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第百十一話 ソラティアの開放に向けて その3

リカードや非戦闘員などを見送った直哉は、ラリーナとマーリカを連れて拠点を見ていった。



「この壁面は守りにくいな」

直哉のつぶやきにマーリカが答えた。

「はい。ですが、その分地上からの侵攻は厳しいと思います」

「確かに」

「だが、空から来たら攻めるのは楽だな」

ラリーナの言葉に、

「そうなんだよね」

「何か、空中の敵に向かって攻撃する武器は無いのですか?」


直哉はスキルを発動させて、

「うーん。そうだな。連弩か、コレを巨大化させて壁に設置すれば良いかな?」

「連弩とは、エリザ様が使っている弓のことですか?」

「ん? あれは普通の弓だね」

「えっ? あれだけ連射しているのに、普通の弓なのですか?」

「うん。普通の人なら、一本ずつしか撃てないと思う。あの数を放てるのは、エリザの力だよ」

「そ、そうだったのですね」

マーリカはエリザの力を見誤っていたことが、恥ずかしくなった。



直哉が造り出したのは、前面が2×1.5メートルで奥行きが2メートルの立方体に足をつけて、向きを手で変更後、ロックする事で固定出来て、発射ボタンを押すと停止ボタンを押すか、矢がなくなるまで撃ち続ける箱だった。

前面には十六のあなが空いていて、三秒に一射撃するようになっていた。

(出来たけど、仕組みがわからないな。特殊な魔法石は使ってないし、効果の分からないのは、金属属性の石位かな)


直哉がそう思っていると、マーリカが試しに動かしてみた。

「向きを変えて、このボタンで発射ですか?」

マーリカが発射ボタンを押すと、


シャッ! シャッ! シャッ! シャッ!


と、規則正しく矢が発射されていた。

「おぉ! これなら、空でも地上でも迎撃出来ますね」

マーリカは興奮しながら動かしていた。



「しかし、弾切れになるのだろう?」

「うん。それは、仕方ないよ。カートリッジ式を採用してるから、弾込めは簡単にはなってるけどね」

「後は、人員と言うわけだな」

「そうだね。これを使うには、向きを変える人が必要になるから、それも含めて教えないと駄目だよな」

「忍び達にやらせましょうか?」

「最悪はそうなるかな。でも、本音を言うと、戦うのではなく、戦闘中の状況確認をしていて欲しいのだよ」


「上空から見てましょうか?」

マーリカの提案にラリーナが、

「マーリカが? 一人で?」

続いて直哉が、

「それも手だけど、大丈夫? 殺気に当てられる危険性は高いよ?」

「そ、それは」

直哉とラリーナに突っ込まれ、息を呑んだ。



「無理をしても上手く行く可能性が高いのであればやって貰うことを考えるけど、そうではないのにやらせるのは死にに行かせるような事だから、俺は賛成出来ないよ」

マーリカは少し目を潤ませながら、

「自分一人の犠牲で済むのであれば!」

「いや、無駄死にだぞ?」

「マーリカが倒れたら、代わりになる人を行かせることになる。その人で問題無いのであれば、始めからその人に行かせるよ。それにマーリカには他にやって貰いたいこともあるし」

「やって貰いたいことですか?」

マーリカが食い付いてきたので、



「うん。いつも言ってるけど、遠くの人との繋ぎを付けてくれること、これが重要なんですよ。今回の戦いでも俺達の拠点からの情報だけではなく、全方位からの情報があれば、戦いを優位に進めることが出来るのは間違いないよ。ただでさえ、こちらは人数が不足しているのだから、どの方角からどの程度の敵が来るという情報だけでも対応は大きく変わるのですよ」

「ご主人様は、本当に変わっておられるのですね。情報が役に立つとは思っても見ませんでした」


「俺の母親がよく言っていたんだよ。情報は武器になる、新しい情報を正しく入手することが勝利の鍵を握るって」

「そうだったのですか。お母様のお言葉、心に響きます」

マーリカは胸を押さえて、直哉の言葉を刻み込んだ。



マーリカが落ち着いた様子を見たラリーナが、

「それで、ここはどうするのだ?」

「うん、ここに忍びを一人配置して貰って敵が来たら教えて貰えれば、後は俺のマリオネットで操作するよ」

そう言いながら、複数の連弩を造りだした。

「結構重量があるけど、動かせるのか?」

「何とかなると思う」

直哉はマリオネットを駆使し連弩の調整を行っていった。



「忍びの者を配置するとして、その者に敵の位置を教えてもらうのですか?」

「いや、これを使ってみる」

そう言って【遠見石】を取り出した。

「これをこの辺に設置して、監視カメラのようにして使う」

「監視カメラですか?」

「俺のマリオネットと疑似部位連携を組み合わせるもので、ここから見た映像を直接俺が見ることになる」

そう言って、透明な箱に入ったクマのぬいぐるみをマリオネットで操作した。

「疑似部位連携ということは、ダメージを受けると、ご主人様にダメージがいくのでしたっけ?」

「そういうこと。諸刃の剣だね」



ラリーナが浮かんでいるクマのぬいぐるみを見ながら、

「この、透明な箱の中に入っているのは、少しでも防御を上げるという事か?」

「うん。悪あがきだけどね。最悪は疑似部位連携を切ってしまうという荒業がある」

「それを使えば、繋がりを絶てるのだったな」

「そういうことだね」


直哉とラリーナがわかり合っていると、マーリカが苦しみだした。

「くぅ」

「どうしたの?」

直哉とラリーナが近寄ると、マーリカは苦しみながら、

「忍びとの繋がりが切れました。はぁ、はぁ、恐らくソラティア城の偵察をしていた忍び達に何かあったようです」


「ソラティア城の忍び達に何かあったということは、そろそろ出陣する可能性が高いということかな?」

直哉が状況を確認すると、

「先ほどの通信は緊急ではなかったので、変化は無かったと思いたいのですが、状況を確認する間もなく切断しました」

「そうか。他に回せる忍びはいる?」

「はい」

「それでは、痛みが治まり次第、頼む」

「わかりました」



「やっぱり繋がりが切れると、痛みが走るのだね」

痛みが治まったマーリカは、

「はい。通常はこの様に痛みが返ってきます」

「つまり、忍び達に何かあると、マーリカが痛みを受けるという事で良いのだよね?」

「はい。繋がっている時はそうなります」

「では、今すぐ忍び達との繋がりを解除するしかないか」


直哉の言葉にマーリカは驚きながら、

「えっ? 今は忍び達と繋がってはいませんよ。もう少ししたら繋がりを持ちますが」

「ん? どういう事だ?」

「この忍具で通信をする時に繋がりを持ちますので、常時繋がっているのは御主人様だけです」

直哉は首をかしげ、

「それなら、どうやって忍びからの緊急を受け取るの?」


「この忍具を持って祈ると、私の忍具がそれを受け取ります、その後私の忍具を使い祈りが来た忍具と意識を繋げると相互会話が出来る様になります」

「あれ? そういう事?」

「はい。ですので、問題ないかと」

「そういう事だったのか、心配していたのだが問題無いのであれば安心だな」

「ありがとうございます」



その後マーリカが、ソラティアに付いた忍びから先任の忍びが死んでいる事と、ソラティアにゾンビキメラが大量にいる事、さらにそれを束ねているのが継ぎ接ぎだらけのキマイラと言う事を聞いた。



直哉がその報告を聞いて、

「あれ? エルムンドは?」

「姿を確認する事は出来なかったそうです」

直哉は少し考えて、

「まさか、既にここへ? そうなるとエリザが危ないか。エリザは何処に行った?」

拠点内を探したがエリザが居なくなっている事に気がついた。




さらに、エリザが最後に鍛練していた所に、奇妙な魔方陣が出来ている事に気が付いた。

「これは、まさか転移の魔方陣?」

「このままでは、ここから魔物が出入り出来てしまうのでは?」

直哉は、

「ラリーナはリリとフィリアを呼んで来て、マーリカは拠点に居る忍びと連絡を取ってみんなをここへ集めてくれ」

「おう」

「畏まりました」


直哉は、魔方陣を詳細に記録していった。

(俺の考えが正しければ、コレを使えば各地域へ飛ぶ事が出来る《ゲート》になるはず。一度使用したら消える《移動用ポータル》も同じ理論で出来たらよいのだけど)

書き写していくうちに、直哉の作成出来る項目に【転移】が出てきた。

(よし! 計画通り!)

さっそく開いてみたが、

(あら? 何もないぞ? 何でだ?)

直哉が考えているうちに、みんなが集まってきた。



現在、この砦にいるのは、直哉グループ(直哉、リリ、フィリア、ラリーナ、エリザ【誘拐】、マーリカ)、レオンハルトグループ(レオンハルト、パルジャティア兵五名、カラティナ、アルカティア兵五名)、ガンツグループ(ガンツ、バール、ジャス、ハルパ、リンダ)であった。



レオンハルトが、

「これは何ですか?」

魔方陣に近づいた。

「エルムンドがエリザを攫うために開いた《ゲート》だと思います」

「なんと!?」


リリはショックを受け、

「エリザお姉ちゃんが攫われた?」

続いてフィリアが、

「助けに行くのですか?」

「あぁ、このゲートを利用して攻め込もうと思う。ただし、どこに繋がっているのかわからないので、こいつを先行させます」

そういって、クマのぬいぐるみを取りだした。


「クマさんなの!」

「ですが、ぬいぐるみが傷つけば直哉様もダメージを負ってしまいます」

「うん。だけど、俺自身が死ぬ訳ではないからね」

そう言って準備を始めた。



「我々も同行して良いのですか?」

「もちろんです、ですがここに籠もって戦うより危険ですよ? 敵の本拠地へ殴り込む訳ですから」

直哉の忠告に、みんな息を呑んだ。



「俺達は冒険者だ! 冒険しないで籠もっているだけなら冒険者失格だぜ!」

ガンツが大声で叫んだ。

「そうだよな!」

ハルパもニヤリと笑っていた。

リンダ達も覚悟を決めたようで、各自武具アイテムの最終チェックを始めた。



「レオンハルト様、我々は如何いたしましょうか?」

レオンハルトはアルカティア兵のリーダーとして残っていたカラティナに声を掛けた。

「そうだな、カラティナ殿、あなたに我が兵を預けたいのだが、問題無いだろうか?」

カラティナはレオンハルトを睨みながら、

「どういう事ですか?」

「カラティナ殿にはここの防衛・・・」


カラティナはレオンハルトに最後まで話させず、

「断る! 私達もソラティアへ行くぞ」

と、アルカティアの兵を鼓舞すると、

「もちろんです!」

「男になんか負けてられないわ!」

と士気が上がっていた。それどころか、


「我々もお伴します!」

「レオンハルト様にだけ良い格好はさせられません!」

パルジャティアの兵達も決戦の地へ行く覚悟を見せた。


「お前達・・・・。わかった! みなで勝利を勝ち取ろう!」

「おぉぉぉぉぉぉー」

パルジャティアとアルカティアの兵達は雄叫びを上げた。




全員の準備が出来たので、直哉が、

「俺とリリでエルムンドの所へ行きます。皆さんは城下町にいるキマイラとキメラを相手にしてください。フィリアの破邪魔法でキメラは吹き飛ぶと思いますが、キマイラには充分に注意してください」

「おぉ!」

「フィリア、ラリーナ、マーリカそっちは任せるよ?」

直哉は順番に抱きしめた。

「お任せください」

「任せろ!」

「ご主人様!? 私まで・・。ありがとうございます」


その後、ガンツに向かって、

「冒険者魂を見せて貰いますね」

「おう! 終わったら飲み明かすぞ!」

固く握手した。

「みんなも最善を尽くしてください」

ガンツのメンバーに声を掛けた。

「姫さんは俺達が守ります!」

順番に握手していった。



最後にレオンハルトに声を掛けた。

「共にソラティアを解放しましょう!」

「あぁ! 我がパルジャティアと」

傍にいたカラティナの手を取り、

「アルカティアの力を合わせて」

「真のソラティアの平和を掛けて!」

直哉は二人と握手を交わした。



「さて、ソラティアを解放するために、行きますか」

直哉は、偵察に出していたクマからの情報を元に、魔方陣周辺には敵や罠がない事を確認して魔方陣に飛び込んだ。

リリ達もそれに続き、全員が魔方陣へ入った。





◆ソラティア城 地下貯蔵庫


直哉が周囲を見渡すと、そこは大きな倉庫の様であったが、すでにどこかへ移動した後のようで何も置いてなかった。出入り口は二カ所で、巨大な扉と反対側に小さな扉が付いていた。

「ここは、殺風景な部屋ですね」

フィリアのつぶやきにレオンハルトが続いた。

「我がパルジャティアと似ていますね。恐らく地下貯蔵庫でしょう」


「貯蔵庫? 何も無いじゃないか!」

ハルパがガッカリしていた。

「ハルパよ、何かあったとしても俺達には関係ないぞ?」

ジャスの突っ込みに、

「そりゃ、ばれないようにやるさ」

と、おどけながら、扉を調べに行った。



「大きな扉は城下町方面への搬入口ですね。小さい扉は城の内部へ続いています」

レオンハルトの解説に、

「鍵、罠の確認後、先ほど決めた通りに別れます。くれぐれも気を付けて下さい」

「直哉殿も気をつけて」

「何かありましたら、ラリーナやマーリカを通して呼んでください」

フィリアの言葉に、

「大丈夫なの! リリが守るの!」

リリがやる気を見せた。


扉を調べたハルパが帰って来た。

「罠や鍵は無いですよ。それどころか見張りすら居ないぜ。盗りたい放題だ。まぁ、何も無いけどな」

ハルパがニヤリとわらった。


「ありがとう!」

直哉はハルパに礼を言ってから、

「それでは、行きましょう!」


ソラティアの解放を掲げて、直哉とリリは小さい扉から、それ以外は大きい扉からそれぞれの戦場へ向かっていった。

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