終章
緑の葉が、そよそよと風に揺れている。
辺り一帯に民家は無く、あるのは小さなこの一軒家のみ。
所々が老朽化してなお居住できるしっかりした骨組みを「彼」がどうやって築いたのか考えると少しだけぞっとしたが、そこはもう気にしないことに決め込んだ。
――シェエラザードとその父、エスタシオンが数年間暮らしていた山小屋は、自らの軌跡すべてを葬った彼らしくない「遺構」で。
その理由を知る唯一の女性に奨められるまま、少し前に、シェーナとアズロ、そしてレストの三人はここに移り住んだ。
それまで各地を転々としながら、皆に発生した「新たな能力へのとまどい」を和らがせていった三人。
シェーナはアデュラリアの持つ古の力をそのままに、万物と融和し能力を発揮できる術を携え、アズロはイシティリオの持つ発明能力…複数のものを組み合わせることにより発揮することができる、誕生の能力を宿している。
レストはそれまでの能力を抱きつつ、新たな能力を――木々や花、農作物の成長を助ける優しい能力を、自ずと身に付けていた。
セレス世界全ての民が、こうした何らかの「特能」を身をもって思い出し、今ではそれぞれが独自の暮らしを営むに至っていた。国家という枠がありつつも、そこに縛られることのない個々の能力は、かつてとは真逆に、協和音を伴いながら、国を安定へと導く標となっていった。




