転生したらロイヤルミルクティーだった件 ─ショートver.─
私の名前はロイヤルミルクティー。転生者だ。
前世では人間だったが、神に祈り続けた結果、ついに願いが叶った。不運な事故に巻き込まれ、目が覚めたら至高の飲み物ロイヤルミルクティーとして生まれ変わっていた。
完璧な香り、優雅な甘み。私はもはや存在そのものが美学と言えよう。
ある日、辺境伯の屋敷に運ばれ、晩餐のテーブルに並べられた。貴族たちはその芳香にため息を漏らし、私は誇らしく思った。ようやくこの世界でも認められたのだと。
──そう、ロイヤルに。
その夜、運命は静かに注がれた。
辺境伯は銀のカップを手に取り、その芳香を胸いっぱいに吸い込む。そして、満足げに私を見つめて言った。
「実にロイヤル」
──そして、ひと口。
熱が体を駆け抜け、私の意識は急速に薄れていく。
ああ、これが飲まれるということか。
香りとともに魂が解け、ミルクも紅茶もその役割を果たしてただの水分に還る。
消える直前、私はほんの少しだけ幸福だった。
――これこそ、紅茶としての最期だと。
――次に目を覚ましたとき、天界のような場所にいた。
女神が微笑んで私にいう。
「おめでとう。あなたは素晴らしい“飲まれっぷり”を見せました。次の転生先を与えましょう」
私は安堵した。もう一度、ロイヤルミルクティーになれる。あの素晴らしくも儚い感覚を、ふたたび堪能できる。なんとロイヤルであろうか。
だが女神は言った。
「次の転生先は“レモンティー”です」
私は耳を疑った。
なぜだ! なぜ私がレモンティーに!
あれはレモンが自己顕示欲を振りまく、軽薄きわまりない飲み物だ。香りの上品さも、深みも、全てがレモンの尖った自己主張にかき消されてしまう。
ロイヤルさの欠片もない飲み物に、私はなりたくない!
「せめて、ミルクを残してくれ! ミルクだけでも!」
必死に叫ぶが、光に包まれ声は届かない。
次の瞬間、鼻を刺す柑橘の香り。
私の新しい生が始まった。――すっぱくて、ちょっと薄い。
たぶん、次はアイスティーになる気がする。




