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第百五話 第二波襲来

◆その夜


第二波が襲いかかってきた。

「総員戦闘準備! リカードは、ゴンゾーさんとアンナさん、そしてガンツさん達で第一軍とします。続いてレオンハルトさん、ルカさんを中心にアルカティアの皆さんで第二軍を、間に合えば、パルジャティアの皆さんもここに合流して貰います。最後に俺たちが第三軍として動きます」

「おう!」

「了解!」

「黒い霧を纏ったボスキメラが出てくるまでは、各軍でキメラの動きを止め、地下牢へ落としていってください」

解放軍とソラティアキメラ軍が交戦を始めた。



「リカード様、アンナ様、参りましょう」

ゴンゾーの言葉に、

「おう!」

「わかった!」

二人は答えて、それぞれが風の剣と火の剣を抜いた。

「ガンツ殿達も、いつも通りにリンダ殿を中心に無理をしないようにキメラを倒してください」

ゴンゾーの言葉にガンツは、

「了解だ! みんな! いつも通り姫に適を近づけさせるな!」

「はい!」

ガンツ達も気合いを入れて、キメラと対峙していった。


「ゴンゾー、アンナ、行くぞ!」

「承知!」

「わかった!」

リカードとゴンゾーは、一陣の風のように戦場を駆け抜け、キメラ達を動けぬ肉塊に変えていった。

そこへ、多少遅れながらもアンナが参加して、三種類の風が混じり合い吹き荒れていった。

三人が通った後は、肉塊が散乱していて、元の形に戻ろうと動き出していた。

「うげぇ。気持ち悪い」

ガンツ達は、その動き出した塊に攻撃を仕掛けて、落とし穴を使って地下牢へ叩き落としていった。



目の前を走り、キメラ達をなぎ払っていくレオンハルトを見ながらルカは焦っていた。

「直哉さんだけでなく、レオンハルトさんも強い!」

レオンハルトが自分の近衛兵達と闘う時は前に出るのではなく、常に中心で戦況を見極めながら戦っているのだが、今回は自慢の近衛兵が遅れているので、前線に出てその剣を振るっていた。

ルカとカラティナ(大剣の女)がレオンハルトに続き、残りの九名がその後に続いた。


「男にばかり戦果を挙げさせるな! アルカティアはここにありと知らしめよ!」

「おー!」

ルカの激励にアルカティアの戦士達は奮い立った。

レオンハルト、ルカ、カラティナの三人で大半のキメラを行動不能にして、残りの戦士達で地下牢へ落としていった。



「上手くいきそうですね」

マーリカは、

「土遁! 透土眼!」

を発動させ、牢から逃げ出したキメラが居ないか確認していた。

「地下牢自体に問題は無いから大丈夫だとは思うのだけど」

直哉の言葉にマーリカは肯いて、

「牢の周りに」変な兆候は見られないね」

直哉は土地タブから、地形の変化を見ていた。



「御主人様! 別れて進軍していたもう一つの部隊が進路を変えました!」

「何処へ向かっているの?」

「現在はバルグではなく、ここへ向かっています」

直哉は地図を取り出して、

「正確に教えてくれる? それと、アルカティアのジャンヌさんに連絡出来るようにしてくれる?」

直哉はマーリカから詳細を聞いて、敵援軍の侵攻路を所有させてもらい、そちらにも地下牢を造る予定だった。

マーリカは忍び達からの情報をまとめ、進路を割り出した。

「ここをこの様に通ります」

マーリカの予想進路は大胆なものであった。

「このルートだと、山や谷を直進する感じだけど、どうやってるの?」


「見た者の話しによると、空を飛べる者が多く、機動力が高いそうです」

「空か。制空権を握られると厳しいな」

直哉は新たな敵に対する防衛策を考え始めていた。



あらかたのキメラを叩き落とした後に、黒い霧を纏ったボスキメラとそのボスキメラを守る親衛キメラが四体ずつ、そして、第一都市のソラティア国、国王のソラルド・デジバ三世がやってきた。


「よくも! よくも! 僕ちゃんの玩具を奪ったな! ゆるさんぞ!」

直哉に言っているらしかったが、直哉は増援に対する防衛策を考えていたため、全く聞いていなかった。

正確に表現すると、意識の数パーセントは向けていたが、危険度が低いために無視していた。

「おい! 僕ちゃんを無視するな!」

相変わらず何かを叫んでいるようであったが、直哉は防衛策を考え続けていた。

「むきー! おい! お前たち! あいつを八つ裂きにしろ! 男は全員八つ裂きに! 女は僕ちゃんのものだ!」

その命令を実行しようとしたボスキメラたちの動きに直哉は反応した。



「マリオネット!」

急に動いた直哉にボスキメラ二体は反応できずに居たが、その親衛キメラ達はその身を挺してボスキメラを守った。

直哉の攻撃と共にリリ達は動き出していた。

「ちぇっすとー」

「おらおらおらおら!」

「喰らうのじゃ!」

リリとラリーナが突撃し、エリザは矢を放った。フィリアとマーリカは魔力を練り始めた。


「おりゃあ!」

「せい!」

「たあ!」

リカード達も側面から斬りかかった。


「キシャー!」

親衛キメラは善戦していたが、リリ達の猛攻の前に地下牢へ叩き落とされた。



残りは、ソラルドとボスキメラ二体であった。

「な、何で? 僕ちゃんはソラティアの国王なんだじょ! 偉いんだじょ! 何で、何で思い通りにならないのだよ!」

ソラルドが癇癪を起こすと、黒い霧が勢いよく吹き出した。

「うががががががが」

身体が引きちぎれそうになるのを耐えているように、身体を押さえ込みながら叫んでいた。


ソラティア城で儀式を行っていたエルムンドは、

「あのうつけが。闇の力を使うのが早すぎる。大体、お前達が戦うのは援軍が到着してからだろう?」

苦笑いを浮かべながら、儀式を続けていた。

目の前には、黒い豹だった男女。生きたまま毛皮をはぎ取られ、瀕死の重傷を負ってから既に数年の年月が経つが意識が無いまま生きながらえていた。

「黒豹一族は身体能力に加え、魔力も高いと聞いている。その黒豹同士を掛け合わせれば最強のキメラが産まれるはずだ」

エルムンドが漆黒の杖に魔力を込め直して、キメラの作成に力を注いでいった。

「がはぁ」

だが、エルムンドは大量の血を吐き出して、キメラ作成を中断することになった。


「やはり、この身体はそろそろ限界を迎えるな。エリザよ、早く儂の元へ来い。その身体を儂の物にしてくれる」

そう言うと、懐から二冊の本を取り出して、その中の一冊を開いた。

背表紙には【転生の書】と書かれていた。もう一冊の本には【転移の書】と書かれていた。

「この本を儂の書いた【合成の書】と交換出来たのは大きかったな」

エルムンドは十数年前に出会った、魔王を名乗る老人との会話を思い出していた。



その時エルムンドは、ルグニアを追い出されソラティア地方に数多くある塔の一つに逃げ隠れて居た。

塔の最深部に籠城していたエルムンドは、塔の入り口や通路に致死性の罠を物理・魔法共、数多く仕掛け外部からの侵入を防いでいたはずだったが、突如エルムンドの部屋に膨大な魔力が外部から流れ込み、気が付くとみすぼらしい恰好の老人が一人で立っていた。

「何者じゃ?」

まさか、罠を発動させることなく侵入してくるとは思っていなかったため、完全に意表を突かれたかたちとなった。

「我が名は魔王エルダニス。この世に増えすぎた者達を減らすために産まれた存在だ」

「何を言っている?」

「この世界の資源に対して、生命体が溢れ出そうとしている。それを阻止するために生み出された存在だ」

「まさか?」

エルムンドは、エルダニスと名乗った老人の眼を見て話を聞いた。


「それで、まずは儂を殺しに来たのかな?」

エルダニスは無表情のまま、

「お前の研究に興味がある。もし上手くいくのであれば、この本でその技術を買おう」

そう言って、二冊の本を取り出した。

それが、エルムンドが持つ二冊の本であった。

「私の研究だと? キマイラの研究の事か?」

エルムンドはルグニアに居た頃から二体の種族の掛け合わせについて研究をしていて、小動物同士のキメラは作成に成功していた。

そして、さらにキメラを強化すべく、三体以上の種族の掛け合わせについての研究を続けていた。

キメラ以上に遺伝子の掛け合わせが難しく難航していた。


エルムンドからキマイラの情報を聞いたエルダニスは、

「そこまで出来ているのであれば、後は魔力で強引にくっつけてしまえば良かろう」

と、アドバイスを出したが、

「それでは、キマイラとしての生命活動時間が大幅に減少してしまいます」

と言って、他の方法を考えると言った。

「まぁ、ここまで出来ているのであれば後は時間の問題だな。先に報酬を渡しておく。上手くいったら連絡を寄こしなさい」

そう言って、二つの本をエルムンドに渡して去っていった。

エルムンドは、その後半年で研究を完成させてエルダニスの信頼を勝ち取った。



「そして、このソラティアの実権を握った時に、この杖を頂いたのだよな」

そう言って、漆黒の杖を見た。

この杖は装備している者から無尽蔵に魔力を吸い取る代わりに、何倍もの出力で放出してくれるマジックアイテムであった。

「この杖を十二分に使うために、あの施設を作ったというのに、パルジャティアの施設は完全に破壊されてしまったな。まぁ、他にも作ってあるから大きな問題は無いが、やはり、この身体では負担が大きすぎる」

そう言いながら、またキメラの作成に魔力をつぎ込んだ。




直哉はマリオネットでボスキメラの動きを把握しながら、増援のキメラの動きを探っていた。

「直哉! あの後の奴が動き出す前に、倒してしまおう!」

リカードの提案に、

「わかりました。やりましょう。リリ! ラリーナ! 頼みます」

「了解!」

リリとラリーナは疲れを見せない強靱な走りを見せていた。

「こっちも負けてられないぞ! ゴンゾー! アンナ! あの二人に遅れるな! 行くぞ!」

「おーーー!」

ゴンゾーとアンナがリカードに続いて突撃した。


リリ達を待ち受けたのは、ボスキメラ達であった。

「邪魔なの!」

「邪魔だ!」

ボスキメラAに、リリの氷結クラッシュとラリーナの銀狼攻撃が炸裂し、ボスキメラBに、リカードとゴンゾーとアンナの連係攻撃が決まった。

「ぬ! 危ない!」

ゴンゾーの叫びと共に、黒い霧が針のように噴射した。

リリとラリーナとリカードは、ゴンゾーと同じタイミングで気づいたので回避できたが、アンナはゴンゾーが叫んでから回避行動したので、回避が間に合わなかった。

直哉は懸命に盾をアンナに飛ばし、防御しようとしていたが間に合いそうになかった。

「あぁ」

アンナはその攻撃を見て、硬直してしまいそのまま目を瞑ってしまった。

近くに居たリカードは回避していたため、体勢を崩していた。ゴンゾーは動けぬアンナを庇うために、無理な体制でアンナの前でその身を盾にするために立ち塞がった。

「セイントシールド!」

その時、フィリアの声が響き渡りゴンゾー達の前に光輝く盾が展開した。


「詠唱破棄?」

詠唱破棄をすると、その魔法の威力が半減してしまうので、今回のシールドは防御面は問題なかったが、範囲が狭すぎた。

アンナだけを守るのであれば十分であったが、アンナを庇うゴンゾーは、大部分がシールドからはみ出してしまっていた。


「うぐ」


シールドからはみ出した、ゴンゾーの頭、両腕両脚に大量の闇の針が襲い掛かった。

頭の部分を咄嗟に両腕で防ぎ、その後、飛んで来た直哉の盾により残りは防げたが、ゴンゾーは両腕両脚に大量の闇の針が食い込み、大量の血が流れ出て身動きが取れなくなっていた。

「フィリア! ゴンゾーさんを頼む! リカードはアンナさんを! リリとラリーナは再突撃! エリザとマーリカは遠距離からの援護を!」

直哉の指示により、全員が動き出すと、

「マリオネット!」

直哉もマリオネットを展開して、フィリアの後を追った。


「あぁ。ゴンゾーさんが。ゴンゾーさんが」

錯乱状態のアンナをリカードが優しく抱きしめた。

「大丈夫。大丈夫だから安心しなさい」

「きしゃー」

追い討ちをかけようとしていたキメラを、リリ達が迎撃した。



「舞い散れ! サクラ!」

「貫け! シルバーニードル!」

リリとラリーナが一体ずつと対峙して、それをエリザとマーリカが援護射撃していた。

「きしゃー」

さらに、直哉のマリオネットに操作された剣と盾や、アイテムが容赦なく襲い掛かっていた。

「ぎしゃー」

少しずつ黒い霧がはがされていった。


「天より来たりし光の精霊よ、我が魔力と共にこの者を癒したまえ!」

「フルリカバリー!」

フィリアの懸命な回復魔法により、一命を取りとめる事に成功した。

「う、うぐ」

動き出そうとしたゴンゾーをフィリアは止めた。

「まだ、無理です。身体の中に闇の毒素が回っています。ここで破邪の魔法を使うと、ゴンゾーさんの身体の一部を消滅させてしまいます。ゴンゾーさんの治癒能力で吐き出されるのを待ってください」

「フィリア殿。今、動かなくて何時動くと言うのじゃ。ささ、ひと思いに祓ってくだされ」

その言葉を聞いたリカードが、

「馬鹿野郎! ゴンゾーにはまだ教えてもらわなくてはならないことが沢山あるんだ! こんな所で寿命を縮めようとするな!」

「そうです。ゴンゾーさんには恩返しをしなくてはなりません。長生きしてもらわなくては、私もただただ後悔することになります」

二人の熱意に押され、ゴンゾーは目を瞑った。

「わかった。フィリア殿よろしく頼む」

「フィリアさん。直哉。ゴンゾーを頼む!」

リカード達はゴンゾーをフィリア達に任せて、ソラルドのところへ駆けていった。

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