エピローグ 「 始まり」
1部の締めとしてエピローグを書きました
「ギンザ!ギンザ!」
日本に戻り開口一番にギンザを呼ぶ明。ソレを聞きつけドタドタと奥から
駆け寄る足音が響く。
「兄貴~!」
相変わらず釣り目の狐顔の男は、以外にも元気そうな顔で明を迎え入れた。
正直、扉の向うの惨状でコチラ側が不安だったが、ギンザは元気。婆の家も
変わり無い常態で肩透かしを喰った感じだ。
「いったいどうなってる?婆は婆はどうした?」
「そ、それが…」
「婆!婆!って帰って早々五月蝿いんだよ!乳離れしてない子供みたいに
ギャアーギャアー騒ぐんじゃ無いよ!」
「無事だったか!?怪我は無いのか?」
「はぁ?何心配してるんだい。ギンザと共に、この通りピンピンさぁね!」
カカカッ!と高笑いを見せるアキ婆である。
「それより何で帰ってきたんだ?少しは強くなったんだろうね?」
「何でって!俺の結界やら魔法が破られるわ、ギンザが魔人が此処に来たって
言うから心配したんじゃねぇーか!」
「あぁ~その事かい。何大した事じゃ無いさ。数人の魔人やら魔物が扉を抜け
コッチの世界に紛れ込んだだけさね」
「って!それが大変な事だろ!ギンザお前何の為の見張りだ!」
「御黙り!ギンザはよく働く良い奴だ。悪く言うと私が許さないよ!
それより…アンタの後ろに居る娘さん達は誰だい?さっさと紹介しな」
帰還早々口喧嘩。だが、その軍配は婆の一方的勝利で終わる。幾ら明がルトビア
で力を付けたと言っても、まだまだアキ婆の足元に届いた位だから仕方が無い。
「ふぅ~ん。短い期間だった割りには、面白い娘達を揃えたじゃないか。
でも三人とは…あはははっ!アンタは父親よりご先祖様の血が濃いのかも
しれないね~ぇ。それで!?これからどうするんだい」
「どうするって!魔人倒さなくて良いのかよ?俺達は、その為に来たしリオンも
扉の向うで待ってるんだ」
「まぁ~迷い込んだ奴はコッチで、いずれ悪さを始める。だから倒すなり
追い返さなきゃならない…けど、別にそれを我家がしなくても良いんだけどね
…アンタもコッチで追うかい?」
「それ!どう云う意味だ?」
「鈍いね。私らは扉の番人。過去に何度か警備の目を逃れて舞い込む奴は居たさ。
そして、そいつ等を追うのは別の家の者の役目って訳だ」
「…他にも俺達みたいな家系が居るって事か?」
「まぁ~ウチとは、少し事情が違うがね…それより、アンタどうする?
来週から学校だろ?その娘さん達をどうするつもりだい!?」
「それだ!時限魔法!何で?俺の魔法は解除されて無いのに、此処の時は
進んでるんだ?知ってるなら教えてくれ」
「簡単な話さ!アンタが施した魔法より逃げ込んだ奴の魔法レベルが高いって
話だよ。アンタは修行に出る前に魔法を施しただろ。それだけの事さ」
「一応アンタの修行成果で時限魔法のレベルも上がった筈さ。書き換えして
ないんだろ?念じてみな!」
婆に言われ時限魔法を念じてみる。改めて自分のステータスを見れば、レベルが
3に上がっていた。これは明が修行中時限魔法を使用しなかった事が要因だ。
成長と共にステータスも上昇し魔法のレベルが上がる。使っていれば自然と書き
換えが行なわれ、表示も効果も進化するのだが、旅立って以来時限魔法の事を
頭の片隅に置いていた為に、書き換えやらレベルの変動が行なわれなかったのだ。
「…なるほど…覚えた魔法は色々と使いまわさないと弱いままって事か」
「お婆殿は、人の割りに博識じゃな。明以上に興味深い御人の様じゃな」
今まで成り行きを黙って見ていたロッテが口を開く
「お婆殿の話を纏めると、取り急ぎ明と妾等が魔人を取り押さえる事は無い。
明は何やら『学校』とやらで、時間を取られる。でよいのか?」
ロッテの言葉に明が頷く。するとロッテは当然の様な態度を取りながら
「ならば、妾もお主と共に過そう。狩りをしないのであれば、折角訪れた
異界の地じゃ。楽しむ事にするぞ。妾は決めたぞ」
こうなると我侭娘のロッテ。明ではどうする事も出来ない。その上後ろに控えて
居たフローラとシャロルの顔もロッテの考えに賛同しているらしく目を輝かせて
明を見つめていた。
「面白い娘だね。気に入ったよ…どうだい!どうせアンタも転校してるんだ。
この際、この娘達も一緒に学校に通わせたら?」
「何?転校?なんだよそれ?俺の高校勝手に替えたのかよ!?」
「ああ。ついでに向うの家も引き払った。アンタの家の荷物は全部、裏の蔵に
放り込んでるよ」
思考・行動力・財力全てに勝るアキ婆の策略で明の歯車が代わり始めている
異界に向った次点で彼の人生は大きな転機を迎えていたのだが、彼はソレを深く
理解していなかった。特別前の学校に思い入れが在る訳でも無いので、
高校へは、通える事を優先し婆の策を受け入れた。
「うむ。妾もこの世界の知識とやらを学んでみよう。そこでアキラの持つ
不思議な力が妾にも授かるやもしれんしな。よし通うぞ!」
なし崩しで、ロッテ・フローラ・シャロルが明と同じ学校『私立月里学園』に
転入する事になる。
ロッテの『変化』をシャロルが作った時計やらアクセサリーに付与しコチラの
世界の17歳に仕立て上げた。但し、各々が持つ身体特徴と歪められた特徴を
強く反映した姿に変わる。
シャロルは黒髪ショートで身長170センチの八頭身美少女。何故かメガネっ娘。
フローラは栗色のツインテールで身長155センチの妹路線。
ロッテは、どこぞのご令嬢スタイル。金髪ロングの巻き毛、身長160センチ程
の高飛車娘だ。
「うむ。中々高貴なな姿で気に入った。フローラお主は…少しネコを被り過ぎ
の気がするが…まぁ良い。シャロル、お主の横に並ぶと妾がアホに見えるのは
何故じゃ?どうじゃ!明。我等の変化も中々であろう」
「いや!変化の前に…お前等…服着ろ」
いそいそと制服姿に身を包む三人。チェック柄のミニにブラウスとリボン、茶系
のブレザー姿は、何処にでも居る今時の女子高生姿だ。
ただ…中身が異世界育ちの三人。アレだけ肉を喰い続けて居たから、変化しても
出る所はシッカリ出たままの超スタイリッシュな女子高生三人娘となった。
「鎧やら武器を持てないのは、もしも魔人と対峙した時不安ですね」
「安心おし。コレをあんた等に渡そう。孫娘が三人出来た祝いじゃ」
フローラの不安に対しアキ婆が新品のスマホを渡す。当然只のスマホではない。
魔法で出来たスマホだ。普通の機能以外に防具と武器が自動で着せ替えが出来る
アプリ内蔵だ。ついでにロッテとシャロルの魔法で制服にも付与魔法は掛けた。
準備は整った。明と娘達は私立月里学園の生徒として学生生活を送りながら
迷い込んだ魔人と魔物を追うハンターとしてアキ婆の家に住み込む事になる。
エピローグ 「始まり」 完
自分の文才の無さを痛感しました。
二部の構想はありますが、今回で一応終わりとします。
ブックマークを記して頂いた方に有難く思います。
上を見ればキリが有りませんが、思った以上の反応が無かった事をバネとし
次回作に挑みたいと思います。 ありがとうございました。




