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第百二十七話 問題解決のための下準備

◆バルグフル城


直哉達は城に戻り、謁見の間にてリカードに今回の件について報告した。

謁見の間には、直哉とリカードとシンディアとアレク、そして伯爵二名と近衛騎士、ラナ達近衛兵が集まっていた。

リリ達は直哉伯爵領に帰り、新しい事業の手伝いをしていた。

「つまり、溶岩による心配は無くなった訳だな?」

「正確には、地下を流れる溶岩についてです」

直哉の言い方にリカードは、

「どういう事だ?」

「噴火が発生した場合、地上を溶岩が流れてくる可能性があります」

「その対策は?」

「今のところは何もしていません」

リカードは顎に手を当てて考えていた。


「仮に地上を流れてきた場合、直哉ならどうやって防ごうとするのだ?」

「俺なら、ゲートで何処かへ転送させますね」

「なるほど」

リカードが横にいるシンディアに話しかけた。

「お前ならどうする?」

「地下を流れる溶岩に合流させます」

「なるほど」


「直哉よ、地下の溶岩トンネルに余裕はあるのか?」

直哉は掘り下げたトンネルの場所を思い出しながら、

「恐らく余裕があると思います」

「恐らく?」

「はい。拡張したのは報告した様に、採石した辺りからなので、それ以降であれは問題ないかと思います」

リカードは手を打ち、

「ならば、その辺りで地下へ通じる穴を掘るか」


リカードの決定にシンディアが、

「直ちに手配いたしましょう。どの辺から掘りますか?」

「ん? それはシンディアが知っているのでは?」

シンディアは直哉を見て、

「いいえ。直哉伯爵は?」

直哉は首を横に振りながら、

「採石した辺りは案内出来ますが、溶岩の流れまではわかりませんよ?」


シンディアは落ち込みながら、

「では、どうしたら・・・・」

「これ以上良い案が出ないか? 他に誰か意見はあるか?」

リカードの質問に、謁見の間は騒然となっていた。


騒然となっている中、兵士が入ってきて、

「ご報告いたします。ルグニアより派遣されていた技師達が被害状況を伝えに参りました」

騒然としていた謁見の間は、一気に静まり返った。

「よし、通せ!」

(ん? ルグニアからの技師?)


直哉が興味を示し入り口を見ると、見覚えのある者が入ってきた。

「ご報告します。先日の襲撃で、対火山灰用の中枢部及び、対火山弾用の外周部分が破損しました」

またも、ざわめきが起こるが、

「中枢部が破損すると、どうなるのだ?」

「動作いたしません」

リカードは困った顔で、直哉の方を見た。その視線につられベドジフが直哉を見て、

「お、親方様?」

「ベドジフさん、お久しぶりです」

直哉が手を上げて挨拶した。


「あれ? ソラティアへ向かったのではなかったのですか?」

「色々あって、戻って来たのですよ」

ベドジフは大変驚いて、

「僕は、親方様が出てから直ぐにバルグフルへ来たのですがもう追いついたのですか? あぁ! 親方様はソラティアに行った振りをして、直ぐに折り返したのですね? 親方様は意外とお茶目ですね!」

ベドジフは勝手に推測して納得していた。

(まぁ、そう言う事にしておこう)


直哉とベドジフの会話を聞いていたリカードは、

「それで、修理の目処は?」

「職人が足りないし、持ってきた素材では中枢部を修理出来ません」

その報告をしていたベドジフを見て、

「俺が見てみます。火山弾用の方は元気な方々で直せるの?」

「はい。外周部は若い奴等で直せます」


直哉はリカードを見て、

「溶岩の話は皆さんにお任せします。俺は、防御施設を見てきますよ」

「そうだな、直哉には負担をかけるがよろしく頼む」

リカードの言葉を聞き、

「それじゃあリカード、行ってくるよ」

「頼む。溶岩についてはシンディア達と話を詰めておく」

「あぁ!」


「それじゃぁ、行こうか」

直哉はベドジフを連れて城を出て、若い職人達と会った。

「ベドジフ親方! 如何でした? そちらの方は?」

若い職人達は直哉の顔を見て、

「ま、まさか!」

「勇者様?」

「伯爵様!」


ベドジフが前に出て、

「そうだ! 僕の親方様が僕達の仕事を見に来てくださったのだ! しかも中枢部の破損を見てくれるそうだ!」

職人達の士気が上昇した。

「おぉ!」

「それなら、私達は外周部の修理に専念出来るのですね」

「その通りだ! みな、親方様に良い物が見せられる様に、しっかり励みなさい」

ベドジフの激励に、

「はい!」

若い職人達は外周部の修理に向かった。

(なかなか良い関係を築いているな)

直哉はその様子を見て感心していた。



直哉はベドジフと共に破損した中枢部を確認した。

「これは、見事に潰れましたね」

「はい。岩が直撃したと聞いています」

直哉は不安になってベドジフに聞いた。

「そんな耐久度で火山弾を防げるの?」

「これは、火山灰用なので、耐久度は低いのですよ」

直哉は納得して、

「そうか、それなら良いか」

(なぜ、火山灰と火山弾の防御を一緒にしなかったのだろうか?)


直哉は中枢部を見ていると、

「ん? この素材は見たこと無いな」

そう言って、制御部分の素材を取り出すと、

「親方様の見本から、素材や術式を変更していますから」

ベドジフはそう言って、素材や術式を直哉に説明していった。

直哉は説明を聞きながら、壊れた部品を集めて見ていった。



「結構な素材が必要だな。予備は無いの?」

ベドジフは残念そうに、

「残念ながら、バルグフルに持ってきた素材は、破壊されてしまいました」

「持ってきたって事は、ルグニアにはまだあるの?」

「はい。予備の中枢部があります」


直哉はその言葉を聞き、火山までの日数をクエスト項目で確認した。

「残り7日か。よし、ルグニアに取りに行こう」

ベドジフは何を言っているのだろうと首を傾げていたが、

「ついでに、買い物をしてくるか」


直哉はマーリカを呼び出し、嫁達とエリザ、そしてリカードに連絡をとってもらった。

「後は、怪我して修理が手伝えない人は、先に帰ってもらうか」

直哉の指示で、作業が出来なく帰りを希望した者を集めた。

ベドジフは直哉の後を何も言わずに付いて回っていた。


「あー! 見つけたの!」

そう言って、空からリリ達が降りてきた。

ベドジフは驚いて、

「親方様! 空から・・・って、エリザ様? それに、マーリカ様まで、と、言う事はリリ奥方様?」

「こんにちは、なの!」

「おや? お主はルグニアの技師じゃったか?」

リリとエリザがベドジフに声をかけ、マーリカは頭を下げた。


直哉がマーリカに、

「リカードの方は?」

「任せる。との事です」

直哉は頷いてから辺りを見て、

「了解。それより、フィリア達は?」

「ミーファお母さんが、このくそ忙しいのに買い物に行くとは、いい度胸じゃないか! って言ってたの!」

「一応、今回の件は全て伝えましたが、お店の準備が予想よりも忙しく、かなり苛立っておられました」


マーリカの報告に、

「商人ギルドの方から人員は借りられなかったの?」

「今は無理だそうじゃ。自分の店を何とかするのが先じゃと言っておった」

直哉は、

「アシュリー様に相談して見るか」

そう言って、ゲートを開く場所を探した。




◆ルグニア 直哉の屋敷


「ここは? 地下鍛錬場?」

リリは、リフトを操作しに行った。

「ここは、何処ですか?」

直哉に連れられてきた職人達は困惑していた。


「ここは、ルグニアの俺の屋敷の地下です。さぁ、リリのところへ行って、上に上がりましょう」

そう言って、皆を促した。


一階ではちょっとした騒動が起きていた。

「何者かが地下に潜入したようだ!」

「どうしよう!」

「あぁ、もう上がってくる」




リフトが上がってくると、ジンゴロウが武器を構えて待っていた。

「ただいま、ジンゴロウさん。それに、イザベラさんとドラキニガルさん」

直哉の顔を見た三人は、

「伯爵様! お帰りなさいませ!」

そう言って、頭を下げた。


「変わりは無い?」

「はい」

直哉は辺りを見て、

「あれ? サラサさんは?」

「急に地下が騒がしくなったので、不審者が進入したのかと思い、部屋に立て篭もってもらってます」

イザベラの説明に、

「あぁそうか。それは、ごめんなさい」

直哉が頭を下げた。



「それで、任務は果たせたのですか?」

イザベラの質問に、

「あっ! 任務終了の報告をしてないや」

直哉はそう言って焦っていた。

「親方様達は城へ行ってください。僕たちは工房へ行きます。用事が済んだら工房へきてください」

ベドジフは若い職人を連れて屋敷を出て行った。


「伯爵様達もすぐに行きますか?」

「そうだね、アシュリー様には報告も相談もあるから、今から行くよ」

直哉の発言に使用人達は、

(絶対に面倒ごとだな)

と確信していた。




◆ルグニア城


「ゆ、勇者様! 戻って来て頂けたのですね!」

門番の人が感激していた。

「アシュリー様に面会を希望します」

門番は、

「お任せください!」

と言って、城内へ入っていった。

「だから、ここの警備は?」

直哉はボヤキながら門番が帰ってくるのを待っていた。

直哉の後ろには、城への用事がある人が並び始め、混雑し始めていた。



その後、上司と思われる者と帰ってきて、直哉達が城門前の人々を抑えている状況を見てしこたま怒られていた。

「直哉伯爵様。我々の代わりに門を死守していただきありがとうございます」

その言葉を聞いた城門前の人々がざわつき始めた。

「直哉伯爵って、勇者直哉様の事じゃないのか?」

「ゆ、勇者様だって!?」

たちまち勇者コールが巻き起こった。

直哉はその場で手を上げてコールに答えた後、アシュリーの元へ向かっていった。




連れてこられたのは、アシュリーの執務室であった。

「よく戻ってきてくれました」

アシュリーは直哉の顔を見た瞬間、直哉の元へ駆け寄っていた。

「アシュリー様。ただいま戻りました」

アシュリーは直哉を見て、後ろにエリザが居ることを見ると、

「エリザ! 無事で何よりです」

そう言って、エリザを抱きしめた。

(まさか、姉上も直哉殿の事を?)

エリザはそんな事を考えながら、アシュリーとの再開を喜んでいた。



感動の再開が終わって、直哉はソラティアでの出来事を話していった。

「なるほど。と言う事は、レッドムーンは事実上壊滅したと言うことですね」

「はい。そうなります」

アシュリーは、

「これで、全てが片付いたのですね」

直哉がルグニアに来たときの言葉を思い出し、悲しくなっていた。


直哉はアシュリーの様子に気がつかず話を続けた。

「それでですね、バルグフルの話ですが」

バルグフルで起こった魔族の攻撃によるダメージで、支援物資が欲しいことや、人材が欲しいことを伝えると、

「それは、直哉伯爵個人で話を進めてしまっても良いのかしら? 出来れば、バルグフルの公式文書が欲しいですね」

アシュリーの注文に、

「わかりました。この場所をお借りしても良いですか?」

「何をするのですか?」

「バルグフルと繋げます」



アシュリー以下ダライアスキーとエバーズはその場に固まった。

「ど、ど、どういう事ですか?」

直哉はマーリカにリカードと繋いでもらい、直哉の屋敷に待機してもらっていた。

「ゲートマルチ!」

直哉は、アシュリーの執務室と、バルグフルにある直哉の屋敷の転移部屋を繋いだ。

すると、そのゲートから、リカードとシンディア、そしてアンナもやって来た。

「アンナさん!?」

アンナの姿を見てアシュリー達は驚いていた。



「リカード、大体の事は説明した。後はバルグフルの公式文書が欲しいとの事なので、ここからは任せます。食糧支援や人材の確保をお願いします」

「任せておけ!」

直哉はその場をリカード達に任せて、

「俺たちは買い物に出かけるよ。何かあったらマーリカを通して連絡してくれ」

「おう」




◆ルグニアの城下町


「ここも、かなり復興したね」

「そうですね。以前の活気が戻ってきています」

直哉達が商店街に到着すると、

「さぁ、安いよ、安いよ!」

「旨い焼肉串はいかがかな!」

色々な屋台が出ていて、活気付いていた。


「屋台とか出すようになったんだ」

「雪の季節が終わりましたからね」

マーリカの説明に、

「なるほどね。しかし、肉類が多いね。魚とか無いのかな?」

「ここは山国なのじゃ、魚は川魚が居るのじゃが、この時期はまだ禁猟中なのじゃ」

「なるほどね」

(と、言う事は海の幸を持ってくれば商売できそうだな)

直哉は色々な屋台から大量の料理を買い込み、さらには食材や生活用品などを大量に買い込んだ。

「さて、屋敷に戻りますか」

リリの両手には持ちきれないほどの肉の串焼きが握られていた。




◆ルグニア 直哉の屋敷と工房


「お帰りなさいませ!」

使用人たちが一階で待っていてくれた。

「みなさん、ただいま帰りました」

直哉は屋敷に顔を見せた後で、リリ達を置いて工房へ向かった。




「親方様!」

メントールが工房の前で待っていた。

「メントールさん、お久しぶりです」

直哉は挨拶して工房に入っていった。

中には若い職人が多く、直哉が直接知っているのは、メントールとオルドジフ、そして一緒に帰ってきたベドジフだけであった。

残りのメンバーは、ソラティアに向かってくれていた。


そんな中、直哉は心に秘めていた事を伝えたいので、若い職人や、販売員たちも屋敷に来てもらうように伝えて貰っていた。


「そうだ! メントールさん。魔法に強い扉を造りたいのだけど、何か良い素材はないですか?」

直哉は、ゲート用の扉の素材をメントールに聞いていた。

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