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第百十六話 エリザの決心と新スキル

直哉達は、ソラティア城で夕食を取り、寝るための家を建てた。

地下は変更できないので、城の広い庭の平らな地面の上に屋敷を建てて、直哉達はそれぞれ部屋で休むことにした。

忍達の部屋も用意したので、結構な数の部屋が出来ていた。


「こんなところかな?」

直哉の呟きに、

「人数的に部屋が多すぎる気がするのですが?」

フィリアが聞いてきた。


「俺達は忍達も入れたらこのくらい必要では?」

その話を聞いた忍達が、

「俺たちが姫様と同じ屋敷で暮らすのですか!?」

「まぁ、一時的なものですけどね」

直哉がそう言うと、


「あ、ありがとうございます!」

忍達が感動して部屋を見に行った。

「よろしいのですか?」

マーリカが直哉の所にやって来た。

「うん。みんな頑張ってくれていたからね。数日だけど一緒に暮らしていこう」

「ありがとうございます」

マーリカは頭を下げてから、みんなの所へ向かった。



「鍛錬場は無いのか?」

マーリカと入れ違いにラリーナが戻ってきて声をかけた。

「うん。今回は俺の土地になっていなかったから、地下を造るのが大変なんだよね」

「そうか。まぁ、鍛練に関しては城の施設をそのまま借りてしまえばよいか」

ラリーナの言葉に、

「そうだね、そうしようか。それに、庭も結構広いからこの建物を建てても、十分に鍛練するスペースがあるし」

「そうだな。無理に作る必要はないな」

ラリーナは納得して、屋敷に入っていった。


(さて、俺も戻って、風呂で熱いお湯でも浴びようかな)

直哉はそう考えて屋敷に入ると、エリザが待ち構えていた。

「直哉殿! ようやく帰って来たのじゃ」

エリザが待ち構えていたのを見て、

「ん? 何かあったの?」

と、身構えたが、


「直哉殿と奥方様方に話したいことがあるのじゃ」

「ん? みんなを呼んで来ようか?」

直哉が聞くと、

「いや、後で、直哉殿の部屋にお邪魔したいのじゃ」

と、エリザが答えてきたので、

「うん。大丈夫だよ。お風呂の後で良いかな?」

「もちろんなのじゃ」

エリザは上機嫌で自分の部屋へ帰っていった。

(何だったのだろう?)



その後、直哉は風呂に浸かり、新しく覚えたスキルの説明を読んでいた。

(まずは、ガナックさんから貰ったエンチャント系のスキルか。【エンチャント】は、現在出来上がっている武具アイテムに対して、魔法やスキルを上乗せするスキルか。ただし、既に魔法の効果が乗っていたり、武具アイテムの魔法耐久度の上限を超えてしまうと、失敗するか)

直哉はお湯で顔を洗って、

(これは、試して見てから考えるか。というか、俺、魔法使えないや)


直哉は気を取り直して次のスキルの説明を読んだ。

(エンチャント系の【リピート】は、武具アイテムに動作を覚えさせ、繰り返すことが出来る。ただし、対象自身が不可能な動きを覚える事は出来ない)

頭の中で整理すると、

(つまり、剣を振り続けるとか、魔法を撃ち続けるとかかな? 発動や停止の条件付けとか出来るのかな? これも試して見るしかないか)


次のスキルの説明を読んだ。

(この本で覚えられる最後のスキル【リライト】は、武具アイテムにかかっている魔法の効果を、別の効果にすることが出来る。ただし、元々かかっている魔法の効果によっては失敗する)

整理して、

(これは、敵の耐性に合わせて属性を切り替える魔法かな? 俺の場合その本数を用意しておけば良いだけなんだよな)


エンチャント系のスキルを見終わり、

(スキルのレベルを上げていくと、上位スキルを覚えるみたいだな。ふむ、エンチャント系はここまでだな。一通りどんな感じなのか試して見る必要があるな)

そう考えて、次のスキルに目を通した。



次はさっきの戦いで使用した、転移の書で覚えたスキルを見た。

(まずは、【ゲートイン】と【ゲートアウト】のスキルか。現在のスキルレベルだと、武具ぐらいのものしか転移出来ないし、距離も数十メートル程しかない。レベルが上がると、人やモンスターを転移することが出来て、距離も伸びる)

先程の戦闘での使い勝手を思い出して、

(これは、現在のレベルでも用途は広いな。それに、レベルが上がれば好きなところに行くことが出来そうだ)


次のスキルに目を移すと、

(これは、【ゲートマルチ】か。予め魔法を設置する所に印をつけて、双方向に行き来できる扉を開くことが出来るスキルか。これを使えば転移石の効果が出せるのかな?)

これも、後で試すこととして、次のスキルを見ると、


(【ゲートセンド】と【ゲートコール】か。このスキルを使うと、対象者の意思とは関係なく、遠くへ飛ばしたり、呼んだり出来る。抵抗する事は出来るのか。・・・・ん? このスキルは、もしかして俺をこの世界に呼んだスキルなのか? だけど、誰が何のために? エルムンドさんが俺を呼ぶ理由は無いし、この本はどこで手に入れたのだろう?)

直哉が頭をひねっていると、レオンハルトが風呂に入ってきた。



「おや、勇者殿。まだ、入っておられたのですか?」

「レオンハルトさん、もうそんなに時間が経っていましたか?」

「えぇ、外で、奥方様方が心配しておられましたよ」

レオンハルトの言葉に、

「そうでしたか。それでは俺は出ることにします。知らせてくれてありがとうございます」

直哉は礼を言って、風呂を出ることにした。




風呂を出ると、リリとフィリアが待ち構えていた。

「あー、やっと出てきたの!」

「ん? みんなしてどうしたの?」

直哉が聞くと、

「エリザさんが、何か大切なお話があるとかで、部屋に来ています。ご存知ありませんか?」

思い当たる節があるので、

「そういえば、風呂の後で部屋に来ると言っていたな」


直哉が慌てて部屋に戻ると、エリザが緊張した面持ちで、ラリーナの接待を受けていた。

「おぉ直哉よ、ようやく戻ってきたか」

ラリーナが直哉の姿を見て声を上げると、エリザは更に硬くなっていた。

「ごめんごめん、考え事をしていたら遅くなってしまったよ」

直哉はいつも通りの対応で、エリザの緊張を解そうとした。


エリザは直哉達が集まったので、居住まいを正して話し始めた。

「直哉殿、そして奥方様方、わらわのために時間を作ってくれて、嬉しいのじゃ」

そんなエリザの様子を見て、直哉達も真剣に聞く態度で聞いた。

「それで、話があると聞いているのですが、どの様な話でしょうか?」

直哉の口調が変わったのを聞いて、

「直哉殿にお願いがあるのじゃ」

エリザは何かをためらうようにリリ達を順番に見てから、


「わらわも、直哉殿に貰って欲しいのじゃ」

その場に居た、エリザ以外の時間が止まった。

「えっ?」

直哉は、思わず疑問の声を漏らしてしまった。

「やはり、わらわではダメかの?」

直哉の漏らした声に反応したエリザ。


そんな直哉の代わりにフィリアが聞いてきた。

「エリザさん。直哉様と添い遂げると言う、本当の意味は解っていますか?」

「本当の意味?」

エリザの疑問にフィリアは、

「えぇ。直哉様と添い遂げると言う事は、いずれ、この世界を出て行くという事。この世界を捨てて直哉様の世界で生きるという事ですよ」

「この世界を捨てる・・・?」

「その覚悟が、エリザさんにはありますか? もし、覚悟がないのであれば、直哉様の事は諦めた方が幸せになれますよ」

フィリアは、自身の覚悟をエリザに教えた。


「三人とも、直哉殿の世界で生きていく覚悟があると言うのか?」

「もちろんなの!」

「当たり前だ!」

エリザの質問に、リリとラリーナが答え、フィリアも頷いた。

エリザは目を瞑り、何かを考えているようであった。



「そんなに、急いで答えを出す必要は無いですよ」

何かを考え始めたエリザに、直哉が話しかけた。

「それと、どうして俺の嫁になりたいと思ったのか、聞かせてもらっても良いかな?」

「実は、直哉殿と話している姉上見てから意識し始めたのじゃ」

「アシュリー様?」

「そうじゃ。いくら、バルグフルからの使者とはいえ、あれほど心を開いて話す姉上を見たのは久し振りじゃった。まぁ、姉上を見るのも久し振りじゃったのだけどな」

エリザはルグニアにいた頃の出来事を思い出していた。


「じゃか、その時のわらわにとって大事だったのは、父の事であったのじゃ」

「エルムンドさんの事ですね」

「あぁ。父を止める事に比べれば、些末な事じゃたのじゃ」


「ふむ。そして、エルムンドさんを止めた今は違うということですね」

直哉の考えに、

「ただ、止めただけではないのじゃ! 父を人として弔ってくれた。あれだけの事をした愚か者じゃ。魔物にされて、魔物として倒されてもおかしくなかったのじゃ」


「そっか。わかったよ。では、改めて気持ちが決まったら来てくれ。みんなもそれで良いね」

直哉の言葉に、嫁達は頷いた。

「ありがとうなのじゃ。しっかりと考えて来るのじゃ」

エリザはそう言って部屋を出ていった。



その夜、嫁達からの猛攻で、搾り取られた事は言うまでもなかった。




◆次の日


直哉が一階へ降りてくると、忍達が調理をしていた。

「おはようございます」

直哉が声をかけると、

「おはようございます」

忍達が一斉に返事を返してきた。


直哉が調理を見ていると、

「意外ですか?」

「あ、いや。すまない。新鮮だったので」

そう言いながら、鍋をかき回している動作を見て、昨日の【リピート】を試して見ようと思った。



(まずは、大きな木の匙を造って、それからリピートっと)

直哉の手に、忍びが持っていたのと、同じくらいの大きさの匙が出てきて、それを回し始めた。

(これで良いのかな?)

直哉が匙から意識を離すと、匙が自動的に回り始めた。

「おっと」

動き出した匙に驚いた直哉は、匙を手放してしまった。


カラン


木の匙は乾いた音を立てて、そのまま落下し、動こうとしたが地面に横たわっていたため、リピートの効果が消えた。

近くで見ていると、直哉が匙を造り回転させた後、投げ捨てたように見えた。


「何をなさっているのでしょうか?」

そんな直哉を見ていた、マーリカが声をかけてきた。


「あ、新しいスキルを試して見たのだけど、持ってないと動かないし、このままじゃ意味がないな。他の方法を考えて見るよ」

「エンチャントのスキルですか?」

「そうそう、その中のリピートというスキルなんだけど、覚えた動作を繰り返してくれるらしいのだけど、どうやって使うのかを試している所なんだ」


マーリカは直哉の言葉を考えて、

「なるほど、あの、連弩の様な感じですよね?」

「あー、そうそう、そんな感じのスキルになるはず」

「わかりました。私の方も何か考えておきます」

マーリカの提案に、

「ありがとう」

と、礼を言った。




朝食後、忍達は捜索を再開し、直哉達は鍛練を開始した。

基本のセットを終えた直哉はゲートの練習を始めた。

「ゲートイン! ゲートアウト!」

全部で六セットのゲートを造り出した。

「これが現在の限界か」

全てのゲートに投石してみて、正常に動作していることを確かめた。


「ん? これって連続で通過するのかな?」

直哉は一度解除して、一直線になるようにゲートを並べ、最後の出口を最初の入り口の前に設置した。

「よし、やってみるか」

直哉がゲートに向かって投石すると、石は次々とゲートを通過して、直哉の後ろから飛び出してきた。

「よっと」

それを避けると、石は最初のゲートに吸い込まれ、次々とゲートを通過していった。


「ふむ、これは成功ですね」

次に、ゲートマルチを試して見たが、転移先の状況がわからず、投げた石が落ちていたので、一応成功とした。

「最後に、ゲートセントとゲートコールだな」

直哉がスキルを試そうと思ったが、

「いきなり人で試すのは怖いよな。まずは生物で試すとするか」

そういって、周囲を確認すると、都合よく鳥が飛んでいた。

「よし、あの鳥を呼んでみるか」


直哉は意識を集中して、

「ゲートコール!」

と念じると、機械的な音声で、


「このスキルはロックされています。システムの許可を得てください」


と、脳裏に流れてきた。

「そりゃないっすよ」

直哉は心の中でずっこけた。

その後、ゲートセントを試した見たが、こちらは上手く行った。


「現在のスキルでは移動できるのは数メートルだけだな。でも、このスキルがあれば、数メートル上空へ飛ばしたり、地下牢へ飛ばすことにより、敵を逸早く行動不能にすることが出来る気がする」

直哉はスキルの効果が怖くなった。

「一応抵抗は出来るみたいなんだけど、どの位で抵抗できるのだろう? 敵が使ってきたらかなり危ないよな」

直哉はそう考えて、対抗策を考え始めていた。



「また、お兄ちゃんは新しい玩具を見つけちゃったの。早くリリと鍛練してくれないかなぁ」

そんな直哉を見ていたリリは悲しそうに呟くのであった。

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