表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

第2話 監視者は、感情を持たない


「――対象確認。

名前:ミオ。レベル1。仕様外スキル保持者」


低く、抑揚のない声だった。


突然現れた青年は、私を見下ろしたまま動かない。

敵意も、警戒も、好奇心すら感じない。


――まるで、感情が存在しないみたい。


「……誰、ですか?」


喉がひくりと鳴る。

逃げなきゃ、と思うのに足が動かない。


青年は淡々と答えた。


「世界管理局・執行官。

君の存在を監視するために来た」


「……監視?」


その言葉に、胸がざわつく。


【警告】

監視対象が確定しました


半透明の文字が、私と彼の間に浮かび上がる。


「私は……何か、悪いことをしましたか?」


自分でも驚くほど、小さな声だった。


執行官は一瞬だけ首を傾げる。


「悪い、という概念ではない。

君は――想定されていない」


その言葉が、胸に刺さった。


(あ……まただ)


不要。

想定外。

この世界でも、私は――。


無意識に俯いた、その瞬間。【スキル発動】

《観察》が強制起動しました



青年の“内側”が、視界に流れ込んでくる。


……何も、ない。


怒りも、喜びも、恐怖も。

ただ、冷たい白。


役割。

命令。

処理。


それだけで構成された心。


(この人……空っぽ……?)


思わず、口をついて出た。


「……寂しく、ないんですか?」


空気が、凍りついた。


執行官――アルドは、初めて瞬きをした。


「……その質問は、不要だ」


「でも……」


言葉を止められなかった。


「感情がないのに、

誰かを“消す”役目をするの、つらくないですか?」


沈黙。


風が草を揺らす音だけが響く。



【警告】

執行官アルド

感情反応:微弱


「……君は」


アルドが、私を見つめる。


「危険だ」


「え……?」


「そのスキルは、

人の内部に触れすぎる」


彼はそう言いながらも、

剣に手を伸ばさなかった。


それどころか。


「……理由は不明だが」


一歩、私から距離を取る。


「君を、今すぐ処分する判断ができない」


その言葉に、胸が跳ねた。


(処分……?)


怖い。

でも――


不思議と、逃げたいとは思わなかった。


「……じゃあ」


私は、彼を見上げて言った。


「少しだけ、

一緒にいてもいいですか?」


アルドは、はっきりと眉をひそめた。


「理解できない」


「私もです」


それでも、笑ってしまった。


「でも……あなたの心、

ここにあるって、わかるから」


彼の胸元を、そっと指さす。


その瞬間。



【世界アナウンス】

仕様外存在と執行官の接触を確認

監視レベルを引き上げます


アルドは小さく息を吸い、

そして――私の手首を、掴んだ。


強くない。

けれど、離さない力。


「……君を連れていく」


「どこへ?」


「監視が及ばない場所だ」


彼は、私を見て言った。


「それが、

今の俺にできる“最適解”だ」


その言葉の奥に、

ほんのわずかな――揺れを感じた。


(あ……)


これが、始まりだ。


世界を救う理由。

そして――

この人を、知ってしまった理由。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ