表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒/白  作者: えむ
第五章
PR
26/48

四話


 理由。アーデルハイトが小さく呟いた。


 壁に取り付けられた燭台から、揺らめく炎が光を投げかけている。

 けれども、月も姿を見せぬ深い夜にあっては、廊下に満ちる闇の全てを追い払うことは出来ない。


 生きている、理由。再度少女が声にする。

 伯爵は言った。自分が良い領主であることだけが、存在理由なのだと。


 小さな蝋燭の灯りが、却って闇の深さを際立たせる。大きなガラス窓すら、この時間帯では漆黒の板のよう。

 見上げるアーデルハイトの目の前で、ガラスが突如音を立てた。

 違う。ガラスそれ自体が音を立てたのではない。何かがぶつかって音を立てさせたのだ。その原因が、落ちていく。


 窓に駆け寄った少女は、敏感に血の匂いを嗅ぎ取った。それは人間のものではない。

 窓から下を覗けば、僅かに白いブチが見えた。カラスだ。それもあの白いカラスだ。

 よたよたと羽を動かす彼は、以前見た時よりもずっと、弱っているように思えた。


 生きている理由。アーデルハイトの唇が音を綴る。

 このカラスにとって、その理由とは何なのだろう。誰にも受け入れられず、迫害され続けているのに、それでも彼は今日も明日も生きていかねばならないのだろうか。それは、何故。


 この白いカラスの望みを、アーデルハイトは知っていた。それは仲間だ。けれども、彼には得られない。

 その原因は、彼に白いブチがあるから。真っ黒になれない以上、彼の希望が叶うことはきっとない。

 可能性のない未来に望みを抱き続けるのは、と少女は考える。とてもとても辛いことなのではないだろうか。得られぬ幸せを求めて生き続けることは、地獄そのものではないのか。


 こつん、とアーデルハイトが額を窓に軽くぶつけた。その爪がガラスを引っ掻く。耳障りな音が闇に生まれる。ガラスにはカラスの血の匂い。

 生きている理由。少女が呟けば、ガラスが僅かに曇った。

 そもそも私は、生きているのだろうか。伯爵は生きている。カラスだって生きている。けれど、私は?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ