第十五話 新たな力を探して
◆直哉の家
(ふぅ、まだここに住んでからそんなに経ってないけれど、帰って来たって実感あるな)
「ただいまなの!」
「た、ただいま戻りました」
「三人ともお帰りなさい」
ミーファがご飯の支度をしながら出迎えてくれた。
「ただいま!」
三人は挨拶を済ませ、お風呂へ向かった。
直哉は湯船に浸かりながら、ステータスを見て今後どうするかを考えていた
ステータス画面
ナオヤ
鍛冶職人
冒険者ランク2
Lv:11
最大HP:100+200
最大MP:140+200
力:10+20
体力:8+20
知力:8+40
素早さ:8
器用さ:8
運:8+10
ボーナス 15
スキルポイント 6
スキル
戦士系:0
○縦斬りLv2
○横斬りLv3
○リジェネLv1
○得意武器(片手剣:Lv1)
四連撃Lv1
魔術師系:0
○魔力吸収Lv1
商人系:0
○目利きLv1
鍛冶系:4
武具作成Lv4
アクセサリ作成Lv1
大工Lv3
冶金Lv3
精錬Lv3
アイテム作成Lv3
武具修理Lv2
アクセサリ修理Lv1
家具修理Lv1
(今回はレベルは上がったものの、スキルが全然上がらなかったな。唯一上がったのがアイテム作成か。おや? アイテムの形状等が変えられそうだな)
直哉は、アイテム作成から→回復薬→形状変化(タブレット)→実行
(おぉ、タブレット型の回復薬が出来たか・・・頭がクラクラしてきたな。そろそろ出るか)
一階に戻ると、みんな席についており直哉が来るのを待っていた。
「遅いの」
リリが不満の声を上げた。どうやら、肉料理を前に待ちぼうけを食っていたようだ。
「それでは、いただきましょう」
「いただきます」
みんなでワイワイと食べ始めた。
「そういえばミーファさん、俺が居ない間もハーブを倉庫に入れてくれてありがとうございます。おかげで助かりました」
「入れても入れても無くなるので、心配だったのですが、無事使えていたのですね、安心しました」
ハーブを育てている土壌は、特殊な肥料がかかっているらしく、通常よりも早く育ってくれる。
作物も早く良いものが出来るので、食卓には新鮮な野菜が並んでいた。
「そういえば、直哉さんが持って帰ってきたジャイアントトードの肉は酒場で好評みたいね」
ミーファはイリーナから仕入れた情報を流してくれた。
「酒場に肉と手形を持って行った時の主人の顔が忘れられないよ」
直哉達が持ち帰ったとき、酒場は喚起の渦に巻き込まれた。
酒場の主人からは、名誉顧問の肩書きを貰い、その場にいた冒険者達からは絶賛の嵐であった。
「そいえば、リカード王子と別れるときも凄かったですね」
「お兄ちゃんに抱きついて、友よ見捨てるのか! って、訳がわからなかったの」
フィリアとリリは、城へ向かう分かれ道での出来事を思い出していた。
「ゴンゾーさんが、慌てて止めにきていたのが印象的だったよね」
リカードは近衛兵見習いの死や腕の事もあり、身内だけでは城に帰り辛く直哉達を一緒に城まで来て欲しかったので、自分の家に帰ると行った時リカードは友を見捨てるのかと凄い剣幕で止めに入った。
街中での出来事で、多数の目撃者がおり直哉としても恥ずかしかった。
結局、近いうちに会いに行くということで、その場は落ち着いた。
その後の冒険者ギルドでは、街中での目撃されたことにより、王子との冒険が発覚して騒然となり、イリーナが慌てて直哉達を奥へ連れ去った。
「まったく、あなたたちは第一王女の保護という目的があるのに、あんなに目立ってどうするの?」
と、怒られる始末であった。その後冒険の顛末を話して行くと、
「いつもながら、驚かされっぱなしね。王子様とも繋がりを持つなんて、普通の冒険者ではまずありえない事ですよ」
「ですよね」
直哉は自分でも信じられないという顔をしながら、しれっと言った。
「でも、近衛兵見習いの死は看過出来ない問題ね。後で城の方から何らかのアクションがあるのかしら?」
そう言いながら、冒険で得たドロップアイテムやクエストの清算をしてくれた。
バルグフルに戻ってきてからの事を思い出しながら、
「しばらくは、鍛冶スキルの鍛練に本腰を入れるかな」
と、呟いた。
その言葉にリリが、
「私達の武具を新調してくれるの?」
「真ですか?」
フィリアと共に迫ってきた。
「そうだね、俺たちの武具を新しくするために、素材を集めに行くのも良いね」
直哉はそう言って候補を出して行った。
「やっぱり、色々な属性を付けたいよね、アイテム作成のレベルが上がれば、魔法石を作ることが出来るようになるっぽいし、その素材も欲しいな」
「でも、どこで取れるのでしょうか?」
「うーん、イリーナさんに聞いてみるのが一番よさそうだね」
「じゃぁ、それまではこのまま鍛練なの!」
そう言ってこの話を打ち切った。
◆直哉の家 鍛練場
いつも通りの鍛練を行っている三人。
リリは物足りなさを感じていた。そう感じている事を直哉は感じ取り、何か良い方法が無いか考えていた。
「リリの攻撃速度について行きつつ、さらに攻撃するか」
「何かあるの?」
リリはワクワクしながら聞いてきた。
「今はまだ無いけど、考えていることはあるよ」
三人に足りない遠距離物理攻撃も今後の課題になりそうだった。
そもそも、三人の中でリリの攻撃力はずば抜けており、かなり間をあけて、直哉とフィリアは同じぐらいの強さになっていた。
「きゃぁ。参りました」
フィリアは肩で息をしながら負けを認めていた。
直哉の方は防御がしっかりとしているため、簡単にはやられないが決定力不足なのは否めなかった。
短距離に持ち込ませないために槍やハルバード、ロングソードなど色々と試してみたものの、なかなか思い通りの結果にはならなかった。
「やはり、遠距離攻撃が無いと厳しいな」
直哉がつぶやくと、リリが、
「オークが使っていたやつ?」
「うん、あれ。まだザックリとしか考えてないけど、とりあえず造り始めてみる」
直哉は飛び道具を武器にするため、スキルを使った。
現在のスキルで出来るのは、弓とクロスボウであった。
直哉はクロスボウを造ってみた。まずは普通のクロスボウ。
「とりあえず、普通のクロスボウ。撃ってみるか。的を反対の壁に造って」
直哉は弓を引き矢をセットして構えた。目標は鍛練場の端っこに造った的。
狙いを定め引き金を引いた。スカ!
鍛練場の壁に当たり床に落ちた。
「リリも、リリもやる!」
直哉は弓と矢をセットして、リリに手渡した。
リリは腕を水平に出し矢を発射した。
ズキュン。ガリガリガリ。
どうやって飛んだのか、床をガリガリ削りながら飛んでいった。
「ありゃ。難しいね」
「フィリアも撃ってみる?」
「是非!」
弓と矢をセットして、フィリアに渡した。
「えい!」
フィリアの放った矢は的に命中した。
「おぉ!」
「凄いの!」
何度か試してみて、直哉は数回当て、リリはゼロ、フィリアは全て当てるという結果になった。
直哉は床を修理しクロスボウの改良に入った。
一度に撃てる矢の本数を増やし連続で撃てるようにしたクロスボウ、クロスボウ連。
一撃のダメージを増すために弓の部分を強化したクロスボウ、クロスボウ剛。
防具の中に隠しておく、クロスボウ陰。
そもそも、矢の装塡に時間がかかる上、矢そのものがかさばるという問題点があった。
そして命中性。屋内でココまで当てられないリリと直哉では実戦では使い物にならないのは明白であった。
次に弓と矢を造ってみたが、弓道をやったことの無い直哉はもちろん、フィリアも上手く飛ばすことが出来なかった。
「さて、どうするかな?」
(ぱっと思いついたのは銃だけど、そんなカテゴリーは無いから造るのは困難だよな)
フィリアの小手の部分に、クロスボウ連とクロスボウ陰を組み合わせる形の武器を追加した。
矢を入れておく場所は、小手に付いた着脱式の箱で中に二十本の矢が入っていた。
予備として反対の小手に一つと腰に四つの換えの箱を取り付けた。
フィリアが新しい装備を試していると、転移室からヘーパイストスがリカードとゴンゾーを連れてやってきた。
「おや? マスターとリカード? さん? にゴンゾーさん」
直哉はあっけに取られながらも、
「珍しい組み合わせですね」
「おぉ! 直哉じゃないか! ここは直哉の工房か?」
リカードは周りを見回した。
ゴンゾーも周りを見て、
「工房というよりは鍛練場の様ですな」
と答えを導き出した。
「なんと! 城の鍛練場より快適ではないか!」
「屋外ではないのに、この光量と風があるのは魔法石をふんだんに使っておるのかな?」
二人の言葉に直哉は、
「一番効率の良い配置を行っているのですよ!」
そう言いながら説明した。
リリとフィリアはヘーパイストスと話し始めた。そこで直哉はリカードに
「ところで、今日はどうしたのですか? 我が家の見学ですか?」
三人の来た理由がわからず、聞いてみた。
「そうだった、実は直哉に頼みたいことがあったんだ」
リカードはそう言って右腕を出した。
「城に帰った後、治療士にここまでは治してもらえたが、この先は無理と言われた」
その腕は、ひじの部分から先がなくなっていた。
「そこで、私の義手を作成してもらおうと思い鍛冶ギルドに行ったら、マスターがそれならお前に造ってもらおうって事でココにやってきた」
リカードはさらっと言うが、
「いやいや、俺には義手なんて造れませんよ?」
直哉は、スキル一覧に義手が無いことは確認済みで、無理なことを告げると、
「本当は王国の方から正式に発表があってからこの品を渡そうと思ったのだが、その発表の時に片腕では色々と不都合が生じるらしい」
リカードはそう言って、ゴンゾーに目配せした。
「王子を救ってくれた感謝の品として、この本を王国より贈呈しよう」
と言ってゴンゾーは一冊の本を取り出した。
直哉は戸惑いながらもその本を受け取り、表紙を見ると難しい文字で書かれていたがアイテム蘭を確認すると『サイボーグの書』となっていた。
「その本は、我々の祖先が滅ぼした暗黒の王国で盛んに使われていた技術で、人間を造り出す技術らしい。その中に装備した人の意志を読み取り動かせる腕があるというのだ、その栞が挟んであるページだ」
直哉はそのページを開くと、書いてある文字はサッパリ読めないのに意味は頭の中に入ってきた。
(なんだ、この感覚は! そういえば、ゲーム内に読むだけでスキルが覚えられる『グリモアの書』があった気がする)
「ふぅ。わかりました」
直哉がスキルを確認すると、確かにサイボーグ関連の項目が増えていた。しかし途中から読んだので、必要スキルが足りず義肢作成スキルは使用不能になっていた。
「どうやら、この本を最初から読んでいかないと使えないようです、集中して読みますので、リリの鍛練を見ていてもらえると助かります」
直哉はそう言って本を読み始めようとしたので、
「まてまて、まだ話の途中だ」
リカードが慌てて止めた。
直哉は新しいスキルが手に入りそうなのでワクワクしていると、
「リリちゃんとフィリアさんの相手は我々と近衛兵の二人が努めるから問題無いが、あの二人はそろそろこの家に到着する予定なのだが、入ってこられるのかな?」
リカードがそう聞くと、
「登録してない人が来ると保安石が対応します。扉は基本的に登録した者が直接開けないと入れません、無理矢理入ろうとすると応戦します」
「フム、それでは我々の登録をお願いしよう。それと、私の部屋から直通の転移扉を用意して貰いたい」
直哉は少し考えながら、
「宿泊場所も用意した方が良いですか?」
「いや、私室から直通にするから寝る時は帰るよ」
「わかりました、マスター! 王子の部屋までの転移石をお願いします」
リリ達と話していたヘーパイストスに注文を出した。
「わかったが、転移石は貴重品なので値が張るぞ?」
「請求書はリカードさんへお願いします」
ヘーパイストスが転移石を取りに行っている間に、転移部屋の造りを変え王子の部屋への扉を付け足した。
その後、リカードとゴンゾーを保安石に登録し、共有スペース部分への立ち入りを許可した。
保安石の現在の状態
登録者
直哉
リリ
イリーナ
ヘーパイストス
ヘーニル
ラウラ
フィリア
ミーファ
リカード
ゴンゾー
風呂・一階・訓練場と各階の階段部分は登録者全員
ただし、
風呂は男女別になっておりそれぞれ設定されている。
訓練場横の転移部屋から転移する扉も、各扉の転移先の者しか開けられないようにしてある。
二階:ヘーニル・ヘーパイストス・イリーナ・ラウラを登録。
三階:ミーファ・フィリアを登録。
四階:直哉・リリを登録。
「こんな所ですかね?」
直哉は、各種設定と転移用の扉を造り全ての作業を速効で終わらせた。
「うむ、では義手が出来るまで身体を動かしますか!」
リカードはそう言って、ゴンゾーとリリとフィリアの四人で鍛練を始めた。
ヘーパイストスは用が済んだとばかり帰って行った。
直哉は鍛練の行われている横で『サイボーグの書』を読み始めた。