不敬罪で斬ろうか?
既に有罪が確定した相手に論争は不要かな?
「……どういう事?」
「俺は優秀な冒険者であるが、同時に我が領地イクスリアの善き領主でもある」
「自分から、『優秀な』とか『善き』とか言う?」
「別に構わないが、領主にして伯爵である俺に、その言葉使いで良いのか?」
そう指摘すると、姿勢を正して言った。
「……失礼いたしました」
「先程も言ったが構わない」
「そう言う訳にはまいりません。
改めて自己紹介をさせていただきます。
私は、『領地アルバゼーテ』の統治を任せられているディニオス=エリペ=アルバゼーテ伯爵様が御息女マリアシス=エリペ=アルバゼーテ様の侍女のシャスティナ=リリク=ヴィスザーヌでございます。
私自身も、同領地の運営管理の補助を任されているヴィスザーヌ男爵の娘です」
「自己紹介をして貰った所で、冒険者には話せなかった『理由』を聞かせて貰おうか」
「はい。実は……」
話の内容を簡単に言えば、お家騒動で、当主の弟がクーデターを起こして、結果として当主一家は逃げ延びたが、彼女が仕えるマリアシスが捕まり、弟から「彼女の命が欲しければ、当主の座を寄越せ!」と言われた。
当主の座を譲る訳にもいかず、助力をセラリア王女に求める為に、そのセラリア王女と懇意している俺の領地を目指した。
向かう道中で刺客と遭遇し、逃避行の途中で川に転落した訳だ。
……確か、アルバゼーテは俺の領地から見て北西の方角だったな。
それに、アルバゼーテは国境に近い為に交易も盛んだと聞く。
そんな所をバカが支配すれば王族領になるのは目に見えているな。
しかも、アルバゼーテ前当主は、受付嬢マリアンさんの父親と仲が良かったと聞いた事がある。
それに、権力を持つ善人に恩を売るのはかなりのメリットが期待出来るな……
「セラリア王女殿下が動くまでもない」
「どういう事ですか、イクスリア伯爵!」
「俺が、マリアシス嬢を救出する」
「本当ですか!?」
「ああ」
「ありがとうございます! あっ!
でも、マリアシス様には婚約者が居ますので……」
「不敬罪で斬ろうか?」
「申し訳ありません!」
「冗談だ」
ソフィア達に一言謝罪し、俺達はアルバゼーテに向かった。
満月の煌々たる光に照らされながら俺達を乗せる馬車が見事にドリフトを決めながら爆走する事で、翌日の早朝にはアルバゼーテに到着した。
同行したシャスティナの口から虹を生み出していたから、回復魔法と状態異常回復魔法と精神鎮静魔法の3点セットを掛けた。
……俺もビックリしたが、馬車でもドリフトが出来るんだな。
しかも、イニシャルD並みのアンダーで!
夜明けと共に、街アルバゼーテに入った俺達は、灯台下暗し的な理由から潜伏していたアルバゼーテ伯爵一家を拾い、領主館に到着すると、身も蓋も無く、山無し、オチ無し、意味無しで、領主館全体に広範囲睡眠魔法を掛けた。
……結果、5日後には、弟家族は病死と公表となり、バカの賛同者達は一生涯、鉱山労働者となった。
俺達は気を利かせて、シャスティナを連絡係に任命し、落ち着くのを待っていると、6日後に、俺達は領主館に招待された。
「私の娘を助けて頂いて感謝します」
「気にするな。助ける事で生じる利益を得る為だからな」
「そうですか。しかし、此方としても何も返さぬ訳には……」
話し合いの結果、俺がこの街で何かする場合は免税となり、何か買う場合は、アルバゼーテ伯爵が3割負担する事を約束した書状を貰う事になった。
因みに、このお家騒動が表になる事が無かった為、マリアシス嬢は普通に婚約者と過ごしている。
ただ、クーデターを起こした領主の弟の娘がマリアシス嬢に過度な暴力をして一生涯残る外傷を受けていたが、俺の完全回復で綺麗に完治した。
お礼として「裏」で、この領主の弟の娘「オティリエ=エルペ=アルバゼーテ」を奴隷にして頂いた。
とりあえず、外出の自由は与えてないが、かなりの「お姫様待遇」で我が領地まで過ごして貰う予定だ。
その理由は、「天国から地獄へ」を味わって貰う為だ。
その時の表情を楽しみにしながら留守番をさせ、交易の街アルバゼーテをアリアとリンで散策した。
リン達には自由行動を許可したが、リンだけは離れなかった。
「シン君、あれ可愛いわ」
「はい、アリアにプレゼントな」
「ありがとう、シン君」
「シン様……」
「あのシリーズ物な銀細工、良いな。皆の分も買っておこう。 ……リン、付けてやるよ」
「シン様!」
「似合っているぞ、リン」
「ありがとうございます、シン様!」
因みに、後ろの方では、野太い野郎の声で「オレ様の女になれ!」と聞こえたら、次は「この女、殺してやる!」と聞こえ、最後は「オレ様の右腕がー!」と、絶叫の後は盛大な拍手が聞こえた。
……聞こえてくる相手の女性の容姿から、アレはサクナだろうな。
そんな一幕がある中、俺達は奴隷館に到着した。
地方に行った時に、御当地物をコレクションする感覚だな。
「ようこそ、ガルゴリア奴隷館へ。
私、ガルゴリア館長がお相手します」
「館長自らが応対するのか?」
「はい。当館に初めて来られた方は、必ず私がお相手する事にしております」
「良い心掛けだ」
「ありがとうございます。それでは、当奴隷館にお越しになった理由は?」
「気に入った奴隷が居れば買う予定だ」
「それはありがとうございます。それでは、どういった奴隷をお求めで?」
「それは……」
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