第百五十一話 クエスト 犯人を見つけ出そう
「今帰ったの!」
クエストを終えたサースケたちが、コテージに辿り着いた。
「あれ? 早かったね!」
そう言って、直哉が出迎えた。
「もー、がっかりなの! 全然面白くなかったの!」
リリはふてくされながら直哉に飛び付いていた。
「何があったのですか?」
サースケ達から事情を聞くと、
「あぁ、それじゃあ、消化不良だね」
リリの頭を撫でながら、
「じゃあ、俺が肉料理を作るから、リリはお風呂に行っておいで、フィリア達が入っているから」
「はいなの。行ってくるの」
リリを送り出した後で、
「サースケさん達のコテージはこちらです」
サースケ達を案内しようとした。
「その前に、私達がクエストに行ってから、どのくらいの時間が経ちました?」
「うーん、三十分位? 一時間は経っていませんよ」
サースケ達は驚いて、
「それしか経ってないのですか?」
「えぇ。あれからコテージを建てて、荷物を片付けた後、フィリアたちが久しぶりの風呂を堪能しに行ったのがつい先程ですから」
「そうだったのですね。というか、三十分でコレだけの家が建つとは、驚きというか呆れるというか。もはやなんでもアリですね」
サースケ達は直哉の建てたコテージを見ながら投げやりになっていた。
セイーカは目を輝かせ、
「も、もしかして、この家にもお風呂があるのですか?」
「もちろんありますよ。とりあえず、皆さんようのコテージでくつろいでいてください。風呂で汗を流してから、私達のコテージへ来ていただければ、大型の食堂がありますので、食事をする事が出来ます」
直哉の説明に、
「そうっすね、おれっちもお腹空いたっす」
サーイゾー達は汚れを落とすべく、用意されていた自分たち用のコテージへ向かった。
「さて、今夜は肉料理を多めに用意するとしますか」
そう呟くと、コテージへ戻りアイテムボックスから、出来上がっていた料理や食材を取りだして、料理を始めた。
◆その頃、南の島では
「くふふ、新たなイケメンゲット!」
ビーチにパラソルを立てて、その中で休んでいた少女が端末を操作して、この世界のリソースを消費しながら、自分好みの男を作り出して、傍に侍られていた。
「ここは、私だけの楽園!」
自分好みの男に囲まれてニヤニヤしていると、執事服を着たイケメンが、
「お嬢様、この島に近づく者がおります。如何いたしますか?」
「えー、全く次から次へとめんどくさいな」
そう言って、端末を操作し始めた。
「んー、ここに来るのはバラムドの人間か」
端末から情報を得ると、ガナックを呼び出した。
端末には少女が異世界から呼び出した勇者が映し出されていた。
「勇者ガナックよ、新たな指示を出す」
「ははっ」
「バラムドに蔓延る不浄なる者どもを殲滅せよ」
「ははっ」
「殲滅する事が出来れば、新たなアイテムを授けよう」
「承知いたしました」
通信を終えた少女は、
「くふふ。これで新たなリソースを確保出来そうだよ。しかも、この島に上陸しようとする不逞の輩を同時に排除出来るのは美味しいな。そういえば、もう一人の勇者はどうしたのかな? 私が召喚したのではないから恐らく封印したもう一人のシステムがやったのね、お陰で余計な手間が増えて仕方がないのよ。まぁ良いか、バラムドのリソースが使える様になればもっと封印を強化するかな」
不気味な笑みを浮かべる少女が見ていた端末には、誰も乗っていない大型船が並に揺られているのを映し出していた。
◆クエスト 犯人を見つけ出そう
数日後、直哉達は一つの村に着いた。
「ここが、新しいクエストが起こっている村ですか?」
マップを確認しながら、
「そうですね。ここで問題が発生しているようですね」
「とりあえず、宿か酒場ですね」
「それと、ギルドがあるならそこだな」
直哉達は手分けをして、情報を収集した。
情報収集後、一度直哉の元へ集合した。
「うーん、宿屋の主人からは有力な情報はありませんでした」
「酒場の主人の話では、取引している家の家畜が魔物に喰われる被害が続出しているとの事です」
「冒険者ギルドに依頼は出していないのですか?」
「はい。村の相談窓口には届けているそうですが」
「そうですか」
「村人に聞いてみたのですが、子供用の服が盗まれた事以外は情報がありませんでした」
「冒険者ギルトというか、相談窓口の様な所に寄せられた情報は、先程の家畜の被害と、南に広がる森に人型の魔物の目撃情報があったくらいですね」
「人型の魔物?」
「はい。見た人も数名で、見たのも一瞬だけだったのですが、家畜の被害が出ているために、対策を協議しているそうです」
一通り報告が終わったので、
「そうですか、他には何かありますか?」
「この村はあまり裕福では無いようです。冒険者ギルドに依頼出来るほどの資金を集める事は、困難なようです」
(つまり、冒険者ギルドに頼りたいけど、そんな資金がないために放置するという事か)
「さて、みなさん、どうしますか? このままこの村の問題を解決するか、先を急ぐか」
直哉の問に、
「とりあえず、時間がかからなければ、解決する方向で良いと思います」
満場一致で決まった。
「まずは、相談窓口へ行ってみよう。魔物に対する情報を整理しよう」
相談窓口の場所を聞き、そこへ行くと、中ではお年寄り達が世間話に花を咲かせていた。
とりあえず、窓口に一番近い人に話しかけると、
「こんにちは、少し良いですか?」
「ん? 何でしょうか?」
「俺は直哉、バルグフルの冒険者でバルグフルからバラムドへ行く途中なのですが、何か依頼は無いですか?」
窓口の人は、相談内容を確認しながら、
「うーん。冒険者様に出せるような依頼は無いですね」
「冒険者では無ければあるのですか?」
「えぇ、依頼料が無い依頼が多いのですよ」
「どのような依頼があるのか教えて貰っても良いですか?」
「それは構いませんが、依頼料はありませんよ?」
「はい、わかっています」
そう言って、ここに集まっている依頼を見せて貰った。
確認すると、情報通りの結果であった。
「この家畜の件と人型の魔物は関連あるのですか?」
「残念ながら、それを調査する人員が足りておりませんので、現状ではわからないです」
「では、こちらの家畜の件を依頼している依頼主をお教えください」
直哉は家畜を育てている人の元へ向かった。
「いつ頃、被害に遭われたのですか?」
「最初は六日程前です、それから二日ごとに被害が出ています」
「つまり、順当に行けば今日起こる可能せいがあるのですね」
「はい。ですが、我々には戦闘能力が無いので、家に籠もって祈る事ぐらいしか出来ないのです」
依頼主の話を聞いて、
「ふむ。とりあえず、今日はここで見張りだな。村の人も数名見届け役として一緒に居て欲しいのですが」
「わかりました。冒険者様が居て下さるのでしたら、私と村長と相談窓口の者でやります」
「では、夜に」
「はい」
直哉達は、村の宿屋へ向かい部屋を取った。
「今夜は俺達はクエストをやりますので、早めに寝る事にします」
ソエルハザー達に伝えて、早めのご飯を食べて寝る事にした。
◆その夜
「準備は良い?」
直哉の言葉にリリ達はしっかりと肯いた。
直哉とフィリアとマーリカが司令本部となる家畜小屋の見える家に、村に人と一緒に隠れて居る。
「村の入り口、配置についたの!」
「飼育小屋問題無い」
「放牧スペースの方にある櫓上、配置についたのじゃ」
「私達も、放牧スペースに隠れました」
全員配置につき、魔物の正体を暴こうとしていた。
「こちら、櫓上、森の方から何者かがやってくる。警戒を!」
「了解!」
みんなは、森の方を警戒した。
森からは人間が一人やってきていた。
(人、ですかね?)
(村の人ですか?)
(どうだろう? 遠くてイマイチわからないのだよね)
(ですが、村人には今夜は外出禁止令を出しています。恐らく村人ではないでしょう)
森から来た者は、一直線に家畜小屋へ向かっていった。
「捕まえるか?」
「いや、確実に家畜を襲ったらにしよう」
「了解」
直哉達の会話を聞いていた家畜の飼い主は、
「あの・・・」
何か言いたげであったが、
「何かあった時は、家畜の代金をお支払いいたしますので」
「はぁ」
直哉の保障の話を聞いて口を閉ざした。
そうこうしているうちに、森から来た者は、飼育小屋へ入った。
「飼育小屋へ入りました。随分と慣れているようです」
「ラリーナ、任せるよ?」
「おぅ、見えた。ん? この感じは!?」
ラリーナは何かを感じたようだ。
「どうした?」
「いや、獣の匂いがする」
「そりゃぁ、飼育小屋だし」
当たり前だろうと思って居ると、
「犯人が家畜に手を出した。確保しに行く!」
「了解。みんなも予定通りに!」
「おぅ!」
小屋の中で家畜を持ち出そうとしている所を、
「そこまでにして貰おうか!」
ラリーナが立ちふさがった。
「ぐるるるるるるるる!」
犯人からは明確な返答はなく、うなり声のみだった。
「やはり、ライカンスロープか!」
「ガォーン!」
人型の狼はラリーナへ飛び掛かろうとした。
「ふん!」
その時、銀狼へ変身した。
「ガォー!」
その、叫び声を聞いて、人型の狼は動きを止めた。
「ぐ、ぐっ」
ラリーナが威圧を強めると、
「きゃぅん」
その場でひっくり返り、お腹を見せて降伏した。
「・・・・終わったぞ」
「えっ?」
外で待機していたみんなは、要領がつかめなかったので、小屋へ移動した。
そこでは、ラリーナに服従している狼が一頭いるだけであった。
「あれ? 家畜泥棒は?」
「こいつが、犯人だ!」
「えっと・・・狼?」
「あぁ、正確にはライカンスロープだ。おい、人間に戻れ」
見る見るうちに狼は人間の姿になっていった。
「・・・・はい」
「おぉ!」
村の人は、
「こいつが、家畜泥棒か!」
「どうしますか?」
直哉が尊重に聞くと、
「うーん、冒険者様はどうお考えですか?」
「俺ですか? どうして家畜を盗んだのかを聞きますね。再犯防止のために」
依頼主と村長が、
「殺してしまえば良い!」
「村の掟では、家畜泥棒は罰金と無償労働だぞ」
「こいつは村人じゃない!」
言い争っていたが、
「とりあえず、訳を聞きますか」
直哉が話を聞くと、
「私達家族は南の森で静かに暮らしていました。ところが、一週間ほど前に人間が現れ、ここを使うから出て行けと私達の家を破壊しました。抵抗した私達は、その人間に斬られ、私の嫁は歩けなくなりました。この近くに子供と共に隠れて居ます。私はどうなっても良いので、家族は見逃してやって下さい。お願いします」
「貴方の傷を見せて貰えますか?」
直哉の言葉に、ライカンスロープは足と腕を見せた。
手足には刀で深く斬られた跡が残っていた。
「コレは酷い。良く動けますね。この村の方々がやった可能性は無いですよね?」
「無いと思います。罠を仕掛けてはいますが、ここまでの傷にはなりません」
直哉はその傷と、話を総合して、
「とりあえず、この方と、ご家族の件は俺に任せて貰えませんか?」
「えっ? 良いのですか?」
村長は驚いていた。
「彼が奪った家畜の代金は全て俺が支払います。無償労働もこの問題を解決すると言う事で如何ですか?」
「わかりました。お願いします」
「代金の方は、金額が決まった教えてください。俺達はこれから、この方の家族に会ってきます。もしよろしければ一緒に行きませんか?」
村長は依頼主を見て、
「では、私が行こう。君は、家畜の代金を計算しておいてくれ」
「はい」
「自由の風さん達は、この村でソエルハザーさん達の警護をお願いします」
「了解した。村も一緒に護っておく」
「お願いします」
「フィリア、彼の治療を頼む」
「わかりました」
フィリアの魔法により、徐々に傷が塞がっていった。
「おぉおぉおぉぉ」
ライカンスロープは治っていく傷を見て驚いていた。
「ぜ、是非、私の嫁の傷も治してください。私の出来ることなら何でもします!」
ライカンスロープは頭を下げた。
「わかりました。治療も済んだようなので、行きますか」
直哉は治療の済んだライカンスロープと村長を連れて、狼一家の隠れて居る場所まで移動した。
◆森の隠れ家
ライカンスロープの行く先に岩場があり、そこに洞窟があるようであった。
入り口は草や枝を使って上手く隠されていた。
「ここです」
ライカンスロープの後ろに、直哉、フィリアが続き、村長、ラリーナ、リリ、と続いた。
エリザとマーリカは外で待機していた。
「誰!?」
奥から女性の声が聞こえてきた。
「俺だよ」
ライカンスロープが人型で戻ると、
「あなた! 今日も無事だったのね」
そう言って出迎えた。
「えっ? 後ろの人達は?」
奥に居た女性は直哉達を見ると、子供を後ろに隠しながら、
女性の服はボロボロであちこちの肌が見えていた。今でも身体から血液が流れているところもあり、少し動くだけでも顔を歪めていた。
「そう、見つかってしまったのね。私は、どうなっても良いので、この子だけは助けてあげてください」
直哉はライカンスロープを見て、
「良いですか?」
「お願いします。こちらの方が、怪我を治してくれるから大人しくしてくれ」
「えっ?」
フィリアが女性の元へ近づくと、
「直哉様、治療するための道具と、薬品をお願いします。そして、男性陣はこちらを見ないでください」
そう言って、直哉が出した視界をさえぎる布を張った。
「これは! 直哉様、後でお話があります」
そう言って治療開始した。フィリアの治療は一時間近くかかり、ようやく全ての傷が回復した。