第一話 ゲームの中のお話
◆現実の世界 下校
風見直哉は退屈な授業の終わりと共に、自宅への道を急ぎ足で歩いていた。
本日大規模アップグレードで新ジョブが追加されるMMO『ドラゴンバルグ』
直哉は帰宅すると、ゲームするためのオプションを整え、自分の部屋へ閉じこもった。
アップグレード版のメンテナンスが終了したと同時にサーバーへログインし、アップグレードを開始する。
全国で数十万の人がプレイしているため、中々進まないインストールに、直哉はサブ画面で攻略サイトの情報板をチェックしようとした時、
ゲーム画面がまばゆく光り始めた。
「なんだこれ?」
そのまま、光は部屋全体を包み込み何も見えなくなった。
◆はじまりの丘
暖かな風と日差しが照りつける中、直哉は切り株に座った状態で覚醒した。
「う~ん・・・ここは?」
部屋の中で、椅子に座ってゲームしていたはずなのに、いつのまにか外に放り出されていた。
辺りを見まわすと、高い木に囲まれ、高い柵で囲われた檻のような場所だった。
扉が一カ所あり、その扉の向こうには遠くの方に城壁が見えた。
(・・・・・・・・・)
直哉には見覚えがあった。
(ここは、ドラゴンバルグの始まりの丘かな?)
とりあえず、いつも見ているように視線を下に移すと、不自然なマス目が浮かんでいた。
直哉が移動すれば、同じように移動し、目をつむっても見えるマス目。
ゲーム画面にあった、ウインドウを開くボタンであった。
そのマス目に触ってみると、目の前に文字が浮かんできた。
ゲーム内でよく見るステータス画面であった。
複数のタブで管理されている画面を見ていく。
ステータス画面
ナオヤ
冒険者
冒険者ランク1
Lv:1
HP:20
MP:20
力:10
体力:8
知力:8
素早さ:8
器用さ:8
運:8
ボーナス 5
(俺自身がプレーヤーになってるな、それにログインは俺のアカウントのようだ)
直哉はステータスを確認し、その他ゲームと同じような項目を確認し、いつも使っている、システムのタブを触ってみた。
「あれ? ログアウトの項目がグレーになって選択できないぞ?」
いつものゲームなら、終了するときはログアウトを選択すればゲームを終了できるのだが、今回は出来なかった。
「つか、管理者に通報する項目もグレーだし、う~む・・・。夢かな?」
首をかしげながら、自分の状況を確認していった。
(どうやら、ドラゴンバルグの世界らしく、俺のアカウントの続きで、三回目の転生後って感じだな)
ドラゴンバルグは、サブのアカウントが認められておらず、他の職業をやりたいときは、キャラを作り直すか、一定のレベル以上での転生しかなかった。
転生すると、ボーナスが発生し、冒険が楽になるのがうりである。
一回目の転生ボーナスは、所持金と転生前のキャラクターの腕輪で、装備すると転生前の職業とレベルに応じたステータスの上昇であった。
二回目の転生ボーナスは、一回目のボーナスと持ち物の引き継ぎであった。
三回目の転生ボーナスは、一回目・二回目のボーナスとスキルの継承であった。
直哉は、三つの腕輪を装備して、ステータスの上昇を確認した。
アディア(戦士Lv150)の腕輪 HP+150 力+15 体力+15
カソード(魔術師Lv200)の腕輪 MP+200 知力+40
バザール(商人Lv100)の腕輪 HP+50 力+5 体力+5 運+10
(よし、かなり上がった、つか初期ボーナス5って振り直せよな、まぁ、腕輪のおかげでかなり上がったから、とりあえあず保留しておくか)
直哉はぼやきながらスキルの選択に移った。
三回目の転生だと、各キャラクターからひとつずつのスキルを継承することが出来る。
(魔術師の最強範囲魔法とか面白そうだけど、現在の知力とMPじゃ、お察しキャラになるな)
直哉は悩んだ結果、
戦士からは残りMPが100以上だったら自然にHPが回復していく、パッシブスキル『リジェネ』
魔術師からは、MPが徐々に回復する、パッシブスキル『魔力吸収』
商人からは、レアものを見つける事が出来る、パッシブスキル『目利き』
の3つを継承した。
(所持金は・・・・、135G?)
もう一度所持金を見直して、
「えっ? あれ?」
直哉は、昨日の行動を思い返していた。
(商人で露天を見て回っていたけど、一億Gはあったと思うんだけど上限でも出来たのかな、それにその横に688Sや253Cって記述があるけど何だろう?)
直哉は気を取り直して、アイテムの選別に入った。
(あれ? 二回目の時は20個のアイテムを引き出せたのに、三回目は3個かよ)
う~む・・・・。
と、アイテム欄を見ているときに、課金アイテムのタブがあることに気がついた。
(もしかして、課金の武器防具が入ってるのかな)
確認してみると、商人時代に集めたチケットで回したガチャの商品がそのまま入っていた。
しかし、灰色になり取り出せないアイテムも多くあった。
(この、灰色のアイテムは取り出せないか。取り出せるアイテムの中で、レベル1で装備できる武器防具は・・・と、結構あるな。それなら、とりあえず、冒険者ギルドに行って、なれる職業やクエストなどを確認してから取り出すか)
直哉は、今できることをやり、扉に手を掛ける前に、始まりの丘にある切り株や柵など、持って行けるものはないか物色し始めた。
「たしかこのあたりに・・・」
不自然に窪んだ木の根元を探っていくと、縄に木の棒を結んだ隠し扉のスイッチがあった。
「おぉー、これもあるのか」
直哉は、木の棒を引っ張ると、近くの柵が開き、奥へと進めるようになった。
そこには、全HP回復、全MP回復のポーションが10個ずつあった。
「これも、そのままだね」
アイテムボックスにしまうと、今度こそ始まりの城に向けて出発した。
20180128 本文を修正しました。
しかし、灰色になり取り出せないアイテムも多くあった。
(この、灰色のアイテムは取り出せないか。取り出せるアイテムの中で、レベル1で装備できる武器防具は・・・と、結構あるな。それなら、とりあえず、冒険者ギルドに行って、なれる職業やクエストなどを確認してから取り出すか)
課金アイテムの大半に灰色のロックを入れました。