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第百三話 第一波襲来

◆防衛拠点


直哉達が防衛拠点に到着すると、リリとマーリカで動かせる設備は稼働していた。

「おぉ! ここまでやってくれているとは!」

直哉が感心していると、拠点の上からリリが飛んで来た。


「お兄ちゃーん!」

「こらこら、危ないぞ」

そう言いながら、しっかりとリリを受け止めた。

「きゃうん」

リリを受け止めた衝撃で、肩にのっていたシロが落ちた。

「わーい!お兄ちゃんの匂いだ!」


「あらら。シロ、大丈夫?」

直哉はリリを抱えたまま、シロを拾い上げた。

「くぅん、くぅん」

シロは直哉に甘えていたが、フィリアとラリーナが直哉にくっついてこなかったため、



「そう言えば、お姉ちゃん達は? くっつかないの?」

「・・・・・」

三人は冷戦状態であった。

「何があったの?」

リリの疑問に、直哉は事の顛末をかいつまんで話した。


「それは、両方おかしいの!」

「なんだと!?」

「何故ですか?」

「どうしてじゃ?」

三人は小さなリリに詰め寄った。

「だって、一番大切な事を忘れているの!」

「一番」

「大切な」

「事じゃと?」

「そうなの! 一番大事なのは、お兄ちゃんなの! お兄ちゃん自身を守るだけでなく、この世界で生活出来る場所を守る事も必要なの! ここにいる全員がお兄ちゃんと暮らすために守るの! だって、一人は悲しいの! 嫌なの!」

リリは直哉に抱き付きながら話した。


「そっか。直哉自身だけでなく、ここにいる全員を守るか。まさか、リリに諭されるとは思わなかったぞ」

「そうですね。ラリーナ、ごめんなさい。私は、自分の事しか考えていなかった。これからは、直哉様のために行動します。もちろん、リリやラリーナのためにも」

「私も悪かった。私も敵を倒す事しか見ていなかった。これからは、直哉とその周りにも目を配ろう」

フィリアとラリーナはガッチリと握手した。


「さすがリリ。助かったよ」

「えへへなの」

リリは、直哉に褒められて嬉しくなった。

リリとシロが直哉を占領していたが、和解したフィリアとラリーナもこれに参加した。

「やっぱり、みんな一緒が良いの!」

リリは更に嬉しくなって満面の笑みを浮かべた。



直哉達は、拠点の整備を始めた。

「リリ達の部屋は準備したの!」

「食堂の設備は一通りチェックしました」

リリとマーリカの報告を受け、

「それでは、各方面から来るであろう解放軍の受け入れ準備を始めよう」

直哉の号令にみんなはそれぞれの場所をチェックし始めた。

直哉はあちこちから出る要望に答えつつ、色々な家具を造っていった。



「こっちが敵とぶつかる方角だよな?」

ラリーナが森の一角を見ながら聞いてきた。

「そうだね。まだ、何も見えないけど」

直哉が答えると、

「罠を張っておくか」

面白い事を言い出した。

「それは良いね。でも、正面に壁のように罠を張ると敵が拠点を迂回する可能性が出てくるね」

「そうか。それなら逆に、拠点へ誘導するような罠にするか?」

「そうしよう」

ラリーナと直哉は、敵が来る方向にある森の中に、地形を利用した罠を張り巡らせていった。

「間違えて、解放軍の人が行かないように連絡しておかないと危険だな」

直哉はマーリカを通じて、防衛拠点の場所や張り巡らせた罠のことなどを伝え、解放軍が到着するのを待っていた。




◆その夜


直哉達はフィリアが作った料理を食べながら現状の確認をしていた。

「俺とラリーナで、敵が来るであろう方角の森に罠を仕掛け、この拠点にたどり着くように誘導しておいた」

「リリは、周囲の雑魚敵を掃討していたの」

「わらわはその援護じゃな」

リリとエリザは協力して、先ほど逃げていった魔物達が再集結しないように倒していた。リリが飛び回り敵を見やすい場所へ追い立てて、エリザが打ち抜いていた。

「私は、各方面にいる忍び達と連絡を取り合っておりました」

直哉はマーリカを見て、

「解放軍と魔物達の様子を話してくれるかい?」


「はい。解放軍は現在の所、アルカティアの皆様、リカード様の皆様、それと各地に点在している大小様々な集落の生き残り達が集まっているようです。ただ、戦闘出来る者の数は少なく、あまり期待出来ないとの事でした」

マーリカの説明を受けた直哉は、

「戦闘能力が低い者は、新しい街に残って貰おう。パルジャンさんにもその事を伝えて貰える?」

「魔物達の様子ですが、日が沈んでから動き出したようです。このままの速度で侵攻してくるのであれば、明日の夜明けまでにはこの森へ到着する模様です」

直哉は地図を見て、

「この森って事は、この拠点までは微妙って事?」

「今夜の速度次第です」

「そっか。とりあえずは休もう、数時間でも良いから寝ておこう。明日の明け方には動き出すよ」

そう言って、ご飯を食べ終え、風呂に軽く浸かってから仮眠を取ることにした。




◆次の日夜明け前


直哉は数時間の仮眠で、指輪の使用制限が解除されたことを確認した。

リリとラリーナ達は既に起きていて、森の状況を確認していた。


「二人ともおはよう」

身支度を終えた直哉が声をかけると、二人は嬉しそうに直哉の元へやって来た。

「おはようなの!」

「おはよう」

直哉は二人が森の中を駆け回っていたことを察して、

「早いね。森はどうだった?」

「かなりの数の動物たちがこちらへ逃げてきていて、罠にかかることは無かったみたいだが、あれだと、罠がない部分が丸わかりだぞ」

「ちょうど、この拠点へ誘う形になったという事だね」

直哉は森のマップを表示させ、昨日の罠の場所と実際の森を照らし合わせて見ていた。

「それと、この森は薄暗く日中でも日差しが多くないので、もしかしたらそのまま攻めてくるかもしれない」

直哉はそれを聞きながら、前方の敷地の四隅に柱を建てた。


「敵が昼間に来てくれたら、今建てた柱の中へ誘導してくれる? 一気に木々を伐採して日差しを入れるから」

「ふむ、それが最後の罠という訳だな」

「そうだね。昼間に攻めて来ないようなら、こちらから打って出て、押し出すか誘い込むかはその時その時の状況次第だな。最終的にフィリアの破邪魔法が必要になるから、フィリアの負担を減らさないと駄目だよな。つまり昨日以上にマーリカとラリーナの遠距離連絡が必要になるな」

そう話していると、フィリア達、残りの者が身支度を終えて集まってきた。


「おはようございます」

挨拶を済ませ、直哉から説明を受けた。

「敵が攻めてきた場合は、柱の内側へ誘い込み、こちらが攻めた場合は、臨機応変にですね」

フィリアの解答に、

「そういうことです」

直哉は肯いた。



しばらくして森中に、人というか魔物というか、魔獣の叫び声が聞こえて来た。

「ぐるぁぁぁぁぁ!」

「ぎしゃぁぁぁぁ!」

直哉達は迎撃態勢を整えて待ち構えた。

「来るよ! 作戦通り迎撃開始!」

直哉の号令に、リリ達は飛び出した。

「ちぇっすっとーーーー!」

「おらおらおらおらおら!」

「ディバインプロテクション!」

エリザとマーリカは待機していた。


「上手いな。あの連携なら罠に誘い込めるな」

リリとラリーナは二手に分かれ、丁度森の木々を消滅させる地点へ追い込むように攻撃を行っていた。

「ストリングウォーター!」

「サンダーボルト!」

リリは殴りながら魔法を使い、罠の地点へ敵を押し流していった。

「そらそらそらそら!」

ラリーナは、圧倒的な攻撃量で雑魚敵は吹き飛び、その他の敵も徐々に追い込まれていった。

直哉は、最大限効果のある数が罠の地点に入るのを待っていた。


(まだだ。焦るなよ俺!)

直哉は深呼吸して冷静さを取り戻しながら戦況を見つめていた。

「よし! 今だ! 行くよ!」

直哉は合図を出した後で土地タブから整地を選択して、予めセットしておいた範囲の木々を消滅させた。

「ぎしゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ぐるぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

突如現れた昼間の光源に、キメラ達は狼狽した。

「エリザ! 出番だよ!」

「心得たのじゃ!」

エリザは靴の魔術を起動して飛び上がっていった。



順調に敵を殲滅していったが、

「ご主人様! 罠を乗り越えてくる一団が居ます! ご注意を!」

マーリカから警告が飛んできた。

「マリオネット!」

直哉は中央の殲滅戦から視野を広げ、森全体を注視していった。

「なるほど。やっぱり中央のキメラは始めから捨て石だな。罠を乗り越えてきてるのは三カ所だ。そのうち二カ所はかなり強い魔物が居るね、もう一つは、飛べる魔物だ」

直哉が細かく解析していくので、

「そこまで敵の能力がわかるとは、流石ご主人様です」

マーリカの言葉に、

「罠の中に強度の異なる防衛網を張り巡らせているのだよ。それをマリオネットでチェックしていけば、どの場所にどの程度の力を持った魔物が通り過ぎたかが判る仕組みなんだ」

「流石ですね」


直哉はラリーナに呼びかけた。

「ラリーナ! 雑魚敵はリリとエリザに任せて、強敵の一角に当たってくれる?」

「おう! 場所を教えてくれ」

直哉が場所を教えると、

「見えた! 確かに手強そうだ。他にも居るみたいだが、大丈夫か?」

「最善を尽くすよ」

直哉との通信を終えたラリーナは、

「貫け! シルバーニードル!」

細い針を展開させて、強敵の一角に突撃していった。



「あれ? ラリーナお姉ちゃん?」

リリは突然反転したラリーナを見て不思議に思ったが、

「あっちに強いのがいるの。お兄ちゃんからの援護要請があったみたいなの。それなら!」

リリはエリザの位置を確認して、

「一気に行くの!」

膨大な魔力を練り始めた。

エリザはリリが膨大な魔力を溜め始めたのを見て、

「一気に決めるつもりじゃな」

そう言って、リリに群がる敵を排除しながら、逃げ出そうとする雑魚を足止めしていた。



「マーリカ! あの飛んでる奴の一団を任せて良いか?」

「御意」

マーリカが空を飛ぶ敵に向けて魔力を練り始めた。

「フィリア、マーリカを頼む」

「わかりました」

フィリアはMP回復薬を飲みつつ返事をした。

「雷遁! 稲妻走り!」

マーリカの忍術が飛び回っていた敵に炸裂した。

「ぎぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」

マーリカの雷に直撃したキメラは、苦しみながらも飛んで逃げようとしていた。


そこへ、フィリアの援護魔法が飛んできた。

「天より来たりし光の精霊よ、我が魔力にひれ伏し邪悪なる者に裁きの鉄槌を!」

「エンジェルフィスト!」

膨大な量の光のエネルギー弾が飛んでいき、飛ぶキメラに容赦なく当てていった。

「ぎぎぎ、ごぎゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」

もの凄い叫び声を上げながら地面へ落下した。

「土遁! 土石波壁!」

さらに、マーリカの忍術が完成して、飛ぶキメラを埋葬した。

「これで、身動き出来ないはずです」



「マリオネット!」

直哉は残った強敵が率いる一団の前に出て、マリオネットを展開させた。

「きしゃー! きしゃー!」

全身を黒い霧に覆われ、何かをしきりと訴えているようであったが、直哉が聞き取る前に襲いかかってきた。

「何だ? 何かを言いたかったのではないのか?」

直哉はボスキメラの攻撃を、盾を使ってしっかりと防ぎ、攻撃へ転じようとしたが、もの凄い力で押さえ込まれていった。


「ぐぬぬ」

それを好機と見たキメラ達が直哉へ飛び掛かってきた。

直哉は慌てずマリオネットで剣を構え、剣山のようにして迎撃した。

大半のキメラは串刺しに合い、身動きが取れなくなっていた。

だが、キメラの一部はその剣山をも乗り越えて直哉へ攻撃を開始しようとしていた。

「エンジェルフィスト!」

そこへ、フィリアからの援護魔法が飛んできて、直哉に群がろうとしていたキメラを迎撃してくれた。

「助かった! マリオネット!」

直哉は更に多くの糸を操作して、身動きの出来ないキメラとフィリアが迎撃してくれたキメラを罠の内部に押し込んだ。

(後は、こいつだけか)

直哉は踏ん張って、ボスキメラの攻撃を防いでいた。



「おらおらおらおらおら」

ラリーナがもう一体のボスキメラに突撃していくと、ボス以外のキメラ達がボスを守るように立ちはだかったが、

「お前達では、千年早い!」

ラリーナの声と共に、疾風となり駆け抜けていった。

「雑魚は大人しくしていろ!」

立ちはだかったキメラは一人残らず、足を粉砕されるか切断されるかで身動きが取れなくなっていた。

ラリーナは黒い霧を纏ったキメラと対峙した。



その時フィリアの光魔法が、柱の内部を焼き払った。

「天より来たりし光の精霊よ、我が魔力と共に邪悪な力を祓いたまえ!」

「ブレイクウィケンネス!」

フィリアの渾身の一撃が中に投げ込まれたキメラ達を浄化していった。


その光景を見ていた、後ろに控えていた男が笛を吹いた。

「ピー」

それは、撤退の合図であった。

黒い霧を纏ったボスキメラ、二体は、その他のキメラを囮に使い、その場から退却した。


「ちっ! 逃したか!」

直哉は、追撃しようとしたラリーナを止めて、

「フィリアの消耗が激しい、今はフィリアを守ろう。マーリカ!」

「ここに」

「済まないが、忍びを動かしてくれるか?」

「お任せください」

直哉は少し考えて、

「昨日、敵を偵察した人とは違う人を、撤退していく敵の偵察に出してくれる?」

「わかりました」

マーリカは、直哉の意図がわからなかったが、言われたとおりにした。


「とにかく拠点まで引き上げるよ!」

直哉達は拠点に立て篭もることにした。


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