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第九十九話 対となる剣

直哉は、

「まず、キメラについて知っている事はありますか?」

「キメラとは、あの人間と魔物を物理的に繋げた生物のことか?」

「はい」

管理者は眼を閉じて、何かを呟いていたが、

「残念だが、私には何も教えられない」

直哉は他のことを聞いた。

「では、ゲートについて教えて貰えませんか?」

また、管理者は眼を閉じて、何かを呟いていた。

「ふむ。少しだけだが、許可が出たぞ。奧へ参れ」

そう言うと何かを操作した。



塔の中が変化して、奧への道が開けた。

「通れるようになったから、入ってこい」

直哉達が奥へ進むと、大きな窓から光が入る明るい部屋に机と椅子が置いてあるリビングのような部屋になっていた。

「何か臭うの。あんまり行きたくないの」

リリが顔をしかめると、皆も同じように思ったのか、窓を開けて換気をした。

「直哉様! あれを!」

フィリアが、正面の椅子に何かが座っているのを見つけた。



「が、骸骨?」

一同が驚愕していると、骸骨がしゃべりだした。

「良く来たね。この姿を見せるのは数百年ぶりだ」

骸骨が動くと異臭が漂った。

「臭いの! そして、嫌な感じなの!」

リリは、風の精霊を使って、臭気を外へ追いやった。

風の魔法に骸骨が、

「なかなか、心地よい風だ。骨身にしみるぞ!」

と、言って来たので、あえて全員でスルーした。

「この感じは、バルグフルで感じた事があります」

直哉はこの時確信した。

「あの、特殊な魔法石を売っていた方だね」

「はい。あの化粧の濃い方から感じた嫌な感じと同じです」

直哉は、その人が管理者なら納得がいくと思った。

「都合良く援助してくれたし。感謝だな」



そして、直哉はソラティアの管理者の前に座り、話を聞き始めた。

「それで、ゲートについて何を教えていただけるのでしょうか?」

「そうだな。ゲートとは、この世界のシステムが管理している場所であれば何処にでも跳ぶことが出来る代物だ」

直哉は身を乗り出して、

「造る事は出来ないのですか?」

管理者は冷静に。

「出来るよ。鍛冶職人の上級職である上級鍛冶職人であれば」

直哉は喜びながら、

「そうなんですか?」

「ただ、システムが許可を出さないと覚えられませんが」

直哉は、少しガッカリしながらも、

「結局システムが鍵を握っている訳だ」


「そうなるね。他に聞きたいことがあるかね?」

「システムとは、いつでも話が出来るのですか?」

「いいえ。こちらから、案件を飛ばしておくと、向こうから話しかけてくれて、ようやく繋がります」

直哉は管理者の言葉をしっかりと覚えて、

「ふむ。こちらの都合では話さないと言うことですね?」

「システムは、優先順位があり、高い順に処理していくそうだ」

「なかなか、厄介ですね」

直哉は考え込んだ。

(さて、どうするかな?)



「少し良いか?」

リカードが口を挟んできた。

管理者は、

「なんだい?」

「先程から二人は、何を話しているのだ? 我々にもわかる言葉で話してくれないか?」

リカードの願いに、

「今回の話は、私の権限では、この世界の人に聞かせることは出来ません」

「なんだと?」

管理者は現在システムからの情報統制下でも、話せる人物を教えた。

「だが、直哉からは話せるはずだ」

リカードは納得が行かないと噛み付いた。

「残念だが、それがこの世界の理だ」

管理者は解答を拒絶した。


直哉は、システムについて考えていたが、リカードの話にも興味を持った。

「あれ? リカードには、解らない言葉だった?」

「おぉ! 今のなら解るぞ!」

直哉は謎を解決するために、

「ちなみに、何と言ってました?」

リカードは片言の日本語で、


「そう、な、で、しか? とか。とにかく難しい言葉で話していた」

「なるほどです。この世界の言葉と、俺の世界の言葉は違うのか」

直哉は、他の仲間にも聞いてみた。

「リリ達は、どうだった?」

「リリにもわからない言葉だったの。でも、お兄ちゃんの表情や言い方で、どんな感じなのかはわかる気がするの」

「そうですね。恐らく帰還の方法について聞いていたと思います」

「だが、何かに邪魔されている様な感じかな?」

リリに続きフィリアとラリーナも加わってきた。


直哉は順番に嫁達の頭を撫でながら言った。

「そこまで解るんだ。概ね正解だよ。キメラについて聞いてみたけど、教えてくれなかったので、ゲートについて聞いてみたんだ。そしたらこの世界を管理している者の許可がいるみたい」

「キメラ? もしかして治す方法ですか?」

フィリアの質問に、

「それも含めてね。弱点とか解ればフィリアの負担が減るでしょ?」


「なるほどな、それなら私が弱点を知っている」

ラリーナが口を挟んできた。

「巨人のキメラと戦った時に、もの凄い再生能力で、それこそ頭を斬り落としても再生してきていた。攻撃自体が単調だったためすぐに小間切れにする事が出来、その時に巨人の中からコアの様な宝石が出てきた。それを叩き割ったら巨人のキメラはキラメキながら消滅した」

直哉は説明を聞いて、

「つまり、その宝石を破壊しないといくらでも再生するという事だね。だけど、その宝石が体内になかったらどうやって倒すのだろう? その宝石を探しに行かないと駄目なのかな?」

「そこまではわからんが」

直哉は、

「それはもちろん。べつにラリーナに問い詰めている訳では無いのだよ。管理者にこの辺が聞けたら良かったのにって言う意味だからね」


「なるほど。私への抗議だったんだね。眼からウロコが落ちるようだよ!」

管理者がおどけた感じで言うと。

「それは、意味が違うし、そもそも眼が無いし!」

堪えきれなくなった直哉は思わず突っ込みを入れていた。

「からからから。良いねぇ!」

管理者は文字通り乾いた笑いで締めくくった。

直哉はグッと堪えて話しを進めた。



「最後に、ゲートの作成するスキルを覚えたいので、システムに許可を貰いたいのですが、仲介して貰えますか?」

直哉の願いに、

「ふむ。この地方に起こりうる大戦を防いでくれれば、システムから直哉に接触するように案件を出しますよ」

「大戦とは、バルグとのですか? それとも、魔王とのですか?」

「今回は、バルグとの大戦ですね」

「わかりました。やってみます」

この時、直哉はバルグとの大戦に巻き込まれる事になった。

「よろしくね。私はシステムから手出し無用の制限を受けたので、民が傷つくのを黙って見ていなければなりません」

直哉はリリ達、嫁を見てから、リカードを見て、その他の仲間をみた。


「みんな。俺の考えを聞いてほしい」


直哉は、管理者と話した内容をそのまま話して、

「俺は、俺自身の目的の為にソラティアを救いたい」

直哉の願いにリカードは、

「しかし、どうやって止めるのだ?」

「ソラティア軍を知恵と力で止める」

直哉の言葉に、

「それでは、大勢の命が失われるぞ?」

「失うのは、キメラとなった方々と、エリザの父上の力だ」

「そんな事が出来るのですか?」


直哉は考えていた方法を話し始めた。

「まずは、拠点を造りそこでソラティアの解放軍を組織します。場所はアルカティア次第ですが、ソラティアとアルカティアの間が良いですね」

「ソラティアの解放? 何から解放するのだ?」

リカードの疑問に、

「もちろん、エルムンドからです。俺たちのやることは、あくまでもエルムンドの排除です。ソラティアの民は恐らくキメラにされているでしょうから、その浄化、及び撃破です」

「我が父の事は遠慮無く倒して貰って構わんぞ。わらわもそのつもりで来ているのじゃ」

エリザが力強く言った。


「それは、対峙してから決めるよ。どうして、こうなったのかを聞きたいから」

「あまいのじゃ」

「根本を解決したいからね」

直哉の言葉にリカードは、

「とにかくアルカティアからか。うまく取り込めると良いな」

「それは、パルジャンさんに頑張って貰いましょう」

「砦には解放軍として参加してくれる人を募集します。ソラティア共和国全体に募集を掛けます。ここで、ソラティア軍を止める戦力を整えます。これを力とします」


「次に知恵についてですが、これはマーリカを中心に情報戦を行います。さらに同時に不慮の事故が起きた時用に、ルグニアとバルグフルに連絡を入れて貰います」

直哉の考えにリカードは、

「私が城へ戻って兵を連れてくればよいのか?」

「いや、それでは時間がかかりすぎてしまう。それにリカードは貴重な戦力ですから、このままこちらで活動して貰います」

マーリカは直哉の前に跪いて、

「ご主人様、何なりとご命令を!」


「始めに、お父さんに連絡を取る事は出来る?」

「出来ます」

「そしたら、マーリカの元に諜報活動出来る者を多数と、アシュリーさんへの伝言と、バルグフルまでのつなぎをお願いしたい。その後は、マーリカの元に諜報員が集まったら動こう」

「畏まりました」

マーリカは父親に連絡を入れていた。



「そうだ! 古代王国のお宝は無いのか?」

リカードが周囲を見渡すと、リリ達もそわそわし始めた。

「お宝?」

管理者が聞き返すと、

「ここが、古代王国時代から残ってる塔ならば、その時代のお宝が眠っていると思ったのですが?」

直哉の説明に、

「ふむ。上の管理室に私が商人時代に集めたお宝のうち、魔法のかかった剣があった気がするぞ」

「貰ってもよいか?」

管理者の言葉にリカードが反応した。


「そうだな。では、その中で炎が付与された剣をやろう」

管理者が腕を動かすと、上から一振りの剣が降りてきた。

「これは? リカードの剣に似てますね」

直哉の指摘に、リカードが剣を取り出すと、管理者が身を乗り出してきた。

「これは!? 風が付与された剣だな。たしか魔王を倒しに行くと言っていた。バルグフルの王に渡した物だな」

「ご先祖様に?」

リカードが剣をまじまじ見ていると、


「リリはお兄ちゃんに造ってもらうからいらないの!」

「私は装備出来ませんし」

「私も直哉に全てを任せている」

「わらわは弓だし」

「私もご主人様から頂いております」

リリ達がそれぞれ言ってきた。


「そういうわけなので、リカードが持っていてください」

リカードは少し考えてから、ゴンゾーを見て、

「ゴンゾー、良いか?」

「もちろんでございます」

ゴンゾーは一歩下がった。

「アンナさん。この剣を受け取ってください。私の風の剣と対になる炎の剣を!」

「わかりました」

アンナは、炎が付与された剣を受け取った。

「このような貴重な代物をありがとうございます」

全員で管理者に礼を言った。



「では、ひとまず屋敷へ戻り、パルジャンさん達に話しましょう」

直哉達は屋敷へ帰ってきた。

直哉は屋敷へ戻ると共に、リカードを伴いパルジャティア城へ向かった。

その間にリリ達は、非戦闘員達に話をした。

パルジャンは直哉の提案に驚きながらも、同意しアルカティアへの使者として、共に来てくれることとなった。



パルジャン達の支度が出来るまで、直哉は出来る限りのMPを使い、要塞の作成を急いだ。

要塞に足りない物資はパルジャティアから買い付け、それ相応の要塞が出来上がった。

(ふぅ。大まかな物は出来た。後は細かい修正を入れていくだけだな)

直哉が一息ついていると、嫁達が集まってきた。

「はい。タオルなの!」

「お茶でございます」

「甘いものだ!」

「みんなありがとう」

直哉が手を伸ばすと、リリ達は、

「お兄ちゃんはそのままで! リリ達がやるの!」

そう言って、リリは直哉の汗を拭った。

そしてラリーナが切り分ける前の大きさの甘いものを口に押し込んだ。

「んぐんぐ!」

直哉が苦しそうにしているので、

「お茶です!」

フィリアがお茶を流し込んだ。

「ふんぐー」

直哉が変な汗をかいてきたので、リリがその汗を拭き始めた。


「何をやっているのだ?」

通りかかったリカードがリリ達を止めた。

「むぅ。上手くいかないの」

「直哉の暗殺か?」

「違うの! さっきリカードさんとアンナさんがやっていたの! リカードさんが幸せそうだったから、お兄ちゃんにやろうってお姉ちゃん達に相談したの。でも。上手くいかなくて悲しいの」

そこへ、アンナがやってきて、

「それはね、相手に対する思いやりが足りないからよ。彼が幸せを感じる程度にやらないと、こっちがいくら愛を持って接しても、相手には苦痛しか感じないのよ」

リリは俯いて、

「難しいの」

「では、逆に考えて見て」

アンナの言葉に顔を上げた。

「逆に?」

「リリちゃんは、直哉さんにギュッとしてもらうのは好きでしょ? 幸せでしょ?」

リリは直哉に抱きしめられることを想像して喜んだ。

「うんなの! 好きなの!」

「でも、直哉さんがリリちゃんの事を好きと同じように抱きしめちゃうと、リリちゃんの腰の骨が折れるというか、身体を引きちぎってしまうくらいの力になるでしょ?」

リリは力いっぱい抱きしめられる事を想像して、

「あー、わかったの!」

「そういうことか」

「なるほど!」

嫁達三人は直哉の幸せポイントを探すべく、直哉ににじり寄って行った。

そんな様子を、エリザとマーリカが羨ましそうに見つめていた。



直哉が嫁達ににじり寄られている頃、直哉達の元にリンダ達がやって来た。

「勇者直哉様。聖女様」

それを見つけた直哉は、

「あ、ガンツさん達。考えはまとまりましたか?」

と、話しかけに行った。

「はい。おい、リンダ。自分で話をしろ!」

ガンツに押し出されて、りんだが前に出てきた。



「考えがまとまりました」

フィリアも話を聞きに来た。

「聖女様」

リンダはかしこまり、話し出した。

「私達は勇者様と共に、行くには覚悟が足りません。ですが、このソラティアの開放は手伝います」

「そうですか。わかりました。それでは、開放軍として参加してもらい、ソラティア開放後に、もう一度覚悟が出来たか聞きます」

リンダは驚きながら、

「ありがとうございます!」

と言って、出会ってから一番の笑顔を見せた。

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