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師匠の気持ち

奥さん話には、まだ続きがあった。

エルフの奥さんと別れ、また冒険者に戻った師匠は、数年後今度は獣人の女性と出会った。

獣人も師匠と同じで、300歳位生きる。


獣人の彼女は、豹の一族。

生まれが獣人の国でアムウ。年齢は、出会った当時10代とのことで驚かされる。


「まさか、18歳だって思わないだろ?冒険者だったし~。

メムリーサは、豹耳で20代後半に見られる175の背にスタイル抜群で、色気のある容貌だぞ」

師匠が言い訳をしている。

それを精霊達は、「エロじじい」と、陰口をコソコソ言っていた。

主と慕う癖に、からかうし、悪態つくし、でも主が大好き。

『ラグちゃん、いい加減に私達に慣れてね』

「ははは」

(小悪魔なお姉ちゃん達ってところだな)




3人目の奥さんについて弟子に言えと、ドラゴンの人間型に羽交い絞めにされて

脅されている師匠は叫ぶ叫。

「いだだだだあ」

実は世界中でとても凄い勇者で、魔術師には見えない。

僕が壮絶な言い争い(本人達はじゃれている)に絶句していると、

急に真面目になった師匠は、ポツリポツリと話し始めた。

傍でドラゴンの男性体がうんうん頷いている。

妙な組み合わせだ。


「オレが127歳くらいの頃の話しさ。オレ見た目が20代後半だったな。

また出会いでもあったらいいなと考えていたら、北の街のギルドで出会った」

『エルフの里の件で、しばらく妻はもういいなんて言ってたくせにな』

『本当に』

「なんだよ、それ。お前達は反対だったのかよ」


時折チャチャが入るが、笑いも起こる。





で、件の獣人妻の話しだが、彼女とは80年夫婦だった。

その期間に子供が3人。もちろん、獣人そのものの外見。

あちこち旅をしながら家族で国内を回る。

当然、魔物退治の依頼が国王からくる。

ギルドからも、もちろん。

家族で魔物退治をして、いろいろな事が起きるが楽しいひと時だった。


出会った当初10代だった妻もその時は40歳。

自分の育った里に帰りたいような事を漏らす。

そのような事を言い始めたのは、ギルドに彼女の両親から手紙が届いたからだ。

「兄が亡くなったので、家を継いで欲しいって」


獣人は、家を継ぐのは長子。5人兄弟姉妹で末っ子のメムリーサには関係がないと

思われていたし、大勢いるので、働きに出た過程がある。

「他の兄弟は?」

「他家に行っているので、難しいと。私は、仁と結婚して子供もいるが

どこの里にも籍を置いていない。出来れば、戻って欲しいって」


家族が嫌いで家を出たわけでなく。人数が多いからこそ、外に出て働こうと考えて

出て来たのだ。家族はいつも心配し、所属先にギルドには月1回手紙が届いていた。

結婚すると報告した時は、里には戻らなかったが、家族全員のメッセージの入ったカードは

届いた。

「今いるところから、どのくらいの距離にあったかな」

「仁」

涙を溜めて彼女は微笑んだ。だからその笑顔に彼は負けたのだ。

「里へ行こう」



里では、歓迎された。国では有名な勇者。そして、勇者の妻が獣人の里の娘。

子供達は、直ぐに他の獣人達と混ざったが、勇者には仕事がある。

またもや単身赴任的な生活になった。


「どうして?」

「オレが勇者だからさ。国王と取引してるからな。きちんとお金は支給されるが、

魔物退治がオレの仕事。国内の魔物退治は、他の冒険者も協力してくれるが、

基本難しいモノはオレに回ってくる。」

ため息を吐きながら、師匠は言う。

『家族を危険にさらさなくても良くなって、良かったとワレは思う』

ドラゴンに

『そうですね。あの子達、元気ですものね。先日、手紙を渡しに行きましたが

ひ孫さんがひとりギルドに登録したようよ』

精霊の何人かがいたずらっ子のように付け加えた。


「何、それ。手紙に書いてないぞ」

大慌ての師匠に、精霊達が『いっけな~い。内緒だったのに~』

なんて、笑っている。


「じゃあ、この約束の森に住んでいるってことは」

「ラグ。流石13歳だな。賢くなった。そう、妻が亡くなったから、里を出た。

子供達も成人して、それぞれ仕事も持ったからな」

「どうして、里に残ろうとしなかったんですか?」

きっと子供達やお孫さんもいて欲しいと思ったと思うのに。


「魔物退治を続けているからな。結局単身赴任なわけで」


『くくく。ラグ。大人の男の辛いところだよ』

魔族の男性がニヤニヤと笑う。

『外見がいつまでも若いから、他の獣人女性が寄ってくるのを避ける為だよ』

「え・・」

師匠は、渋い顔をする。

「オレの子の奥さんに襲われかけた。だから、このままいては拙いと思ったんだよ」

『あそこの里は一夫多妻。だが、こいつの子の妻は勇者である仁に思いを寄せていたから

大変だったな。実の子と喧嘩になる前に、逃げたというのが正しい』

「そうなんですか。大変でしたね」


「そう。寿命が長く、外見が若いと大変なものだ」

感慨深く言っているが、精霊達はお笑いだ。

『主。若いとモテたが、170歳過ぎた辺りから急激に歳を取ったもの』

『180歳の頃は、50代の感じだったけど、そういえば髪が白くなったわねえ』

『ねえ、主。髭を伸ばしたのは何故?』

「髭?ああ、サンタになれるかもと思って」


『サンタ?』


全員が疑問に思った。


「はは。まあ、オレのもともといた世界では、クリスマスという行事があったんだ。

雪が降る年が変わる前、良い子にはサンタという白い髪白い長い髭をした爺さんが

トナカイという動物にそりを引かせて、空からプレゼントを配るんだ」

「へえ、凄いですね。それは魔法?魔術?」

僕は、興味を持った。

「その辺りは大げさに伝わっているかな。

実は、サンタは実在した優しい人物がモデル。詳しく言っても、

この世界では意味が分からないかもな。と、いうことで、その子供が憧れるサンタに

近づけないかなと髭が白くなったので、長くしてみた」


この世界でサンタを知る者はひとりもいないのにと、精霊がポツリと零すと

師匠は、「そうだった~」と喚き「いや、自己満足でいいよ」と

開き直った。



この数日。獣人の里に置いてきたという子供の孫が、訪ねてきた。

「爺ちゃん、来たよ~」


約束の森は、精霊達に守られている森。

精霊が許可したら、中へ招かれる。勇者のひ孫なので、スルーだった。

「うわ、お前大きくなったな」

「爺ちゃんは、相変わらず。やっと年齢の外見になったね」


9年の間に、契約者達に背を押され、人族の里や獣人の里に顔を出すようになり

(エルフの里は、余程嫌な思いをしたのか、未だ帰っていない)

訪ねてきたひ孫にももちろん会っている。

「お前、知らない間にギルドで登録したって?大丈夫か?」


大柄な体型の豹耳の男、彫が深くて独特なイケメンは、あちこち怪我があるが

元気そうだ。

「まあ、怪我とかしてるけど。元気だよ」

「ひとりか?パーティメンバーは?誰もいないのか?」

おろおろしている師匠は、爺バカそのもの。どこにでもいる爺さんと変わらない。

「ああ、仲間は森の外の村で待ってる。近くまで来たけど、俺以外はじき出された」


『だって、変な色ボケ男と怖い女と子供なのよ』


小さな精霊達がブーブー文句を言っている。

「はは。彼らには今回だけでも入らせてくれないか?ひ孫の仲間だ」

『分かった』

勇者の願いに、勇者大好きな精霊達はひ孫を1度空に舞い上げ、村へと飛ばした。

「うわあああぁ~」

飛ばされていく気の毒なひ孫は、叫び続ける。




「精霊達がお前を仲間の所に連れて行ってくれるそうだ。仲間ともう1度、来い」

彼の曾祖父の言葉が聞こえたかは、分からないが上空へと消えていった。

「師匠」

「なんだ」

「精霊達、凄いですね(小さいのに)」

「可愛いだろ?」


勇者の言葉に、残っていた小さな精霊達が飛びながら、勇者の可愛い発言に

きゃあきゃあ喜んでいる。

『ラグ、もう慣れたろ』

笑っている魔族の男性に問われ

(精霊達の性格のことですね)

「・・・・・はい」

否、ここの人達(人外?)の性格が、破天荒なのはよく分かりました。






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