白黒の世界に芽生えるのは(医務室長視点)
「すまん、ここを教えてくれ」
「どこ?………あー、ここはこれをこっちに代入して二乗。後は自分で出来ると思う」
「ちょっと待ってろ、分からなかったら聞きたいから」
「はいはい」
俺の世界は白黒だった。色なんてもの、付いていなかった。
「………お!解けた!ありがとな!流石に兄上に聞くのは遠慮したいからな…」
「そうかそうか。つまりは反抗期か。お兄ちゃん悲しい」
「っ!?兄上っ!?何故ここに!?」
「何故も何もリストに用があったのだよ」
「俺エデンがいるの今知ったんだけど」
「今来たからの」
そんな俺の世界は今は白黒の他に二色の色がある。炎の色と光の色。ウィルとエデン、この国の王子達だ。
「紅茶でいいぞ」
「出す気ないから」
「菓子があると嬉しいな」
「図々しい。帰れ」
「じゃあ俺が用意するよ。砂糖は入れなくていいんですよね?」
「そうだな。甘すぎるのは苦手だ」
「了解です。よ、っと」
炎を操りポットを温める幼馴染を見ながら俺は雇い主を横目で見る。腹の中のドス黒さを感じさせない涼やかな目と視線がぶつかった。
「面白い輩が来る、と伝えようと思ってな」
「…………は?」
「お前の世界に夜の色が色付くのは確定だな」
小さく忍び笑いを漏らすそいつは楽しそうに肩を震わせる。その中の本性は相変わらず見にくい。
「………で?誰?」
「私の親友とその敬愛する主だ。親友の方は否定されるがの」
「…………お前の自称か」
「嫌がる素振りは見せるが私を見捨てないからな、脈アリだと思っている。あやつが私を嫌いになろうとも諦めないぞ」
「お前は恋する乙女か。押し付けがましいわ止めてやれ」
まだ見ぬエデン曰く親友、そしてその主。それが俺の世界に色を付けてくれるのだろうか。
「リスト、珈琲でいい?俺のついでに作れるけど」
「…………………どこの国に自分で珈琲作ったり兄に紅茶作ったりする王族が居んだよ…………」
「「ここにいる(おるの)」」
「……………あんた、誰?」
「いえ、決して怪しい者ではありません。はい」
「いやそれは木から降りてから言えよ」
しまった。現実逃避していた。今はあの王子達のことはどうでも良いんだよ。問題は目の前の不審者だ。
「………爆」
「ちょぉっとぉ!?危なっ危ないんだけど私死にかけたんだけど!?」
「死んでないだろ」
「防いだからね!あと不審者じゃないから!招かれてるから!城から抜け出そうとしてただけで!」
「…………抜け出す?」
不審者は発言から女だということは分かっていた。城の中でも人通りの少ない薬草園にある木に登り、そこから城の塀を越そうとしていたのだ。てっきり入ってる途中だと思って一応はエデンの部下である俺は撃退しようとしていた。……けど招かれてるのに、逃げる?後ろめたいことでもあるのか?
「最悪だよ………医務室長とか会いたくなかった……」
女が小さな声で何かをぼやくが俺には聞こえない。俺は上を見上げたまま問いかけた。
「お前、名前は?」
そいつはとても面倒くさそうにこちらを見て溜息を一つ吐き、木から飛び降りて俺の正面に立った。
「………………ルナティア・ガレイア。一応公爵家令嬢。豚宰相の娘よ。現在使用人から逃亡中」
ボロ布の中から美しい紫水晶の瞳が覗く。……名前は、知っていた。豚宰相でハッときたがそれは果たして娘が言って良い言葉なのであろうか。
「────もういいわ。吹っ切った。……………お願い、私を匿ってくれないかしら?」
……………………はい?
この場にツッコミを入れたくていつの間にか彼はこんなキャラに。原作ではクーデレ。超クール通り越してブリザードが吹き荒れている系男子です。
………ええ。彼をこんな風にしたのは前世持ちの変人、殿下です。そして性格が改変されて最早別人も1人。誰……?




