超越探偵の弱点⑨
そうこうしているうちに石橋は見事に爆弾を解除してしまった。
「お見事です」
俺は微笑を浮かべ、石橋に近づく。
「……簡単だったからだよ」
ご謙遜を。真由美の言う通り、彼は技術者的な雰囲気だ。「ジャイロマニア」にも自分の能力を発揮する為に加担しているのだろうか。というか、そういう感じだと言う事を増田から聞いた。
というわけで、コイツは他人との人間関係を揺さぶっても意味はなさそうだ。だが、自己顕示欲は強そうだ。平気な顔をしているが、褒められて嫌な顔はしていない。だからコイツにはこのまま爆弾を解除させまくる。それだけで十分過ぎる程に価値がある。
爆弾を爆発させる事にしか関心を持たない異常なヤツじゃなくて良かったよ。
このまま口先だけで、「ハラペーニョ」を盾にして全ての爆弾はとにかく解除してしまいたい。
その後の風呂敷の畳み方は……その時考えます。その為にもさっきみたいな工作を同時に重ねないとな。
「暗号はどれだけ解けているのかい?」
再び柳田が俺に聞いてくる。彼はさっきからとにかくそれだけが気になって仕方がない様だ。うんうん、良い感じだ。
「そうですね……」
俺は周りを見渡す。あれ?増田がいない。もう一度確認しても、確かにいない。あいつ一体どうしたんだ。ひょっとして俺脅し過ぎたか?犯人だってバレて逃げた?爆弾が怖くて逃げた?。
「あれ?増田さんは?」
堪えきれず俺が直接声を出して聞いた瞬間、
「おーい」
増田の声が本屋の入り口から聞こえた。
「そこで隠れている一般人の人達を見つけたから連れてきたよ~」
そこにいたのは……。
「小笹です」
「笹原です」
「原田です」
「田黒です」
「黒田です」
「犯人」が更に5人増えました。
巨大ショッピングモールの四階を闊歩する俺達。
橋本「犯人」。俺。真由美。彩華「犯人」。範人。記者のおっさん。柳田「犯人」。増田「犯人」。石橋「犯人」。小笹「犯人」。笹原「犯人」。原田「犯人」。田黒「犯人」。黒田「犯人」。
計14人で歩いている。内「犯人」10人。
うん、これもうアレだな。
確実に彼らもテロリストだ。「ジャイロマニア」だ。
で、今回えらく武闘派な人が現れたんですよ。5人中3人の小笹と笹原と原田はそうでもない。体格的にも増田や石橋と変わらない感じ。予備要因か、思想要因と言った所なのかな。
だが問題は残る2人。
田黒と黒田。
黒田は角刈りのおっさんだが、信じられないくらいにガタいは良いし、筋肉隆々で腕のそこかしこに古傷みたいなのがあって、手首にあの、ほら、よく漫画とかで悪者がつけている、トゲトゲのついた金属製のリングがあるじゃないか。あのトゲトゲのヤツをつけている。あと、同じく漫画の悪者でお馴染みの、何を守る為なのか用途がよく分からない肩パットも装備されている。そんな御方が、不自然にいびつな形で盛り上がり、歩く度にガチャガチャ金属音が鳴るバッグを持っているのだ。その中に鉄製のどんな物騒な物を隠しているのか、怖くて聞けない。
完全、ガチガチ武闘派である事が窺える。
あと、何よりもね、この黒田って人、目出し帽してるの。
一般人なのに、目出し帽して買い物に来ていたみたいなんです。
そんな人いる?聞いた事ある?
だから実際目出し帽の所為で黒田の額には「犯人」という文字は見えないのだが、決まりだよ。馬鹿らしい。決まってんだろう。この人だけ最後に犯人じゃありませんでしたなんて事になったら、逆に怒るぞ、俺は。
そしてもう一人、田黒である。
田黒は黒田より少し大きさは劣る。目出し帽は被ってなく体格から見て、体操部みたいだ。
多分、二階従業員通路にいたヤツの片割れだ。……うん?それはつまり、二階従業員通路のヤツを、俺達に回してきたって事だよな。ふんふん……そういう事になるよな、やはり。俺はこの事態を自陣へのプラスに代える考えを頭で練る。そこに光明を見出す。
だが、俺は自分で自分のハッタリの効力に驚きを隠せない。本当に防御のハッタリを設置しておいて良かった。保険がまだ効いているよな。ハッタリが「ハラペーニョ」だけで、「暗号が俺の頭にしかない+俺にしか解けない」という設定にしていなかったら、脅されて殺されて終わりだった気がする。
だが、そうなっても増田は俺を庇ってくれるかな。皆と接する雰囲気からして石橋は技術派、増田は人脈筋なのだろう。ああ、良かった。増田には友好的にしていて。
ていうかもうまったく、毎度毎度、何て綱渡りしてんだ俺は。
前々回、200人の「犯人」の前でハッタリを奮ったけれど、命の危険感は今回の方が半端ない。
14人で次の四階へと向かう為、館内階段を上がる。ドタドタと結構な足音を立てているが、もう気にしない。どうせ「犯人」だらけの大所帯なんだからよ。
その階段の途中で、彩華が俺に話しかけてくる。
「おいおい探偵、どうすんのよコレは?」
「いやあ、はっはっは。まるでハーメルンだな」
笛吹きじゃなくて、ホラ吹き男だがな。彩華の口振りからやはりこれも彩華の意志ではない事が窺える。だが、疑問があるにはあるので素直に聞いてみる事にする。
「ヤツらが襲ってこないのは、俺の暗号とかのおかげかなと思っているんだが、ひょっとして、お前が押さえているってのはない?『あたしと探偵との勝負の邪魔をするな』みたいな格闘漫画のノリで。だったら、お前、それこそ次には仲間フラグだぞ」
「違うってば。そんな真似する訳ないじゃん馬鹿じゃないの」
即否定。少し残念。しょぼん。
「それは探偵の言うとおりだよ。アンタにしか解けないっていう暗号の所為でしょうよ」
やはりそうか。まあ、そうだろうな。何とか命を繋いだって訳だ。
「『人質に価値などない。それよりも凄まじいものがここにはある』って言われたらそりゃこうなるわよ。もともとヤツらも、一つの思想の下に集まった反政府集団なんだから、偶然だろうがなんだろうが、持てる力は大きければ大きい程良いでしょうよ」
彩華はやれやれと溜息をつく。
「探偵が突然、デトロイトコンピューターとかなんとかがあるって言いだすもんだから奴等、大慌ての大喜びって状態よ。見張りの手をこっちに割いてきたもんね」
「ははは」
鼻の頭を掻きながら渇いた笑いを上げる。
「まあ、現場指揮権に関してあたしは基本ノータッチだから。決定権は向こうにあるし。まあ確かにそんなものがあるなんて聞いて、そっちの方が人質よりも価値があるって知ったら『ジャイロマニア』の連中は方針を変えるわね。それに関してはあたしも情報不足だったし、ちょっと反省だわ。しょぼん」
「ん?」
こいつ、何言ってんだ。
「ねえ、あたしにだけ教えてよ。どこにあるのよ『ハラペーニョ』は?ねえねえ。誰にも言わないから」
彩華が目をキラキラさせて俺に聞いてくる。アレ。こいつまさか。
「お前……」
「ん、どうしたの?」
「12月24日に来るおじいさんは」
「サンタさんでしょ?」
当たり前の様に彩華は答える。
「悪い子の所にはやってこないからね。代わりになまはげが来るんでしょ?なまはげ超怖いじゃない。だからあたし、12月は犯罪しないようにしてるの。だから多分今回が今年最後の犯罪じゃないかな。きゃぴぴ」
天使かコイツは。人を疑う事を知らないようだな。「ハラペーニョ」も「サンタ」も「なまはげ」も信じてやがる。
まあ、少女一人騙せなくて、大人を騙せるわけないか。……状況はピンチには変わりないが、急ごしらえにしては成果はまずまずといった所。それもこれも普段の修羅場のおかげだわ。やってて良かった超越探偵。
敵を揺さぶり「ハラペーニョ」と暗号という鍵で俺達の身の安全は確保。爆弾も俺の能力で順調に捜索中。
だが、これだけではダメだ。増えた「犯人」達にも同じく、工作をしなくてはな。先程同様、新しい人間の隣に行ってはアクティブに俺は行動する。
――どうも、山之内徹と言います。超越探偵です。お願いします。
――この事件も、柳田刑事がいれば大丈夫ですよ。安心して。事件は解決したも同然です。
――爆弾を処理出来たのだって柳田刑事の指示ですし。民間人に頼むなんてと、橋本刑事は反対していたんですけどね。ですが、柳田刑事の一任で何とかする、と。柳田刑事は刑事の鏡というか。『ジャイロマニア』にとっては大変な強敵ですねえ。いやまあ僕達一般人にとっては大いに頼もしい限りなんですけど。ね?小笹さん。
――いやあ、素晴らしい。柳田さんは、警察の誇りじゃないですか?笹原さん。
――柳田さんは潜入捜査が得意でして、過去にも何度か敵組織に潜入して中から壊滅させちゃった事もあるみたいですよ。あ、これ内緒ですけどね、原田さん。
ふんだんに、とにかく柳田を疑わせる内容の情報を流すのだった。
だが、流石に俺も武闘派系には怖いから近づかない。ていうか近づけない。黒田と田黒。彼らからは常に臨戦態勢というか、話しかけるなオーラが出ている。柳田としては増田や増えた非武闘派勢を「ハラペーニョ」を捜索する際の単なる人手として呼び出したのだろう。そして今増えた武闘派勢2人は、「ハラペーニョ」を交渉材料にする際の守りの為に必要な人材って事か?武闘派2人というのはつまり、フロアの見張りと同等。俺のハッタリもぼちぼち効いてきたって事だな。そして、こんな武闘派系も指令下に置けるのなら、いよいよ柳田はなかなかの地位にいる事になる。だったら、「柳田の裏切り」シナリオは、「組織壊滅」の良い要因になるだろう。
俺達は四階へと上がり、爆弾を探して歩き回る。四階にはもともと見張りがいなかったのか、それとも四階の見張りが今俺達の中に加入しているからなのか、理由は定かではないが、とにかく、このフロアに犯人は誰もいない。
「次はここです」
そして、俺は四階の楽器屋の前で立ち止まり、宣言する。
「ここに百パーセントの確率で爆弾があります。推理は時間が無いので、割愛します」
「何で……?」
彩華は再び驚きの表情を見せる。その顔は驚愕に歪んでいる。ふふふ。
当然、地図でも確認出来ているし、今目の前ではまさに楽器屋の店名に「犯人」の文字がルビとして浮かんでいたのだ。「西村楽器店」と。
皆で一分程探すと、爆弾はすぐに見つかった。アコースティックギターの中に隠されていたのだ。
範人が「コリングすじゃないか。なんて真似を……」と嘆いていたが、俺にはよく意味が分からなかった。
爆弾は先程と同じ型だ。俺は石橋に目配せをする。
「石橋さん」
「……ああ」
柳田を見る石橋。柳田は真剣な面持ちでこっくりと首を縦に振る。それを確認してから、石橋は再び、作業を開始した。
もう、橋本は何も言わない。他のメンバーもゲーム機の椅子に腰かけたりと、各々で時間を潰す。
橋本はまた真由美と話をしている。
真由美も楽しそうに、いやいや、そんな事ないですよー等と言っている。
範人はキーボードで曲を演奏して、彩華はそれに合わせて歌っていた。
おのれ範人!!!!貴様!!
なんだその最高に羨ましいシチュエーションは!!
「森のくまさん」や「ちょうちょ」を歌う彩華の愛らしさといったら、無かった。
ああ、俺も入りたい。後ろでドュワーとか、あ、よいしょ!とか言って盛り上がりたい!!!いいなああああ範人くん!!!!!!!
だが、俺にはやらなければならない事がある。鬼に後ろ髪を引かれている程の物凄い未練を根性で断ち切り、俺は再び柳田に近づく。
「柳田刑事」
「山之内君」
俺の顔を確認して、持っていた携帯をポケットにしまう。その携帯でさっきからメンバーに指示を与えているってわけだな。
「爆弾は、何とかなるかもしれませんね」
「ああ、山之内君。君のおかげだ」
「いえいえ、そんな事ありませんよ。柳田さんや、橋本刑事がいるから安心して僕は爆弾捜索と、暗号解読が出来るんですから」
俺は首を横に振ると、柳田と橋本の「刑事」を強調して、褒め称えた。
「橋本刑事は周囲への注意が凄まじいですね。僕にも色々忠告を与えてくれましてね」
「忠告?」
「ええ、増田さんが犯人かもしれないから気をつけろ、とか。僕には信じられないんですけど、まあ念の為に注意は払っていますけれど」
「……そうか。橋本さんが君にそんな事を……」
ナイフの様に尖った眼つきを隠そうとせずに橋本を睨みつける柳田。橋本が「ジャイロマニア」の仲間を売った……。
まあ、嘘はついていないからな。悪く思わないでね、橋本刑事。
そして、俺はタイミングを見計らい、柳田の前で「はあ……」と深い、深い溜息をつく。
「山之内君?」
考え事をしていた柳田が再び俺に視線を戻す。
「いやあ……でも、良かった。本当に……良かった。何とかなりそうで……」
楽器屋の壁にもたれかかる様に座り、心底安堵した表情を見せる。
「……」
その俺の演技を隣で、凝視している柳田。当然、その視線を俺は意識している。しばらくして柳田が口を開いた。
「まさか、と思っていたが、本当みたいだな」
「え?何がですか?」
俺はすぐさま屈託のない表情を作り、聞き返す。
「いや。最初『ハラペーニョ』なんて話を聞いた時は、その、あまりに話が飛び過ぎていて、君が嘘をついているのかとも思ったが、今の君の反応を見ていると、芝居とも思えない。そもそも君が私達に嘘をつく理由も考えられないし」
それは今の俺に対する最高の褒め言葉だな。
「柳田さんに信じてもらえて良かったです。本当に大変な事態ですからね」
俺はそのまま芝居を続ける。
「爆弾はあと、一つぐらいですかね?」
彩華に聞いて爆弾の総数は四つで、残りは二つだと知っているのだが、念の為、カマをかけてみる。これだけ俺の言葉を信じているのだったら、そこは慌てて訂正が入るだろうと踏んでいたのだが、柳田の答えは意外なものだった。
「ああ、そうだろうな。私が入手している情報でも、爆弾は三つだと聞いている」
「……?」
……どういう事だ。こいつ、まさか。この期に及んで爆弾を一つ隠そうとしているのか?
「本当ですか?それは正確な情報ですか。これを間違ったとなると後々大変な事になりますよ。爆弾はあと二つ、つまり全部で四つじゃありませんか?」
思わず問いただす様な口調になってしまった。柳田が困惑した様に苦笑し俺に言う。
「おいおい、ちょっと、山之内君。そんな詰め寄らないでくれよ。そもそも残り一つぐらいというのは、今君自身が言った事じゃないか」
「ああ、そうですね。スイマセン」
いかんいかん。取り乱してしまった。だが、どういう事だ。柳田が嘘をついている様には思えんが。だが、それも俺が見抜けていないだけかもしれない。その証拠に増田からの密告があるまで、俺は橋本と柳田の正体を看破しあぐねていたのだから。
「爆弾の数に、何か、問題でも?」
柳田が怪訝な顔で俺に聞いてくる。いかん、怪しまれている。
「いえ、大丈夫です。とりあえず次の爆弾ですね」
これに関しては、彩華や別の人間にも確認してみる事としよう。ひょっとしたら彩華がヒントと称して俺に付いた嘘だったのかもしれん。
「後はとにかく、無駄な人員の割き方だけですよね。まあ『ジャイロマニア』はこのショッピングモールの真価には気が付いていないだろうと先程言いましたが、警察は迂闊には侵入出来ないんですから。一階。二階はともかく、それ以上無駄な見張りや巡回等必要ありませんのに……」
武闘派が2人こっちに来たんだ。もっと揺さぶれば状況が変わる。人の配置の仕方を人事部長に打診するんだ。
「僕が犯人グループだったら、もっともっと人員は『バーニャカウダ』捜索に使います。絶対にです」
「……そうかい」
柳田が神妙な顔で聞いている。落ち窪んだ目が再び光る。
「それはつまり私達にとって、爆弾も大事だが、同時に暗号も重要案件であるという事実に繋がるな。どうだい?暗号は解けそうかい?」
柳田が俺に聞いてくる。思わぬカウンターだった。
「そうですね、まだ確実ではありませんが。羅列された記号の意味合いと法則には気づきました」
「そうかい」
俺は記憶にない暗号を解くフリをする。
「多分、ですがある程度の場所は分かったかもしれません」
「そうか!」
嬉しそうな顔で声をあげる柳田。
「石橋さんが今の爆弾を解体して。更にこの階の他の爆弾を探したら、上に行きましょう」
「それは……つまり……」
俺は柳田に向かって頷きかける。そうだ、戦力は、上に集めろ。
「はい、『バーニャカウダ』はきっと上の階です」
「……」
そこで柳田の動きが止まる。
ん……?俺何か変な事言ったか?
「『バーニャカウダ』?山之内君、それはさっきも言っていた言葉だが。デトロイトコンピューターの名前は『ハラペーニョ』だったよな?」
「……あ」
しまったあああああああ!!!!!
間違えちゃったああああああああああああああ!!!!!
どうしようどうしようどうしよう。
「バーニャカウダとはあれか?イタリアの、野菜をオイルに浸して食べる、チーズフォンデュの様な料理の事かい?」
うわあああああ!やめてやめて恥ずかしいからやめてーーーーー!!言い間違いだから!!。ひゃー、どうしましょう。
落ち着け落ち着け落ち着けよ。
とにかく「言い間違えました」はよくないな。うん、怪しまれる。
追い打ちをかける様に柳田が再び聞いてくる。
「山之内君、『ハラペーニョ』だったよな?」
「そうです。デトロイトコンピューターは『ハラペーニョ』それは間違いありません」
これは肯定する。
「では『バーニャカウダ』とは一体……」
それは聞かれるよね。ううむ。ヤバい。早く舵を取り直せ。
「『バーニャカウダ』とは……」
そう、「バーニャカウダ」とは一体……?何だ何だ、考えろ、俺!!
すると、
「『バーニャカウダ』とは……『ハラペーニョ』が有する完全思考型自立AIの事です」
俺の口は、そんな事を言いだしていたのだ。おい、大丈夫か?
「『ハラペーニョ』が保持する情報力、更に能力は人智を超えています。そんな化物を自由に使いこなすには更に難解なコマンド入力を必要とします。だが、正直生身の人間でそんな事は不可能です。スペースシャトルを三輪車のハンドルで運転する様なものですから」
「なるほど」
柳田がうんうんと頷く。
「よって必然的に人間の望みを成し遂げてくれるオペレーションシステムが必要になってきます。『ハラペーニョ』の全機能を理解し、同時に我々人間の事も熟知していなくてはならない。そんな、機械と人間の架け橋として作られたのが今僕が口にしました完全思考型自立AI、人呼んで『バーニャカウダ』なのです」
「……なるほど。そうだったのか」
柳田が感心しながら首を縦に振る。
「『バーニャ』とは『ソース』、つまり『源』。『カウダ』とは『熱い』。『熱さの源』と言った所か……。命の無いコンピューターのオペレーションをするのが『バーニャカウダ』とは、なるほど、皮肉が効いているじゃないか」
いつから話を聞いていたのか、橋本が横から、愉快そうに呟く。
そのフォローに俺はまた救われた。サンキュ橋本。あと、柳田にある事ない事言っちゃった。ゴメンね。




