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二話  「A3ランク和牛霜降り肉」 

連載記念 スタート記念として本日二話目です。


婆の言う事を聞きA3ランクの和牛霜降りを買った明はその足で古井戸の底

異世界への扉を潜った。

目眩が起こり気を失いかける明。やがて気持ち悪くなっていた気分が収まり

明は目を開く。真っ暗で狭い空間が真っ青な空と空気の旨い野原へと

視界が変わっていた。


「へぇ~これが異世界『ルトビア』か田舎だな~」


「田舎で悪かったな!お前の住む町は空気が濁って居るでは無いか!

 扉から漏れて立っているのも辛いわ!お前が『アキ』が言っていたアキラか?」

明の後ろから声を掛けてきたのは、ライオンの顔にボディービルダーの身体を

持つ2メートル近い巨体の男だ。その姿に思わず驚き腰を抜かす明出る。


「うわぁ~デカ!魔物だぁ~」

「馬鹿者!誰が魔物だ!ワシが門番の『リオン』だ。

 お前、アキラで間違い無いか?」


その問いに腰を抜かしたままのアキラが首を縦に振りながら応える。


「軟弱そうな身体をしよって!お前本当にアキの孫か?

 そんな身体でこの世界生きてゆける自信があると言うのか?」


「アキって誰?」

「お前自分の祖母の名前も知らんでココへ来たか!

 虚けか大物かどっちよの?ガハハハッ」


「婆の名前って『アキ』なん?似合わねぇ名前しやがってるなぁ。

 あーとりあえず俺がその『アキ』の孫で『ケンイチ』の息子『アキラ』ッス!

えっと『リオン』さんですよね!?」


「そうだ!俺がリオンだ。アキからはお前を町へ案内する事と

 魔法について教える事それと剣を教えるの三つの依頼を受けている。

相違無いな」

「はい。それでお願いします。先に時間を遅らせる魔法を学びに来ました」

「うむ。魔術師と話は着いておる。金を出せば直ぐにでも学べる筈だ」

「おぉ~ラッキー。意外と早く第一目的達成じゃん」


吉報に喜ぶアキラ。ついついリオンの前で踊りだす。しかしリオンはそんな

アキラに気を取られる事なく仁王立ちして右手を差し出していた。


「ん?何その手は?」

「対価だ!依頼には対価を払う。これはこの世界で絶対無比の理である。

 ホレ!持って来て居るのだろ。隠しても無駄じゃ!御主の背中から

匂いが立ち込めておる出せ!」

「あぁ~アレね」


早速手土産を催促されるアキラ。アキ婆から預かった皮製のリュックサックを

下ろし中から一枚和牛霜降り肉を取り出した。


「う~ん。空気は濁って居るがお前の町の肉は旨…い?」


「おい!?前回の肉と違うぞ」


ヤバイ!A3ランクってのがバレたか?と緊張するアキラ


「…良い!良いぞぉ~!!前回の肉は確かに旨かったが、ワシにはちと

 柔らか過ぎたのだ。今回のは油と良い固さと良い歯ごたえが最高だ!

 アキラ!御主見た目に反して中々の切れ者だの」


ホッとするアキラ。機嫌が良いリオン。デコボココンビはこうして町へと

向う事に成る。

因みにリオンが門番不在の間アキ婆が日本でその任についている。

しかし年齢的に長くは出来ない。早めにアキラは次のミッション

『時限魔法』の習得とリオンから剣を学ばなければ行けなかった。


「ここが目的の町『トトス』だ。魔術師の館は町の中心の四つ角を右に

 入った裏道沿いに在る」


そう言ってリオンがサクサクと町の中を進むアキラは、キョロキョロと

さっきから辺りを見渡し続けていた。すれ違う人々。立ち並ぶ町の風景。

どれもアキラにとって涎が出るほど、ファンタジーなゲーム世界に

見えてしまうのだ。

「うひょ~凄ぇ~マジでケモノ耳のオンパレードじゃん。あっ!あの娘可愛い。

 コッチの娘も良い!天国じゃん此処!俺帰らずにコッチで住もうかな」


アキラが浮かれている内にリオンを見失ってしまう。

気がつけば人気の無い場所にポツンと1人だ


「ニヒヒッ」

嫌らしい笑い声が響く。基本ビビリのアキラ。思わず首が竦んでしまった。


「おい!小僧。珍しい格好してるな。それに良い匂いがお前からするぞぉ。

 有り金全部とその服脱いでいけ。あぁ~後その旨そうな匂いもだ!」


脅す声と共に狐っぽい目つきの優男がアキラの前に立ち塞がった。

手には小さなナイフをチラつかせアキラを威嚇しているのだ。


「うわぁ!街中で追い剥ぎかよ。治安悪いトコだなぁ」


「ペチャペチャ何喋ってやがる!さっさと言う事聞いて身包み縫いで行け!」


流石にイキナリパンツ1枚に成る訳には行かない。どうしたものかと悩む

アキラ。だが、相手は痺れを切らし、ついにはアキラに襲い掛かったのだ。


ギュイ~ンと飛び掛り一足飛びでアキラの胸元に近付く追い剥ぎ野郎。

だが、不思議な事にその動きはまるでスローモーションの様にゆっくりと

そしてハッキリとアキラには映ってしまっている。

どんな鈍い男でも、コレだけ遅い動きでは簡単に避けきれた。


「テメェ~なんて動きしやがる。この俺の動きを交しやがるなんて

 只者じゃねぇな。容赦しねぇぜ」


再び狐目の男がジャンプしてアキラに襲い掛かってきた。

二度も此処まで、ソレも飛んでいる最中もスローモーションで飛ぶ男。

此処まで来たら、それはソレで一種の芸だとアキラは思ってしまった。

だが、倒される訳には行かない。見劣りしてしまい動きが遅れたアキラ。避ける寸前左手が伸び襲い掛かる男の首筋に手が触れてしまう。


「ぐぉ~。強ぇぇ~」


何故か狐目の男は気を失ってその場に倒れ伏せていた。

騒ぎに気付き、霜降り肉の匂いを辿ってリオンが現れた。


「む!コイツはギンザ。…アキラお前が倒したのか?」

「ん?そうみたい。ってか自滅?否、手が首に触れたから、

 やっぱ俺が倒したかも?」


「むむ。御主見た目に反して腕っ節も良いようだな」

「コイツ誰?」

「そ奴は、ギンザと言って小悪党だが、中々敏捷な動きをする奴で

 狙われると結構厄介な男だ」

「へぇ~空中をゆっくり飛ぶ器用な奴って思えてたんだけど、早いんだ。

 まぁ良いや!逸れてゴメンよ。早く魔術師サンとこ行こうぜ」


アキラはギンザをそのままに、目的の館へ向う。今度は離れずしっかりと後を

追おうとリオンから眼を離さず付いて行く。群がっていた町人は、

ギンザに怨みでも在るのか?結構な人から袋叩きだ



「うひゃ~魔法1個覚えるのに、そんなお金掛かるの!!!」


リオンに連れられて入った魔法の館。主のシワクチャ爺に価格を

聞かされ驚くアキラである。


「何だ!お前は金を用意していないのか?」

「コッチの金なんて在るわけ無いじゃん。取りあえず価格調べて

 肉を換金だよ。ってあの婆コッチの金銭感覚知ってて俺に来させたのかよ!?

クソ~取りあえずリオン!換金したい魔法はその後だ。

爺さん出直すよ!またね」


一旦館を後に肉の換金へ向うアキラ。しかし、リオンがモゾモゾと

動きが鈍いのだ。


「なぁ~リオン何かさっきから同じトコグルグル回ってないか?」

「あっ。う~ん。そうか?気のせいでは無いか?」


何やら歯切れの悪い話し方のリオン。不思議に思ったアキラが問い詰める。


「もしかして、肉が欲しいのか?」

「いっ!」


どうやら図星らしい。だが、ここでリオンに肉を渡す訳には行かない。

かと言って、さっきの男ギンザの様に襲い掛かられるとリオンの

太い腕周りでは一発でアキラはKOだ。

リオンはリオンで思案中だった。知り合いソレも現在依頼中の主の代理人から

肉を奪う等は考えても居無い。

彼の頭には和牛霜降り肉の値段が気になるのだ。換金前に言値で買えば少しは

安くで手に入るが、アキラに本当の価格を知られたら、怒って二度と

譲ってはくれまい。かと言って素直に適正価格で買うには手持ちの資金が

追いつかないだろう。その狭間が彼の足を迷わせていたのだ。


「なぁリオン。俺はどうしてもこの肉は換金しなきゃ成らないんだ。

 それはアンタでも解るだろ。

 で!考えたんだけど、俺が無事魔法を手に入れれば、一度向うに

帰らなきゃならない。そこでだ!再度俺が此処へ戻って来るまで、

肉を我慢するって事で手を打ってくんない?」


アキラの申し出はリオンの頭では思い付かなかった案である。

渡りに船。地獄に仏の言葉だ。


「御主、見た目に反して中々の器量持ちにして知恵者だな。

 その言葉確かに交わしたぞ。男であれば、必ず交わした言葉は守れよ。

し、信じて居るぞ。でわ!換金に向うぞ」


どうやら、これで無事換金できそうだ。それにしても高々肉切れ1枚に

大の大人が、ソコまで言うか?と思うアキラである。

牛肉で命取れれたら堪ったモンじゃね~。他の換金品を考えよう

と内心、心に決めたアキラである。


「うっそ~マジで?そんなんするの?ウヒョ~オ!」


換金額にアキラが踊る。和牛霜降りA3ランク1kg価格なんと1万$。

さっきの魔法の価格が3千$だから、1枚で3個も買えてしまう訳だ。

これならリオンの足が戸惑うのも当たり前とアキラは思ってしまう。


但し問題が無い訳では無かった。此処では持ち合わせが無く換金できるのは

2枚が限界と言われた。それで2万$もの大金が手に入るのだが、

残りの肉の賞味期限が保つかが不安となる。1枚がリオンに既に喰われた。

2枚を換金すると残り2枚つまり2万$分だ。


そこで店主から話を持ち掛けられた。


「まだ霜降り肉に余裕が御在りなら競売に賭けませんか?」


成程、この店主何気に助け舟出してる振りしてるが、実際はアキラの肉で

ドコまで値が上がるか確認して、今仕入れた肉は、じっくり値を吊り上げさせる魂胆だな。と見抜く。それでもアキラに悪い話では無い。

本来なら手数料を取られる所だが、そこはアキラの後ろで凄い形相のリオンが

居るお蔭でチャラだ。

こうしてA3ランクの肉を店主に預け競売依頼。

その間にアキラは、さっきの魔術師の館へ向う


「爺さん。さっきの魔法買いに来たぜぇ~」

「すまん。在庫は全て盗まれた」


「なに~!!。誰?ダレ?誰や~?犯人見つけてお仕置きだぁ!」


二話  「A3ランク和牛霜降り肉」  完

*金額修正しました

1千万$→1万$ 3百万$→3千$ 2千万$→2万$

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