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超越探偵 山之内徹  作者: 朱雀新吾
最終話 超越探偵の弱点
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超越探偵の弱点⑩

「お兄様、今のはなかなかのピンチでしたね」

 含み笑いをしながらわざわざ言いにやって来た真由美に俺はチョップする。

「あうー」

 頭を支える真由美。今のは半分が八つ当たりだ。能力に関してと、言葉の引用に関して、俺は結構墓穴を掘るからな。口先だけが攻撃手段の性と言えば仕方ないんだろうが。

「何とかなりそうですか?」

「うーん。どうだろうな。とにかくやってみるしかないからな」

 何とかするしかない、とは思っているけど。

「彩華ちゃんも?」

「対決、だからな」

「面白い動機付けですよね」

 確かに、今までの犯人とは対決そのものという動機で対峙しなかった。俺個人の動機と犯人個人の動機のせめぎ合い。まあ、それって当然なんだけどさ。

「中学二年生の動機としては、ひょっとしたらこういうのが一番テンション上がるのかもしれませんね」

「格闘漫画の主人公だったらな」

 俺はまったくそういうタイプじゃないから。

「よう、トオル。次から次へと爆弾を見つけて、大活躍だな」

 すると久しぶりに範人も声を掛けてくる。コイツは多分、何にも気が付いていないんだろうな。基本、人を疑わないから。

「無事にこの事件が終わったら、映画観に行こうぜ、な」

「お前、また同じ映画だろう」

「当然」

 胸を張って笑う範人。まったく、こいつは。

「ふふふ」

 真由美がおかしそうに笑う。俺と範人も顔を寄せ合い、笑った。

 見渡せば敵だらけの四面楚歌。状況はさっきよりよっぽど最低なのに、なんだこいつらのこの落ち着く雰囲気は。嫌になるぜ。

「どうした、トオル?」

 俺はそれほどおかしな顔をしていたのか。範人が覗き込んでくる。

「いやいや。まだ、どうなるか分かってないのに、能天気だな」

「多分、トオル。お前だよ」

 範人が軽快な声で答える。

「お前が生き生きしていれば大丈夫ってこった」

 真由美もうんうんと頷く。

「超越探偵の時のお兄様は最強なんですから」

「おう、信じてるぜ」

「おいおい……勘弁してくれよ」

 お前達の過大評価もそこまでくれば、重荷を通り越して、最高に心強いよ。


 だが、その評価は確かに過大であった。その事を俺はしばらく経って痛感する事となるが、この時の俺は正直、舞い上がっていたのだ。




 そして、朗報が届いた。柳田への揺さぶり。それが、効いた。俺の欲しかった場所に……届いたのだった。

 それは楽器屋の爆弾を石橋が解体し、四階の残りの店舗の看板を見る為に、俺達が移動を開始した―――その時だった。

 とうとう俺の待ち望んでいたヤツが、現れたのだった。

「どうも。宜しくお願いします」

 今や恒例の人員追加。そこに現れた「田山」と名乗る男。

 ソフトモヒカンでタラコ唇。目は小さくて結構優しい感じ。体格は、正に柔道部。サングラスを外したら尚更、花園薫そっくりじゃねえかよ。まったく、会いたかったぜ。

 俺が一番欲しかったカードが、こいつだ。「組織壊滅」なんて、仲間割れさせた所でそう簡単にいくもんか。ちょっと時間を稼げるかどうかのレベルだろう。

 そしてこの作戦の問題点、それはゴールに向かえば向かうだけ俺がピンチに陥る事だ。結局「ハラペーニョ」なんて存在しないんだから。全て嘘なんだ。それだけで俺は舞台を作りあげてしまった。今はいい、それで犯人を味方に付け、爆弾を見つけ、解体させ。だが、それもそう長時間足止め出来る芸当じゃない。バレたら……それだけで俺、犯人からどんな目に合わされるか……想像しただけで恐ろし過ぎるぜ。

 このまま爆弾を全部解体して、更には上をうろちょろして最終的に地下食品売り場にでも下りて、唐辛子を片手に「はい、ハラペーニョ♪」って言ったら。「犯人」全員

「ズコーーーーー!!!」って転んで死んでくれないかな。それが最高のラストなんだがな。

 だが、そうもいくまい。これが俺が今直面している難局だ。

 だから、助けが必要だ。ハッタリではなく現実的な助けが。

 その現実的な光明が今、一筋差したのだ。

 俺は前を歩いている範人に話しかける。

「範人」

「何だ?」

 範人が振り返る。

「お前にどうしても頼みたい事がある」

「任された」

 即答だった。まあなんて男らしいんでしょうか。

「今すぐこの場から離脱しろ」

「……何でだ?」

 俺と真由美の側にいられない状況になるとは考えていなかったんだな。俺は、しっかりと範人の目を見つめて、説明する。

「とにかく爆弾は俺に任せろ。そして引きつけられるものは全部俺に引きつける。だからお前は……ここを脱出してくれ」



 そして、オレは直ぐにトオル達のいる集団から離脱した。


 集団の数が膨れ上がっているのが幸いした。オレ一人が離れてもそう簡単には気が付かないだろう。

 トオルの奴は爆弾に関しては大丈夫だと言っている。どういう方法で知ったのかは分からんが、爆弾はあと二つらしい。石橋さんのあの手際を見たら、全てを解除してしまうのも時間の問題だろう。

 そして、オレ達の周囲が不穏な雰囲気になってきていたのも、正直感じていた。明らかに雰囲気がおかしい人間が何人かいるのだ。もっとも、テロリストがうようよいる館内で、あんな大所帯になる事自体が、あり得ない。オレの計り知れない何かが始まっているんだ。だから尚更アイツらの近くにいたかったんだが、トオルに頼まれたからには仕方がない。オレには理解出来ない方法でアイツが生み出した、千載一遇のチャンスだという。そこにオレの力が必要だと言うのであれば、断れる筈もない。

 山之内徹には恩がある。

 彼には小学校の時に、救ってもらった。

 それから幾度か救われ、今も救われ続けている。

 自分の名前が嫌いだった。

 嫌な事を嫌と言えなかった。

 そんな自分が嫌いだった。

 そんなオレが今では、自分の名前も、周りの皆も、大好きなんだ。

 きっかけをくれたのは、トオルだ。

 トオルには不思議な能力があるらしいのだが、オレにはよく理解出来ない。とにかくあいつの事は、凄いとしか思わない。但し、あいつが凄いのはそんな能力があるからではない。あいつがあいつだから凄いのだ。だからオレはよく分からないあいつの能力に特に関心がない。

 館内階段を来た通りに降り、一番近くの店舗に滑り込む。商品棚の陰から辺りを見回すが、人の気配はない。よし、フロアを腰を低くして、なるだけ早いスピードで、進み出す。

 オレが真っ直ぐ目指すのは……三階の、カフェ。



 範人を放ってから、俺達はまだ四階で、三つ目の爆弾を探し回っていた。

 柳田も幾分ホッとした表情となっている。自分達の爆弾を無効化していってるってのによ。汗をぬぐいながら柳田は俺に話しかけてくる。

 暗号を解いて「ハラペーニョ」の下へと早く行きたいらしい。


 そして、更に「犯人」も増えた。

「田山」に引き続き、「山本」「本田」という武闘派が2人増えた。

 同時にメンバーのモヒカン率もグンと上がった。

 山本、本田はガチガチの武闘派で、モヒカン、肩パット。トゲのついた手首のヤツ、ジャラジャラしたチェーンと、世紀末フル装備だった。一行の物騒感が一気に上がったのは言うまでもない。目出し帽の黒田と同じ匂いがした。


「犯人」の総合計は13人。うち武闘派は5人。山本も本田もがっちりとしたラグビー部の様な体格だったが、俺には見覚えが無かった。ひょっとしたら一階の従業員通路とか、そこら辺の巡回か見張りだったのかもしれないな。

 やはり眼光は鋭く、態度もツンケンしている。だがそれは俺が勝手に親近感を抱いていた田山も似たようなもんだった。

 結局俺は話が通じそうな非武闘派のヤツらにだけ話しかけ、柳田が警察の手先ではないかという噂を振りまき続けるだけだった。

 爆弾も、数の問題が少し引っかかるが、この調子なら何とかなりそうだ。

 範人にも頑張ってもらわねばならんが、あいつならやってくれるだろう。

 これで軌道に乗ったかな。

 物事が、順調に進んでいると思っていた。だが、実際はなんら一切順調ではなかった事を俺は直ぐに思い知る。

 足元を掬われる事態が起きた。

 俺は気が付いていなかったのだ。自ら行っている戦略が順調に運べば運ぶだけ、一番大切な「生存」を脅かす事になると……。


 増田が少し困ったといった表情で俺に話しかけてきて、それは発覚した。

「山之内君……ヤバいよ」

「どうしたんですか?」

 俺は他人事の様に優しく問いかけるが、その内容は……俺達の命に関わる問題だった。

「山之内君達を始末しようっていうメンバーが出てきている」


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