一話 「驚愕の事実」
長く続ける程、受けが良ければと思います
連載スタート記念として1時間後に2話目 投稿予定です
大門明 17歳。今年高校二年。明日から夏休みと云った前日に突如両親が
事故で他界。唯一彼の親族は会った事も無かった父方の祖母だ。何故在った事も無いかって言うと明が生まれる前にオヤジが勘当されていたからである。
それでも時折、お袋が明の成長を綴ったアルバムを祖母に送り続けていたから、
向うは明の事を知っている。そしてTVで大々的に事故のニュースが流れ
祖母は両親の死を知り、こうして葬儀の後、明と話をしているのだ。
「アンタは知らないだろうが、私が健一の母つまりアンタの祖母だ」
「はぁ~俺にばあちゃんって居たんだ」
「あぁ…健一と縁を切っていたからね~。でも時々紗江子サンがアンタの
写真を送っていたから、私はアンタを知ってたのさ。…所で、どうする?」
「どうって?」
「馬鹿かね?アンタは!この先の生活に決まってるじゃ無いか」
「一応警察と保険屋サンの話では相手が全面的に悪いんで保険金は
出るって聞いてます。取りあえず、部屋でも借りて高校は、
このまま通うツモリです」
「残念だけど、それ無理!アンタに一文も下りないよ」
「えっ!何で??」
「健一の借金を私が肩代わりしてたからさ。保険金全部でも少し足りない位さ」
「ええええぇ~っマジですか」
こうして保険金を当にしてた明は残り一年半の高校生活が風前の灯となる。
「明。アンタどうしても高校は卒業したいかね?」
「はい。おばあさま。ワタクシ、できれば大学までシンガクシタイト
オモッテオリマシタ」
「ふ~ん。一人暮らしして大学卒業するまでどれ位金が掛かるか
知ってるんだろうね!?」
「ハイ。タクサンカカリマス」
「で?その資金はどこから沸くのさ?」
「ソ・ソレヲ、ホケンキンデト、カンガエテオリマシタ」
「はぁ~いい気なモンだね。親の借金知らなかったのかい?」
首を縦に何度も振り続ける明。保険金が右から左に流れてしまえば、
明日から路上生活者に成ってしまう。ここは是が非でも阻止しなければ成らない。
そんな思いが彼の口調を変に変えてしまっていたのだ。
「…私も鬼じゃ~無いんだ。アンタが…健一の後を継ぐって言うんなら、
資金援助しても良いよ」
その言葉に明の縦に振る首が加速を帯びて高速化していた。
「な、何でも継ぎます。家名でも、家業でも、おばあ様の下の面倒でも
何でも継ぎます」
「誰がアンタに下の世話まで頼むかね!いい加減におし」
「耳貸しな」
祖母の言葉に素直に従う明。彼女の口から漏れる小さな言葉に驚いた。
「えええぇ~何ですって!!」
「馬鹿!声がデカいよ」
「良いかい。丁度アンタは今夏休み中だ。その休みの間とその後の休みは、
ずっと健一に代わって異世界で嫁探しをするんだ。それが資金を出す条件さ」
ばばあの話を纏めるとこうだ。
元々オヤジの家系は異世界と日本を繋ぐ不思議な空間の扉
(婆さんの家の裏にある古井戸)を守ってきた家系だと言う。
時折その扉から異世界の化け物が紛れ込んで来るらしいのだが、
それを討伐する役目が俺の家系らしい。討伐するには力が要る。
特に異世界の住人は魔力と強靭な力を備えた人種らしい。何代毎にその血を
子孫に残さなければ、衰退しいずれ力を失い。扉を守れなくなるって事だ。
本来ならば、その役目の世代がオヤジだった。所が異世界は魔物が蔓延り、
剣と魔法で戦う場所。ビビリのオヤジは異世界に旅立つ前夜に逃亡。
結果、婆さんは異世界の知人に借金して今向こう側で扉を守ってもらっている
って事なのだ。
「だから、アンタが無一文になって私がこの先死んだら日本はアッと云う間に
魔物の住家だ。そこで、明。アンタが健一の変わりに向うで嫁を探して
連れて来れば、事は収まるって寸法さ」
「えっと~ソレって日本政府に話して代わりの人に行って貰うとかお金を
払ってアチラ側で守るって案は無いの?」
「…誰が今更そんな話信じるかね?それに、私らに流れてる血はそん所そこ等の
血とは訳が違うんだ!ぷ・プライドってモンがアンタにも在るだろ!?
おいそれと何代も続いた役目を赤の他人に任せられるかい!」
「・・・」
「・・・な、何だよ?」
「つまり、ばあちゃんは、先祖の残したプライドの為に俺に危険な場所に
行けってのかい?」
「…嫌なら、アンタは明日から路上生活が待ってるだけさ」
「あ~う~。痛いトコ突くなぁ~」
「因みに、これがアチラから来た嫁さん方の写真だよ」
話を逸らす為、婆が古い白黒写真を持ち出して明に見せる。
「まじ!マジ!本気と書いてマ~ジィィィ!」
「全部!犬耳・猫耳じゃん。尻尾も在る。あ~コッチもしかしてエルフ??
うはっ!すげぇ~ボイン。ねぇねぇ!この写真って全部本物?
俺の身体にこの人達の血が流れてるの??」
「あぁ~私にも、しっかりと流れておる」
そう言って婆が明の前でセェクスィーポーズを決める。
「う~ん…見た目の遺伝は残さないのか」
「五月蝿いよ!若い頃の私はモテモテだったんだからね!」
婆の話を5割り聞きとしてもアッチの世界に犬耳・猫耳・エルフが居るのは
間違い無いらしい。
明は長期休みの間だけ異世界に行き、普段は学校には通える方向で
婆と話を詰めていく。
「それじゃ~嫁探しは夏休みだけ、他の休みは鍛錬と資金稼ぎって事で
良いのかな?」
「あぁそれでも良いが。こっちの時を遅く方法も在るんだけどね」
「何ソレ?」
「アンタが向うに居る間コッチの時間が極端に遅くなるって話さね。
例えば、今アンタが向うの世界に行く。っで、三年向うで過して嫁を
連れてくる。そしたらココは明日の今頃って事だよ」
「…そっちの方が便利じゃねぇ?」
「ただ…金が掛かるんだよ。時を遅くするってのは魔法なんだ。
アッチの世界の知り合いに頼むんだけど、金が掛かるのさ!
それも遅くする時間で金額が変わるんだ」
「…その魔法って学べないの?」
「私らはアッチの世界の血が流れてるから学べるんじゃないかい?」
「それなら、俺が学んでくれば、タダじゃん。難しいのかな?」
「アンタ見かけによらず頭良いね。難易度はどうだろうね?」
「じゃ~とりあえず、二週間お試しで魔法調べてマスターしたらそのまま
時間遅らせるって方法で!ダメなら、冬休みとか春休みも継続って
事でどうよ?」
「冴えてるね~アンタ本当に健一の子かい?紗江子さんの連れ子
じゃないだろうね?」
「そんな事知るか?ってかソレだったら婆さん死んだら日本はお終いじゃん」
「それもそうだね。なら明、アッチに行き前に肉屋で霜降り肉1Kgを
5つ位買ってきな!」
「突然何だよそれ?」
「アッチの肉より和牛霜降りが人気が高いのさ。向うで生活するのに資金が
要るだろ?装備だって、タダじゃ無いんだ。和牛霜降りを向うで換金して
装備やらを揃えな」
「了解!」
そう返事をして明は右手を差し出した。
「ん?なんだい?」
「いや!肉買う金俺持ってねぇ~し」
「この貧乏人!いいかい!貸し!貸しだからね!」
「ケチくせぇ~!」
婆から資金を得て自転車を走らせる明。向うは町の生肉店だ。
「良いかい!松坂とかブランド肉を買うんじゃないよ~
A3ランクで十分だからねぇ~」
自転車で疾走する明に婆の声が木霊して行く。
一話 「驚愕の事実」 完
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