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第一章 静かな揺らぎ



 アズロは最初会った時のように微笑むと、慎重に下降を始めた。

 昇った時よりもいくらか時間をかけて、周囲に目を配りながら、先ほどまでいた公園の、人気のない場所に降り立つ。

 先ほどまでの浮遊感のせいだろうか、上手くバランスをとれずに傾いたシェーナの体を、アズロはそっと支えた。


「立てる? そう、ゆっくりと両足に重心をかけるように……うん、上手い」


 アドバイスに従いながら、シェーナが元の安定を取り戻すと、アズロはにっこりと微笑んだ。


「付き合ってくれてありがとうね。楽しかったよ。…でも、ごめん、今日は長くいられないんだ。また日を改めて、ここに来るから」










 時間を割いて来たのだろうか、そそくさと帰り支度を始めたアズロに、シェーナは言った。


「私のほうからも言っておくわ、ありがとう。勘違いしないでね、信用したわけじゃない。あなたが攻めてきたら、いつだって迎え撃つ準備はしてあるわ。……でも。あの景色は、本当に綺麗だった。だから、ありがとう」


 その言葉に、アズロは少し驚いて。

 それから、花が開いたような満面の笑みを浮かべてシェーナに手を振った。


「どういたしまして! 景色が見たければ、いつでも言ってください」









 遠く遠く、上空にアズロの姿は消えて、見えなくなった。

 次の瞬間、上空を、鳥のような影が横切り、セレス方面へ向かっていった。


 シェーナは鳥を、アズロを見送ると、踵を返して町外れの自宅へと足を進めた。

 未だ静まらぬ鼓動が、歩くごとに高鳴る。


 帰りゆくその背を、流れる茶の髪を、はためく淡い緑のリボンを、フォーレスの穏やかな夕焼けが柔らかな橙に染め上げていた。




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