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第6話 それでも、ここにいる
森を抜けた先に、
小さな湖があった。
水面は静かで、
空をそのまま映している。
「……綺麗ですね」
ミオが、ぽつりと言った。
アルドは、周囲を警戒しながら頷く。
「人の気配はない」
「じゃあ、少しだけ……休みましょう」
彼女は湖畔に腰を下ろした。
逃げているはずなのに、
その仕草は、どこか穏やかだった。
⸻
アルドは、水を汲んで戻ってくる。
「……ありがとう」
受け取るとき、
指先が触れた。
それだけで、
胸の奥がざわつく。
(……まずい)
判断が、鈍る。
それでも、離れられない。
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「アルドさん」
「何だ」
「後悔、してますか?」
一瞬、考える。
「……していない」
嘘ではなかった。
「怖いですけど」
彼女は、微笑んだ。
「ここに来てよかったって、思ってます」
その言葉に、
彼は何も返せなかった。
⸻
風が、湖面を揺らす。
遠くで、
何かが軋む音がした気がした。
アルドは、空を見上げる。
(……近い)
追手は、確実に迫っている。
それでも。
ミオは、湖を見つめたまま言った。
「今だけでいいです」
「……?」
「普通の時間、ください」
アルドは、静かに頷いた。
「……わかった」
その間だけは。
世界のことも、
命令のことも、
忘れることにした。
湖は、変わらず静かだった。
――嵐が近づいていることを、
知らないまま。




