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第百三十二話 火の試練

◆火の精霊からの試練


「うーん。このままじゃ、良くわからないなぁ」

直哉は、

「この腕輪がその証です」

「ふーん。ちなみに、何か思い出した?」

「ん? どういう事ですか?」

火の精霊は少し苛立ったような感じで、

「私たちの事だよ!」

「カソードとの誓い? みんなを解放するって事?」

「他には?」

「うーん?」

しばらく考えていた直哉に、


「まずは、そこからか」

(きっと、システムによって制限されているのね。それなら、強制的に思い出させるしかないか。今の私の権限じゃ、直接教えることが出来ないし。あー、もう! 面倒ね)

急に黙り込んだ火の精霊に不安を感じていたが、

「何か、忘れてしまっているのだろうか? 良ければ、教えてもらえないか?」

直哉は聞いてみた。


「まずは、貴方の力を見ます。一人で戦ってくださいね」

火の精霊は魔方陣を展開した。

「な、何ですと?」

直哉が返事をする前に魔物が召還されていた。

「あれは、ファイヤーゴーレム!?」

「フムフム、一応敵の知識はあるようね。さて、どうするの? 戦う? 止める?」

いきなり魔物を召喚した火の精霊に違和感を覚えた直哉は、

「私が戦えば、答えを教えてくれるのですか?」

「さぁ? それは私の口からは言えないよ」


直哉の傍に居たリリが、

「お兄ちゃんはリリが守るの! だから、リリがそれと戦うの!」

「うーん。これは彼の力を試したいのよ。貴方が彼の力というのであれば良いけれど、そうでないのならば残念だけど認められないわ。」


「でもっ」

食い下がるリリに、

「リリ、下がっていてくれ、どうやら俺に対する試練のようだ」

直哉は意を決した。

「さぁ、やろう!」

直哉は剣と盾を装備し、マリオネットで回復用の球と繋がった。

「準備は良いかしら?」

「問題無い」



火の精霊は直哉を中へ飛ばした。

中に居たファイヤーゴーレムは敵を見つけて、雄叫びを上げた。

「グォォォォォォォォォォ!」

(ん? ゴーレムって叫べるの?)

直哉はフト疑問に思いながら戦いを始めた。



ゴーレムから巻き起こる炎を避けながら、ゴーレムに突き進む。

「はぁ!」


ガキン!


「いつつつ」

硬い皮膚に阻まれ、危うく武器を落としそうになっていたが、何とか体勢を立て直した。

そこへ、

「ギャォ!」

頭上からの振り下ろし攻撃が行われた。

直哉の身体ほどの腕が、驚異的な速度で振り降ろされる。

「ちっ!」

直哉は横っ飛びで回避する。


体勢を立て直そうと顔を上げると、そこへ炎が飛んで来ていた。

「なに!?」

直哉は更に飛び退き、完全に体勢が崩れてしまった。

直哉は転がりながら、距離を取った。

(避けているだけじゃ、試練にならないよな)

距離を取ってから立ち上がると一気に距離を詰めるべく掛けだした。

「八連撃! 全て急所攻撃!」


迫り来る炎を回避しながら攻撃を加えていった。

(むっ、急所に入ってないな。手応えがなさ過ぎる)

そう思った矢先に先程と同じで腕が振り上げられた。

(あれは、さっきの? それなら避ける範囲を最小限にして反撃出来る!)

その時直哉は背中がぞくっとした。

(いや、何かがおかしい。やっぱり思いっきり避けよう)

その一瞬の判断ミスが大きな隙となってゴーレムの攻撃を受けてしまう。



「ぐぁっ!」

直哉は、燃える拳を受け、火傷しながら吹っ飛ばされていた。

「お兄ちゃん!」

リリは今すぐ飛び出して行きそうであったが、血が出る程に唇を噛みしめ、握られた手の平からも血がにじんでいた。

(ここまでのようですね)

火の精霊はガッカリしながら声を掛けようとしたが、

「まだまだ!」

直哉は、火傷と骨折した身体をリジェネを使って回復しながら立ち上がっていた。



(ふむ、心が折れていないのであれば、続けても問題なさそうですね)

火の精霊はそう思いながら直哉の戦いを見ていた。

(ちっ、カソードの時はどうやって倒したっけ? 確か、氷の究極魔法を乱発して瞬殺した様な気がするな)

「おっと!」

考え事をしている直哉に容赦なく連続攻撃を繰り返すゴーレム。

(あれ? でも、その後でもう一度戦ったような気がしてきたぞ? 何だろう? 大切な事を言われたような気がするのに、(もや)がかかっている感じで思い出せないや)


ゴーレムの動きに馴れてきた直哉は、回避をパターン化していた。

(これって、魔術師の試練だよな?でもやってることは、回避を重視している。これじゃあ、駄目だよな。けど、俺が使える攻撃魔法はほとんどないぞ?さて、どうしたことか)



直哉の回避を見て、

(成る程、カソードの時と同じ動きだな。魔力の放出は微量だが、あれを思い出してくれるかな?)

火の精霊がニヤリと笑うと、一体だったゴーレムが二体に増えた。

「まじか!」

直哉は叫んだが、攻撃を受けること無く回避していた。

(これは、昔、体験したぞ! たしか、ゴーレムの核から流れる魔力を感じる訓練だったぞ)

昔を思い出していた。




◆カソード時代


「お前が火の精霊か? 俺にその力をよこせ!」

カソードの言い方に愕然としながら、

「お、面白い人間ね」

「そんな事はどうでも良い。早くよこせ!」

火の精霊はムッとして、

「なんか、嫌な感じ! ・・・・・?」


その時、カソードは魔力を高め始めた。

「面倒だな。消滅させるか?」

ガクガクブルブル

「や、や、やめ・・・」

火の精霊は怯え始めた。

「だから、早くよこせ!」


「そ、それなら、試練を受けてもらいます」

カソードは怒りながら、

「面倒な!」

「ひぃぃぃぃ」

「まぁ、良いか。俺を楽しませろよ!」


火の精霊はシステムから命令されている試練を実行した。

「ゴーレムの核を見つけて、破壊するか取り出してください」

ファイヤーゴーレム10体を一気に投入した。

「フン、面倒だな。氷の精霊から貰った力を試して見るか」

魔力を集中させ詠唱を開始した。

「氷を司る精霊よ、我が名の下に集いその力を示せ! 我が名はカソード。ここに集いし精霊に命ずる! 目の前に広がる色彩豊かな世界を白銀に変えよ! 全ての動きを止める輝きを!」

物凄い魔力が吹き荒れる、

「アブソリュートゼロ!」


ピキピキピキピキ


10体のファイヤーゴーレムは完全に氷結し、キラメキながら消滅した。


「なっ!?」

一瞬で勝負が付いたのを見た火の精霊は、

「いやいやいや、雑! 倒し方、雑!」

それを聞いたカソードは、

「あん? 倒し方なんて、どうでも良いだろう?」

「それが、駄目なんですよ」

「ちっ、面倒な」

「もう一度言います。ゴーレムの核を見つけてそれだけを破壊するか取り出してください」


火の精霊はもう一度ゴーレムを10体出した。

「核を見つけるだと?」

カソードはボヤキながら回避していた。

「へぇ、回避も出来るんだ」

「ちっ、当たり前だろう。攻撃を回避しながら魔法を叩き込む事が出来なければ、効率良くレベル上げが出来ないだろう!」

カソードは話しながら、目に魔力を集中させて、ゴーレムに流れる操作の魔力を読み取っていた。


「そこか!」

カソードは魔力で造り出した剣で、ゴーレムの核を突き刺した。

「なっ、魔力の剣!?」

火の精霊は、通常では出来ないことを平然とやってのけるカソードに恐怖しながらも、希望を見出していた。

「後は!」

カソードは全てのゴーレムを破壊した。

「これで、良いな」



「は、はい。火の究極魔法を授けます」

火の精霊はシステムに与えられた権限の通りに力を与えた。

カソードは力を確認して、

「そう言えば、火と爆発で精霊が違うのは、何故だ?」

「そ、それは、私の権限では話すことが出来ません」

「ん? どう言う事だ?」

「私たちの力は、システムによって制限されているのです」


「何だそりゃ、つまらんな」

カソードはガッカリした表情で、

「じゃぁ、俺がそのシステムから開放してやるよ」

「えっ!?」

「俺の代で無理なら、俺の子孫にやらせるさ。転生したら腕輪に記憶も込められるのだよな」

「はい。出来るはずです」

「それじゃぁ、究極魔法の解放と記憶を入れておいてやるか」

カソードはそう言いながら火の精霊の元を去って行った。




◆火の試練場


直哉が気が付くと、カソードの腕輪が光り輝いていた。

「そうか、そうだったな」

直哉は、カソードの腕輪から魔力制御の力を引き出した。

「なるほど、あれが魔力の流れ。と、言う事はあれが核か!」

持っていた剣を仕舞い、新たに魔力の剣を造り出した。

「これが、魔力の剣か。中々良いな。急所攻撃!」

そして、襲い掛かってくるゴーレムの核を破壊した。

「ふぅ」


二体のゴーレムを倒して戻ってきた。

「ふぅ、これで良いですか?」

「もちろん合格ですよ」

「お兄ちゃん!」

直哉が無事に戻ってきたので、リリは飛びついてきた。

「おっとっと。危ないぞリリ。ん? 血が出ているじゃないか、ほら、回復薬で回復しなさい」

直哉はリリに回復薬を渡すと、

「もー、物凄く心配したの!」

「ん? ごめんよ。でも強くなったよ」


火の精霊は魔力の剣を見て、

「思い出してくれたようね」

「あぁ、全部思い出した。そして、ごめん。まだ解放することが出来てない」

「諦めるの?」

「いいや。俺は諦めない。今はまだ、手がかりも無いけど、カソードの辿った道をなぞって見るよ。とりあえずは四大精霊からだね」

「お願いね」

火の精霊は直哉に力を授けた。

「任された!」

直哉はそう言って、リリを連れて火山を後にした。




◆ルグニア城 アシュリーの私室


部屋の中には、アシュリーとエリザが仲良く話していた。

「そういうわけで、わらわは直哉殿と直哉殿の世界へ行くことに決めたのじゃ」

「そう。おめでとうエリザ! ようやく直哉さんに思いを告げたのね」

そう言いながら、アシュリーの目から涙が流れ落ちた。

「姉上?」

「はっ!? 何でもありませんよ」

エリザは気づいていた。アシュリーも直哉に恋している事に。

「やはり、姉上も直哉殿の事ふが」

エリザはアシュリーに口を押さえられた。

「それ以上は言ってはなりません」


エリザは手を振り払い、

「いいえ、言わせて貰うのじゃ。姉上は直哉殿を好いておる。だから涙を流してしまったのじゃ」

「違う!」

「違わないのじゃ」

アシュリーは泣きながら、

「私は、ルグニアの王女アシュリーなの! 他の世界には行けないわ! それは、直哉さんの足枷にしかならない。だから、だから・・・・」

「それ以上は言えないのじゃ。直哉殿に相談して見るのじゃ。きっと、良い案を出してくれるのじゃ」

「良いのかしら?」

「わらわは、大賛成じゃ!」

アシュリーは泣きながらエリザの胸に顔を埋めるのであった。




◆システム


「とりあえず資源の確保に成功したから、南の島に私専用の楽園を造ろうっと」

そこへ、ガナックからコールが入った。

「ん? ガナック? 何かしら?」

「お忙しいところ、失礼します。今回のバルグ侵攻は如何でした?」

「完璧よ! ソラティアの分も合わせればだいぶ資源を確保できたわ。ありがとう」

「でしたら、以前より所望していた褒美を頂きたいのですが」

システムはガナックの褒美を思い出していた。


「確か、これね」

コンソールを操作してガナックの望むものを送った。

「あぁ! これです。ありがとうございます」

「うむ。また、何かあったら連絡するね」

「はい。その時は微力を尽くします」

「ばいばい!」


そう言って、通信を切った。

「それにしても、あんな低級の魔物の一覧なんてどうするのかしら? まぁ、あの程度ならどれだけ造り出されても資源は減らないし、倒されればその分増えるから、私としては問題ないのだけどね。まぁ、良いか」



ガナックはほくそ笑んでいた。

「ふっふっふ。この一覧は反逆の第一歩だ。ようやくシステムに直接アクセスするアイテムを手に入れたぞ。これを使って、我が望みを叶えるとするか。そして、使い終わったら直哉にでもあげるとするか」

ガナックはブツブツと言いながら自分の部屋に閉じこもった。




◆ルグニア 直哉の屋敷


「ただいま!」

「ただいまなの!」

直哉とリリが屋敷へ戻ると、使用人たちが出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ」

バルグフルとの行き来の話は、使用人との話し合いの結果、ドラキニガルのみがバルグフルへ移住し、残りの者はルグニアで働くことになった。


「直哉様お帰りなさいませ」

「直哉、先に食ってるぞ!」

「あー。リリも食べたいの! 食べ終わったら、リリにもあれ教えて欲しいの!」

リリは、食卓に飛び込みながら直哉におねだりしていた。

「まずは、手を洗ってからだろう。食べ終わったら、みんなに教えるよ」

「はーいなの!」

直哉とリリの会話を不思議に思ったフィリアは、

「何があったのですか?」

「それも、後で一緒に話すよ」

そう言って、手を洗いに行った。

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