にぎやかな歓迎会
先輩達についていくとまったくなじみのない釣堀に着いた。
いかにも隠れた名店って感じの雰囲気が出ていた。
ってかここ普通の長屋っぽい感じがするんですけど。
まあ確かに横には長屋の釣堀ってそのまんまの看板がおいてあるけどさ~。
「さあみんな!思いっきり楽しもうぜええええ!」
福田先輩が叫ぶと石沢先輩だけが「おおお!」と返事を返した。
「それじゃあみんな中に入ろうぜ」
そう言ってみんなで福田先輩についていき中へ入っていった。
中に入ると床はアスファルトで固められていて真ん中に大きな池があり生臭かった。
その池を覗いて見ると大小さまざまな魚が泳いでいた。
すると横にみのり先輩が来た。
「ここはね隠れたいい釣堀なのよ。ここの魚は大きくて美味しそうでしょ」
笑いながらそういった。
「まあ確かに美味しそうですけど……」
「何か分からないことでも?」
「ええ……一つだけど~しても分からないことがあるんですよね……」
「何?何でも相談して」
そう言ってみのり先輩は優しげに微笑んだ。
まあみんなは気づいてるよね私がどうしてもわからないこと。
「じゃあ聞きますよ?何で歓迎会が釣堀なんですか?」
するとみのり先輩はやっぱりねと言う感じで笑った。
「それは福田君がこの釣堀をやっている人の息子だからよ」
「へぇ~……」
だ、だからって釣堀……別に他の場所でも良いんじゃ……。
そう思いながらも壁に立てかけられた竿を借りて挑戦してみる。
「みのり先輩餌ってどれですか?」
するとみのり先輩は何かが入ったタッパーを差し出してきた。
「はいこれ」
その中身を見てみるとミミズが100匹ぐらい中で動いていた。
「ひいいいいいいいいやあああああああああ!」
私は信じられないスピードですぐさま後ろへ逃げた。
「あら?もしかしてこういうの駄目だった?」
「ふ、普通女の子はそういうの無理じゃないんですか!?」
「あら別に私は大丈夫よ。それじゃあ私が餌を付けてあげるね」
そう言って針にミミズを刺した。
私は思わず目を閉じた。
なんか……みのり先輩笑っていたような……ううん気のせい……だよね?
他の人たちはもう魚を釣りあげていたらしく福田先輩と石沢先輩のはしゃぎ声が聞こえてきていた。
宇佐美先輩は竿を強く握って池を見つめていた。
どうやら1匹も釣れていないらしい。
香奈さんは慣れているのか何匹も釣っていた。
しかも全部大物。
そうしてなぜか藤崎先輩は隅でパイプ椅子に座って静かに本を読んでいた。
読んでる姿ちょっとカッコイイかも……。
すると耳の横でみのり先輩がささやいた。
「藤崎君は顔はいいんだけどああやって一人で読書してて友達付き合いが悪いのよ。落としたいんなら頑張って本を読んで同じ話題を出すことね」
「私読書はあんまりしないんですよね~……!!」
私はすぐさま後ろを振り向くとみのり先輩が笑っていた。
「まあ頑張って努力しだいで何とかなるわよ」
「わ、私は別にね、狙ってません!!」
私は顔を赤くして腕を横に思いっきり振った。
「恥ずかしがることは無いんだから。私は千佳ちゃんの恋を応援するから。そうそう餌付け終わったわよ。それじゃあ池に入れてみましょう」
話切り替わるのはやっ!まあいいかな。
みのり先輩はいつの間にか自分のもつけていた様で針をあまり見ないようにして一緒に針を池に投げ入れた。
そうして待つこと10分……。
急に竿が思いっきり綺麗な弧の字に曲がった。
「千佳ちゃん当たりよ!しかも結構な大物よ!」
お、大物ってこの引きは普通じゃない気が……。
油断していると急に引きが強くなり体が池に吸い込まれそうになる。
すると藤崎先輩が竿を握って助けてくれた。
「一気に引くぞ」
「は、はいっ!」
そう言われて一緒に竿を引く。
すると池から姿をあらわしたのは2m位のエイが釣れた。
な、なんでエイが釣れるの~!?
釣れると藤崎先輩はまたパイプ椅子に戻って読書を再開した。
そうして結果的に私はこの日エイを釣り上げてみんなから尊敬された。
こうして楽しい?歓迎会は終わった……。
まあみんなそれぞれ楽しんでいたらしく私も意外に面白かったかも……。
けど凄く疲れた……。
こんな風な行事はなるべく減らして欲しいな……疲れるから。
そんなこんなで入部初日が終わった……