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超越探偵 山之内徹  作者: 朱雀新吾
第四話 超越探偵と七つの密室と消去法探偵神山司
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消去法探偵神山司③

 そして今、俺と神山は別室にいた。

 魔魅子フェスが始まって最早五時間が経過しているというのに、別室にいた。

 容疑者達はそれぞれ部屋で待たせている。当然、警察の監視付きだ。

 俺と真由美、神山と刑事で事件を検証しようと、神山が提案したのだ。

 神山だけが立っている。

 真っ白に燃え尽きて椅子に腰をおろしている俺を見下ろすと、言った。

「さあ、山之内君。それでは始めようか」

 まずは今回宿泊していた方達の名前だが、とホワイトボードに名前を書いていく。


 日置。

 桃山。

 犬飼。

 雉丸。

 猿田。

 鬼蔵。

 吉備。


「さて、この人々だが、どう思う?」 

「はい」

「はい、山之内君」

 俺は真っ直ぐ手を上げると、自信を持って答える。

「百パーセント日置さんが犯人です」

「全く君は・・・・」

 神山は呆れた顔で苦笑する。

「では聞いてみよう。どういう理屈だい?僕を納得させるだけの推理があるんだろうね」

「はい。他の六人は名字が桃太郎の登場人物関連ですけど、日置さんだけ違います」

 だからです、と俺は自信満々に答える。

「更に今日は日曜日ですし、殺されていた部屋が「日暮の間」だったから、もう日置さんが犯人で間違いありません」

 俺は満面の笑みで付け足す。


 俺の至高の推理を聞いた神山は、天井を仰ぎみて呆れかえった顔で大きくため息をついた

「ナンセンスだよ。まったくナンセンスだ。山之内君・・・・」

 心底がっかりしたように、神山は俺を見下ろす。いや、見下げる。

「確かに見立て殺人というものはこの世の中に存在する。だが、名字と部屋の名前が一致した程度ではねえ。無理があるってもんだよ」

 何の根拠もない、と言い放つ。

「だから君の様に思いつきで推理なんて僕には出来ない。全ての可能性を羅列して、否定していく僕の捜査とは似て非なるやり方だ」

 うるさい、クドクド言いやがって。

 何言ってんだよ。明らかに日置だろうがよ。

 他のヤツらの共通点は桃太郎だけど、一人だけ曜日だろうがよ!!!

 だから、日置でいいの!!

 何でそれが分からないんだ!コイツには。


 それから更に二時間、俺は大変な目にあった。

 地獄の時間が始まったのだ。いや、ずっと地獄は続いているのだが。

 講義が始まった。

 先に言っておこう。ここから先は、忙しい人は飛ばしてください。

 ちなみに俺はここから意識がほぼ無くなったので、途中分かりづらい所が多々あるけど、ご了承下さい。


「扉を開けた時、まずは桃山さんの行動を思い返してみようか。何か△■い動きを見せなかったか。そう言えば桃山さんは■□に△づいていなかっただろうか。■●の有無に関してチェックにいったんだろうが、疑う余地はあるね。

 いいかい山之内君、覚えておくんだ。

 ■□に行っていたら、気をつけろ。何か▲□をしているかもしれない。例えば■△とか。

 □■●▲■△には、●を●▲■△▲★ポピュラーな仕掛けもあるが、●▲を使うという手段もあるんだ。そうなったら、そのトリックの□◆●★は△■発覚からすぐしかない。●▲■△▲★□の□●が決めてとなるだろう。

 桃山さんの可能性に関しては、狩野刑事、裏を取って頂けたら。はい、お願いします。

 犬飼さんは★が▲かないと言っていた人だな。ここで一つ疑問なのが、この時、★は本当に▲かなかったのかという事だ。・・・・山之内君。君はそんな風に△■にした目で僕を見るが、これも大事な△能◎なのだよ。まさかこんな事が、という事こそ、世の中には起こり得るという事実を君にはもっと△■しておいてもらいたいね。★が▲かないと豪語しておいて、実は★□▲□が●☆っていないというト△ックもあるという事だ。これを●▲みたいな作戦だと笑う人もいるだろうが、そう見えて現実的に簡単で、やりやすい。なに

 より★□▲□☆●で●を▲ける振りさえすれば、一切▲★が残らないのだ。

 覚えておくといい。▽▲□▲ているのに、▲□▲ているというフリをしている、そんな△■トリックもあるという事を。

 相手が何度か★を▲けるのに△■した後の△▲をしっかりと見ているといい、わざとらしいくらいに▲かない事を印象付けて、★□▲□☆●を要求してくるから。そこが絶好の、そして△■△では唯一の機会となる。

 一応加納刑事には犬飼さんの可能性に関して、裏を取ってもらいましょうか。はい、良い返事です。お願いします。

 で次は雉丸さんだが、彼は一番最初に●☆に近付いていたな。可能性として言うなら、この△▲★□という事も有り得る。◆▲★□◎▲のまさに△をてらった方法だがね。そう、被害者は□▲□☆ていた。凄いだろう?山之内君。△■にはまだまだたくさんの謎で満ち溢れているんだよ。これも△■△が一番だけれども。それは探偵だって動揺するし、更に雉丸さんは特にそういった動きはなかったと僕には思われるんだがね。刑事さん、雉丸さんが■△▲★□▲□▲★したかどうか、裏を取ってください。

 覚えておくといい山之内君。

 ◆■□●◆△▲★▽▲◎☆◆△殺す、というトリックだってあるんだ。大胆にも程があると君は思うだろうが、これがなかなか面白い。

 猿田さんは、特に何もないが、逆に何も反応が無さ過ぎたと、疑えなくもない。△■は△■として、疑う余地にもなる。それ程△■の態度ならば、ここは◆△▲□の可能性がある。と、考えるのも猿田さんは「日暮の間」の▲□☆●部屋に▲□◆△いたからだ。△から■△▲★□てナ☆●を□▲するような◆▲が、この世の中に□◆とも限らない。

 ◆△▲□◆□なんてものを使われたら、スピード解決がモノを言ってくるね。何故なら、▲◎☆◆△▲なく、犯人の◆△▲★□けたら終わり、なんてものがあるかもしれないからさ。

 僕達がまだ△■△■△■が世の中にはまだ沢山あるって事さ。傲慢を捨て、その事実を認識して初めて僕達に見えてくるものもある。

 刑事さん・・・・そうです。その通りです。裏をお願いしますね。勉強しましたね。僕はそういう向上心が大好きです。はい。

 山之内君?君は聞いているのかい?・・・・ああ、そうかい。いや、聞いているなら構わないさ。白目を向いている様な気がしてな。どうやら僕の気のせいだったようだね。

 あとは鬼蔵さんだが。・・・・?ああ、■△の名前さ。△▼鬼蔵さんと言うんだ。あんな優しそうな人が鬼蔵さんだとはね。おかしなものさ。そして、これはもう本当の本当に消去法だが、□■●▲■△▲トリックがある。★□▲□☆●☆ックでもなんでもないのだが。△▲□っている★□▲□☆●さえあれば、▲★□▲□☆●に等しいって事さ。どうだい?▲□☆◎でもなんでもないだろう?だが、★□▲□☆●が★□▲した等と▲□☆ステリー作品なんて、とんでもない批判の的になるのは目に見えているだろう?炎上間違いなしというヤツさ。

 だがそこに僕達▼■の盲点が生じるのも事実なんだ。★□▲□☆●を使ってはいけない、という△◎自体がミ▼△リーを縛る鎖となる、というね。

 さあ覚えておくといい。

 つまり□●●が少ないからといって絶対に□●はないと決めつけるべきではないという事さ。消去法になるかもしれないが、その他の可能性を全て潰した後には、★□▲□☆●の存在を思い出してみると良い。◆□さんの存在をだ。この館で一番簡単に□●を作り上げる事が出来る人物の事を。

 ■にも、★にも、〇▲にも、□◎にも、▲□にも、■●▲■にも、何一つ、□△▲な□△▲は存在しない。つまり完全な●●なんだ。であればあるだけ、□☆さんが犯人である可能性が高まる。他の□●●を全て潰せば、最終的に犯人は★□▲□☆●を持っている□☆さんだという結論へと向かうしかない。つまり、消去法ということだ。だって、★□▲□☆●を▲□●いるのは、□☆さんだけなんだから

 刑事さん。裏を・・・・。あ、もう取れたんですか?・・・・ブラボーですね。最高です狩野刑事。なんて有能なんだ貴方は。有能刑事さんですね。素晴らしいです。

 後は、吉備さんかな。残った可能性としては、限りなくゼロに近いのだが、まあこれも言及しておかなくては、僕のポリシーに反する。

 ◆■□●◆△▲★▽▲◎☆◆△▲★□◎▲□▲□☆◎●◆□◇●△■◆□■●▲■△▲★□▲□☆●☆◆△▲□△▲□◆△▲◆

 覚えておくといい。

 ▲◎☆◆△▲★□◎▲□▲□☆◎●◆□◇●△■◆□■●▲■△▲★□▲□☆●☆◆

 △▲□△!!

 ▲□◆△▲◆■□●◆△▲★▽▲◎☆◆△▲★□◎▲□▲□☆◎●◆□◇●△■◆□■●▲■△▲★□▲□☆●☆◆△▲□△▲□◆△▲◆■□●これは刑事さんには裏を取ってもらわなくてもいいでしょう?あ、もう取ったんですか?ああ、そうですか」



 あ、もう読み終わりました?

 はい、なんかこんな感じです。

 そうなんです、この人いつもこういう感じなんですよ。分かってくれました、俺の大変さが。はい。


 ああ、まるで睡眠学習のようだ。なんて話したがりなんだ。話したがりのOLかコイツはまったく。

 どこかで聞いたようなトリックばかり自信満々に喋りやがって。まったく、困ったもんだぜ。いや、聞いてなかったけどね。

 それにそもそもコイツ、事件が起きた時の状況をどこから見てたんだよ。後から「待った!!」と言って颯爽と登場したじゃねえかよ。さてはその前からどこかでコソッと見てやがったな。

 とにかくなんでも可能性を口にして、それを消していかないと気が済まない消去法探偵。

 確かにそれが捜査の基本で、探偵としては正しいんだろう。正しいのは分かる。


 だけど、キリがないんだよ。全ての可能性を潰していっても。

 何故なら犯人は、百パーセントの確率で決まっているからだ。   

 俺がそう言っても、コイツには通じないのだろうけれど。



 そして、刑事からそれぞれの人物の裏を取り、全ての検証を済ませた。その時間、実に三時間である。三時間だぞ三時間。無関係の人間を証明する為だけに、三時間をかけたのだ。


 そして最終的に、事件発覚から八時間が過ぎた頃。

 全員が再び集められた。


「罪と言う舞台で犯人という輪舞ロンドを踊る悲しき奴隷スレイブよ、その愚者サッドモンスターの名は、日置達郎。前へ!」

「はは!」

 犯人である日置が一歩前へ出て、恭しく神山の足元に跪く。

「犯人は貴様だな!!」

「はは!!」

 なんだこの犯人指名。これに比べたら俺なんて、まだ百倍マシだな。

「まずは大前提として、他の人に犯行は不可能であり、更に今回使われたであろう密室トリック、部屋の表札をずらして別の部屋の犯行を『日暮の間』での犯行と勘違いさせるというもの。実際に犯行が行われた部屋は、日置さん。貴方の部屋だ。つまり、犯人は貴方です。日置さん」

「・・・・く、参りました。神山さん」


 結局結果は俺と変わらない。

 俺は一瞬で犯人が分かり、

 神山は八時間かけて、犯人ではない人間を絞り出す。


 日曜日「日暮の間」密室殺人事件。犯人、日置発覚。事件発生から8時間15分20秒。


「さあ、山之内君。今回はどうやら僕の勝利の様だね。確かに君が最初に言っていた様に犯人は日置さんだったが、結局君はその理由を僕に論理的に説明出来なかった。勘なら七分の一で当たるわけだから、勝負にはならないね。はっはっはっはっは」

「はい、負けましたよ。神山さん。貴方には敵いません。完敗です」

 もうどうでもいいから、早く俺を解放してくれ。

 俺は深い溜息をつく。

 そこに誰かの着メロが流れだす。

「おお、セバスチャンか!!僕だ!司だ!」

 神山がタキシードの懐から携帯を取り出し、電話に出る。

 その言葉で気が付いた。

 今日がいつもより大変な気がしたのは、セバスチャンがいないからだ。

 セバスチャンとは、神山の執事の事である。

 本当、気の良いお兄さんと言った感じの好人物で、神山にいつも苦労を掛けられている。

 セバスチャンと別行動とは、珍しい事もあるもんだ。

「こっちは終わったぞ!!ああ、山之内君に勝ったぞ!!ああ、何?ケーキを焼く!?ははは!僕の好物は覚えているか!!??ああ、その通りだ!!チョコシフォンケーキだぞ!!家に帰ったら楽しみにしているぞ!!で、そっちの首尾はどうだ?そうか!!でかした!!それでは現地で合流しよう!!」

 とにかくテンションの高い神山。携帯を切ると、俺を見て片手を上げる。

「それでは、山之内君、また会おう」

「えー、もう帰るんですか?」

 真由美が残念そうに走り寄ってくる。

「当たり前じゃないか!明日は月曜日だぞ。学校に行かなくてはならないじゃないか。君達も早く帰らないと、最終列車に間に合わないぞ!」

 真面目か!つくづくコイツとは話が合わん。記者のおっさんもびっくりの気の合わなさである。

「あ、山之内君。今日私が君に指南したトリックは、私のブログでも詳しく説明してあるからね。今度、ゆっくり読んでみてくれたまえ」

「はあ」

 URLのメモを手渡されるが、俺は死んでも見に行かない事を心にしかと誓い、潰して灰にせんばかりの力で握りしめた。

 誰が二度とあんな地獄の講釈を伺うかよ。最悪だ、本当に。


 風の様に現れ、風の様に去って行った、消去法探偵神山司。結局アイツは一体何の為に俺の前に現れたんだ。

 ひょっとして、今回の彩華からの刺客はアイツだったんじゃないのか。

 それなら降参だよ。俺の負けだ。

 今回が今までで一番疲れた。

 俺の負けでいい。



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