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第百二十五話 魔物とは

◆ゴブリンの里


ゴブリンキングの案内で、直哉達はゴブリンの里に着いた。


森の中に、住み家用洞窟の入り口があり、入り口の周囲には広場があり、大きなイノシシが放し飼いされていた。広場には武装したゴブリンが心配そうにこっちを見ていた。


「さて、人の子よ、先ほどの話し嘘ではないだろうな」

ゴブリンキングが話しかけてきた。

直哉は肯くと、先ほどしまった巨大なイノシシを取りだした。

「これで、全部ですね」

それを見たゴブリンキングが、

「コレとコレはうちのだ。他のは野生のイノシシだな」

そう言って、イノシシの耳の裏を見せてくれた。

「これは、イヤリング?」


そう、緑色の大きなイヤリングが付いていた。

「このイヤリングは我々同盟国の所有物である証なのだ。他のイノシシには付いていた形跡もないため、野生のイノシシとなるのだ」

「なるほど。それなら、全てのイノシシをお渡ししましょうか? それとも、他の食材が良いですか?」

「そうじゃのう」


そう言って、リリ達の方を見た。

その視線を追った直哉は静かに剣を取り出した。

「嫁に手を出すのであれば死を覚悟してもらいます」

ゴブリン達は騒ぎ始めた。

「いや、そんなつもりは無かった。すまぬ」

ゴブリンキングは頭を下げた。

そこへ、


「おいおい! ゴブリンの野郎、人間に頭下げてるぞ!?」

「ぎゃはははは、だっせぇ!」

声のした方を見ると、コボルトとオークがやってきていた。

(キングが一匹に雑魚十匹ずつだな)

直哉が戦力を確認していると、オークキングがやってきてシンディアの匂いを嗅ぎ始めた。

「ぐへへ、やっぱり人間は旨そうだな!」


直哉はその姿を見た瞬間怒りを露わにして、

「リリ! ラリーナ! 解放しなさい!」

「わかったの!」

「了解! シロ!」

「ワン!」

「マリオネット!」

リリはドラゴンへ、ラリーナとシロは銀王へ、そして直哉はマリオネットで最大本数の剣をオーク達に突きつけた。



突然現れた銀王や剣、そしてドラゴンにオーク、コボルト、ゴブリンは竦みあがっていた。

「ひ、ひぃぃぃぃ」

情けない声を上げながらその場に倒れこんだ。

「ゆ、許してください」

オークキングが服従を示した。

「二度は言いませんよ?」

そう言って剣を戻すと、リリとフィリアは元の姿に戻った。


「さて、どうしますか?」

ゴブリンキングは怯えながら、

「助けていただけるのであれば、何もいりません」

「嫁にちょっかいを出さなければ怒りませんよ」

したっぱ達は完全に竦み上がっているし、同盟国のキング達も固まっていた。

「そもそも、怒ったのはそこのオークに対してですから。ゴブリンさんには敵対の意思はありませんよ。今のところは」


「我々としても、殺さないでくれるのであれば問題ありません」

「では、約束通りイノシシをお返しします。お詫びの品は、野生のイノシシが良いですか? 海鮮物が良いですか? 調理済みの物が良いですか?」

そう言って、イカとカニの切り身、そして鍋料理を出した。


ゴブリンキングは驚いていたが、

「味を見ても良いか?」

「どうぞ。海鮮物は焼くか煮れば美味しくなりますよ」

鍋料理を器に入れて、食べて見せた後で、キングに料理を渡した。

キングは恐る恐る口に運び一口なめると、

「これは旨い!」

目を見開きながら一気に食べていた。


その間に、竈を造り火を起こして、海鮮物を焼き始めると辺りに良い臭いが漂い始めた。

「ハラヘッタ! ハラヘッタ!」

周りにいたゴブリン達が騒ぎ出した。

直哉は気にせずしっかりと焼きあげ、食べて見せてからキングに渡した。

「これも旨い。イノシシとは違った旨さがある」

あっという間に食べ終わると、


「人間よ、聞きたいことがある」

「何でしょうか?」

「これらの料理を我々でも作れるのだろうか?」


「海鮮物はさっき見せた通りです。鍋料理の方はスバイスなどが入っていますので、材料が集められればとなります」

「ふむ。それならば海鮮物を貰おう」

「わかりました」

直哉はそう言って大王イカと巨大ガニを一匹ずつ取り出した。


「この二匹をお詫びとして差し上げます」

代わりに野生のイノシシをしまった。

「これは、どうすれば良いのだ?」

キングの質問に直哉は答え、捌き方や食べ方等を教えた。

ゴブリン達が早速調理に取りかかった。



「さて、ゴブリンの王よ、こちらも聞きたいことがあるのですが、良いですか?」

「もちろんだ」

「ここから北にある我が領地に君達に似た者が押し寄せてきているのだが、君達の仲間かな?」

直哉の質問に、

「それは、殺すと消える奴等の事か?」

「はい」

「奴等は断じて我々の仲間ではない! 奴等のお陰で我々は迷惑している」

それを聞いていたコボルトの王とオークの王も、

「それは、我々も同じです」

「では、倒してしまっても良いですね」

「もちろんだ」


「あいつらは何なのですかね?」

「奴等は遥か昔に魔王と呼ばれる存在に敗れ、連れていかれた者達の劣化コピーだな」

「劣化コピー?」

「そうだ。我々の様な知性は無く、ただ魔王の手先と成り下がったあわれな奴等だ」

「では、心置きなく殲滅しましょう」


その時丁度料理が出来たので、ゴブリン達は食べ始めた。

「ウマイ! ウマイ!」

あっという間に大王イカと巨大ガニは食べ尽くされていった。

「大盛況ですね」

その様子を見ていたコボルトとオークは、

「是非、我々にもお恵みを!」

と、擦り寄ってきた。



直哉は少し考えた後、

「では、みなさんに提案があります。俺は北にあるバルグフルの伯爵で直哉という。この、南の森を開拓した部分を領地として収めている。現在は銀狼の里付近まで領地を伸ばし、この先の海岸も我が領地とした」

ゴブリン、コボルト、オークのキング達は直哉の説明を食い入るように聞いていた。

「この森は食料が充実している良い森だと思います。そこで、我々と取引をしませんか?」

「取引?」


「はい。我々は、あなた方が欲しい物、例えば先ほどの海鮮物とか、装備や装飾品などを提供します。その代わりにあなた方は俺達に食料を提供して欲しい」

「それは、このイノシシの事か?」

「それだけではなく、我々の食べられるものであれば交換に応じます対価として釣り合えばですが」

三匹のキングは悩み出した。

「今すぐ返事をしなくても良いので、今度俺が立ち寄った時に返事をください」

直哉はそう言って、リリ達を引き連れて海岸へ戻っていった。




◆バルグフル海岸


かなりの数の人が集まってきていて、漁をするための施設や保管場所の建設が始まっていた。

「相変わらず早いですね」

直哉はそう呟きながら、中心人物であるリカードの元へ行こうとすると、

「直哉伯爵! 聞きたい事があります」

もの凄い剣幕で、シンディアが詰め寄った。


「な、なんでしょうか?」

「どうして、私が直哉伯爵の嫁なのですか?」

「・・・・・ん?」

しばし考えて、

「いや、リリとラリーナの事を言ったのですが」

「あのタイミングでは、私が嫁でしたよ」

「まぁ、何事も無かったから良いではないですか」

「いや、ありましたよ! ドラゴンですよ! ドラゴン!」


シンディアはかなり驚いていた。

「えっ? 今更ですか?」

「何で黙っていたのですか!」

「色々あったのですよ」

大興奮のシンディアを珍しく思いながら、リカードの元へ向かった。



「おぉ! 直哉! 問題定義して直ぐに解決策を出してくるなんて流石だな!」

「今回はたまたまですよ」

照れる直哉に、

「お前が居てくれると、それだけで運気が上がる気がするよ」

「それは、気のせいですよ」

「そうか? 直哉がそう言うのであれば仕方が無いか。ところで、この領地の範囲を広げる事は可能か?」

「それは・・・」

直哉はゴブリン族のことを話した。


「ふむ。なるほどな。と言う事は、北側には進めないか。」

「すまない」

「いや、事前に教えてくれて助かるよ。それなら、海沿いを進んで見るか。シンディア!」

「ドラゴンが・・・ドラゴンが・・・」

「シンディア?」

リリを見て怯えるシンディアを不審に思ったリカードは直哉を見た。


「あぁ、リリの変身を見たら怯えちゃって。リリが悲しんでるよ」

リカードは腕を組みながら、

「なるほどね。あれを見ちゃったか。それなら仕方が無いか」

そう言って、シンディアの元へ向かった。

「シンディア!」

シンディアはハッとして、

「リ、リカード様!」

その場に跪いた。


「いや、立て! 宮廷魔術師ならシャキッとしろ!」

それでもシンディアはオロオロしながら、

「ドラゴンですよ! ドラゴン。あの御伽噺や伝承でしか伝えられていない」

リカードは怯えるシンディアをしっかりと支えて、

「よく見ろ! 今はリリちゃんだ! シンディアにとって恐ろしい存在か?」

「リカード様・・・・」

怯えが少し収まったのを見て、手を離すと、

「申し訳ありません。もう少し時間をください」

そう言って、転移装置のほうへ歩いていった。



「リリちゃんすまない」

リカードが頭を下げると、

「悲しいけど、仕方が無いの」

直哉に擦り寄って、頭を撫でてもらいながら言った。

「そういえば、ソラティアで見たときよりも大きくなってなかった?」

「そうなの! リリ、ドンドン大きくなってるの!」

直哉に気がついてもらい、悲しみが少し晴れたリリであった。



「さて、それでは領地を広げに行きますか」

直哉はリカード、リリ、ラリーナ、エリザと共に、海沿いを歩いて行き、その領地を広げていくのであった。


東側に進み、崖を上りきり、その先へ進むと、反対側も砂浜が広がっていた。

「こっちにも狩場が出来るぞ!」

リカードの声に、伯爵に雇われていた冒険者たちがやって来た。

「おぉ! こっちも広いですね!」

「時期をズラして交互に獲っていけば資源が枯渇しにくそうですね」

直哉の呟きに、

「そうだな、そういう約束事を作っていこう。こんなときシンディアが居れば楽なのに」

リカードはぼやきながらメモを取っていた。



しばらく砂浜を進むと、またもや大きな崖が出てきた。

「砂浜からも断崖ですね、通常なら森の方から迂回しないと無理ですね」

「だが、飛べそうだな」

「そうですね、飛んで見ましょう」


直哉とラリーナ、エリザは靴を操作し、リリは魔法を、リカードは剣を使い飛び上がった。

「おぉ! 凄い眺めだな!」

「何だあれは?」

リカードが崖の傍の海から水蒸気が上がっているのを発見した。

「嫌な予感がします、行って見ましょう」

直哉達はそのまま、水蒸気があがっている所まで飛んで行った。


「これは!?」

崖の地下から赤い物が流れ出ているのを見つけた。

少し立つと物凄い水蒸気が上がり、黒く固まっていっていた。

「溶岩ですね。様子を見ると、最近溢れ出たようですね」

「海が陸地になっているの!」

リリが言う様に、溶岩が溢れては固まり、溢れては固まりを繰り返して崖の下が徐々に陸地になっていた。


「恐らく、噴火の前兆でしょう」

「そういえば、もう一月も無いのだよな」

「はい」

リカードは腕を組みながら、

「これからもっと色々な異変が起こると言うことだな」

「そうなります」


(しかし、溶岩か。地下を通ってここまで流れているか。何かを忘れているような気がする。地下を通る。地下を通る)

直哉は考えていたが思い出せないので、

「リカード、地下を溶岩が流れているのだが、何かが引っかかる。何だと思う?」

リカードは頭をかきながら、

「いきなりそう言われてもな。どの辺りに引っかかっているのだ?」

「地下を流れる。火山からここまで・・・・」


リカードは直哉の呟きを聞いて、

「まさか、その地下はバルグフルを通過してないか?」

「あっ!」

直哉はマップを開き、火山、バルグフル、現在地を確認した。

「直線ではないですね。ですが、思い出しました。バルグフルの下水道に隠し通路があって、その奥は火山に繋がる地下鉱脈があります。そこが溶岩で溢れると、バルグフルに溶岩が流れ込みます」

「それは、不味いな。状況を確認して早急に対策を立てないと大変なことになるな。直哉、すまないが下水道の調査の指揮を取ってもらえないか?」

「勿論やりますよ」

直哉の言葉にリカードは頷き、リリ達を見ると、リリ達も頷いてくれた。




◆バルグフル 城下町


直哉の情報を城へ持ち帰り、下水道の隠し通路の探索任務を、直哉達のほかにリカードの近衛兵であるラナ達五名が加わった。

「お久しぶりです。直哉伯爵」

「みなさん、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」


直哉達は近況報告をした後、リカードから下水道の調査を直接受けて、その準備を始めていた。

「みんなにこれを渡しておく」

直哉は、以前造った快適マントを人数分作成して渡した。

「これは?」

ラナが聞いてきたので、

「これは快適マントと言って、暑さ寒さから装備している人を守る力がある」

直哉説明を聞いて、ラナ達は喜んでいた。

さて、行きますか。


直哉の号令の元、バルグフルの地下道探索任務を開始した。

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