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超越探偵 山之内徹  作者: 朱雀新吾
最終話 超越探偵の弱点
38/68

 物心がついた頃にはあたしはそこにいた。

「謎の組織」。

 自分の素性等一切知りはしない。

 どこで生まれ、

 誰から生まれ、

 何故ここにいるのか。

 理由等、意味等、「必要ない」と言われて育った。

 与えられた名前。

「小中野彩華」という現実に所属する為に必要な名前と、

「獏」という、組織で生きる為のコードネーム。


 獏は神様が動物の半端物で作ったと言われている。だから他の動物を繋ぎ合わせたようなデザインなのだと。

 あたしを組織が遊びで作ったのと同じ様に。だからお似合いの名前だ。

 獏は夢を喰べると言われているが、そんな事はない。

 夢を利用する。夢を見る人間を利用して、唆してあたしは組織の理念を全うする。

 ただ、獏個人が夢を見るのかどうか、それだけが知りたい。

 あたしは夢を見る事があるのだろうか。

 出来るのだろうか。


 犯罪行為を愛し、その装飾に命を賭せ。

 その行為にのみ意味があると育てられた。

 但し、そこに何の理由も、感情も、存在してはいけない。

 愛憎、理念、損得で起こる犯罪に価値等ない。

 組織の人間はその事を「不純物が混ざる」と呼んでいた。


「純粋なる犯罪行為の崇拝」


 謎を用意して、探偵達を欺く。

 探偵は美しい犯罪行為を暴こうと目論む野蛮人共だ。

 彼らは直ぐに動機がどうだとか、凶器がどうだとか、犯人がどうだとか、犯罪に余計な添加物を引っ付けたがる。全くもって節操がない。

 謎は謎のままに、死は死のままに、それが一番輝いている状態。

 邪魔をするな。

 だが、探偵には利用方法もある。

 それだけ謎が好きな、謎解きが大好物な探偵がどうやっても、頭を捻らせても解けない事件。それこそが、現実では組織の理論に則った「理由なき事件」となるのだ。

 ただ殺した。

 ただ奪った。

 そのなんと美しい事か。

 犯罪は悪い事?わけが分からない。

「良い」「悪い」ではない。

 犯罪は行為こそが全てなのだ。 

 善悪等入り込む隙間などない。

 謎解き等入り込む隙間などない。

 あたし等入り込む隙間などない。

 理由のないあたしが、

 存在のないあたしが、

 事件に介入する事により、全ては「無」となる。

 犯人も、

 探偵も、

 消滅する。


 では……一体あたしは何なのだろうか。

 あたしは何の為に生まれてきたのだろうか。

 そう思っていた。


 だが、見つかった。

 見つかる筈がない。

 理由等ない、動機等ない、関連性等ない、あたしの存在が、初めて見破られた。


 少年探偵、山之内徹。


 ヤツには……あたしが視える。

 

 あたしはヤツに何を望む。何を夢見る。それは……。










 

 












 超越探偵 山之内徹 最終話「超越探偵の弱点」 




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