五話 「魔法・仲間・旅の支度」
事件が無事解決し魔法も手に入った。リオンが何故2人を引き渡さず残していた
かを夕食を取りながら話し出した。概ねみんな了解し。そして今朝である。
飯盒でご飯を炊き、薪で味噌汁を作り、納豆と豆腐で日本的な朝飯を食べていた。
全部父健一から学んだ事だ。ベランダで飯盒炊き。枯れ木で火を熾しナイフで
器用に箸を作る…奇行と思って居たが、もしかしたら今の時を想定しオヤジなり
の訓練だったかと、アキラはシミジミと感じていた。
「…なぁアキラ。この白いモノは何だ?」
「豆腐だ」
「では、このネバネバしたものは?」
「納豆だ」
「では・・「五月蝿ぇ~よ!少しは空気読んで黙れよ!リオン。さっきから何が
言いたいんだ」
「何故肉を喰わん?」
「喰ってるじゃん!これ等は全部大豆だ!大豆は畑のお肉と言われている。
お百姓様が大事に育てた大豆が原料だ。在り難く!そして美味しく食べろ」
「否!否!コレはどうしてもワシには肉には見えん!何故肉が無い!!」
「…出しても良いが…金取るぞ。コッチもタダで仕入れてるんじゃねぇ~んだ」
「で、で、でわ!何故コイツラは違うモノを食しておる」
「兄貴~この茶色で四角くで甘い奴と米が詰まってる奴、マジで旨いな!」
「このミルク美味しいニャ~今まで飲んだ事無い味ニャ~」
「アッチは油揚げに稲荷寿し。そっちは高タンパク牛乳どれも『和牛』とは
桁違いに安い。コッチで儲けた金で一生分買えるぞ」
「…このネバネバ馴染むと中々に旨いな」
朝食を済ませ昨日買ったバーゲンセールの『魔法の巻物』を広げるアキラ
どんな魔法か調べているのだ。
「ギンザ!これヤル!覚えてみろ」
「へい!…変身ですか!?」
巻物を読み解き魔法を覚えるギンザ。「えい!」と、覚えた手の魔法を
皆の前で披露して見せた。
「う~ん…狐顔はマンマじゃね~!尻尾まである」
そう言われて凹むギンザは変身を解いた。
「もう一回試して」
言いながらアキラはギンザの頭の上に葉っぱを一枚乗せた
「なんです?コレは」
「ん?良いから。『おまじない』みたいなもんさ」
再度変身するギンザ。狐顔はそのままだが尻尾はちゃんと消えていた。
「ん~コレなら使えるか」
「じゃ残りは俺用だな」
そう言ってアキラは一気に残り全部の巻物を読み解き魔法を得とくしていった。
『幻影魔法』姿形を違うモノに見せる魔法だ。高LVだと気配を変える事も可能
『シールド魔法』見えない魔法の壁を作れる
『時限魔法』時を操作する魔法。今回コレを求めていたのだ。
『真贋』物の本質を見抜く魔法だ。他にも幾つかあるが、今は割愛しておこう
まず時限魔法で日本とルトビアに時差を設けさせる。次に『シールド』で
こちら側の扉を封じる。そして『幻影』で大きな岩が有る様にする。
これで滅多に近付く者は居無いだろう。
つまりリオンの此処での番人の役目が終わる訳だ。
そしてギンザに学ばせた変身。奴を婆の傍に措く。日本での扉の番と婆の下僕だ
「本当に兄貴の住む町なら毎日でもイナリが喰えるんだな」
「ああ。婆次第だが、金は渡そう」
「私はダ~リンの子が宿せるなら付いていくニャン」
「お前は黙ってろ!」
「うむ。その計画なら確かにワシは此処を離れても良かろう」
婆の了解を得てギンザを送り込み全ての魔法を掛けるアキラである
「「H;2610」えっと…Hが日にち…数字が24時間表示だな」
巻物の裏に表記してある取り説を読むアキラ。彼は現在、時限魔法LV1だ。
発動する魔法はLVで効力が違う。つまり今生み出せる時差が90日って事だ
LVが上がればもっと伸ばせるらしい。シールドと幻影は別の魔法が上書き
されない限り切れないと、取り説には書いてある。
当面、魔法LVが上がるまで三ヶ月に一度此処へ戻って来なくては行けないと
言う事である。
アキラの嫁探しと剣の修行の旅にリオンとタマランが同行。ギンザは婆の下だ。
後は『トトス』で必要なモノを購入したら旅へ出発だ。
リオンの勧めでアキラは冒険者登録をする。冒険者とは依頼を受けて仕事をする
職業。何でも屋だ。仕事は魔物退治や護衛が殆どだが、身分証としては最も効果
のある職業でもある。犯罪歴が無ければ直ぐに登録が終わる。因みにタマランを
心配したが、捕まった事が無いので、犯罪歴は零。手配書は見事な7頭身の影だ
誰も同一人物とは思わない。案の定2人はスンナリ登録を終えた。リオンが居る
ので細かい説明は係の者が省いて終わった。
続いて道具屋へ足を運ぶ。先日の競売結果を聞きに来たのだ。
アキラの顔を見たとたん店主が薄気味悪い笑顔を振り撒きながら近付く
「若旦那~お待ちしてましたよ~先日の品高値で売れましたよ~
(誰が?いつから?若旦那になったんだ)
1つ1万6千$併せて3万2千$でしたよ。私の鑑定書付きが効いた
様ですな。わははっ」
笑いながら店主はアキラが今回冒険者カードを所有してると知ると、店主の商人
カードと2枚重ねて念を唱えた
「送金3万2千$」
これでアキラのカードに振込み完了。次回からカードで買い物できるらしい。
仕掛けは不明な古代魔法。盗難防止に登録していれば遠方でも送金・入金まで
出来る優れものだ。ついでに登録まで済ませておいた。
3万2千$は前回、店売りした時の1.6倍。アキラもホクホク顔になる
「所で、鑑定書って?」
聞けば商業ギルドに加入し商いLVが上がると希に身に付くスキルらしい。品物
を集中して見詰ると、名前やら出来の良さ等が数字や文字で見えると言う。
そこでアキラは納得と不思議に思った。自分が巻物で得とくした魔法は『真贋』
これは指を指し名前を告げるだけである。外れれば頭にブザーが鳴り響く
だけのモノだ。所が『真贋』を得とくしてから文字が浮きっぱなしで正直疎く
思っていた。取り説と違う魔法に頭悩ます所に店主の話で合点が行く。
「あれ?でもいつの間に『真贋』が『鑑定』に変ったんだ?
試に店主に聞いて見た。するとどうやらアキラの術は『鑑定』でも無く『真理』
らしい。(相手の動きが見えるあの眼と関係があるのか?)
「うは~若旦那。商売始めたら億万長者になれますよ~」
と驚きと羨望のまなざしを向けてくる
「俺は嫁探しで冒険続けて己の力を付けないとイケナイんですよ」
「嫁ですか!家に1人年頃の娘が居ますが、『真理』持ちの婿さん居れば安泰
ですわ~。手前味噌ですが、コレが私に似て…」
冗談じゃねぇ目の前のオヤジは禿げ・チビ・デブの三拍子だ。それに似てる
など、言語道断!払い下げだ。アキラは用事があると話を続ける店主を置いて
スタスタと店を後にした。
「リオン後は何が残ってる」
「目的地だが、三ヶ月後に帰って来る事を考えれば…『ルルガン』が良かろう
片道10日程の街だ。此処より3倍は大きいぞ」
「なら!そっちに行こう。どうせ聞いても判らないしな」
「うむ。でわ、向う足だがどうする?」
「足って…あぁ移動方法って事か」
「寄り合い馬車で行くか、馬を買うかだ。いっその事、馬車を買うのも在るぞ」
「寄り合い馬車は嫌ニャ~。変なオヤジと一緒になるかもしれないニャ~」
ソレまで口を開かなかったタマランが寄り合い馬車と聞いて猛烈に反対してくる
「あぁ~俺も嫌だわ~。馬って俺でも乗れるん?」
と云った後にタマランが視界に入ってきたので訂正する
「だめだ。選択肢は無ぇ~馬車購入だな」
「うむ」
リオンも同じくチビで幼いタマランを見詰ていたのである。
五話 「魔法・仲間・旅の支度」 完