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第百五十話 クエスト 珍味! コモドオオドラゴンを撃破せよ!

召喚獣とその家族との戯れを終え、直哉一行はバラムドへ向けて出発した。



懐から笛を取りだして、

「リリ、召喚の笛はいるの?」

リリは首を横に振って、

「いらないの。もう飽きたの」

呆れ顔のラリーナは、

「あ、そう。じゃぁ、直哉持っていてくれ」

「はいよ」

(正直、もう呼ばないと思うけどね)

そんな事を考えながら、アイテムボックスの奥深くへ仕舞い込んだ。


気を取り直して、

「さぁ、明日にはこの森を抜ける予定です。今夜はしっかりと英気を養っておきましょう」

「森を抜けたら、お風呂付のコテージが使えるの?」

「あぁ、それなりの広さがあれば建てる予定だよ」

「やったー、お風呂なの!」

大喜びのリリを見ながら、サースケやソエルハザー達は、

(何を言っているのでしょうか?)

と、考えながら休憩していた。




◆次の日


この日は、朝から雨が降っていた。

「そろそろ森の終わりが近くなってきたから、雨が意外と降り注いでくるんだよね」

「そうですね、今日はこのまま雨が上がるまで休憩にしますか?」

「うーん。そうだ、ソエルハザーさん、この辺の気候って、長雨とかあるのですか?」

「そうですねぇ、バラムドでは数日降り続く雨もありますが、この雨はもう直ぐ止むと思いますよ」

「どうしてですか?」

「ほら、雲が流れていますし、雲が流れてくる向こう側は明るいですから」

「なるほど、そういう見方も出来るのですね」


「では、このまま休憩で、雨が上がったら出発しよう」

「はーいなの」

一行は、昨日直哉が試行錯誤しながら、狭い空間に建てた小屋で時間を潰す事になった。

エリザが手や足の指先をさすりながら、

「直哉殿よ、まだお風呂は無いのかぇ?」

「そうだよね、雨が降って寒いから、お風呂で暖まりたいよね。じゃあ、風呂専用の小屋を置くスペースがないか見てくるよ」

「言ってみるものじゃな」


雨が降りしきる中で、直哉が風呂用の小屋を建て、各部屋からその小屋まで繋がる雨よけを付けた。

「これなら、雨の中そのまま風呂まで行けるな」

しかも、風や泥まで防ぐように造り上げ、巨大な家が完成した。

(よし! もの凄いのが出来たけど、後悔はしていない)


鼻息を荒くして小屋に帰ると、

「こんなに巨大な建物にして、雨が上がっても直ぐに動けないではないですか!」

フィリアに怒られた。

「まぁ、でも、お風呂に入れるから許しますけど」

やはり、女性陣にはお風呂の優先順位が高いのであった。


ソエルハザーは、色々な建物をホイホイと建てる直哉を見て、

「直哉さんが居たら、鍛冶師は廃業ですな」

慌てて、

「それは困ります」

「ですが、より良く、より早く、より安く、直哉さんの造る物はそういう物ですよね?」

「確かにそうでしょうけど、それでは、俺も潰れてしまいますよ。そうなれば、この世界の生産力が激減してしまいますよ」

必死に自分以外の必要性を訴えかけていた。


「それは困りますね。ところで、直哉さんの能力は継承出来るのですかね?」

「どうでしょうか? ですが、ルグニアに大規模な鍛冶場を造って、そこで弟子達が腕を磨いていますよ」

「ほほう。ルグニアですか? 確かドワーフ達が多く暮らしているとか。なるほど、それでエリザさんが同行しているのですね」

「はい。ルグニアから一緒に旅をしています」

エリザを紹介すると、ルグニアのドワーフ事情について、話し始めていた。



直哉は、自由の風を見て、

「そういえば、サースケさん達はどのような冒険者なのですか?」

「えっ? 今さらっすか?」

サーイゾーは驚いていた。

「はい。ゆっくりと話す時間を取らなかったので、雨は降り続いているので丁度良いかと思いまして」

「そうですか、わかりました」

サースケは語り出した。




「俺達は、元々同じ村で産まれました。コスーケが最初で、次に私とセイーカ、そして次にサーイゾーが産まれました。他にも数名居たのですが、コスーケが五歳、私達が四歳、サーイゾーが二歳の時、その村に魔物が押し寄せてきました。村の大人達は懸命に私達を逃がす為に動いたと聞いています」

「覚えているのですか?」

恐る恐る聞いてみると、

「何となくですが、もの凄く怖かった様な気がします」

「わたくしは覚えてませんわ。当時意識を失っていた様なので」

「おで、おぼえてる。みんな、戦う。そして、死ぬ」

「その時ですよ、ハグレ魔物が俺達の方へ来た時に、一番年上だったコスーケがその身を挺して俺達を護ってくれたのですよ」


コスーケは力こぶを作りながら、

「おで、みんな、兄、護る」

「ですが、たかが五歳の子供、肉の壁として数撃は受けていましたが、頭への一撃で昏倒してしまいました。その時の傷が元でうまく喋れなくなったと、聞いています」

先程から、聞いていますと繰り返していたので、

「村の事を話してくれる人が居るという事ですか?」

その質問をした時に、サースケが一瞬苦しい表情をしたが、

「昔は居ました。私達が冒険者として生計を立てられるようになるまでは」

そんなサースケを見て、セイーカはその肩を触りながら、

「村の生き残りでしたのよ」

「おれっち達が最初の報酬で美味い物を買っていった時には、すでに息を引き取った後だったっす」

「もともと、村への襲撃の時に深手を負っていて、衰弱していくばかりでしたが」

「助けられた子供が私達四名だけだったと、ずっと後悔しておられました」


「そうでしたか、辛い記憶を思い出させてしまい申し訳無い」

直哉が謝ると、サースケは、

「いえ、私達も生き残りの方から聞いた話なので、そこまでではないのですよ」

「そうでしたか。そしたら、他に生き残った村人は居なかったのですか?」

「はい。生き残りはその方を含めて、五名だけだったと聞いています」

「良くわかりました。その後はどうしていたのですか?」


「それからは冒険者として魔物を退治する仕事を中心にやってきました」

「バールハザーさんとは、バザール商会で知り合いました。良い品を適正価格で売買してくれる店だったので、よく利用していました」

「私も何度か顔を合わせておりました」

「そんな商会からの依頼だったので、詳しい話しを聞き、バラムドの街も潮時かなとその時に思いました。それで、あの戦いで直哉さんに出会ったという訳です」

「なるほどです。それで、バールハザーさんの特殊な依頼を受けていたのですね」

「はい。その通りです」


そんな、昔話をしているうちに降り続いていた雨が弱くなり、完全に上がったのはその日の夕方であった。

「このまま一気に森を抜けてしまいますか?」

「夜になるのと森を抜けるのは同時になりそうです」

「少しでも進んでおきましょう。明日の朝、雨が降らないとは断言出来ませんので」

「では、荷物を纏めてください。この小屋を解体しますから」

出発の準備が整ったのは、夜になってからであった。



「リリ、ラリーナ、マーリカ、周囲の警戒を最大に!」

「了解」

「こっちも、気合いを入れていくぞ!」

「おう!」

直哉達は、商人達を中心にして、夜の森を一気に駆け抜けた。


「あちょちょちょちょちょちょちょちょちょ」

「そらそらそら!」

「粉! 砕!」

リリ達は群がる雑魚共を、文字通り蹴散らしながら突き進んだ。

エリザとセイーカは、うち漏らした雑魚を矢で打ち抜いていた。




◆森を抜けた所


「よし! 森を抜けたぞ!」

「ですが、明かりは見えませんね」

「まだまだ、遠いという訳だな」

直哉はマップを確認すると、

「ここより、南側に広がる岩場地帯の中に、クエストがありますね」


「それって、おれっち達でも受けられるっすかね?」

「どうでしょう?」

「直哉さんはこの場所にコテージとやらを建てていてください。私達自由の風でクエストを確認してきます」

「リリも! リリも行くの! お肉なの!」

「ふはは。それじゃぁ、一緒に行きましょうか?」

「はいなの!」


「こちらにも戦力を残さないといけないから、私は残るぞ」

「フィリアとエリザとマーリカは?」

他のみんなは残るようであった。

「じゃぁ、リリ、サースケさんの指示をしっかりと聞いて動くのだよ」

「わかったの!」

「サースケさん、リリの事よろしくお願いします」

「承知しました」



「行ってしましましたね」

「それでは、こちらもやってしまいましょう。直哉様お願いします」

「了解」

直哉は慣れた手付きでスキルを発動させ、数軒のコテージを造り上げた。


「ふっふふ。まさか、ここまでとは」

一瞬で出来上がるコテージを見て、ソエルハザーは変な笑いが出てしまった。

「これは凄すぎですね。内装もちゃんと出来てますよ」

「私達の常識って何だったのでしょうか?」

「もはや、私達の想像を遥に超える存在ですな」


そして、コテージの中を案内されて更に驚いていた。

「これは、直哉さんの屋敷に居るような感じですな」

「奧がお風呂なんですね」

「はい。各コテージに造ってありますので、ゆっくり使用してください」

そう言って、直哉達は自分達用のコテージへ消えていった。




◆そのころ、とあるアジトでは


何かの液体の入った入れ物の中に、一体ずつの生命体が入れられていた。全部で5つ。

「最終調整が終了致しました」

神官着を纏った男が、子供に話しかけていた。

「うむ、良くやった。手駒が少ないがこれで人々を消滅させられるのか?」

「大丈夫でしょう。それに、魔王様も新しい力を手に入れたとか?」

「ふふふ、流石に耳が早いのぅ。この力があれば、手駒を増やすのも簡単だからな」

「そうでしたか」

悪党二人がニヤリと笑う。


「ところで、システムとやらからは、次の標的を送られてないのか?」

「はい。最近は大人しくなっております。どうしますか? 勝手にどこかへ攻め込みますか?」

「いや、止めておこう。システムからの指示が無い以上、我々が独自に動いたら則処刑の対象だろう」

「魔王様なら何とかなるのでは、無いのですか?」

「まぁな」

「それでしたら!」

「いや、やはりここは待ちの一手だな。あ、でも、性能テストとして、彼らを使うのは許可するぞ?」

「承知!」

ガナックはその場にひれ伏した。


「その、性能のテストとやらに、我も同行しよう」

「ふむ、聖剣か。良きに計らえ」

「はっ! ガナック殿、よろしくお頼み申す」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

魔王軍の全戦力が整ったようであった。




◆コモドオオドラゴンを撃破せよ!


「おっ肉! おっ肉!」

リリは欲望の歌を歌いながらスキップしていた。

「リリさん、危ないっすよ!」

「はーいなの!」

しばらく進むと、先程と同じ様に光の扉が現れた。


「ここですね。準備は良いですか?」

全員が頷くと、サースケは光の扉をくぐった。


扉の先は岩ばかりの場所で開けていた。

「変なところですね」

「あそこに人が立っているっす」

そこには、砂漠の民の様な出で立ちの男が立っていた。



「君達が我輩の望みを叶えてくれる者達かな?」

(確か、肯定するのですよね)

「はい」

「よし! ならば、あの岩のどれかがコモドオオドラゴンの擬態だ。それを見つけてその肉を持ってきてくれ」

「えっと、地面に埋まっている奴も対象っすか?」

「完全に埋まっている物は無視でよい。一部でも出ていれば、それは対象だ」


「以外と面倒ですね」

「地味ですね」

リリは腕をぐるぐると回し、

「一気に殺っちゃうの!」

「な、何をするのですか?」

「リリの究極氷魔法で一気に撃破なの!」

「えっ? まさかあれっすか?」


サースケ達が呆気に取られているうちに、リリは詠唱を始めた。

「氷を司る精霊よ、我が名の下に集いその力を示せ! 我が名はリリ。ここに集いし精霊に命ずる! 目の前に広がる色彩豊かな世界を白銀に変えよ! 全ての動きを止める輝きを!」

一気に周囲の温度が下がる。

「アブソリュートゼロ!」


ピキピキピキピキピキ!


周囲が凍って真っ白になった。

「あれ? 魔法が効かないの?」

何時までたっても、何も変わらない大地。

「どうやら、その様ですね」

「リリさん、氷を解除して欲しいっす」

「えー、ガッカリなの」


リリはボヤキながら氷魔法を解除した。

「一つ一つ叩いて行くしかないか?」

「とりあえず始めてるっす、何か思いついたら教えて欲しいっす」

そう言って、サーイゾーは手当たり次第に殴りかかっていた。

「おで、やる」

コスーケも続いていた。

「んじゃ、リリも!」

風魔法に乗って、順番に殴っていった。


「一番奥のが当たりとか、中々意地が悪いな」

「ですねぇ」

「・・・・・」

「おで、つかれた」

「むすー」


数時間後サースケ達は全ての岩を殴り、ようやく当たりを引いた。

引いたというか、残ったというか。

コモドオオドラゴンを一撃で葬ると、新鮮な肉をドロップした。

その瞬間最初に居た男が立っていた。

「ありがたい。これはまさしく新鮮な肉! さぁ、それを渡してくれますか?」

(これが最後の選択肢か)


「はい。差し上げます」

「えー、なの!」

リリは不満でいっぱいだった。

「ん? そちらのお嬢さんは渡さないと言っておりますか?」

サースケは、

「いいえ、不満があるだけなので、渡さないわけではありません。というか、どうぞ、持って行って下さい」

そう言って、肉を手渡した。



「ありがとうございます。これで、美味しいドラゴン料理が作れます。お礼にこの先にある私たちの街に来たら、この肉で料理を差し上げます」

そう言って、料理引換券をもらった。

「ありがとうございます」

リリは未練たらたらであった。


「いいもん。お兄ちゃんに美味しいもの作って貰うんだから」

「ですが、既に数時間が経過しています、もう寝てしまっているのでは?」

「えー、それは無いの」

サースケ達は大騒ぎで光の扉をくぐった。

「あれ? 入ってからそんなに時間が経っていない?」

「いや、アレを見て、家が三軒も建っているわ」

「もしかして、数時間ではなく、数日経ったとかっすか?」

サースケ達は足早にコテージへ向けて移動した。

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