第七章 想いの呼応
ぬるりとした何かが、部屋に飛散する。
こんな状態で意識があるのは、自らが地の民の末裔だからだろうか。
いくぶんかは、生命力が強いとは聞いていたが…それが…
(これは…私が招いた光景だ)
四方八方に飛散したのは、自らの臓物だ。
しかし、何故かまだ息がある。
身体は動かないというのに、意識が、生きている…。
動くのは…
残っているのは、何だ?
「――」
声は、既に失ったらしい。
狭まった視界が、大破寸前の機体を映している。
あれは…
あの部品が、外れたら…
力導器機の核の器の固定が外れると、機体は制御を失うと伝え聞いていた。
しかし核は内部中央にあるため、十中八九外れないと。
…だが、今、その器は、風圧にさらされて露出している。
硝子細工のような透明な器が、数刻で破壊されるのは明白だった。
「――」
一本の、指が、動いた。
そして、それは白に近い肌色の手に、きつく握られる。
「どうすればいい!?」
息を切らして階段を駆け上がり、惨状を目の当たりにした、蒼い髪の人間の言葉。
――指は、あっけなくもぎれて、静かに人間の手のひらに収まった。
皮でつながっていただけだと気付いた時には、指は――リゲルは、事切れて、いた。
「アズロ!」
真横から、シェーナが叫ぶ。
シェーナの張った風の結界が、風圧を防いでいた。
「シェーナさん、下がって! だめだ、これはもう抑えられない。だから――」
アズロは、シェーナを階段の最上段から、両手で突き落とした。
「着地力が残っているうちに、逃げて! 大丈夫、僕一人なら、これを制御できる」
口走った言葉に、アズロは我が耳を疑った。
(そうだ…僕は、これを知ってる)
指先が手のひらに触れたあの瞬間、何かがアズロの中で砕けていた。
それは、表層まで滲んできている――。
「――アディ」
ささやいたアズロの表情が、険しくなる。
木々の緑の瞳は、海の青へ。
蒼い空のような髪は、淡い金色へと、筆を下ろすように塗り替えられていく。
「二度と…二度と、君を死なせない」
語ったのは、誰なのだろう。
わけが解らぬまま、しかし、解っていた。
アズロは、両手をそっと機体に添える。
風圧は、アズロを護るように張られた殻のような藍色の何かによって、無力化されている。
――もう、すべきことは、わかっていた。




