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会わせたくなかった奴(ランス視点)

実はランス様とシアン先生、知り合いです。

「…………………水龍」


シトリが、小さく呟いた。

それに呼応するように巨大な龍が海の中から姿を現す。


「………どう、かな」


不安げに俺を見上げてくるシアンの頭を撫でる。こいつの頑張りを労るように。


「よく出来てるよ」


俺が撫でるとそいつは嬉しそうに目を細めた。まるで猫みたいだな、なんて思った。






俺が異変に気付いたのは今朝。シトリがぶっ倒れていた……なんてことは初めてで慌てた。浴槽の中にあった水は全て無くなっていた。


「あのね、僕にも出来たんだ」


倒れたのは身体の中の水が足りないせいか。水に入ると途端に元気になったシトリは嬉し気に笑った。ずっと握りしめていた真っ白な手を開くと、そこにあったのは4つのアクアマリン。


「水龍………僕にも出来たよ」


俺はその言葉を聞いた瞬間、言葉を失った。






水龍の魔術。アクアマリンも俺には少し扱えるため、聞いたことはあるものだ。水魔術最高難易度の魔力喰いと呼ばれるものである。

水魔術というのは基本的に防御、そこから転じてのカウンター攻撃が主流となる。シトリのように大きな魔術を使える人は初っ端から攻撃を使うがそれは非常に稀。魔力が足りず諦めるしかないのが常である。


────そして、水龍とは最高の護衛術であり現時点で使える人物は皆無という恐ろしいものである。それを4体も生産したシトリが恐ろしい程の使い手だと改めて知る。流石は次期アクアマリンの守護者候補である。


作り方は至ってシンプル。魔力を込める。練る。入れる。終了。

しかしその入れる魔力は通常の魔術師の最大魔力の2倍。練るより先に魔力が暴走して意識を無くすか自我を失うかで終わりのため、使おうとする奴はアホだとも言われる。しかし先ほどシトリは言った。


「これ、魔力込めすぎるとアクアマリン壊れるし弾けるしで失敗ばっかりだったんだよね」


…………普通、逆である。改めてこいつは規格外だと再認識した。






「これ、ルナの役に立つかな?」

「立つだろ、流石にこれは」

「………そっか。なら良かった」


そうして俺は何故か伝説級魔術が使われる現場を見てしまった。過去100年は使われていないと言われるそれを。









「ランス、久しぶりですね」

「ん?………あぁ、シアンか」

「後ろの子はまた貴方が拾った子ですか?」

「……………まぁ、んなもんだ」


俺の家がある街まで着き、シトリの人見知り克服がてら店を見て帰ろうとしていると知り合いに会った。


「貴方ってガラ悪いですけど根は優しいんですよね。態度も悪いですし人を殺せそうな目つきですが」

「シアン、それ以上言うと怒るからな」

「おや、前に言いすぎた件に関しては謝罪しましたよ?」

「俺は許してないけどな」

「心が狭い男はモテませんよ?」

「煩いわ。今は妹や弟子の世話してれば楽しいからいいんだよ。というかお前にそれは言われたくないわ」



微笑を浮かべていたその顔がピキリと音をたて崩れるのを見た。……シトリ、見ちゃいけないものだから後ろにいろ。そのままアイス食ってればいいから。保存食渡すからあいつ見るなよ、絶対。



「………鈍感な人って、どうやったら気付くと思います?」

「知るか」

「聞いてくださいよ」

「絶対嫌だ」

「この前ですね、」

「シトリー、用事出来たから帰ろうか」

「愚痴れる人なんて貴方くらいしかいないんですよ」

「お前の玉砕記録なんかもう聞き飽きたわ。帰れ似非医者。脳内下世話男め。うちの妹たちに近付いたらただじゃおかねーぞ」

「あ、それなんですけどね」



この後俺は即座に転移して家に帰ることになる。そこでベッドで何か本を読みながらダースと話し込んでいる妹にシアンと会ったか尋ね、頭を抱えた。



お前ら、アレは丁寧な癒し手の先生の皮を被った狼だからな……?そろそろキレそうな狼なんだから近付くなよ、あんまり。






そして俺は翌日に更にとある事実を知り、深い溜息を吐く。まさかシアンの思い人とうちの妹と弟子がここまで仲良くなってるなんて思わなかった。下手な嫉妬が向くことがないことを願うばかりである。

現時点では俺に海草のサラダを差し出してくれるこのシトリだけが俺の癒しである。

ルナ様の言葉で言うとシアン先生は「肉食系男子」。そろそろキレかけております。暴走までカウントダウン。そして兄は言う。「妹よ、逃げろ」

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