師匠について
契約者達
ドラゴン(西洋系)
人型にもなれる 全長10M~20M 体重1.5t~
兄 アロンソ 500歳 (外見30代)
妹 ラーニャ 350歳 (外見10~20代)
魔族 外見 イケメン金髪男性 赤い瞳 見た目20代後半 デヴォラー
外見 美人なクリーム色の髪の女性 金色の瞳 見た目20代 ガフリリット
精霊達 小さい者達
風 (リーフ)、水 (オー)、火 (エシュ)、土 (アルド)
大きい精霊 光の精霊 リーム
12体いるので、順番に。
師匠は自分の事を「オレ」と言う。言葉遣いはまだまだ青年みたいだが
外見はお爺さんだ。
昔は黒髪だったというが、その名残りは全くなく。
白髪、白髭の爺だ。体力はまだまだというが、最近腰が痛いとか疲れが酷いらしい。
精霊達の一部からは、時々『お爺ちゃん、大丈夫?』と
からかわれている。
僕の1年目は、家事手伝いをして生きる術を習いつつ、
師匠の過去の話をたまに聞かせてもらっていた。
火を起こすのに手間取っていると、懐かしそうにこちらの世界へ来た当初の話を始める。
「そうそう。こっちの木は火が起こしにくくて。どうして火がつかないのか悩んだものだ」
18歳という年齢で、こちらの世界へ来たので、キャンプ生活すら数回しか経験がなく
マッチとかライターで火を起こしていたので、その道具がない場合はどうしていいのか
分からなかったそうだ。
「こちらの世界では、魔法とか魔法石で火を起こす。ただ、魔法の力が使えるのは
100人に1人の割合。生活で使える魔法程度が多い。
まあ、オレの見解ではこの世界はあまり魔力はなくてもいいと思う。剣の世界だかな。
結局強すぎる力は、この世界の均衡を不安定にするものだ。強い力を持つ者が現れると
必ず国同士が危険な思考に陥りやすい」
しみじみ言われると、つい目を瞠ってしまう。
「師匠は長く生きているから、凄く重みがある」
彼は、現在290歳。
「寿命は、後10年だ」
「え?死期が分かるの?師匠」
「そうさ。前にも言ったろ。オレは、相手を見ると、相手の情報が分かる。
そこに隠すことが出来ない相手なら、寿命まで分かる。オレは、こちらの世界に来て300年の
命を貰った。後10年どう生きるか考えていたんだ。弟子を育てるには期間は短いが
徹底的に教えてやるよ」
にやりと口の端をあげて笑うので、思わず後ずさりしてしまった。
師匠は、魔術も剣術も凄かった。とても290の爺さんには見えない。
「だから、若い時分はオレ、勇者だからだよ。今は魔術師」
ガリガリと今日の獲物を2人で捌きつつ、たくさん話をした。
今思えば、家族がいない僕に家族を与えてくれていたのかと思うくらい。
川で魚釣り、山で狩りをし、異世界の料理の作り方もした。
彼の契約している精霊達やドラゴン、魔族とかいろいろな者達
12体の面々も時折代わる代わるやってくる。
「呼んでないぞ」
『主が中々呼ばないから、心配しておる』
『そうよ。後数年なんて、短いのよ。たまには呼んで』
契約していても余程の事がない限り、彼らを自由にさせているので
彼ら契約者達は、自分の意志で時間があると何か土産を持って、勝手にやってきている。
『我らは、主が好きで契約しているからな』
『主の好きな酒だよ』
「はは、嬉しいね。皆で飲もうか」
白い髭を揺らし笑う爺さんの周りは、契約した者達で集っている。
それぞれ付き従う年数は違うけど、昔あった懐かしい想いで話しに花が咲き
皆楽しそうだ。
『あ、そういえば。トルテアの村でこいつ飲み過ぎて2番目の奥さんにどやされた時なんてよお』
『あはは、アレか。思いだした』
『奥さんでなくて、メイドに向かって告白したアレか』
「思い出さんでもいいっ」
師匠は異世界からこの世界に18歳の歳で降り立った時、人族の国マテリアの海辺で倒れていた。
助けてくれた漁師の娘リネカと仲良くなり、結婚。
最初の奥さんリネカとのなれそめ。彼女とは80年夫婦だった。
彼女が80歳で亡くなるその日まで。
子供も大きくなり孫もひ孫もいる。
彼は彼女の寿命が見えたので
彼女が亡くなるまでの5年間は、彼はいつも傍で過ごしたそうだ。
当時、海辺近くの村で過ごしていたら
魔術師達が召喚した勇者ということで、探し出されて結婚生活1週間にして単身赴任。
とにかく国王命令で、国内の魔物退治に借り出された。
たまに報告時に帰宅するという生活が、魔物が減るその日まで長年続いていた。
圧倒的な力を最初から持っていたわけではなく、旅をしながら経験を積むという
過酷な事実。
魔力が大きかったことが良かったのか、旅に同行してくれた魔術師に魔術を習い、
騎士に剣術を習い魔物をどんどん退治していく。
「魔物は、どうしても生まれてくるもの。ただ多くならないよう300年に1度
勇者が召喚され、この世界の魔物を退治するというお約束があるんだ」
『そう、主が亡くなると、次の勇者がこの世界に召喚される。
魔物が多く出る国がその儀式を行う。このおよそ300年、この国は魔物が減った。
だから、今度は魔物が増えている別の国になるだろう』
「寂しい話だね」
『われは忘れぬ。このように仲間が集い語れる機会は、本当に楽しい。
次の勇者は他国だろうから、我々は別れの時がくるのかと思うと、悲しい』
魔族の女性がソファで項垂れると、その隣に精霊の女性が座り慰めている。
小さな精霊達は、その2人の周囲をふわふわと飛んで様子を伺っている。
「ははは。出会いがあれば、別れもある。皆と過ごした楽しい時は、オレも忘れない」
酔いながら彼が静かに言葉を零すと、皆しんみりとした雰囲気になった。
この世界には7つの国がある。
この国は、その内の1つの人族の国マテリア。
今、マテリアはまだ魔物の恐怖はあるものの、以前よりも平穏だ。
「オレは満足している。もう、誰も失いたくないからね」
今でも魔物が出れば駆けつけて退治している彼。
「次の世代に移る準備を始めないとね」
『弟子をとったのは、そのためか?』
彼は首を左右に振る。
「偶然だ。どういう運命の巡り合わせなのか。ラグは魔力が多い。オレの魔力でいうところの
7割。この国をあちこち回ったが、初めてこんな魔力の大きい人間を見たよ」
『弟子を申し出てくれて良かったな』
「そうだな」
人族の最初の奥さんリネカが亡くなり、300歳の寿命を持っていた彼には、
周囲からは不思議な存在に見え始めた。
自分のひ孫と外見年齢20代で同じように見られてから、もうここには居場所がないと感じ
住んでいた地からひとり旅に出た。
金銭を稼ぐ為にもギルドに登録して、冒険者として過ごす。
当時82歳。外見20歳。
2番目の奥さんになったミアナは、エルフ。5年一緒にパーティを組んで
意気投合し、結婚。
彼女は長寿で、結婚した当時は外見10代で実年齢40歳だった。
結婚後も2人で旅を続けていたが、ミアナが実はエルフの里の1つである
トルテアの里の長の娘であると分かり、慌てて報告がてら里帰りするが
人族をあまりよく思っていないエルフ達と揉め、里で5年生活の後、
長の後継者になってしまったミアナと子供2人とは離れることになった。
契約者の者達が言うには、子供達はエルフの特長が多く、里で同族と暮らす方がいいと
彼が判断したからだそうだ。
何度か話し合いはあったが、勇者である彼に恐怖心を抱き、長候補のミアナには
相応しくないということで一致。ミアナとは、それきり再会していないが、
契約者である精霊に頼み、たまに手紙を送り合うくらいだ。
「2番目の奥さんは今も生きているんですか?」
『そうだよ、ラグちゃん。ミオナは、エルフ。ただもうお婆ちゃんだよ』
『文句言ってた爺達は亡くなったから、本当は戻ってきて欲しいと手紙が来てるのに
主は、会いに行かない。頑ななんだよ』
「煩い。今更会えるか。お互いいい歳過ぎて。恥ずかしいんだよ」
『わはははは』
皆が大笑いする中、師匠は顔を赤らめて怒っていた。
「煩いっ」
そんな楽しい時間、厳しい修行も9年目を迎えた。