第02話 これからの住処 と これからの生活
「まさか、歩く事ができないとは・・・」
エルフの腕の中に納まり愚痴るローパー
いざ散策しようとしたら歩くというよりズルズルと這う感じになり
移動がめちゃくちゃ遅いのだ。
よく考えると当然だ、何せ足が無いのだから。
ちなみにジャンプは出来た、疲れるし遅いけど。
それを見てコウが「では、私がだっこします」という事で抱っこされる事になった。
一瞬ロシアの帽子という事で頭に乗ってやろうかとも考えたのだがやらない。
俺は紳士なのだ女の子にそんな事はしない。
そういう事情で抱っこ移動する事になった。
見る人が見ればエルフと触手という好きな人にはたまらないシチュエーションなのだろうが俺は楽しめない。
見るのはいいけど、ローパーにはなりたくない。
だがしかし、役得として背中には小さいながらも確かな双丘。
(まぁ、いいか。)
俺は寛大なのだ、ローパーになったなんて些細な事に囚われたりしないのだ。
そんなことを考えているとコウが突然
「センさんて目は見えてるんですか?」
「え?見えてるよ?なんで?」
「目が無いから見えてるのかなー?と。」
え?なんかサラッと重要な事言ったよね?
俺、目無いの?じゃぁ見えてるこれってなんだ?
『私の魔力感知による状況把握とコウの視覚情報を統合しマスターに流しています』
ふ~ん、なるほど・・・
「魔力感知って事は魔力はあるのか?」
『魔力はマスターのものを流用しています』
「俺が魔力有るんだったら魔法使えるんじゃね?」
『魔力はありますが、魔法知識が存在しません』
あ~ガソリンは有るけど車が無いって状態か・・・そりゃ使えねぇな
てか、勝手に俺の魔力使ってるの?まぁいいけど。
俺からしたら宝の持ち腐れだしな。
俺の使えない子度も急上昇だな
「あっ!!あそこみてください!」
どれくらい歩いたか、結構歩いたなと思った時
慌てた様にコウが指を刺す
まさか!アイにも探知できない敵!?
そう思いつつ言われた方向を見てみると
ぽっかりと口をあけた木の洞があった。
「お?洞か、クマとか寝てなければいいが」
『生体反応が無いので居ないと思われます』
そんなやり取りをしつつ中に危険が無いことを確認する。
寝床のようになってるでもなく自然と出来たままの状態のようだ。
しばらくはここを拠点にして能力把握に努めよう
「アイ、この周辺で川あるか?」
『2時方向へ150m進んだ所に水が流れています』
「いいね、ここを拠点にしようか。ありがとねコウちゃん重かったでしょ」
「いえ、全然軽かったです」
「しばらくここを拠点として能力の追求をして行こうか」
敵に襲われそうになったらアイが知らせてくれるだろうが
何時敵が来るとも限らないので今のうちに最低限身を守る術を身に着けておきたいと考えたのだ
「コウちゃんはここをきれいにして置いて」
「俺は食料になりそうなものを探してくるよ、なんかあったらアイ経由で教えてくれればOK」
「はい」
まぁ、コウに何かあればアイが教えてくれるだろう。
俺も食料となる物を探しに行かねば・・・
バインバインと効果音が鳴りそうな感じでジャンプしつつ散策開始
とりあえずは、川を見に行かないとな。生きる上で水は最重要だからな。
「あのデカイ木の向こう側かな。」
『YES』
木の周りにキノコかなんか生えてないかを見れればと思い寄っていく。
「これって相当デカイよな。元の世界でいえば樹齢数千年とかじゃね?」
『NO:樹齢3万5千924年です』
は?3万?てか何で判るんだ?何も考えずそのまま聞いてみた。
「何で判るんだ?解析したのか?」
『理解析によりマスターが取り込んだ物の情報を読み解くが出来ます』
「さすがだな」
内心、そんな事できるの?と思いつつも勿論知ってたよ?的に返す。
「て事は魔法を一度でも食らえばそれを解析して俺も使うことが出来るようになるのか?」
『YES』
なるほどな。でもま、攻撃魔法に突っ込むって自殺志願者だな。
いくら超回復があっても死なないとは限らないしな
でかい木の根をズリズリとへばりついてナメクジのように越えると向こう側に川発見!
(とりあえず、水は確保できそうだな、毒じゃなければいいのだが。)
そう考えつつ早速水を確かめてみる事にする。
『マスター生態反応です。来ます!』
「え?どこ?」
アイに確認しようとした瞬間
ザッパーン!
と角を持つ大きな魚が目の前で飛び跳ねる。
「なんやて~~~!」
その魚はそのまま水に落ち泳ぎ去っていく。
ドキドキドキドキドキドキドキ
やばかった・・・心臓が止まるかと思った・・・心臓あるのか知らんけど。
「アイさんや、もう少し早く言ってくれよ。」
『NO:水中は探知しにくいです』
そういう事も早く言って欲しかった。
「死んだと思ったやんか!」
魚に向かっていないのを確認して文句を言う
凶悪に捩れた角を持った大きな魚、5m位あるだろうか
「アレはあかん奴や・・・」
水面を確認する。さっきの主は居なさそうだ。
さっき反応からして食われるって事は無いと思うが念には念を入れておこう
攻撃方法を確認していない今の時点だと無謀すぎる。
「俺は空気や、空気になるんや・・・見つからんように空気になるんや」
ボソボソと独り言を呟く
『NO:空気には成れません』
「・・・・」
容赦の無い相槌を打つアイさん。
判ってるわ!と言いたいがこの人に冗談は通じないので何も言わないで置く。
とりあえず、水を飲んでみる
「俺には普通に思うがアイ、これって毒素あるか?」
『NO:毒素は含まれていません』
「OKOK、味覚は普通だな。じゃぁ飲料水はこれでいいとして、何時またあんなのが襲ってくるか判らないから
なんか入れ物的なもの作ったりしないとなぁ」
そう思い辺りを見回す。
来る時通った大木、その葉っぱ。これも巨大である
こいつを加工したら入れ物に出来ないかな?
落ちている葉っぱを探し一枚拾いついでに大樹の根周辺に生えているキノコも毒見して持っていく。
これで当面はなんとかなりそうだ。
持って帰るとコウが出迎えてくれた。
「あ、センさんおかえりなさい。
うわー大きい葉っぱですねー」
あ~帰ると人が居るっていいよね~
親と住んでいたが親も仕事で遅く帰ってくるので出迎えられ慣れてなくそんな風に思ってしまう。
一応、猫はが2匹居て出迎えてくれるのだが「ニャ~」ではなく「おかえりなさい」というのはくるものがある。
結婚したらこんな感じなのかなぁ~などと妄想しながら洞を見ると見事に綺麗になっていた。
「た~だいま、これを器っていうか袋みたいにしようかなと思ってね。
ただ、これはちょっと古めみたいだからコウちゃんに新しい葉っぱを取ってもらおうと思ったんよ」
「え?私、木登りしたことないですよ?」
「あぁ、木登りじゃなく折角だし魔法使ってみてよ」
魔法の威力や精度なども見極めたいしね。
MPと言う概念があるのかは知らないけど安全なうちに試せるだけ試しておきたいと思ったのである。
ただ単に魔法を見てみたいって思っただけではない。
「なるほどー、じゃあやってみましょうか」
そう言って一緒に大樹の元へ行く。
「うわーおおきいー」
「うむ、アイが言うにはもうすぐ3万6千歳だそうだ。」
「すごい長生きなんですねー」
正確な数字を聞いたけど面倒なので端折っておいた。
「そうだなぁ~、風魔法であそこらへんの葉っぱ落してみてくれる?」
「はい、やってみますね」
そう言って目を閉じて集中する。コウの周りが渦を巻くように上昇気流が発生する
そして、弓を構える様なしぐさをし狙いをつけるのが判った。
「ハッ!」
風の塊が走ったのが判った。
それが大きな木の上のほうに飛んでいく。
バサバサバサッ
っと音がして何枚かの葉っぱや枝がひらひらと舞ってきた。
「無詠唱かよ・・・」
ハイスペックだと思ったけどまさかそこまでとは・・・
それに結構な威力がありそうだな。
待てよ?これって俺が食らったら俺もこの魔法使えるようになるんじゃ?
早速アイに聞いてみたら
『YES:ですが直撃した場合、絶命する可能性があります。』
うん、命を懸けてまでやる事じゃないな。
今回は見送ろう。
葉っぱを確保し筒状にして回りにあった草で口を縛るだけ。
これで水筒の完成!やったね。
これで水問題は何とかなりそうだ。
まぁ、あの主が居なければなだけど。
よし、後は[食]を完成させなければな
個人的に、衣食住の中では一番大事だと思うのが[食]である。
衣に関しては俺は裸みたいなもんだし、コウも元々着ている物があるからな。
下着は洗わないといけないだろうがそこは俺が触れちゃダメな気がする。
食は今の所キノコは確保できたが魚か肉が欲しい所だな、あと調味料的なものも。
まぁ、それは明日以降どうにかするか。