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第百六十話 バラムド解放 後処理 その3

「お腹すいたの」

リリが直哉に甘えてきた。

「そうか。ここは、料理を出しても良いですか?」

「かまわん。ついでに私達の分も頼む」

「わかりました」

直哉は、アイテムボックスから料理を取り出した。


「主に、肉料理や酒のつまみがメインですが、野菜や魚料理もあります」

食卓を出して、取り皿等もだし、飲み物も用意した。

「す、凄い」

後ろに控えていたシュリが驚きの声を上げた。

「いつもこの様な豪華な食事を食べていらっしゃるのですか?」

「そうですね、食事は身体の基本ですからね。栄養のある食事をして適度の運動をする、これがうちのもっとうです」


「おっ肉、おっ肉なの!」

直哉が力説する横で、リリが肉料理の大皿を確保しようとしていた。

「こら、リリ! お客様の前ですよ!」

「ひぅ」

もう少しという所で、フィリアの雷が落ちた。

「むー、なの」

リリは肉料理を見ながら唸っていた。


ヨシ達が、そんな様子を見て驚いていた。

「申しわけない。うちの嫁たちが五月蝿くて」

直哉が頭を下げると、

「あっはっはっはっは!」

ヨシは腹を抱えていた。

「面白い! お主達は実に面白い! 今日は賑やかな昼食になりそうだ」


そう、朝一で聞き取りをしていたはずだったが、貴族達の妨害によって既に昼過ぎになっていた。

「さぁ、食べましょうか」

直哉の言葉に、

「待ってたの!」

リリ達は手を合わせていた。

疑問に思ったヨシが、

「ん? 何だ? それは?」

「これは、食べる前の挨拶です。こうやって手を合わせて、いただきます。と食材や作ってくれた人に感謝をして食べるのです」

「へぇ、面白いね」


ヨシ達も手を合わせて、

「いただきます!」

挨拶をしてから食事に取り掛かった。



「この様な温かい料理が、直哉殿の懐から出てくるとは、直哉殿の懐には(くりや)でもあるのか?」

ヨシの突っ込みに、

「そんなわけはありません。俺の懐はどれだけ広いのですか?」

「まさに、厨が入るくらいだな」

ヨシ達と冗談を言い合いながら、食事を終えると中断していた話を再開させた。



食後のお茶をすすりながら、

「神の声が途絶えてから、偽者の神、面倒なので邪心と呼びますね。その邪神が暗躍し始めました。自分の都合が良い様に精霊達をこの地に縛り付け、この地専用の人々が次々と召喚されました」

「どうしてこの地だったのですか?」

「元々、周辺の地形や街の位置などが、自分の造りたい世界に酷似していたと思われます」

「リリや、フィリア達も他の世界からの転移者なのですか?」


「いいえ。他の世界からの転移者は、このバルグを中心とした閉鎖空間には、直哉さんとガナックさん、そしてメイフィスさんの三名です。他の方々は、ほとんどがこの地に暮らしていた者達です」

それを聞いていたリリが、

「リリの、リリのパパとママは生きているの?」

「申し訳無い。個人の情報までは私にはわからないのです」

「お兄ちゃんの記憶では、南の大陸から行ける所に、龍の住む島があると言っていたの。それは、あるの?」


ヨシは腕を組みながら

「龍の住む島? ドラゴニール島?」

直哉はゲームの内容を思い出し、

「はい、そんな名前だったと思います」

「えっと、お父様のお名前は?」

「ラインハルトだったと思います」


ヨシが調べるような動作をして、

「んー、えっ? 現竜王ですか?」

「やっぱり、竜王なんですね」

「はい。彼なら十年以上前に、カースドラゴンと交戦して敗北。傷を癒すためにどこかに隠れて居るという噂ですね。ですが、そのお嫁さんと娘さんは行方知れずですね。この子が娘さん?」

「どうやら、そうらしいです」


直哉はまとめに入った。

「つまり、このバルグを中心としたドラゴンバルグの様な世界の外側にも世界が存在しているが、この地のコントロールキーを奪った自称神に好きなように改ざんされていると言うわけですね」

今まで黙って聞いていたラリーナが、

「ちなみに、私達全員の元の住み家はわかるのかい?」

「今はコントロールを奪われている、本来の神であれば、その程度は雑作もありません」

ラリーナはリリに向かって、

「ふむ。では、コントロールを奪ったとされる、悪い神でも倒しに行きますか」



猪突猛進型のリリとラリーナとエリザが鼻息を荒くしていたが、冷静なフィリアが、

「しかし、どうやって会いに行けばよいのですか?」

「あっ!」

三人は、一斉にヨシの方を見た。


ヨシは冷や汗を流しながら、

「まずは、各地を制御している者達をこの場へ集結させてください。この地は私が制御しているので他の地方の制御している人を探してください」

直哉はルグニア達の事を思い出し、

「それは、管理者と呼ばれる人たちですか?」

「そうです」

「そのまま連れてくれば良いですか?」

「それは駄目です。そのまま連れてきては、邪神に気付かれてしまいます」


(まぁ、そのままは無理だと思ったけど、どうやって連れ出そうかな。何か案はあるのかな?)

「では、どうすれば良いですか?」

「そこまでは、考えていないのだ」

(まぁ、仕方ないか)

「そうですか、では、こちらで考えて見ます」

「うむ。よろしく頼む」



その時、ユーサイが慌てて、

「アシカ様! 何者かが侵入しようとしています」

ヨシはうなずきながら、

「わかった。では、話しはココまでだ。結界を解除しても良いぞ」

「畏まりました」


ユーサイ達が結界を解除しようとした時に、直哉は聞こうとしていた事を思い出した。

「そうだ! 人形師の行方を知りませんか?」

「ん? 人形師?」

「はい。その人形師に頼みたい事があるのですが」

「ふむ。確か街に住んでいたと記憶しているが、気のせいだったか?」

「はい。ですが、数ヶ月ほど前にエッチゴーヤの手から逃れるために、東の森へ逃げて行ったと聞きます」

「なんだと!?」


直哉達よりもヨシが驚いていた。

「エッチゴーヤから逃げるとは、一体何をされたのだ?」

「詳しくは存じませんが、営業妨害と聞いております」

「そうだったのか。すまないな」

「東の森ですね? ありがとうございます。探してこようと思います」

「そうか? 気をつけて行って来い」

ユーサイが結界を解除してから、


「そうだ、結局のところ、オダの話を聞いてなかったな」

「そういえば、そうですね」

直哉は、ヨシにあって話した事を伝えた。

「なるほどな。後は、それが芝居だったかどうかだな」

「それに関しては、宝玉を使って調べるしかないですね」

「とにかく、これで、直哉殿からの聞き取りは終了とする」



ヨシの閉めによって、聞き取りは終了した。

「そうだ、直哉殿よ、少し時間をもらえるか?」

「何でしょうか?」

「ラリーナ殿に聞いたのだが、直哉殿はラリーナ殿より強いのであろう?」

直哉は顔の前で、手を横に振りながら、

「いえいえ、近距離での戦闘能力はラリーナの方が遥かに上ですよ」

「聞いた話では、何でもありなら直哉殿には勝てる気がしないと言っていたぞ?」


(そりゃ、何でも有りなら何とかなるかもしれないけど、試合にはならないよな)

直哉がどうやって戦おうか考えていると、

「よし! やる気になったようなので、道場に行くとするか。ユーサイ! 直哉殿達の案内を任せる」

「承知いたしました」

「他の者にも声をかけておこう」

「わかりました」

ユーサイが一礼した後で、直哉達を道場の方へ案内してくれた。



(はぁ、どうしてこうなったのだろう)

直哉は後悔しながらも、どの様な戦闘にするかを考えていた。

(指輪は使えないだろうし、ゲートで直接吹き飛ばすのも駄目だろうな。そうか、直接殴り合えなければ諦めてくれるかな?)

直哉は、道場でスキルを発動し、あるものを造り上げていった。


道場には、ヨシの他にユーサイや御三家の残り二人と、その他数名のまさに武人、と言う感じの人が集まってきていた。

(あらら、このメンバーの前であれを出したら、ブーイングの嵐だろうな)

直哉は心の中で冷や汗をかいていた。



「皆の者! よく集まってくれた。今日は、バルグフルより強者が来てくれたので、実戦形式の試合を行う事にする」

(凄いやる気だよな)

ヨシの方のメンバーと、リリ達はやる気がにじみ出ていた。

「直哉殿の方は誰が出るのだ?」

リリが小さな身体を目一杯大きく見せて、

「はい! はいなの! リリがやるの!」

と、アピールした。


そんな、リリを見て、戦いもしないギャラリーのその他の貴族から汚い言葉が飛び交った。

「おぃおぃ、ここは子供の遊び場じゃないんだぞ?」

「餓鬼は、おうちに帰ってママにしがみ付いて寝るんだな!」

「あんな子供にまで戦闘させるとは、これだから下賤の輩は」

散々であった。


「むー、そんなに言うなら、かかってくるの!」

リリがその他の貴族達を指名すると、

「拙者は、今日は都合が悪くてな」

「私は大切な用事を思い出したから失礼する」

「あぁ! 持病の癪が・・・」


「・・・・・・・」

直哉が呆れていると、ヨシが頭を押さえながら、

「はぁ、嘆かわしい。あれで、貴族を名乗っているのだから不思議ですよ」

ヨシは、その他の貴族達に一瞥をくれた後で、

「リリ殿すまないな」


リリは腕をぐるぐる回しながら、

「それで、誰が相手になるの?」

と、挑発すると、

「拙者が行こう」

御三家の一人、最も美男子な男が前に出た。


「拙者はアケチと申す。貴殿の力を見せて見なさい」

アケチは刀を抜いて、リリの前に立った。

「うむ、両者、御互いに全力を尽くされよ。ただし、死に至る攻撃は無しとしてくれ」

「承知」

「わかったの!」

ヨシは二人の返事を聞いてから、

「それでは、はじめ!」




◆リリ対アケチ


ヨシの合図と共に、アケチが前に出てきた。

「はぁっ! アケチ流、風花刺斬!」

物凄い速さでかなりの回数の突きを繰り出してきた。

「真っ向勝負なの! 無限拳!」

リリは、一気に闘気を溜めて、

「あーちょちょちょちょちょちょちょちょちょ!」


バシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシバシ


剣とナックルが激しくぶつかった。

「氷を司る精霊達よ、我が魔力にひれ伏しこの大気を凍結させよ!」

さらに、リリはその状態で詠唱を開始して、周囲に冷気が漂い始めた。

「大気に宿る、風の精霊達よ! 我が魔力に呼応し敵を絶て!」

氷の魔法をストックし、さらに風魔法を溜め終えると。


「今度は、こっちから行くの!」

魔法を一気に解放した。

「スライスエア!」

一気に後方へ下がり、

「もう一丁、スライスエア!」

そして、上空へ飛んだ。



「くっ」

いきなり目の前から居なくなり、体勢を崩すアケチ。

「そんなんじゃ、アマアマなの!」

リリは上空で氷魔法を爆発させた。

「クールブリザード!」

リリの周囲に魔法を維持し続けて、

「これで、終わりなの!」


リリは、さらに風魔法を使い、アケチの死角から殴りかかった。

「ちぇっすとー!」

アケチの身体に拳か当たる瞬間に、

「このまま殴ったら、死んじゃうの」

と言って、魔法を解放し軽く殴って、試合を終わらせた。


「参りました」

アケチは立つ事も出来ない程、疲弊していた。

「今の業は凄いな」

もう一人の御三家の男も驚いていた。

「まだ、身体が温まってないの! そっちの人もやるの!」

その男をリリが所望した。


「申しわけない。私はミヨシと言いますが、身体の具合が悪いので、私ではなく弟のソゴウが相手になります」

ミヨシの横に座っていた男が立ち上がり、

「私が御相手いたそう!」

そう言って、槍を構えた。


リリは舌なめずりしながら、

「今度も面白そうなの!」

リリは戦闘体制を取った。

「リリ殿、連戦になるが大丈夫なのか?」

ヨシが心配して聞いて来てくれたので、

「大丈夫なの! まだまだやるの!」

と、返事をしてやる気を見せた。



「わかった。では、はじめ!」

今度は、ヨシの合図と共にリリが飛び出した。

「ちぇっすとー!」

ソゴウはその攻撃を見て槍を構えた。

「むぅん!」

リリの突撃に合わせ槍を突き出した。


「甘いの!」

リリは飛びながら、すっと避けると、

「スライスエア!」

風を使い、さらに飛ぶ速度を上げた。

「ほぅ」

ソゴウは少し驚いたものの、リリの動きをしっかりと見ていた。


「むぅ、慌ててくれないの」

リリは覚悟を決め、

「氷を司る精霊達よ、我が魔力にひれ伏しこの大気を凍結させよ!」

氷の魔法を溜めて、ソゴウへ向けて飛び掛った。

「ちぇっすとー!」

リリの攻撃が当たる瞬間、ソゴウが動いた。


「むぅん!」

リリの魔法を回避し、さらに拳も回避して、さらに槍を使って攻撃を繰り出した。

「あっ、やばいの!」

リリは風魔法で逃げようとしたが、その行動を見切られていた。

「これで、終わりだ!」

ソゴウがリリの方へスッと移動して槍を突きつけた。


「ムー、やられちゃったの」

ソゴウは、そんなリリを見て、

「いや、良い動きであった。また手合わせを頼む」

そう言って、ミヨシの元へ戻っていった。

「あー、負けちゃったの」

リリは悔しそうに、直哉の元へ行き、甘えていた。

「惜しかったね。最後は動きを見切られちゃったね」

「うんなの。残念なの」



「では、リリの(かたき)は私が取るか」

ラリーナがそう言って、立ち上がった。

「おっ、ラリーナか、それなら私が出よう」

それを見たヨシが立ち上がって、ラリーナと対峙した。

「あれ? 直哉とやるのではないのか?」

「ふっ、お前さんともう一度やり合いたかったからな、もう一度、勝負だ!」

ヨシはラリーナと対戦するようであった。

(ん? 俺は戦わなくて済むのかな?)

そんな事を考えながら、ラリーナ達の手合わせを見ていた。

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