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八話  「奴隷・契約・チキン」

八話となります

一度は口にしたアキラだが、今無性に足が震えている。そう!何と言っても彼は

17歳の男子高校生なのだ。女性と手を握った事も無ければ、デートすら無い。

そんなチキン野郎が弾みで奴隷商に居るのだから世も末である。


宿屋『陽だまり』の娘アデルは『可愛い子にしてね』と言われリオンは

『強い者が良いぞ』と一言だけだし。アルとピエールは『あ~給仕のバイト頼め

る?』と訳の判らん事を言い。タマランは『シャー!』と威嚇しただけだ。

誰もアキラが奴隷商を訪れる事に反対する者が居らず引っ込みが突かなくなった。

…と云うのが適切な言葉だろう。此処にもアキラの気持ちなど知らずに次々と

女性達を紹介していく男が居る。オーナーの『ヴァシム』だ。彼はアキラの

要望を聞き、取り揃えた娘達の説明に余念が無い。


アキラの足が止まった。誰かが呼ぶ声がする。空耳?と思う。1歩歩くとまた、

呼び止める声が聞こえた。ヴァシムがネコ耳娘の説明をして居るのを無視して

アキラは走り出す。慌てて後を追いかけるヴァシム。


「お、お客様其方は既に売薬済みで御座います。お客様~」

止める手を振りほどき辿り着いた先は、色白で金髪の長い髪をした蒼い瞳の娘だ。

ぜぇぜぇ!と肩で息するヴァシム。声も切れ切れに話し出す。


「申し訳御座いませんがその娘は既に売れております。他の娘にも良いものは

 居りますので、其方をお選び下さい」


ヴァシムの声はアキラの耳には届いていない。彼の耳には、否頭には目の前の

娘が『どうか私をお救い下さい』と泣きながら訴えている声しか響いて居無い


「…ですから相手の方はご高名な方で当店のお得意様なのです。幾らお金を

 積まれても首を縦には振って頂けないと思いますよ」


色々な条件を打ち出して先約の相手に譲ってもらう交渉を願うがヴァシムが門前

払いで相手にしてくれない。困ったアキラは考える。しかし思いつかない。

アキラに救いを求めて来た娘は『フローラ』ツインズの娘だ。


「あの方は既に複数の奴隷をお持ちです。ツインズも多く揃えております

 つまりお金には御不自由なされて居無いのですよ。例えば珍しいものとか、

食した事の無い食材ならば御話を聞いて下さるかもしれませんが、それでも

厳しいと思いますよ。大体この娘価格は2万5千$ですよ。

お客様失礼ですが資金は在りますか?」


ヴァシムの台詞に頷くアキラ。それに加えて彼は1つの提案をした。


「頼む。その相手に彼女を譲ってくれるのなら『和牛』を1Kg渡しても

 良いと交渉してみてくれ」


30分後ヴァシムの店に交渉相手の『パトリック』がアキラの前に鎮座している


「おいヴァシム。私は予定をキャンセルして此処へ足を運んだんだぞ!お前が

 『和牛』の話を持ち出したから来たんだ。それなのに、何だコレは!茶番にも

成らないでわ無いか。私を怒らせると二度とキサマの店では奴隷は買わんぞ」


目の前のパトリック、交渉相手が目の前のアキラと知ると豪い剣幕でヴァシムを

叱り飛ばしていく。困った顔で何度も頭を下げる彼に気兼ねしたアキラが慌てて

二人の間に入ってきた。


「ヴァシムさんは、私の伝言を伝えただけです。お怒りを静めて下さい。

 私は嘘は付いていません」


「でわ!お主は!その若さで、あの幻の和牛を持ってると言うのか!

 先日の競売で1kg1万6千もしたのだぞ。1kgでだ!嘘を付くなら

もっとマシな嘘を考えるが良い!但し私には二度と通用せんがな。フンッ!」


「いえ嘘は付いてません。元々和牛を売ったのは私なのですから」


ヴァシムの店で尤も高級なカップが床に落ち跡形も無く崩れる。


奴隷を扱うヴァシムには『鑑定』スキルが在った。お蔭でアキラがリュックから

出した肉がその場で『和牛』と証明される。掌を返した態度でパトリックは

アキラと折り合いを付ける。彼も競売に参加した1人だったらしい。アキラに

優位な形で話が進んで行った。


結果的に和牛1kgとオージービーフ2kgでフローラを物々交換となった

ついでにフローラ用にサイズを合わせ新調した服も一緒だ。

この世界服は安いだが、それは一般的な服の話で着飾ったモノ素材が良い物は

目玉が飛出るほど高い。今回それが5点は在った。和牛が競売で買える値段は

するだろうが、競売で手に入る確立からすれば安いモノだとパトリックが

気前良く、差し出したのだ。


ヴァシムも騒ぎが収まったとホッとする。侘びを兼ねてストマック亭へ後日招待

する事にした。それを盗み聞きしたパトリックも同行すると言い出す。

まぁ~服のオマケも在ったし、ストマックに固定客が増えるのは良い事だろう。


晴れてフローラはアキラの所有が確定した。


彼女を連れ、皆が待つ『陽だまり』に帰るアキラ達。フローラの姿を見た一同は

口が塞がらない。


「まさかツインズの娘を連れて帰るとはな…流石アキの孫と言う所か」


「バ、バイト頼んで良いよね!?自給弾むからさ!ねぇアキラ君良いよね!」


男集の反応は…まぁこんなモンだろう。主となったアキラでさえ、フローラと

並んで歩くには、テレと緊張が入り混じった思いがしたものだ。

それに対して女性陣は違う。タマランは終始「シャーア!」と威嚇しかしない。

アデルは「…綺麗…」の一言だけを発し固まっていた。


「まぁ~と言う事で、彼女が加わりますんで皆よろしく。優しくしてやって

 皆に挨拶しようか」


「フローラと申します。歳は18。これからご主人様の世話を致します。

 護衛としては、短剣と弓と回復魔法が少々扱えます。よろしくお願いします」

と挨拶し皆に深々と頭を下げた。


「なんで、アデルさん一部屋追加でお願いします」


「ええ!ごめんなさい。今夜から予約が入って満室なの」

アキラの計画が一つ潰れる。


「じゃ~タマラン同室で!」「シャーア!」

言葉終える前に威嚇でシャットアウト。計画2目が潰れた。

「ん~」

と悩むアキラにリオンの駄目出しが襲い掛かる


「娘はお主の所有であろう。ならばアキラと同室が当たり前だ。ワシとタマラン

 は契約は交わしているがソレだけだしな」


リオンの言葉に皆口をそろえて頷く。フローラも同じく首を縦に振っていた。

アキラの計画は予定を変更されエマージェンシーコールが頭の中で響き渡る。


借りている部屋にはベットは1つしか無い。満室なので追加でベットも借り

られない。大き目のサイズとは言え、此処でフローラと寝るのはチキン野朗の

アキラには勇気が居る。まして奴隷商から此処まで好きな服を着ておいで。

と言ったものだから、彼女は新調したての服だ。つまり着飾り様な服である。

平たく言えば、超~キメテる服で超~綺麗って事だ。


透き通る白い肌に日本人好みのWの顔つき。腰までの長さの金髪サラサラヘアー。

蒼い瞳は澄んでいて光が差し込めば、輝き出しかねない。身長はアキラより少し

低い位で寄り添えば、良い感じで唇の高さが釣り合う。爆発的では無いが十分な

ボリュームの胸正しく『ボン・キュー・ボン』なスタイル。そんな娘と2人っきり

チキン野朗は何処まで耐えられるだろう。


「不束者でありますが、末永く可愛がって下さいませ」

ゴクリと唾を飲み込む。…そして考えた…深く…深く…あれ?


「そう言えば!アレってどう言う事?」

「アレ?とは何でしょうかご主人様」

「…あ~その前に、そのご主人様は辞めようか」

「でわ、旦那様?若様?アキラ様 どちらが宜しいでしょう?」

「ん~…普通にアキラで」

「そんな奴隷が主を呼び捨てになど出来ません。そんな事をしたら契約の印が

 反応して私は傷ついてしまいます。アッ!其方の趣味が在るのですか?」

「どちらの趣味かは判らないけど…そっか契約に反するなら…君の好きな方で」


契約の印とは奴隷が主に反旗を起こさない為の魔法の縛りである。それに対し

主は奴隷の衣食住と生命を保護する役目が在り、互いに契りを交わした印を腕に

刻むのだ。当然二人の間にもヴァシムの店で契約は結んで居る


「それでわ、アキラ様とお呼び致します」

「…ちょっと、こそばゆいケドそれで。で俺が聞いたのは頭に響いた君の声だ」


なし崩しで奴隷として手に入れた少女フローラ。しかし彼女の事を何も知らない

アキラ。秘密を持っている予感がする少女との関係は今後どう進むのだろう。


…とりあえず、チキン野朗は、緊張を解す為、話題を変える事に成功する



八話  「奴隷・契約・チキン」  完

楽しんで頂けましたか?

すみません。フローラの件で一部修正とカットしました

ハーフエルフ → 蒼い瞳の  へ一箇所 残りを ツインズと変えました

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