表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/188

第十六話 サイボーグの書

◆サイボーグの書を読み終えて


直哉はスキルを確認すると、サイボーグ系の項目が増えていた。

サイボーグ系

 疑似四肢作成Lv1

 疑似臓器作成Lv1

 疑似部位連携Lv1

表示されているのはこの三つであった。

スキルを使い疑似四肢作成を選択、腕部分をクリックすると使用する素材が現れた。

(なになに、金属に糸に皮に生肉か)

「生肉かよ!」

思わず声に出してしまった。


鍛錬をしていた四人は何事かと直哉に注目した。

「お肉食べられるの?」

リリが食い付いてきた。

「あ、いや、義手を作成するのに必要な素材で金属・糸・皮・生肉だったんだよ」

「なーんだ。つまらないの」

リリはそう言いながらゴンゾーの元へ戻り、鍛錬の続きを開始した。


(まずは、造ってみてそれから調整するとしますか)

その時、上の階からイリーナとラナ・ルナの三人が降りてきた。

「ちょっと、直哉君! 二人がお店の前で泣いていたわよ!」

「どういうことですか?」

詳しく聞いてみると、二人は王子とゴンゾーが直哉の所に行くと言われ、ここまでの地図を渡された。到着してみるとお店は閉まっており、中に誰もいる気配がない。そこで城に戻ったが王子達が戻ってきた様子もない。お店の前で待っていれば誰か来てくれると思い待っていた所、ようやくイリーナが通りかかり、ここに連れてきた。という事だった。


二人は、

「まさか、あんな場所に入り口が隠されているとは、夢にも思わなかった」

「しかも正解のルートを通らないとたどり着けないとは」

と、非常に驚いていた。

お店の傍にある森の一部を抜けると家にたどり着くのだが、直哉が土地タブを使って巧妙な迷路を造っていたので、正解のルートを通らないと家にはたどり着けない様に設計されていた。

「そんなに凄いのなら、近衛兵達の訓練場所にしようかな?」

リカードが冗談で言うと、二人は真っ青な顔になっていた。

「これ、二人とも遅れてきたのだからすぐにでも鍛錬を始めんか!」

ゴンゾーの怒声が飛んだ。

「それじゃぁ、私は上でミーファとご飯の支度でもしておくわ」

イリーナがそう言って上に行った。

直哉はリカード達に鍛錬を任せ、義手の作成に入った。


(まずは素材集めっと)

そう思いながら、倉庫タブを開き素材を確認した。

(金属と糸は何とかなるな、あとは素材屋と精肉屋に行ってくるか)

「皮と肉を買ってきますので、ちょっと出かけてきます」

直哉がそういうと、リリが飛んできて、

「リリも行く! 串に刺して焼いたら美味しいもんね!」

既に、焼き肉串のことで頭がいっぱいのリリに、

「だから、素材を買いに行くのだよ? お腹が空いたのなら、上の階でイリーナさん達にすぐ食べられる料理を出して貰ったら?」

「むー」

「買い食いしないけど一緒に行く?」

むくれてしまったリリの頭を撫でながら聞いてみた。

「いくの!」

元気に返事したリリは、フィリアの方を見て、

「お姉ちゃんも一緒に行こう!」

と、誘っていた。

直哉は、リカード達に風呂を勧め、イリーナに買い出しに行くことを伝えて、後を任せた。


「まさに、やり始めたら一直線ですな」

ゴンゾーがつぶやいた。


三人で商人ギルドの管理する商店街へやってきた。

「おや? お前はリリじゃないか?」

おじいさんが話しかけてきた。

「あーお師匠さまなの!」

「ふぉっふぉっふぉ、元気そうじゃのぅ」

リリはお爺ちゃんに挨拶した。

「どうじゃ、拳のほうは鍛錬を続けておるのか?」

「はいなの!」

「魔術にうつつを抜かしてこっちを怠っているのでは無いのかね」

そういって、シャドウボクシングをした。

「リリね! あれ覚えたの! 無限パンチ!」

そう言って、リリもシャドウボクシングをした。

「ふむ、ということは、魔法は諦めたのかな?」

「あのね、リリね、魔法も拳も鍛えてるの!」

「ほほぅ。そうであったか。リリが良ければ新しい拳技を伝授しようかの」

リリは直哉とフィリアを見て、

「ごめんなさいなの。今日はお兄ちゃんとお姉ちゃんと一緒に買い食いに来てるの」

おじいさんは胡散臭そうに直哉のことを見て、値踏みしていた。

「始めまして、俺は直哉と言います。町の外れで鍛冶職人として、この二人とその他数名で住んでおります」

「直哉様のところでお世話になっております。フィリアと申します」

おじいさんは、何かを考えた後、

「直哉という鍛冶職人か。もしや、ヘーニルの言っていた有望な新人冒険者とはお主の事かの?」

「俺は確かに新人冒険者ですしヘーニルさんとも面識があります、ただ、有望かどうかは俺では判断出来ません」

「ふむ、変な小僧じゃの、まぁリリよ、わしは暫くこの町に居るから、いつでも鍛錬に来なさい」

「はいなの!」

おじいさんと別れ、三人は素材売り場へ移動した。


直哉は素材屋で皮以外にも布や金属など武具の素材も買い足した。

そして、精肉屋にやってきた。

「いらっしゃい! 本日は何をお求めで?」

「新鮮な肉をいろいろな種類見せてください」

「はいよ!」

主人は色々な肉を見せてくれた。

直哉は、鳥、牛、豚、ワニ、熊の肉を大量に注文した。

「そんなに買って、宴会でも開くのかね?」

肉屋の主人に心配されながらも大量の肉を持ち帰った。

もちろん、リリにモーモーキングの串を買ってあげたのは内緒だが。



◆直哉の家


「ただいまー」

直哉たち三人は挨拶をしながら帰ってきた。

「料理の用意が出来ているので、うがい手洗いしてきてくださいね」

イリーナたちに促され、三人はうがい手洗いを済ませ、席に着いた。

食卓には既に、リカード・ゴンゾー・ラナ・ルナが座っており、三人の帰宅を待っていた。

「おぉ、やっと帰ってきたな、首尾はどうだった? と聞きたいが、飯の後だな」

「そうですね、ご飯の後に話しましょう!」


そう言いながら、直哉はサラダを取り自分の皿に入れた。

「お兄ちゃん、お肉も食べないと強くなれないよ!」

そう言いながら肉料理を近づけ、大半を自分の皿に入れ元に戻した。

直哉は俺にくれるんじゃないの?という顔をしながら辺りを見まわした。

ラナとルナはリカード達に気を使って、手を付けずにいた。

「早く食べないとリリに食べられちゃうよ?」

直哉は気を利かせて、二人に勧めた。

二人は、リカードとゴンゾーを見て食べてよいか目で聞いていた。

ゴンゾーが頷くと、二人は食べ始めた。

和気藹々とはいかないが、それなりに楽しい食卓になった。


「リリは肉食だよね」

直哉が思っていたことを口に出すと、

「大きくなるにはお肉が必要なんだって、イリーナお姉ちゃんが言っていたの」

「確かにイリーナさんは大きいけど、何か違う気がする」

直哉は自分の皿に取っていた魚を持ち上げ、

「ほら、魚も食べてごらん」

リリはそのまま齧り付いてきた。

「いやいや、リリのお皿を寄せてよ」

直哉はビックリしながら、リリの皿を寄せて魚をのせてあげた。

「このお魚美味しいの! しかも骨がないの! 食べやすいの!」

「こらこら直哉君。リリちゃんを甘やかしすぎだよ。骨くらい自分で取らせなきゃダメでしょ」

イリーナのお小言をもらってしまった。

「これで、肉以外もたくさん食べるようになれば、リリのためにもなりますね」

「確かにね。私も気にはしていたのよ。私の言葉で肉食になってしまった事に。でも、それまでは肉を焼く匂いは、父親の死に際を思い出して食欲を無くしてしまっていたから」

イリーナは遠くを見つめながら昔のことを思い出していた。


食事が終わった後、リカードとゴンゾーそして直哉は義手について話し始めた。

他の女性陣は甘いものを囲んで談笑し始めていた。

直哉は『疑似四肢作成』を使い作成した。

「それで、これが材料を揃えて造ってみた義手です」

リカードは義手を受け取り細部を見ていた。


「これが義手か、ふむ、本物の腕と変わらないな」

「そうですな、少々不気味ですな」

「装着してみますか?」

直哉はそう言って、アタッチメントを用意した。

「動かせるのか?」

「おそらく、装着した後『疑似部位連携』を使えば、装着した人の意思と連携するのだと思います」

「やってくれ!」

リカードはそう言って、直哉に身を任せた。

「了解」

直哉は、アタッチメントを使い接続部分をキュっと閉め密着した。その後『疑似部位連携』を使ってリカードの意思と義手を連携させた。


「おぉー。これは、凄い!」

リカードはそう言いながら、義手をブンブン振り回してその使い心地を楽しんだ。

「ゴンゾー武器を持て! 下で試すぞ!」

リカードは義手で剣を持ち、ゴンゾーを連れて降りていった。


(行っちゃった。次は細かい調整をしてと思ったのだけど、仕方ない付いて行くか)


女性陣はおしゃべりに夢中なようなので、直哉は静かに下に向かった。

「セイ! ヤー!」

リカードは目でフェイントを掛けつつ剣を振るい、ゴンゾーの剣に当てると追撃とばかりに蹴りや盾での攻撃を入れた。そのまま全身を使った攻撃を繰り出していた。

そして、リカードのその猛攻をゴンゾーが受け流していた。


(二人とも凄い! 凄すぎる。最近は俺も少しは強くなってリリの力になっていると思ってはいたのだが、これを見てしまうと自分はなんて弱い存在なんだろうって自覚させられるよ)


「はぁ」

直哉は深いため息をついた。

そこへ、リカードとゴンゾーがやってきた。

「どうした? 直哉。ため息なんかついて」

「そうですな、悩み事ならわしらに相談しては如何かな?」

「ありがとうございます」

直哉は二人に頭を下げた。

「相談したいことはありますが、まずは義手の具合は如何ですが?」

リカードと直哉は義手について細かい部分を詰めていった。


義手を造っては試して調整。造っては試して調整を繰り返した。

数時間後、殆どの素材を使い尽くし納得のいく義手が完成した。

見た目は普通の腕だが、素材は重金属や繊維を使い、ワニと熊の肉でパワーを強化してあった。

さらに、アタッチメント部分も強化し、体内から魔力を魔法の発動体に直接流し込む事の出来る仕組みを取り込み宝剣に魔力を込める事に成功した。


「元々の腕より遥かに強くなった気がする! さすがはヘーパイストス達が一目置く存在だな」

「ふぅ、流石に疲れました。素材もすべて使ってしまったのですが、非常に良い代物が出来ましたよ!」

直哉はやりきった表情を見せた。

「本当に良いものですな、しかしリカード様片腕だけの強化で安定いたしますか?」

ゴンゾーはリカードの強化をうらやましく思いながらも中途半端な状態を指摘した。

「確かに、左右でここまで違うと違和感が半端ないな、そうだ直哉! この腕はそのまま湯船に浸かっても大丈夫なのか?」

直哉は義手の説明欄を見て、

「大丈夫です。もし接続部分にお湯が入ってきたり、蒸れて痒くなったりしたら外して下さい。」

「わかった。それでは、この義手の代金は後日でよいか?」

「もちろんです。後日ついでに左腕を強化するパーツを造って置きますよ。気に入って買って貰えたら嬉しいですね」

直哉は新しい可能性として、腕や脚を強化する方法を考えていた。

「でしたら、拙者用の強化パーツもお願い出来ますかな?」

ゴンゾーが興味を示してきた。

「両腕両脚用ですね?」

「うむ」

「わかりました、両腕両脚のサイズだけ測らせてください。リカードさんもサイズを測りますよ!」

直哉は、リカードとゴンゾーの両腕両脚サイズを登録した。

「では、明日にでも造っておきますね」


「うむ。頼んだ。そういえば、直哉の悩み事とは何なのだ?」

リカードの質問に直哉は正直に答えた。

「最近、俺は自分の力のなさに嫌気がさしてます。確かに装備品を造る事で戦力の増強はしていますが、俺自身の戦力が低すぎる事が悩みの種です。リカードさんの様に剣を振るう事が出来ず、リリのような魔法・拳の攻撃も出来ない、フィリアのように魔法の援護すら出来ない。このままでは、武具アイテムを造って後は任せた俺は逃げる! と言うポジションに陥りそうで怖いです」

「フム、ならば武術を我らから習うか?」

リカードは強くなりたいと思う直哉の気持ちを受け止め指南役を申し出てきた。

「良いのですか?」

直哉は食いついた。

「ならば、拙者も参加いたしますかな」

「そうだな、ゴンゾーも居てくれれば、直哉を見ている間、リリちゃん達を鍛錬できるからな。それに、この家の鍛錬場は快適だからな、近衛兵の二人もここで鍛錬させて貰えるのであれば何の問題も無いな」

「そうですな、公務があるときも地下の扉を通るだけですし、問題は無いかと」

「ありがとうございます。俺も本気で、あの二人の力になれるように強くなりたい!」

リカードとゴンゾーの申し出に直哉は感謝した。


「さて、今日は帰るとしますか」

リカードはゴンゾーと近衛兵の二人を連れて地下の扉から帰っていった。

直哉は残ったみんなにリカード達と合同鍛錬の話を伝えその日は解散となった。

直哉はなかなか寝付けないので、下でリラックス出来る成分を含んだお茶を飲むことにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ