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冬恋詩

作者: 葛城 壱

詩とも小説ともつかないものです

こんなのありえねぇ、とおもっても厳しく突っ込まないでいただけると嬉しいです

ハラハラと、

白い白い雪が音もなく舞い踊る

誰もが家族と、恋人と楽しげに笑いあうそんな通りの中、俺は一人立ちすくむ

遠ざかっていく君を追い掛けなければ、手を伸ばさなければ…

そう、思うのに…なのに俺は雑踏の中に立ちすくんだままで

たった一言の

「別れよう」で全てを拒否されたようで苦しくて、途方もなく苦しくて…

なぁ、どうして理由も言わないで行ってしまうんだい?

なぁ、俺の何がいけなかったんだい?


なぁ、俺は君の事を誰よりも愛しているのに


どれだけの事を思っても、もう君に届くことはなく…

ただ去っていく君の後ろ姿を見つめ…雑踏の中に消えていくまで見るだけで

ああ…

そんな、形にならない音が口からもれた

君が前に降りそそぐ雪を綺麗と言っていたから、今日は君も笑っていてくれると思ったのに…

目に焼き付いているのは、君が見せた泣き顔で

なぁ、泣くなよ

悪いのは君じゃなくてきっと俺なのだから

ポケットに冷えた手を突っ込むと、固い物が指先に触れた

ああ、ようやく思い出したが…今日はコレを渡しに来たのだった

もう、君に渡すことは出来ないけれど

なぁ、この指輪は、君に送る為に決心と共に手に入れたんだぜ…この指輪と告白は

取り出しかけた小さな箱をポケッに戻して、歩き出す

ああ、きっと一人雪を目にする度にこの想いを思い出すのだろう

君の言った通り…舞い踊るように降りそそぐ雪は綺麗は綺麗で…

はぁ、と白い息を吐きだし、歩き出す

先ほど見えていた君の後ろ姿に、楽しげな人々に背を向けて


――さようなら


君が最後に俺に放った言葉が染み渡るように胸に広がっていく

さようなら、か……

ふと立ち止まり、ハラハラと降りそそぐ初雪を見上げる

見上げた空には厚い灰色の雲と舞い踊る白い白い雪が――――




「――幸人さん?」

呼び掛けられた声に振り向くと、彼女が鼻を赤くして不思議そうに俺を見ていた。

なんでもない、と俺は首を振る。

どうやら雪を見ている内に三年前のことを思い出していたらしい。

「雪、綺麗ですね。私、こうして雪の日に好きな人といるのが、夢だったんですよ」

彼女がにっこりと笑いながら言う。手袋をつけてない手を空に翳して。

それはよかった、と俺は彼女に微笑みかえす。

なんとなく、だけれども彼女の手に自分の手を重ねて…握る。自分でやっといて何だが、照れくさくて顔を背ける。

彼女の手が俺の手を握り返してくる。

その手には、つい先ほど渡したばかりの指輪がはめられていて…。


君も今、誰かとこうして雪を見ているのだろうか

もう二度と言葉を交わすことはないだろうが、君が幸せであればいいと思う


もっとも、君にフラれた俺が言うことではないだろうが………


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― 新着の感想 ―
[一言] 私も冬恋持ってます 色々な物語があって大好きです
[一言] 短い文章の中にドラマがぎゅっと詰まっていて、素晴らしい作品だと思います。余分な記述がなく、スムーズに読みすすめられた上、少々せつなさも伝わって、とてもよかったです。
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