表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/7

第三話 ギルドと依頼

登場人物

主人公 神村攷かみむらこう

厨二病なヒロイン 誓野明ちかのめい

まともなヒロイン 西宮朋子にしみやともこ

バカな親友 近藤テツ(こんどうてつ)

魔導馬車の運転手


誤字脱字等々ありましたら教えていただけると嬉しいです。把握次第修正致しますので。

第三話 ギルドと依頼

「……!!」


 目が覚めた俺は、目の前の景色を冷静に分析する。

建物はヨーロッパみたいな石のブロックなのか、レンガ造りかのどちらかだな……

あっ。

 

「どこに転生するのか聞き忘れた。」


 完全にやらかした。何処からスタートするのか聞き忘れるなんて……


「……えっ、ここどこ?」

「うおおおおおお!!!!俺が守…ん?」

「そうか……?」


 各々、立ったまま目を覚ました。

傍から見ていると、ちょっと笑いそうになる。


「ここは何処だ……?」


 俺も、それっぽく混ざっておこう。

ところで、ここは本当に何処なんだ?

 異世界であることは分かる。街?の中に居ることも、なんとなく分かる。

 服装は、死ぬ時に着ていた制服ではなく、この世界での標準服なのかは分からないが、周りの建物の雰囲気に合った、質素な服だ。

 気温は体感30数℃くらい。季節は転生前と変わらなさそうだ。暑い。

 目の前の建物は、看板を見た感じ宿屋らしい。冒険者大歓迎……俺たちは冒険者なのか?戸籍が無い不審者として、捕まったりしないよな。


「…ここで立ち尽くしていても仕方がない。とりあえず、目の前の宿屋らしき建物に入ろう。」

「暑いし!賛成だ!」

「分かった……」

「……コクリ」


 皆、この状況についてくることが出来ていないのか、暑さで脳が溶けたかは分からないが、かなり戸惑っているようだ。

 宿屋の扉を開けて、中に入る。一瞬だけ視線を浴びるが、すぐにその視線は無くなった。


「すみません。」

「はい。どうなさいました?」


 この建物の中央にある、受付らしき場所の人に声をかけてみる。言語は通じる。

 受付嬢は、20代前半辺りに見える。胸にはかなり豊かな果実をお持ちだ。


「ここで泊まりたいんですけど…」

「ご予約ですね。今夜から、4名様で宜しいですか?」

「はい。」

「どのくらいの期間、この宿をご利用されるか分かりますか?」

「……ちょっと分かりませんね。」


 予定も何も、ここが何処なのかすら分かっていない。当分は、この宿にお世話になりそうだが。


「泊まる長さの期限とかって、あるんですか?」

「この宿に期限はほぼありません。泊まった日分だけの料金を頂いています。もう3年程泊まられている方も居ますので、気楽に延長なさってくださいね!」

「分かりました。ありがとうございます。」


 めちゃくちゃ都合のいい宿屋だな。第四閻魔は、俺達が泊まる宿屋まで考えてくれていたのか……?

この宿屋、雰囲気も心地よい。当たりの宿屋って感じだ。


「4名様、部屋はお隣の方がよろしいですか?」

「……出来ればそれがいい、よな?」


一応、3人にも確認をとる。


「それでいいんじゃね?」

「大賛成。隣の方が色々やりやすいだろうし。」

「勿論賛成だ!まとまっていた方が良い……。」


「…らしいので、それでお願いします。」

「分かりました!丁度、ここの四部屋が空いているんですよ!」

「じゃあ、そこでお願いします。」

「かしこまりました。こちらお部屋の鍵になります。ひとまず、今日一日分の代金で、2000シアンになります。」


 シアン?この世界の通貨か?

まずい。今の俺達がこの世界のお金を持っているわけが無いぞ。


 神(閻魔)頼みで、持っているバッグ内を探す。

ん?ちょっと待て。なんでバッグなんか持っているんだ?初期装備ってやつか。服と同じようなものだろうな。後で中身をちゃんと確認しておこう。

 バッグ内を漁ると、財布らしき物が入っていた。

中には、銀貨30枚と金貨10枚が入っている。

銀貨には、500と書かれている。これだな!?


「これでお願いします。」


銀貨を4枚受付嬢に渡した。

 

「はい、確かに。それでは、あちらの階段を上がりますと、お部屋があります。どうぞごゆっくり!」


 フレンドリーで笑顔が眩しい受付嬢だった。だから受付に選ばれたのだろうか……

……そんなことはどうでもいい。とりあえず、各々(おのおの)部屋に向かった。


202 西宮

203 攷

204 明

205 テツ


「……ふう」


 ここでひと息つけるのも、奇跡なのだろう。明と、最期にした会話、ちょっと恥ずかしくなってきたな。くそ、あんな事言わなければよかった。

 ……のか?あれが引き金になって、閻魔に呼ばれた可能性だってある。分からないことだらけだな。


「…とりあえず、調べれば分かることからやるか。」


 初期装備らしきバッグ内にある物を整理する。

まずは財布。今は銀貨26枚と金貨10枚が入っている。金貨は1枚2000シアンらしい。大分価値に差があるみたいだな・・・と思っていたら、もうひとつ財布らしき物が入っている。


「これは何だ・・・?」


 開けてみると、銅貨が30枚入っている。銅貨は1枚100シアン。1シアンの価値がよく分からないのだが、宿屋の質と価格的に、1シアン6~8円ってところか?

後入っているのは、水筒と今着ているものと同じような服が1式揃っている。あとは傘と……

 筆箱?俺が使っていたものと全く同じ。中身も同じ。三角定規と筆記用具、俺は筆箱に色々と詰め込むタイプだったので、文房具屋に売っているものは基本全て入っている。

「でも何で俺の筆箱が……?」


 どうにも気になるが、そんなことを考えている暇は無く、部屋に荷物を置いたら、すぐ食堂っぽい場所に集まる約束をしていた。


「3人とも、もう集まってるかな。」


 この4人で集まる時、俺が基本最後になる。準備を着実にするタイプだから、どうしても時間がかかる。これは俺の要改善ポイントのひとつだ。


 部屋を出て、階段を降りると、案の定3人が、四人席にスタンバイしている。


「いつもの事だが、遅いぞ貴様!!」

「すまんな。」

「いつも通り、反省なしだね。」

「数分だし別に良いだろ!攷は色々と準備をしているからな!」

「準備と言っても、荷物確認しただけなんだけどな。」

「私も荷物見たんだけど、何か私物が入っててびっくりしたよ。」

「俺も筆箱が入ってた。」


 西宮のかばんにも入っていたのか。第四閻魔は、あの短時間でどれだけ準備をしてたんだ?


「となると、明やテツのかばんにも私物が入ってるはずだ。何か入ってなかったか?」

「まだ確認してないぞ。」

「俺もまだ見てない。」

「確認しとけよ。」


 テツはともかく、明まで確認していないのは意外だな。こいつは変に真面目だから、荷物確認くらいはしてくれると思っていたのだが。


「……まあいい。荷物確認なんて二の次だ。この先どう生活していくかが問題だ。」

「この宿屋って、冒険者大歓迎だったよね。」

「そうだな。」

「それなら……」

「冒険者ギルドがあるのではないか!?」


 明がウッキウキで割り込んできた。そうだ、こいつ厨二病だった。異世界転生なんて、こいつの大好物だ。ひょっとしなくても、異世界転生に興奮して荷物確認忘れたなこいつ。


「お前一回死んだ割に力余ってるな。」

「だ、だって……」

「?」


 時々素を出してくるの何なんだよ。言わないと分からないって。

明は、何故かもじもじしている。


「……プラスになったから」

「は?」

「死ぬ時に言っただろう!もう忘れたのか!?」

「いや、覚えてる。」

「ならなぜ……」


 なぜ……か。俺には第四閻魔が何かを企んでいるようにしか思えない。俺達の転生。今の状況だけで言えばプラスなんだが、その分のマイナスがいつか降り掛かってきそうで、どうも素直に受け取れない。


「まあよい!貴様がどう考えていようと、我にとっては最大の幸運!!!」

「天が我に微笑んだのだ!!!」


冥界の閻魔の微笑みだけどな。


「この幸運を持っているうちに、冒険者ギルドへ向かうのだ!」

「いや待て、ステイ。」

「犬のように扱うでない!」

 

 もう少し情報が欲しいな。この世界での転生者の扱いが分からない。くっそ、もっと閻魔に質問しておくんだった!


「……いや、待たなくていい。ギルドに行こう。」

「フン。はじめからそう言えばいいのだ。」


 今ここで考えても無駄だ。新たな情報を手に入れるためにも、冒険者ギルドに行ってみるしかないな。


 壁にかかっている地図によると、冒険者ギルドは、今いる宿屋のすぐ近く。

 街の中心部にあるお城に向かう大きな道沿いにある。この宿屋は、どうやら一等地にあるらしい。それにしては、宿代がが良心的すぎるな。


 そのまま、徒歩数分のところに冒険者ギルドがあった。


「地図で思ってたより近いな。」

「ここが……ここが冒険者ギルド…!」

「そうだぞ。」

「やっt」

「ギルドの前で騒ぐな。」

「そ、それもそうだな……。」


 そのまま、高さ3.5mほどある大きな扉を開き、中へ入った。


 一瞬視線を感じたが、すぐになくなった。どうやら、しっかりとこの世界に溶け込むことが出来ているらしい。


「まず受付に行くか。」


それっぽいところに行って、話を聞く。

 

「冒険者になりたいんですけど、登録ってここで出来ますか?」

「勿論です。まずはこちらにお願いします。」


 受付さんは、そう言うと俺たち四人に紙を渡した。

氏名、年齢等、基本情報を書き込むらしい。紙にちゃんとペンが挟んである。ササッと書き込み、受付さんに渡す。


「受け取りました。…適正のある魔法をご存知ないようですね。」

「まだ知らないんです。」

「珍しい…ですが、ここで適正検査が出来ますよ。」

「じゃあ、受けさせてもらいます。」

「分かりました。少々お待ちください。」


魔法の適正か。強いていえば、風の魔法を使いたい。


「炎こい炎こい炎こい炎こい炎こい炎こい炎こい炎こい炎こい炎こい炎こい炎こい炎こい炎こい炎……」


 明はずっと炎こいを連投している。西宮はまんざらでもなさそう。テツはよく分かっていないようだ。


「こちらです。」


受付さんが持ってきたのは、いかにもな水晶玉。


「フオオオーーーー!!!」


明は変な声を出している。ちょっと視線を浴びた。


「では、ひとり100シアンお支払いください。」

「財布はあるよな。」

「勿論持ってるよ。」

「我もだ。」

「ない。」

「理解。テツ借金な。利子2000%で。」

「利子って何?」

「まあ今はいい。俺が払ってやる。」

「マジ!?感謝だわ。」


よし。これでよし。


「まずは我からやらせてもらおうか!!!」


 明はターンと銅貨を1枚叩きつけ、水晶玉に手をかざした。


「…」

「…」


水晶玉は、赤く炎のように変色した。


「分かりやすいもんだな。」

「炎と祈ったかいがあった!!!」

「だいぶ強く光ってますね!魔法の素質があるかもしれません。」

「確定演出頂きました。フォーー!!!」


 明のテンションがおかしくなったところで、西宮が静かに手をかざした。


「…」

「…」


水晶玉は、白く輝いた。


「これ何だ?」

「光と、身体強化に適正がありそうですね。特に身体強化の方に、非常に適正がありますね。ここまで光るのは、見たことないかも……」

「やったー!」

「西宮って身体強化する系なのかよ。」

「そうだね。どうせなら、ゴリゴリの前衛職になろうかな。」


 前衛はてっきりテツかと思ってたのに。西宮なんだな。


「俺いってみていいか?なんとなく分かった。」

「いいよ。順番関係ないし。」

「いくぜ!」


テツは、バッと手をかざした。


「……」

「……」


水晶玉は、茶色に少し光った。


「ん?」

「えぇと、土に少し適正があるみたいですね。多分、魔法自体向いていないんだと思います。」

「確かに、テツに魔法みたいな複雑なのはな。」

「自分で分かる。無理。」


 まあ予想はついてた。テツには脳筋のまま、剣を振ってもらおう。


「最後は俺だな。」


 俺は銅貨を置いて、手をかざした。


「……」

「……」


水晶玉は、緑色に光った。


「これは?」

「風ですね。あと、何か分かりませんが、濁ってますね。」

「濁ってるだって?」

「詳しくは分かりません。風の適正は、もっとこう彩度の高い黄緑なんですが、これは緑に近いんですよね。」

「なるほど……。」


よく分からないな。まあ、今後分かってくるだろう。


「四人とも検査終了です。これから、(ジョブ)を選んでもらいます。」

「分かりました。」

(ジョブ)キターー!!!」


受付さんは、もう1枚ずつ紙を渡してくれた。


「俺は風魔法使いかな。」

「我は炎魔法使いだ!!!」

「私はひとまず光闘士かなー。」

「俺なに?攻撃戦士でいい?」

「テツは体力多い耐久戦士の方が合ってるだろ。」

「確かに。」

 

「お決まりですね。これより、冒険者証明書を発行します。これがあれば、この国の街なら基本どこでもパスとして使うことが出来ます。」

「便利だな。」

「後、自動でステータスが表示されます。本人しか見ることは出来ませんが。」

「ありがとうございます。」

「いえ。」


そう言って、受付さんは奥に入ってしまった。


「しばらくかかるだろうな。」

「おとなしく待ってるしかないでしょ。」

「待ちきれない…あぁ……」

「待つのは得意だぞ!」


今のうちに、色々考えておくか。




 数分経って、受付さんが四枚のカードを持って出てきた。


「こちらが、冒険者証明書になります。」


 受付さんは、カウンターに四枚のカードを並べてくれた。

 ステータスが書かれているのは一枚だけで、他の三枚には見たこともない文字が書かれている。


「ステータスというのは、冒険者の方々にとって非常に大切な個人情報となりますので、本人以外確認することは出来ないようになっています。」

「なるほど。ステータスが分かるカードを取ればいいのか。」

「そうですね。」


 俺たちは、それぞれカードをとって確認する。


俺は……


神村攷 Lv1

職業 冒険者

特別職業 転生者

ステータス

HP 78

MP 93

攻撃力 83

魔法攻撃力 113

防御力 84

魔法防御力 87

素早さ 112


風魔法威力補正80%

闇魔法威力補正5%

回復魔法効力補正2%


耐性 

状態異常耐性99.9%

精神攻撃耐性36%


スキル

知識Lv17

分析Lv6

状況把握Lv2

集中Lv4

精神安定Lv1


固有(ユニーク)スキル

効率化Lv1

使用魔力量を10%削減する

エクストラスキル なし


 中々長いな。ステータスの平均値は後で確かめるとして、耐性やスキルまで既に持っているんだな。元いた世界での経験や知識が、スキルとして反映されているようだ。能力の可視化はありがたい。

 状態異常耐性が99.9%なのが気になるな。他と比べて強すぎないか?元の世界で何かあった訳でもない。

気になるところだが、一旦置いておこう。


「どうだった?」

「ええと…」

西宮がカードを確かめ始めた。

「あー、いや待ってくれ。個人情報らしいから、端のあそこで話すぞ。」


 個人情報は、こう簡単に公開するものじゃないよな。


 ギルドの端の、食堂?らしき机の並べられた場所。ちらほらと冒険者を見かけるが、多くは依頼の書かれたパネルか、併設された店にいる。ここなら盗聴の心配も無いだろう。


「誰から……」

「無論我からだ!!!」


 知ってた。ふふんと、誇らしげに薄い胸をはってから、カードを確認し始める。


「我のステータスは……」


誓野明 Lv1

職業 冒険者

特別職業 転生者 

HP 56

MP 136

攻撃力 59

魔法攻撃力 143

物理防御力 68

魔法防御力 73

素早さ 83


炎魔法威力補正286%

回復魔法効力補正12%


耐性 なし


スキル

知識Lv17

集中Lv8

俊敏Lv1


固有(ユニーク)スキル

一撃必殺

魔法の威力を145%増大させる。使用可能回数は1日3回。インターバルは一時間。

エクストラスキル なし


「火力たっか!?」

 

 思わず声が出るほどに火力全振りなステータスだ。聞くだけでも、とんでもない魔法の素質だ。


「ふふん!そうだろう!!!」


 超誇らしげに、また薄い胸をはった。まあこれは誇っていいステータスだろう。負けた気がする。


「次私言っていいかな?」

「もちろん。」


 西宮は、冷静にステータスを確認する。


「私は……」


西宮朋子 Lv1

職業 冒険者

特別職業 転生者 

HP 108

MP 94

攻撃力 89

魔法攻撃力 72

物理防御力 85

魔法防御力 71

素早さ 90


身体能力補正22%

身体能力強化魔法効力補正36%

回復魔法効力補正92%


耐性

状態異常耐性88%


スキル

知識Lv11

集中Lv22

俊敏Lv4


固有(ユニーク)スキル

鉄の心臓

スタミナ減少量が常人の-30%

エクストラスキル なし


「って感じかな。」

「高くね?」


 全体的に高いな。素早いし攻撃力もあるから、突っ込んで速攻することもできるし、HPも高いから、耐える戦術でも大丈夫。とにかく汎用性が高そうだ。


「なっ、中々やるな……」

「俺たちとは、ちょっと次元が違うな。」

「そんなことないでしょ!?」

「いやぁ……」


 現時点では、ダントツでトップだ。これから成長して、どうにか追いつけるか?


「俺、まだステータス伝えてないんだが?」

「そうだった、忘れてた。」

「随分自信がありそうではないか。どれ、言ってみろ。」


 上から目線だな。テツにはステータスで負けないと思っているのか。甘いな。


「俺のステータスは……」


近藤テツ Lv1

職業 冒険者

特別職業 転生者 

HP 236

MP 32

攻撃力 79

魔法攻撃力 12

物理防御力 126

魔法防御力 73

素早さ 55


身体能力補正2%


耐性

物理攻撃耐性62%

魔法攻撃耐性17% 


スキル

知識Lv4

集中Lv2

不屈Lv9


固有(ユニーク)スキル

諦めない心

たとえHPが0になったとしても、精神状態によっては死なずに、そのまま動き続けることが出来る。時間制限なし。精神状態が基準を下回った瞬間に死亡または気絶する。

エクストラスキル なし


「……だ!!どうだ!!!」

「圧倒的な硬さだな。」


HPが西宮の2倍以上ある。


「ユニークスキル、もはやエクストラスキル級の性能してない?」

「他のエクストラスキルがどんなレベルのものなのか、確かめないと分からないけど……」

「明とか西宮のバフ系スキルよりは強そうだな。」

「特別感がありすぎるぞ!今からでもスキル修正をするのだ!神よ!!!」

「神に祈っても仕方ないぞ。」


 相手は閻魔だからな。だが、明は勿論そんなことは知らない。神に祈り(もんく)を伝えている。


「耐久戦士大正解だったな。」

「確かに!攻撃戦士にならなくてよかったー。」

「ふふん!攻撃は我の魔法で十分なのだよ!」

「物理攻撃は私が補えるしね。」


 思ったよりもかなりバランスが取れているな。もし魔物と戦うことになったら、俺がこの3人を補助していく形になりそうだ。


「で、これからどうする?」

「無論!依頼を受けて、世界に名を轟かせるのだ!」

「よし、じゃあ今受けられる依頼を確かめて……」












 






「……どうして!どうしてこんなことに!!!」


 明はしくしくとしながらも薬草を根ごとむしり採っている。


「うるせえ。今何個目か分からなくなるだろ。」

「まあ、はじめはこんなもんだよね……」

「薬草採取って、案外楽しいな!」


 テツは楽しんでいるようだが、西宮はあまり乗り気では無いようだ。


「薬草採取が終わったら、スライムを倒しに行くぞ。」

「遂にか!!!」

「依頼のリストに、ここ近くのスライムの巣を片付けろってあったからな。」


 今居るのは、東カンブリム大森林。俺たちが転生してきた街から、東に300キロほど。この世界の乗り物である、魔導馬車(まどうばしや)(馬に身体能力強化の魔法をかける)で2時間かかる。現代から見ても、かなり速い乗り物があるようで助かった。


「移動に時間がかかるのもあるし、ここで出来ることは出来るだけやっておきたい。」

「何で、わざわざこんな遠い森まで薬草採取に来たの?」

「平原にも、薬草になる草はいくらでも生えてるはずだろう!!!」

「今回の依頼は、依頼されてる薬草の数より多く採ってきたら、その分は俺達が貰えるんだ。この森にある良質な薬草を大量に手に入れられれば、当分は薬草を採らなくて済むからな。」

「成る程、そういうことね。」


 薬草とか、回復系は出来るだけ高品質なものにしておきたいからな。


「そういうことなら、早くそう言うのだ!」

「すまん。」


 明にも納得出来る理由だったのか、文句を言わずに薬草を採り始めた。明は飲み込みの早さがピカイチだな。


 


 30分ほど薬草を採って、十分過ぎるほどの量を採ることができた。


「今回の依頼だと、200株前後必要とのことだったんだが・・・」

「俺630株採ってきたぞ!!!」

「テツだけで、依頼完遂だな。」


 流石としか言いようがない。テツは、こういう単純作業に強いやつだ。俺は220株ほどしか採れていない。

 

「全員分集めたら、1000株は余裕でいきそうだね。」

「で、これからどうするのだ?」

「北に火山が見えるだろ?そこの近くに、スライムの巣があるんだ。」

「あそこの火山?結構遠そうだけど・・・」

「ここから、大体200kmくらいだな。」

「マジ?」

「まあ、そこらへんの魔導馬車に乗せてもらえばいいだろ。」

「そんなタクシー感覚で……」


 西宮は不安そうにしていたが、森から出て、直ぐに魔導馬車が見つかったので、火山まで乗せてもらうことにした。


「こんなすぐに見つかるもん?」


 西宮の疑問はもっともだ。これ程の乗り物がすぐにタクシー感覚(というかタクシーより気軽)で乗ることが出来る。

乗車賃も、かなりやさしい値段だ。

……ちょっと運転手に聞いてみるか。


「こんなに凄い魔導馬車が、どうしてこんなにあるんですか?」

「君たち、ここら辺に来るのは初めてか?」

「はい。」

「魔導馬車はね、国王が、ギフトスの街に送ってくださったものなんだ。」

「冒険者は、かなりの距離を移動するからね。冒険者が多いギフトスを中心として、魔導馬車の交通網を作ったんだ。だいたい5年前くらいかなぁ。」

「なるほど……」


 この国の国王がやったのか。それと、俺たちが転生した街は、ギフトスという名前らしい。

 冒険者用に魔導馬車を送るなんて、冒険者はよほど重要な仕事なのか?高貴な仕事という訳でもないだろうし。


「国王がインフラ整備をわざわざやるなんて、よほど良い国王なのだろうな!」

「そうだ。国民の声を細かいところまで聞いてくれて、対応してくれる。最近だと、国中の道のへこみを直せという命令があったな。定期的にやるらしいんだが。」

「俺も、この辺りに来たのは最近でな。詳しくはよく分からないよ。」

「国王は、かなり長くやっていそうだな。」

「そうだな。今年で38年目らしい。」

「長っ!?」

「38年もやってるのか!凄いな!」


 凄いな。38年間ずっと、国民の事を思い続けることが出来るなんて。普通は、権力に溺れてしまうだろう。よほど有能な、器ある国王なのだろう。

 

「まあ、そんなにいい国王がいるのなら、この国は安泰だな。」

「それが、そうでも無いんだよ……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ