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転生したらロイヤルミルクティーだった件 ─ショートver.─

掲載日:2025/11/15

 私の名前はロイヤルミルクティー。転生者だ。

 

 前世では人間だったが、神に祈り続けた結果、ついに願いが叶った。不運な事故に巻き込まれ、目が覚めたら至高の飲み物ロイヤルミルクティーとして生まれ変わっていた。


 完璧な香り、優雅な甘み。私はもはや存在そのものが美学と言えよう。



 ある日、辺境伯の屋敷に運ばれ、晩餐のテーブルに並べられた。貴族たちはその芳香にため息を漏らし、私は誇らしく思った。ようやくこの世界でも認められたのだと。


 ──そう、ロイヤルに。



 その夜、運命は静かに注がれた。


 辺境伯は銀のカップを手に取り、その芳香を胸いっぱいに吸い込む。そして、満足げに私を見つめて言った。


 「実にロイヤル」


 ──そして、ひと口。



 熱が体を駆け抜け、私の意識は急速に薄れていく。


 ああ、これが飲まれるということか。


 香りとともに魂が解け、ミルクも紅茶もその役割を果たしてただの水分に還る。


 消える直前、私はほんの少しだけ幸福だった。


 ――これこそ、紅茶としての最期だと。




 ――次に目を覚ましたとき、天界のような場所にいた。


 女神が微笑んで私にいう。


 「おめでとう。あなたは素晴らしい“飲まれっぷり”を見せました。次の転生先を与えましょう」


 私は安堵した。もう一度、ロイヤルミルクティーになれる。あの素晴らしくも儚い感覚を、ふたたび堪能できる。なんとロイヤルであろうか。


 だが女神は言った。


 「次の転生先は“レモンティー”です」


 私は耳を疑った。


 なぜだ! なぜ私がレモンティーに!


 あれはレモンが自己顕示欲を振りまく、軽薄きわまりない飲み物だ。香りの上品さも、深みも、全てがレモンの尖った自己主張にかき消されてしまう。


 ロイヤルさの欠片もない飲み物に、私はなりたくない!


 「せめて、ミルクを残してくれ! ミルクだけでも!」


 必死に叫ぶが、光に包まれ声は届かない。



 次の瞬間、鼻を刺す柑橘の香り。


 私の新しい生が始まった。――すっぱくて、ちょっと薄い。


 たぶん、次はアイスティーになる気がする。

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