終章
「感傷? 最近涙もろくなったよね」
「あ…ああ、うん――そうだね」
いい感じに誤魔化せたことに安堵しつつ、玄関に並んだ皆を迎え入れる。
一人は、少し遅れるようだった。
「久しぶり、元気だった?」
満面の笑みのアズロを、年老いたジェイは、年を感じさせぬ腕力で、骨が砕けそうなほど強く抱き締めて。ギリギリと軋む身体に悲鳴を上げるアズロを横目に、適度な距離を保ったまま来訪したルーチェとイシオスがシェーナを呼び止め、事の進展についてこっそり尋ねた。
「どう?」
「全然です。そーいう気配は全くナシ。レストも気付いて気を遣ってくれてるのに、当の本人は興味がないんだか知らないんだか……もー、私から押し倒しちゃおうかと」
げんなりした様子に、二人は同時に吹き出してしまう。
なんというか、シェーナとアズロは相変わらずのようだ。
ようやくジェイの熱い抱擁から解放されたアズロが、きょとんとしてこちらを眺めてくる。
「何かありました?」
言ったアズロに、シェーナ含む三人からの哀しげな眼差しが向けられたのは、言うまでもない。
「皆! 遅くなってすまない! ヴァルドのほうは大分落ち着いたぞ」
小走りで馳せ参じたエナは、今日ここに来る予定の最後の一人。
ドアにもたれ掛かり息を整えつつ、長く伸びた癖のある金の髪を掻き分けた。
「エナさん、髪、伸びましたね。そういえばあの時、私たちの中で髪色が変わらなかったのは、狭間の世界のルーチェさん以外には、エナさんだけでしたっけ」
「ああ。私は元々この色として生を受ける予定だったみたいだな。…感謝、しているよ。――あいつと、同じ色のままだ」
優しい苦笑いに、皆がそれぞれ、表情を変える。
それに気付いたエナはゆっくりと、顔を横に振った。
「皆は、間違っていない。そして、私もそうだろう。それに――あいつ…リゲルも、リゲルの道を生きたのさ。…私はまだ、分からないよ。何が…正しく、何が誤りなのか。いつだって、判明するのは、後になってからだ」
エナの言葉に、ルーチェはそっと首肯した。
続いて、シェーナ、アズロ、ジェイ、イシオス、レストの順に。




