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序章2
〜第1幕.遠い遠い空の下〜
「……」
少女は少年の問いには答えぬまま微笑むと、眩しそうに眺めながら、馬上に向かって小さな包みを手渡した。
少年が薄い紙で包んであるそれを開けると、少女の瞳と同色の石が先端に取り付けられているペンダントが顔を出す。
淡くほのかな藍の光が、静かに灯っていた。
金髪をふわりと揺らして、少年はそれを首にかける。
空の青のような瞳が海の青に染まって、再び、空の青へと。
「危なっかしいんだから、道中気をつけて」
「アディ…ありがと」
「……お土産には向こうでの話をお願い。リオのドジ話をたくさん期待してるから」
…笑い声が、響いて。
嘶きと、走り去る音。
踵を返し、集落の中へと歩む、微かな足音。
二つの音が左右に分かれて消えていく。
旅立ちを祝うかのような快晴の空に、時を追う毎に一つ、二つ、雲が浮かび始めて。
数刻後、それは空一面を覆い尽くしていた。
―序章第1幕・終―