十二話 「面談・協力・合意」
十二話です
フローラの動揺とヴァシムの態度が気になったアキラは、問題の奴隷と会う事を
望んだ。『先方が気に入られない場合が在りますので…』と再三アキラに釘を
刺す。それでも良いと念を押すと何処か諦めた様子でアキラを部屋へと先導する。
奴隷が居る部屋とは思えない立派な造りの廊下を歩き、趣のあるドアの
前に立った3人。ヴァシムがドアを軽くノックした。
「失礼します。ヴァシムで御座います。
貴方様にお会いしたいと云う方をお連れしました」
おいおい!奴隷商って奴隷が主より偉いのか?この部屋に居る奴は一体何者だ?
「ほぉ~妾に会いたいと申す気骨在る者が居ったか。面会を許す入るが良い」
中から聞こえた声は綺麗な高音の声。小鳥の囀りの様に澄み渡る感じがした。
恭しく頭を下げたままヴァシムはドアを開くそして後に続こうとしたアキラを
一旦制し、一人彼は中へ入った。
「最近懇意にしている方で御座います。歳はお若いなれど、器量、度量共に
優れた御仁とお見受けしており、今だ底が計れません。一度ご面会の許可を
頂きたいと連れ参りました」
どんだけ下から持ち上げるんだと思いながら、中に入るアキラ。フローラから
小声で『頭を下げて入られて下さい』と注意されたので、急いで頭を下げる。
「苦しゅうない。面を上げよ」
その言葉と共に顔を上げる。豪華絢爛な造りの部屋だ。ここが奴隷商だと云う事
を忘れさせる程の雰囲気にアキラは、一瞬息を呑む。
「ほぉ~確かに若いな…」
アキラは驚いた。と云うより固まっていたに近い。目の前の女性否、少女は
肌の色が全身瑠璃色で髪は紅、瞳は金色で瞳孔は獣様に縦に細長い、タマランやリオンと同じ形、所謂猫科の目だ。
「妾の姿に…驚いておる様じゃな。無理も無い魔族を見るのは初めてか」
フローラがそっと脇腹を小突居たお蔭で我に返ったアキラがそそくさと答える
「あ、ハイ。初めて見ました。って云うかこの世界の人族以外の方は初めて
なんだけど、うん。ちょっと予想もしなかったから驚いたかな。俺はてっきり
魔族って人と争うとばかり思ってたからね。それとも君が特別なのかな?」
「おほほっ。妾を魔族と理解してその口の訊きよう、お主は痴れ者か、それとも
知者か…面白い、許す。名を申すが良い」
結構上から目線の女の子。ヴァシムやフローラの態度から、魔族がある意味
この世界で上位の種族かと思えるが、そこは日本育ちの高校生。
カチンと来るのは、眼に見えていた。この場にリオンが居ればアキラの育ちを
少しは理解し抑えただろうが、ヴァシムとフローラはまだアキラが異世界の
住人だと知らず、彼の暴挙を起こすなど思いもしなかった。と後日談で語る。
「あ~。えっと俺まだ、イマイチこの国のこと理解してなくて悪いんだけど、
同い年のそれも女の子に、そこまで上から命令口調で話しされた事無いんだ。
えっと…ロジーナ・くらうど…クラウデぃあ…長い名前「辞めよ!」」
高飛車な女子が怒りを顕わに驚愕の形相でアキラの口を塞ぐ。驚いたのは、
アキラの言動にヴァシムが腰を抜かし、フローラが『ムンクの叫び』見たいな
顔をしている事だった。
「何故、何故!お主はソレを知っておる!?二度と二度とソレを口にする出ない
もし禁を犯せば、お主の肉体は一瞬に業火で焼き尽くそうぞ!判ったな」
「あ~うん。何となく判った。じゃ~ロッテって呼べば良いのかな?ロジーナ」
「だから!二度と口にするなと今、もうしたであろう。この痴れ者が」
今度は慌ててクッションをアキラに投げつける魔族の少女。肩で息する姿と
怒っている顔が何となく可愛く見えたアキラである。
(魔族の方の本名を語るのは禁忌です。間違っても三度目は無いですよ。
コソッとアキラに知らせるフローラ。…やっぱり君は賢い娘だね)
「ヴァシム!此奴は何者じゃ!?魔族を恐れぬばかりか崇める事もせぬとは、
妾は…妾は聞いた事が無いぞ」
「ハ。ですから今だ底が見えぬ御仁と「良い!判った」」
「して、お主、名は?」
「アキラ。歳は君と同じ17歳だ。俺は今回高位魔法を扱える女性で、出来れば
出来ればで良いんだけど将来俺の嫁さんになってくれそうな人を探してるんだ
まぁ~嫁の件は後日要談で構わないんだけどね」
「…あはははっ。腹が…腹が捩れる!あははっ。アキラとやら!お主ソレを
真の心で申しておるのか!?あはははっ」
「ん~ん…悪い?まぁ~俺も婆の言い成りで、勺に触るがこの町に来たのは
俺自身を鍛える事と嫁探しは本気だぜぇ…フローラって可愛い候補者も1人
見つかったしな」
と良いながらフローラに向かってウィンクを飛ばす。ソレを見ていたロッテ
「どうやら本気のようじゃな。誠、愉快な男よ!よし、判った。妻室の件は無し
じゃが、お主を鍛える事には力を貸そう。ヴァシム!妾はこの男の下へ向う」
「はははー。」
赤毛でクルりとキツ目のカール掛かったショートヘア。アクセサリーっぽいのは
自前の巻き角。身の丈はアキラの肩辺り。全体に細めだけど体力いっぱい元気娘
が魔族ロッテの見た目の印象だ。一応此処は奴隷商。女性が行き来するとなれば
行わないといけないのが、奴隷契約である。ヴァシムにコソッと彼女の価格を
聞くと、引き取ってくれるなら逆にコチラがお金を渡したい気分ですと
言って来た。つまりアキラは財布を痛めず、また1人奴隷を増やした事になる。
「それで確認だけどロッテは付与魔法って使える?」
「妾にその術は無い。なんだお主はその手の者を探して居るのか」
「いや付与魔法は武・防具に付けたいんだ。それで確認しただけ。悪いんだけど
幾つかの付与魔法覚えて貰えるかな?」
「その様な事、吝かでは無いが、覚えたからと云うて道具に付与出来るとは
限らんぞ。元々その行為は鍛冶師の役目じゃ魔術師は巧く云って付与カードを
作る事しか出来ぬぞ。ソレも巻物次第だがな。…お主、誠に何も知らぬな」
「多分…大丈夫。覚えて良いならコレ」
と買って来たばかりの魔法の巻物をロッテに渡すアキラ。何の苦も無く
全てを読み解くロッテ。そこは魔法に精通してる魔族である。
「それじゃ~その付与カードって奴試してみて」
「むむ。ほんにお主は人使いが荒い男よ。出来ぬでも妾の所為では無いからな」
念を押して呪文を唱えるロッテ。彼女の掌に小さな雲が湧き上がったと思ったら
直ぐに雲散し代わりに綺麗なカードが1枚残った。
「ほぉ~これは」
その場に居たヴァシムとフローラが驚き、魔法を掛けたロッテは
カードを摘みアキラをジーッと見つめてる。
「…面白い男よ」
さて、此処まで来れば計画の半分が進んだ事になる。後は要の1人鍛冶師を得る
事だ。ヴァシムに尋ねると独り打って付けの娘が居ると云われ三人で面談する
「あわわわ。どうして三人の方が…それにお一方は…」
ロッテの姿に怯える少女。少し幼く見える彼女は舞い上がって会話がマトモに
交わせない。一応保留と言う事で、もう一人の娘と逢う事にするが、
さっきの二の前に成らぬ様ロッテには別室で身支度を整えて貰う事にした。
十二話 「面談・協力・合意」 完
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