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九話  「秘密・ヒミツ・チキン認定」

九話です


「俺はあの時、頭の中に直接呼ばれる声がした。そして、その先に君が居た

 アレは…何?何で直接呼びかける事が君に出来るんだ?」


「私…知りません。アキラ様が突然私の前に訪れて…あれよあれよと云う間に

 パトリック様から私を買い取って…それしか…知りません」


「ちょ、チョット待った。君は俺を呼んで居無いと言うのか」


「はい。ツインズの私にその様なスキルは在りません」


「いやいや!俺は確かに君から聞こえたんだ『私を救ってくれ』って、君じゃ…

 自分では無いと言うの?」


「はい。アキラ様のお話から、それは『念話』だと思います。伝説のエルフ

 であれば、その様なスキルをお持ちかもしれませんが…私はツインズです」


「う~ん…俺はこの世界の人間じゃ無いんだ。目的があって訪れている。だから

 この世界の事を知らない。そのツインズってトコから教えてくれ」


「判りました。

 …遥か古の頃、栄えて居たのはエルフの民のみ。万物の頂点であり、神々に

尤も近い存在。ですが、この大地は広すぎるその為に様々な生き物へエルフの

血を僅かばかり与えます。そこで生まれたのが人であり獣人であり、魔人です。

そしてそれ以外が魔物であり、獣である。

急激に増えたソレ等で溢れた世界。

エルフが住む所は次第に失われます。神はエルフに罰と慈悲を与えました。

罰は長く生きられる事。慈悲は安住の地そしてエルフの居無い世界が今に続く。


これがこの世界に古くから残る伝承です。そしてツインズとは、そのエルフの

姿に瓜二つな者達の事です。特に伝承に聞くような力は有りません」


「え?それじゃフローラだけじゃなく、リオンやタマラン、俺にもエルフの血は

 流れてるって事?ってか魔人もこの世界に居るのかよ!」


「はい。万物の生命全てにエルフの血が流れていると記されています」


「じゃ~フローラのツインズって言うのは、人種って奴より先祖返りに近い

 って事なのか?君の両親はどんな人なの?」


「…私は両親を知りません。赤子のまま孤児院に捨てられていました。

 孤児院は多くの孤児を育てています。お腹を空かせた子供達で溢れています

ですから…私は自ら身を売ったのです」


「それって…つまり君は自分の出生を知らないって事か。ただ、古い言い伝えで

 自分も先祖返りだって考えてるんだね」


「はい。そうです。…ですが、それ以外考えられません」


「あ~じゃあ、どうしてこの世界の人達は皆フローラをエルフに似てるって…

 そっか、他の人達とは姿形が違うからか」


「それもありますが、各地の遺跡でエルフの像が発見されています。」


「何となく判った。じゃエルフの罰『長寿』って良い事じゃ無いの?

 罰になるのかな?それと、慈悲の『安住の地』ってどこなの?」


「教会では、長く生きる事それは多くの苦しみと別れを迎える事です。

 この世界での生命は試練だと教えにあります。試練を終え無事神の下へ参る事

が至高の喜びと教会の教えにあります。安住の地は…判りません」


「…エルフの件は良いや。じゃ次。フローラは弓と短剣が扱えるんだね」


「はい。狩りの時に弓を。捌く為にナイフを覚えました。回復魔法は孤児院の子

 は、よく怪我をしますので…それで」


一通りフローラと話す事で頭を整理するアキラ。まさか自分の身体にもエルフ

の血が流れていると聞かされ少し驚くが、問題はフローラが自分自身の事を何も

知れないって事だ。そして多分…ソレを口外するのはマズイのだとアキラは

思った。…なぜならばアキラは『真理』スキル持ちだ。

しっかりとフローラに『エルフの民』と記載されているのが見えているのだ。


(和牛とオージーで交換されたとは彼女の尊厳の為コレも内緒にしておこう)


こうなると、アキラは更に弩壺に嵌る結果となった。婆の求める血。フローラが

一気に第一候補に上がるだろう。だが、チキン野朗のアキラに果たして

絶世の美女フローラを口説き落とし嫁にする事が出来るのだろうか?疑問である

主人と奴隷の関係から強要は可能かもしれないが、そこは現代日本人の高校生

理性と教養が、ソレを許さない。まして万が一生まれた子供に力任せで生まれた

子供だと言える訳も無い。ここは是が非でもフローラに惚れて貰う他道は無い。


そんな考えを廻らせるアキラの前でフローラが徐に服を脱ぎ出した。


「あぁ~!!な、何やってんの???」


「アキラ様とお話込んで居たら、夜更けって参りました。夜伽の時間が余り

 ありませんので…アキラ様は女子の服を脱がせるのが御好きでしたか?」

と脱ぎかけた動作を止めるフローラである。


脱ぎかけの服、露出度が倍増しした透き通る肌。パトリックの趣味で拵えた下着

は高校生のアキラには刺激が強い。服上からでも十分に目立っていた、フローラ

のボディーラインが思春期真っ盛りのアキラの視線を釘付けにする。


「だ、駄目!ダメだよ!!君は、君は俺に惚れてもらわないとイケナイんだ

 そ、そんな姿を見ちゃったら俺の理性が飛んでしまう。パ、パジャマ着て!」


「私は奴隷の身です。主が求めれば、応じなければイケマセン。気になさる事

 では在りません。それが契約ですから」


「それ!そこだよ!君を契約で抱いちゃイケナイんだ。もし子供が生まれたら

 俺はその子に申し訳が出来ない」


どうにか服を脱ぎ契約だからと身体を預けようとするフローラを説き伏せ事なき

を得るアキラ。希望通りパジャマに着替えたフローラだが…

(クソ~パトリックの奴…パジャマが透け透けのネグリジェってどうよ?)


返って妖艶さが130%アップしたフローラに耐え切れず、アキラはベットで

気を失った。


フワフワと柔かく温かい感触が顔一面に感じる。花園に居るような甘い香りが

夢見心地を更に引き立てる。くすぐったい感覚がアキラの鼻先に当たった。

まるで、誰かがティッシュで悪戯する様にだ。除ける様に手で払う。

柔かい感触が走った。今まで触れた事も無い感触だ。


「ウ~ッンンン」

甘く切ない声が聞こえた。…聞こえた!?


意識が戻ったと思えば人の温もりを感じる。驚いて飛び起きるアキラ。ベットに

フローラが例のネグリジェ姿で添い寝している。

慌ててベットから後ずさりしながら離れていくアキラ。フローラはそんな事に

気付かず深い眠りに付いていた。


「ハァハァハァ」

静まり返る寝室。沈みかけた月の光が朝日に変る頃。ベットの脇で荒い息を漏らす男子高校生アキラとスヤスヤと寝ているフローラ。

寝返りを打つ彼女の足が毛布から肌蹴た。覗かせた彼女の綺麗な足がアキラを

ノックアウトにした瞬間である。



朝遅くに一階に下りてくる2人。リオンやタマラン。何故かアルまで食堂に居る

顔をやや赤らめる彼女に対し眼の下に大きな隈を作ったアキラの顔を見る一同


「羨ましいね~」とアルが言い、アデルが彼の頭を叩く。タマランがフローラに

牽制しながら近付く。


「ニャ~?アキラの匂いがしないニャ!」

「うん。ワシにも重なった匂いがセヌ。…まさか…アキラお前…」


下を俯くフローラに何故か頭を撫でるタマランとアデル。対してアルとリオンは

鼻で笑う態度で蔑む視線でアキラを見詰る


「…チキン野朗」


当分アキラは2人の言葉が耳から離れなかったと後日談で語っていた。


九話  「秘密・ヒミツ・チキン認定」  完

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