酒×新たな疑問=殿下の依頼
「んで?君はなんて言う名前だい?医務室長ということと殿下の配下ってことしか分からないんだが」
「ん?……あー。そっか、名前言ってなかったか」
「既に2時間飲んでいるがな」
知ってるけどな。教えてもらってない。
「リスト。姓はバルデム。伯爵家の次男坊だよ。公爵様?」
「言うな。私はあの豚の血を引いてないことを信じてる。色合い似てるし豚の親とそっくりだから無理な話だけどな。つーことで敬語やったら怒るぞ」
「お前本当変わってるよな。変。自分の親を豚って言うし」
「豚だろ?」
「…………豚、だけど」
ここまでを平常心のように会話しながら私は内心動揺しまくっていた。だって……だって、ねぇ。
「バルデムって確か外交面で強い家よね?」
「ああ。兄貴が継いでくれたから俺は自由なんだよ」
あっれー………?バルデム?なんでかな?リストってアースウェルデ家じゃねーの?しかもアースウェルデだった場合は子爵家ですよ?
「おや、ルナ嬢もここにおったか」
「「ッ!?」」
「ほう。息もぴったりだの。ダースが妬くぞ、ルナ嬢」
「で、殿下!?」
「久しいの、ガレイアの令嬢よ」
急に後ろから響いた心地良いテノールボイスに思わず小さく叫んでいた。………殿下、いつから居たんだい?全く気が付かなかった。
「お久しぶりです。お招きありがとうございます」
「………して、その心は?あぁ、ダースから大体聞いておるから普段通りの口調で頼む」
「ではお言葉に甘えて。面倒ごとの匂いがします。帰りてぇです」
猫をポイ捨てして普段の口調で言うと殿下は腹を抱えて笑い転げた。……この人、そこまで久しぶりじゃないのよ。何故かお忍びで家に遊びに来るから。ダースの部屋に行ったら殿下が居た時には二度見したね。びっくりどころじゃなかった。
「くくっ。やはり面白いの、お主等は」
「褒められてない気がします」
「あれは楽しんでるから褒めてないと思うぜ。性格悪ぃ」
酒が入ってるからかリストも毒舌がオープンになっている。……あんた、仮にも仕える主なのに。うちの使用人みたいになっちゃ駄目よ?
「性格が悪いのは知っておるよ。あぁ、そうだ。ルナ嬢の気配は城から消えておらんかったからな。人魚の水龍も壊れとらんならば安全だろうと思いダース達は休ませておいた。今日は自由に過ごすが良い」
「殿下が良い人に見えます」
「それは幻覚だ。アレは何かを企んでいる顔だからな」
「やっぱり腹黒に見えます」
「それが正常だ」
なにこの人。合いの手がすごい合うね。なんだろこれ……。
「ふむ。まぁ良い。リスト、後でお主は話がある」
「だりぃです。逃げたいです」
「断る。お主の見合いの話を蹴ってきてやったのだぞ?」
「ありがとうございますエデン様!一生付いていきます!」
リスト、あんた誰よ。原作のクーデレ感が無くなってネタキャラっぽくなってないか?
さて、私はあることに気付いている。………殿下、何か後ろ手に持ってるんだよね。何かな、あれ。
「殿下、話を遮ってしまい申し訳ないのですが本題に移ってもらっても構いませんか?」
私の言葉を聞いた直後、殿下の口元がニヤリと嫌な形に歪むのが見えた。………嫌な、予感。
「そうだな。では本題に入るとしよう。ルナ嬢には今回、あることに協力してもらいたい」
そこで言葉を区切り、タメを置いて殿下は力強く宣言するように言った。
「ルナ嬢、そしてリスト。お主等の力を繋いでダイナマイト、とやらを作ってほしいのだ」
無論、ダースには内密にな、なんて言って殿下は口元に人差し指を当て、悪戯っぽく笑った。
……………………………………ん?ダイナマイト?
ダイナマイト作り大作戦。殿下は色々フリーダムです。




