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俺には俺の………(ランス視点)

ブクマ1000件突破しました。皆様ありがとうございます!

「─────ッ!」


迫ってきた魔物の爪を間一髪で避ける。ナイフを地面に突き立て、飛びずさった衝撃を殺す。やっぱり、そうだ。



「くそっ邪魔だよお前ら!」


胸元にある全ての石の欠片が入っている小袋を握りしめる。的確に相手を殺せる術を──風魔術を練る。


「消えろ」


ペリドットを頭で思い浮かべ一言発する。俺が戦っていたその化け物が断末魔の叫びをあげて息絶えるのを荒い息を吐きながら睨みつけた。







「今回は死者が一人、怪我人が二十五人。魔物は強くなっている」


冒険者ギルドの長がそう言うのを俺は長い前髪越しに見た。周囲の人々は大分疲労が溜まっているように見える。




『この魔物はきっと次第に強くなっていきます。怪我人はおろか……死人も出る程に』


「魔物は強くなっている。我らの疲労も溜まり気力も下がっている」


『このままでは……………この国は、魔物によって滅ぼされます』


「二度と死者を出さぬよう、皆気を引き締めよう。しっかり休み英気を養え」


『────ですから、兄様の協力が必要です』






「長、話良いかな」

「………そなたは何者じゃ」

「通りがかりの便利屋。今あんたが捌いてるそのクマもどき狩ったのも俺」

「ペリドット……かの?」

「残念。オールラウンダーだよ。一番強いのはサファイア」


長い髭に隠された口元がほう、と動いたのが見えた。



『出来ることならば魔物の核を。核となる宝石を一種ずつで良いので持ってきてくださいませんか?調べたいことがあるんです』



「俺の(パトロン)からの依頼でね、その魔物の核を全種類欲しいそうだ。研究のために」

「…………核を、かの」

「そ。俺、今日12種類の呪文を使って12体にとどめ刺したからさ。全種、ある筈だよ」


魔物というのは解体すると分かるんだが心臓のあった位置に魔石(コア)が現れる。この魔石は魔物にとっての心臓であり核と呼ばれ、通常の採掘して発見される宝石こと魔石とは区別されている。そして、この核は最期に与えられた刺激……つまりは攻撃と同じ種類の宝石になり、強い魔物ほど純度の高い核が生まれる。…………というのがこの世界の魔物における一般常識だ。



「あと、闇と光も初歩だけど使ったからそれも欲しい。何になってるかは分からないけど。…………頼む」


ルナのお願い、というよりはこれは懇願だった。必要に応じては奪い取ることも辞さなくて構わないと言われるくらいには。


だから俺は長を見る……否、睨むように見た。もしこれで渡してもらえなければ痛い目を見てもらわなければならない。流石に皆から慕われている長には攻撃を仕掛けたくないからな。だから威圧する。



睨み合い、威圧し合う。先に息を吐いたのは長の方だった。



「構わぬよ。この現象が少しでも改善するならば猫の手も借りたい状態だからな。光と闇で倒したのはどやつだ?」


心なしか表情を和らげ、ほけほけと笑う長を呆気に取られながら見る。もう少し何かあると思っていたのだが。


「貴公のことは一方的にだが知っておる。将来有望な見習いゆえ、うちのギルド専属で雇おうという意見もあったからな。しかしそれはうちのギルドの先見の力がある者がおったからこそ。……貴公を引き抜いたその目を持っている主に、これを渡してやってくれ」


茶目っ気たっぷりにウインクをしてきた長の言葉に俺は呆然とするしかなかった。







「ルナ。なんか普通にゲット出来た────って寝てるのか」

「少し仮眠をとらせています。今は普通の授業を休みにした分、全てを研究に費やしているので」



家に帰ると小さく寝息をたてて寝ている主兼妹がいた。シトリの姿は見えないからそいつはもう寝たんだろう……なんて思いながら弟子を見る。


「これ、何に使うんだ?」


魔物の核が入った袋を机の上に置きつつ聞く。研究、なんて言われても俺には皆目見当もつかない。俺より九つも下の妹がしたいことが、まったく。



「砕いて成分を分析、それに合った封印の開発、アメジストを媒体にして核に祝詞を刻み込みつつそれを体内に入れ込む呪術の開発をしなくてはならないそうです」


一息で言ってのけたその内容に思わず顔が引きつる。俺は強い魔力適性を持つオールラウンダーというやつであり、全種の魔術を使うことが出来る非常に稀な存在らしい。だから俺はダースに適性のある闇魔術と幻惑魔術、そして影魔術を教えられたんだが。


「………それ、1人でやんのか」

「強い適性を持つ自分しか出来ない呪文を開発するから自分1人での作業、と言っていました」


苦しげにダースが呟いた。

……俺にも一応アメジストを扱うことは出来る。だが、本当に微量の力──むしろ無いに等しいものだ。ルナの手伝いなんて出来そうも無いこのちっぽけな自分が、憎い。



『放っておいたら王都はおろか、この国……いえ、世界が滅びます。私はそれの原因を知っている。しかし、私が訴えたところで子供の夢物語と一蹴されるのは目に見えている。ですから、私は1人で原因を取り押さえなくてはならないんです。…………皆を、大事な人を守るため』



そう言っていたそいつは、年不相応に必死な──鬼気迫るような顔をしていた。

いつも涼やかに笑っている(ルナ)のそんな姿は、俺に危機感を憶えさせた。だから俺は協力する。こいつが必死で願うならばそれに応えるまでだ。



「何時頃起こすんだ?」

「そろそろ起こさなければ俺が怒られます。………しかし、ここ2日は呪文開発でほとんど寝てないので………」

「寝かせてろ。あと2時間は起こすな。その間にこいつの好きな甘いもん何か作っておくから。絶対食わせろよ、無理してでも」

「了解です」



ここ数日で随分と痩せたように感じる妹の頬を指でなぞる。俺には出来ることは少ない。でも───俺にとって大事なのはお前なんだ。だからお前が俺らを守りたいと言うように俺もお前を守りたい。



「あんま、無茶すんなよ」


髪を撫でているその隙間から、一筋の跡が見えた。夢の中でこいつはどんな辛い思いをしているのだろうか。



「ダース、お前も寝とけ。隈できてる。師匠命令な」

「……………分かりました」



俺には俺の出来ることを。早くいつもの笑顔を見れるようにするため。

ランス様も割とチートです。そしてルナ様は今回、かなり追いつめられています。原作でのトラウマエンディングが忘れられないからかと……。

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