子さん達との鍛練の話」

リリは真剣だった。

「うーん。誰のためかと聞かれたら自分のためと答えるかな」

直哉はしっかりと考え、答えた。

「最近リリが物足りないのを気づいて、新しい練習相手を見つけてくれたって事でしょ?」


「いや、あれは俺自身を鍛えるために頼んだのだよ」

「お兄ちゃんの?」

リリは首をかしげた。

「そう、俺自信のため。俺は武器を造れるけど、それを使って敵を倒す事に関しては素人同然なんだよ、だから俺も前衛で踏ん張れるように鍛えようかと思ったんだ。だって、当面の目標はルビードラゴンなんだから」

リリは直哉をじっと見つめて、

「もしかして、お兄ちゃんリリのために無理してるの?」

「えっ? これは無理と言うよりも、今まで目を瞑って何もしてこなかった部分を正そうとした結果だと思うのだけど、リリには無理してるように見えた?」

「うん。だって、お兄ちゃんは居てくれるだけでリリは嬉しいのだから!」

リリは身を乗り出してきた。


「そう言ってくれてありがとう。でも、俺が嫌なんだよ。武具を造って二人に戦わせて自分は何もしていないという事が。考えているふりして何もしないなら、せめて詠唱中のフィリアや回復中のリリを守るだけの力が欲しい!」

直哉は心の奥底に沈めておいた思いをさらけ出した。

「だから、リカードやゴンゾーさんの申し出にのったんだよ。自分を鍛えるために」

「そっか。お兄ちゃんも本気になったって事で良いよね?」


「そうさ、今までは元の世界に帰ったら鍛えた事が無駄になると思っていたから、システム的に覚えるスキルしか使わなかった。身体も最低限しか鍛えず、システム的に割り振られた値で誤魔化していた。でも、それじゃあ、駄目なんだよ。本気のリリに答えられない。フィリアだって本気で強くなろうとしている、自分ひとりでも母を守っていけるように。そんな二人を見ていて、今まで通りの中途半端な気持ちじゃいられないし恥ずかしいよ。だから、俺はやると決めた。誰のためじゃなく、俺自身のために!」


その時、リフトの方からイリーナの声がした。

「夜中に二人で逢引しているのかと思ったのに、話している内容は全然ロマンチックじゃ無いのね。こっそり聞いている私の身にもなってよ!」

そう言いながら、リフトに隠れていたイリーナが入ってきた。

「こっそり聞いている時点でおかしいと思ってくださいよ」

直哉は文句を言った。

「直哉様は気がついておいでだったのですね、私の思いを」

そう言いながら、フィリアも後から入ってきた。

「ありゃ、フィリアも居たんだ」

「お恥ずかしながら、先ほどの会話を聞かせて頂いておりました」

「いや、恥ずかしいのは俺だし」

フィリアの言葉に直哉は目線をフィリアに移した。


その時イリーナが、

「冗談はさておき、直哉君が元の世界に変える時、リリちゃんは直哉君について行くのよね?」

「そのつもりなの」

リリはイリーナに告げた。

「どういう事ですか?元の世界というのは?」

フィリアはイリーナの言葉に直哉に詰め寄った。


直哉は、フィリアにも聞いておいて貰おうと、自分の事を話し始めた。

「実は、俺はこの世界の人間じゃない。別の世界から飛ばされてきたのだと思う」

突然の言葉にフィリアは混乱しながらも続きを聞いた。

「始めの頃は、これは夢で一晩寝れば元の世界に帰れると思った事もあったし、ゲームと同じ様にメインクエストをクリアーすれば帰れると思った事もある」

フィリアは直哉の表情をその目に刻みつけていた。

「それでクエストを受けに行ったらやっぱり知っているクエストが多くてやっぱりゲームと同じだ、と思ったこともあった。だけど、ゲームの世界とこの世界では何かが違う・・・。ゲームの中でNPCと呼ばれる人たちからは生活感が感じられなかったけど、この世界はみんな生きている事が感じられる。ここは実際の世界なんだ! ゲーム感覚で壊してはいけないんだ! と、思い直すことが出来た。それからですよイリーナさんと話すときにこの世界の生命を感じたのは」


イリーナも直哉の顔を見つめていたが、

「正直な話、始めて会った時の目が忘れられないのよ。あのこの世界なんかどうなっても良いから、目的を果たそうってギラギラしていたの」

直哉は昔を振り返りながら、

「そんな目をしていたかな?」

「でも、次にあった時に付き物が落ちたような表情になっていた。だから安心したのだけど」


「正直に言うと、イリーナさんの危惧したようにこの世界を滅ぼして戻ろうとも考えました」

「お兄ちゃん・・・」

リリは悲しい表情を浮かべた。

「そういえば、直哉様は元の世界でどのような事をなさっていたのですか?」

フィリアは直哉の元の世界に興味がわき聞いてみた。


「元の世界か。たいして面白くないよ?」

「それでも、聞いてみたいですね」

「リリも!」

イリーナとリリも興味を示した。

「前の世界での俺は、学校と自宅を往復するだけのつまらない存在だったよ」

「学校って?」

リリが聞いてきた。

「学問を学ぶ所だよ。同年代の人が集まって語学や算術を学ぶ場所なんだ」

「それは興味深い、直哉君の実家は裕福な家庭だったのですね」

「そうでもなかったけどね」

直哉は続きを話した。


「家に帰ってからは、両親が共働きのため一人で居ることが多くゲームやアニメが心の拠り所だった。この世界に似たゲームであるドラゴンバルグもその中の一つであった」

「この世界と同じような世界・・・」

フィリアは驚愕した。

「そして、そのゲームをアップグレードしているときにまばゆい光に包まれて・・・・そういえば、光っていたのはディスプレイだと思っていたけど、その横にあったものだったような・・・」

「お兄ちゃん?」

「うーん、ディスプレイの後ろにあったのは・・・・あれは母親からプレゼントされた全身鏡? あれも光っていたような・・・」

「直哉殿?」

直哉は三人の心配する眼差しにより考えを止めた。


「あ、ごめん。こっちの世界に来る前の光景を思い出していたけど、いまいちハッキリとしないな」

「結構つらそうだね、顔色が悪いよ」

イリーナ達が心配していた。

「うん、そろそろ寝ようと思う、続きは明日の夜にでも」

「はーい」

「おやすみ」

「お休みなさいませ」

直哉は後片付けをした後、寝室へ向かった。



◆次の日 直哉の家 鍛練場


朝のうちに買い物を済ませ、リカード達が来る前に追加パーツを造ろうとステータス画面を開いていた。



ステータス画面


ナオヤ

鍛冶職人

冒険者ランク2

Lv:11

最大HP:100+200

最大MP:140+200


力:10+20

体力:8+20

知力:8+40

素早さ:8

器用さ:8

運:8+10


ボーナス 15

スキルポイント 8


スキル

戦士系:0

○縦斬りLv2

○横斬りLv3

○リジェネLv1

○得意武器(片手剣:Lv1)

 四連撃Lv1

魔術師系:0

○魔力吸収Lv1

商人系:0

○目利きLv1

鍛冶系:4

 武具作成Lv4

 アクセサリ作成Lv1

 大工Lv3

 冶金Lv3

 精錬Lv3

 アイテム作成Lv3

 武具修理Lv2

 アクセサリ修理Lv1

 家具修理Lv1

サイボーグ系:2

 疑似四肢作成Lv2

 疑似臓器作成Lv1

 疑似部位連携Lv2


(サイボーグ系のスキルに追加スキルが来たな)

スキル名(消費スキルポイント)(前:前提条件)

サイボーグ系スキル

 疑似四肢修理(1)(前:疑似四肢作成Lv2)

 疑似臓器修理(1)(前:疑似臓器作成Lv2)

 マリオネット(1)(前:疑似部位連携Lv2)


直哉は疑似四肢修理とマリオネットを取得した。

そして、疑似四肢作成を使い身体の動きを保佐するパーツを造り出した。

直哉は、自分用のパーツを装着し鍛練を開始しようとしたが、両腕両足の補助パーツを付けた部分の反応速度とその他の部分が違い選るために、身体への負荷が尋常ではなく鍛練前に動けなくなりそうだったので、試すのを断念した。

リリとフィリアにも造ってあって、リリはそれなりに楽しんで、フィリアは直哉と同じく四苦八苦していた。

「ヒャッホーなのー」

リリは歓喜の声をあげ、

「うぐぐぐぐ」

フィリアは苦痛の声をあげた。


直哉は鍛練用に鉄で直刀を造り手になじませていた。

(この剣の形や重さはどこかで感じたことがあるな・・・・)

そう思いながら、四属性の剣を取り出した。

(コレじゃない感が半端無いな)

何処で感じたのか思い出せないまま、悶々と過ごした。


しばらくして、鍛練場の奥にある転移部屋の扉が開き、リカード・ゴンゾー・ラナ・ルナが現れた。

「こんにちは!」

みなで挨拶をして準備に入った。

「これがリカードさん用で、こっちがゴンゾーさん用です」

二人に強化パーツを渡して、装備方法を説明した。

「ほほぅ、これが!」

「ゴンゾー、装着したら試すぞ!」

「承知」

リカードは新しい玩具を得た子供のように、目を見開いて新装備を堪能していた。


放置された直哉たちは、ラナ・ルナの近衛兵の準備運動を教えてもらい、一緒に準備運動を始めていた。

ひとしきり堪能したリカードは、自主的に準備運動を始めていた直哉を見て、彼の本気度を確認していた。


「よし! 準備運動が終わったらこっちにきてくれ」

直哉はしっかりと準備運動で身体をほぐしリカードの所へ行き、その他はゴンゾーの所に集まった。

「まずは、直哉の力量を確かめる。好きに打ちかかって来い」

リカードは直哉の正面に盾と剣を構えた。

「えい、やあ」

直哉は遮二無二斬りかかった。

リカードは数回受けた後、直哉を止めた。


「いや、まぁ、本当に素人なんだな」

リカードは剣の持ち方や構えを教え、まずは基本の型を練習させた。

「この動きが基本の動作で、ここから臨機応変に色々な動きを付けていくことになるから、しっかり身体に覚えさせるように!」

「はい!」

直哉は、構え、攻撃、防御の基本動作を反復練習していた。


「ちぇすとー」

リリたちの方では、ゴンゾー対残り四人の戦いが行われていたが、ゴンゾーは涼しげな顔で相手の攻撃を回避しながらカウンターを繰り出していた。

直哉は一瞬焦りを感じたが、今自分に出来る最善を尽くすために、型に集中した。


五時間ほど集中して構え、攻撃、防御の基本動作を千セット終わらせ、休憩に入った。

「直哉の攻撃は左右の動きと縦の動きには目を見張るものがあるが、その他の攻撃がとたんに鈍くなるな。何かあるのか?」

「そういえば、パッシブスキルの縦斬りと横斬りを入れたままでした。切りますね」

直哉が操作しようとしたが、

「いや、戦闘になった時、そのスキルは使うのであろう?ならば、鍛練中もそのままで連係攻撃に慣れなさい」

「はい。わかりました」


休憩中はリカードがゴンゾーを誘い、新しい強化パーツを試していた。

「確かに力の入れ具合が難しいな。しかも失敗すると元の力より弱くなるな」

ゴンゾーはリリに、

「どうじゃ、回復したか?」

「大丈夫なの!」

「それなら、次は直哉殿と一撃の模擬戦をしてみるか」

リカードも、

「そうだな、基本の型を覚えたから、戦術に幅が出来たはずだ」

「やってみます。リリ、相手をしてくれるかい?」

「もちろんなの!」

直哉はリリと向き合い、開始の合図を待った。

「どちらかの攻撃が入った段階で勝利とする、ただし魔法のヒットは無効とする。それでは、始め!」


「大気に宿る、風の精霊達よ! 我が魔力に呼応し敵を絶て!」

「スライスエア!」

リリはいつものように、風の魔法に乗るために唱えて、直哉を見ると、すでに剣と盾を構えた直哉が突っ込んで来ていた。

「あちょちょちょちょ」

リリは、とっさに連続攻撃に切り替え、風の魔法も直哉に飛ばした。


「よっ、ほっ、とっ、てぃ!」

直哉は盾を使って器用に攻撃を受け止めながら、斬りかかった。

「あぶな!」

リリは、慌てて距離を取った。


直哉は、後ろに下がったリリを追って攻撃を繰り出した。

「えぃ、やぁ、とぅ」

リリは何とか回避しようと試みたが、最後には直哉の攻撃がヒットしていた。

「あちゃ。参りました」

「ふむ」

「動きが格段に良くなったな」

リカードとゴンゾーが直哉を評価した。

「むー、やっぱりお兄ちゃんは強いの。今までだったら速さで翻弄できたのに、今回は逆に封じ込まれちゃったの」

リリが悔しがっていた。


「これが俺本来の力? なんかいつもより、リリの動きが見える」

直哉は自分の身体の異変に戸惑っていたが、

「ちゃんと鍛練すれば、それに答えてくれるんだな」

「そういうことだ」

直哉のつぶやきに、リカードが答えた。

「今日はここまでだな」

「ありがとうございました」

リカードの号令で本日の鍛練は終了した。

「とりあえず、風呂で汗を流して来ましょう」

直哉の提案でみなでお風呂に入り汗を流すことになった。

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