部活と兄と友達と……
時はもうすでに5月になりみんな間近に迫ったゴールデンウィークの予定を立ててる頃だった。
その日は疲れる一日となった。
特に放課後の事件が……。
今日も授業が終わり部活に行こうとして教室へ行くと中から楽しそうな声が聞こえた。
とりあえず教室に入るとなぜかみんなが香奈さんの周りの机に座っていた。
「おお千佳さん丁度良かった。今から香奈さんが壮大な話をしてくれるんだって」
石沢先輩が笑いながら言った。
この人香奈さんの話に結構期待してるっぽい。
なんか香奈さんは賑やかそうなんだけど静かそうにも見えるから不思議だよな~。
とりあえずどんな話が出るのか興味があったので聞くことにした。
すると丁度香奈さんが口を開いた。
「これは去年の夏に体験した事です」
うわ~なんか怖い話っぽい出だしだな~。
蛇足だけど私は怖い話は苦手です。
けどもっと苦手……というか嫌いなものはみんなの察している通り家のお兄ちゃんです。
どうでもいいや聞くことに集中しよう。
「私は普通にパソコンをやっていたんです。そしたら急にパソコンのスピーカーからこんな声が聞こえたんですよ。『あなたはこんな小さな世界に住んで良いような人間ではありません……どうか私たちに力を貸してください』と。その直後に意識が飛んだんですよ。そして目が覚めたら先が見えないほど広い草原に立っていたんですよ」
ナンダッテーソレハタイヘンダナー……ってちょっとまてえええええええええええ!
「何で?何でそんなゲーム見たいな事になってんの!。なんで!?それ夢でしょ!絶対!」
「そんなこといわれても私も知りませんよ。けれど仕方ないじゃないですか本当にそんなところに居たんですから。それでですねしばらく歩いていると結構大きな街が見えてきたんですよ。それで……」
まあここから先は長いのでカットしま~す。
それで香奈さんの話は今日で語りきれないほど話した。
そうして今日の部活は終わった。
帰ろうとして靴棚の所へ行くと丁度絵美ちゃんが帰ろうとしている所だった。
「やっほ~千佳ちゃん。部活帰り?」
「うん部活終わって今から帰るとこ」
「そうなんだ~私も丁度帰るとこ。それじゃあさ一緒にどっか遊びに行かない?」
絵美ちゃんは目を光らせながらこちらを見てきた。
「まあ、少しだったら良いよ」
と言う訳で学校の近くにあるゲームセンターに行くことになった。
「ここで少し遊んでいこうよ」
「けど私そんなにお金持ってないよ」
すると絵美ちゃんは微笑んで「大丈夫、大丈夫」といって中へ入っていった。
「まず手始めにこれでもやろうよ」
そう言って指を指したのはガンシューティングゲーム通称ガンゲーだった。
そのガンゲーは次々にゾンビが出てきてそれを倒しながら進んでいく奴だった。
「私はこれが得意なんだよ」
そう言って絵美ちゃんは誇らしげに胸を張っていた。
「私はこういうのはあんまりやったこと無いんだよな~」
そう言いながらも絵美ちゃんと一緒に100円玉を投入。
ボタンを押してスタート。
すると絵美ちゃんが強烈な連打でボタンを押してチュートリアルをスキップ。
って私やり方わからないんですけど~!
するとすぐにゾンビが現れてあたふた。
けれど絵美ちゃんは慣れているのか「おらおら~」だの「散れ~!」だの言ってノリノリだった。
絵美ちゃん活躍で私が攻撃しなくてもゾンビたちが倒れていった。
これじゃゾンビが(´;ω;`)←こんな感じになってるでしょ……南無。
心の中でそう思いながらも1面のボスへ。
すると画面辺りから嫌な雰囲気を感じた。
「千佳~!!」
予感的中。
突然前から兄が勢い良く姿を現した。
「きゃああああああああああああ!」
とっさに腕を伸ばしたら銃口が兄の口へ入った。
「!?」
兄はそのまま勢いに任せて後ろに倒れ画面に頭を打った。
「ぅ……っ……」
打った所を抑えて声にならない声を上げて地面を転がっていた。
「な、なんだ……お兄ちゃんか……びっくりさせないでよ……」
すると兄がまるでなんとも無かったようにすぐ立ち上がった。
「千佳の驚いた姿可愛かったよ」
さっきのしっかり見られてるし……恥ずかしい……。
私は兄に見られた屈辱と公共の場で大声を出した恥ずかしさで顔が燃えるように熱かった。
「千佳ちゃん大丈夫……?」
心配そうに絵美が顔を覗く。
「ま、まあ何とか大丈夫……じゃないかも……」
私たちはゲームセンターを離れ近くのファミレスに場所を移した。
そうしてさっきの反省会というかお説教タイムもちろん兄に。
「お兄ちゃんなんであんなとこに居たの!?」
「いや~適当に仕事探そうと思って街を歩いてたらいつの間にかゲーセンに……」
頭をかきながらてきとーな笑顔で答える。
こいつ……ぜんぜん反省してねーな。
イライラしながらもとりあえず絵美に謝罪。
「ごめんね……バカなお兄ちゃんが乱入したせいで……」
すると絵美が兄の方を無心で見て聞こえていないようだった。
ま、まさか……。
「まずいいや。今回は大目に見てあげる。行こう絵美ちゃん。あとジュース代よろしくね」
勢い良く立ち上がり無理やり絵美を連れてファミレスを出た。
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暗い帰り道ずっと放心状態の絵美に疑問をストレートにぶつけてみた。
「絵美ちゃんもしかしてお兄ちゃんに一目ぼれしたでしょ」
するといきなり「はっ」となり腕を勢い良く横に振った。
「そ、そんなことないよ!た、ただかっこいいなあ~って思っただけだもん」
そう言って泣くふりをして走っていってしまった。
ばればれだって……ってか足かなり速いな~。
そんなことを考えていたら良からぬことが頭をよぎった。
お兄ちゃんって自分でも言うのはなんだけど私一筋じゃん……この先が大変そう……。
部活では散々突っ込み、夜は絵美がお兄ちゃんを好きになっちゃうし……疲れた一日だったな~。
「はぁ」と大きくため息をついて家へ向かってとぼとぼと歩き始めた……