第七章 想いの呼応
先程までの震えがなくなっていることに気付いて、一度深く息を吐く。
円陣の最後を繋ぐ線を描き終えて、遥か上空に想いを馳せた。
「――私は、誰かを想うことを、知らなかったよ。人って簡単に殺し合ってしまう非情な存在で、恐怖でしかないと思ってた。だけど……、ねえ、ルーチェ。最初に、道化を演じてた私を見つけて叱ってくれたのは、貴女だったね。……気付いてたかなぁ、私は…親友としてじゃなくて、本当に貴女が――…って、やめとこう。どうせまだそこにいるでしょ、エスタ先生? こんなこと、言いたくなかったけど…弱虫みたいでイヤだけど……でも、いるんならさ、今だけだから。今だけ、私のそばに…いて、ください…」
背中から、柔らかな布で包まれるような温もりが、冷えた身体に伝わっていく。
瞳が潤むのを無視して、エイシアは朗々と唱えた。
「ルーフェンシュヴェーレンバウエン…!一、我は此の剣を誓いとせん。シールクロデマヒアセージョ・レスレクシオン! 二、封印を解き放ち古の禁忌を蘇生せり。三、我が身を贄とし降りたまえ。呼応せよ――…サクリフィキウム・プレトレス…レデムプティオ…!! 避雷針、解放―――」
――耳を、つんざく轟音。
瞳を伏せずにはいられない、閃光。
それは、一瞬の出来事だった。
かろうじて出来た雲の切れ間の各所から、細い光の筋が数刻ぶりに大地を照らす。
ちらちらと灯る炎のような光は、セレス・ヴァルド両軍の無事を確認する松明の役割を果たしていた。
光は、円状に広く焼け焦げた小さな丘をも照らし出している。
風に流されたのだろうか、淡い紫の布切れが、少し離れた木の枝にひとつだけ、引っ掛かったまま揺れていた。
他に場に残されていたのは、きらきらと仄かに光る剣だったものの破片だけだ。
降りやまなかった刃の雨は鎮まり、静けさが辺りを満たす中、ひとつ、またひとつと、小さな雲が密集を始める。
“急いで、持つのは少しの間だけだよ”
小さく響いた声は、人の想いか、あるいは願いか――。
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