そう思うなら助けてくださいよ~
都市イクスリアには、色々な理由で貴族が訪れています。
話してくれた内容は、都市イクスリアで家族5人で暮らしていて、父親と兄が冒険者だったのだが、2人がダンジョンで命を落とし、長女の彼女が家の生計を支えなければならなかった。
それで偶然出会って、意気投合して友人になった貴族令嬢から教わった攻撃魔法を切り札にして、冒険者となり頑張っていたが、流石にソロはキツく、初めてパーティを組んでダンジョンに来たのが今回って訳だ。
……見事な貧乏くじだな。
後、話す中で本人は気付いていないが、暴露したのだ……自分が「乙女」である事を。
「……落ち着いたか?」
「ありがとう」
「それでどうする?」
「……そうね。 お母さんの実家にお世話になろうかな」
そう言う彼女の表情に影が走り曇る。
それなら……
「……知っているか?」
「何を?」
「この都市イクスリアは、冒険者には優しい。
だから、支援制度が充実しているんだ」
「そうなんだ」
「もし、まだ頑張れるのなら紹介しようか?」
そう言うと、彼女の表情から影が消えた。
「……お願い! お父さんとお兄ちゃんの思い出が残る、あの家から離れたくないの!」
「分かった。 俺は冒険者のシンだ」
「私の名前は『リリア』よ」
この後、体調の方も持ち直したリリアと一緒にダンジョンから脱出すると、彼女に「明日、指導官を紹介するから冒険者ギルドに午前8時までに受付嬢が居るカウンター近くに来てくれ」と伝えた。
翌日、朝食を早めに終わらせ、リリアに指導をして貰う冒険者を呼び出して説明してから、冒険者ギルドに向かった。
「リリアは、まだ来ていないみたいだな」
俺は、受付嬢の身内に話を通して支援制度の申し込み用紙に記入する。
書き終わると、冒険者ギルドの扉からリリアが入ってきた。
「早めに来たつもりだったんだけど、遅かったのかしら?」
「いいや。 支援制度の書類作成で早めに来ていただけだ」
「……ありがとう」
「後は、書類をきちんと確認してから名前を記入してくれ」
「分かったわ……支給金、多くない?」
「まあ、裏技込みだ」
「……そんな事をしているのに、私や私の家族に負担が無いわね」
「だから言っただろ。 この都市イクスリアは冒険者には優しいと」
「そうみたいね。 ありがとう、シン」
「どういたしまして。 ……書いたな」
「うん」
「受付嬢、支援制度用の書類に必要事項を書いたし、本人の名前も書いて貰った」
そう言いながら書類を渡す。
「……はい。 不備は有りません」
「それじゃあ、説明するな」
「はい!」
当時、ソフィアやひーちゃん達と話し合った支援制度に付いて説明した。
支援制度って言っても、期間は1ヶ月の土日が休みで、午前8時から午後3時までの間に1時間の休憩が入り、時間内で短剣・長剣・槍・弓矢・体術の鍛練に、第1位階魔法までの「座学」と「実技」を学ぶ。
そして、途中で放棄したり逃走しなかった場合に限り、終了後に今日の分の支援金である銀貨1枚が支給される。
因みに、スパルタ指導だ。
……当然だけどな。
「……と、いう訳だ」
「分かったわ。 ありがとう、シン」
「じゃあ、頑張れよ」
「待ってよ。 まだ助けて貰ったお礼をしていない」
「いいよ。 Eランクになった時に、家で手料理を食べさせてくれ」
「分かったわ! 美味しい私の手料理をたっぷり食べて貰うわよ!」
「楽しみにしている」
リリアと分かれた俺は、都市を散策する事にした。
お! 南正門の方から貴族だと分かる装飾を付けた馬車が5台も入って、領主館に向かっているみたいだな。
……気になった俺は領主館の裏口から入り、盗聴用の部屋に入り聞く耳を立てた。
「……と、いう事でどうでしょうか?」
「メーグリム侯爵。 私は現状に満足している」
「いえ、そういう訳にはいかないですな。
大公は王家の血が流れる尊き身分。
それなのに、細君がたった2人では万が一を思うと不安でなりません」
……細君とは、奥さんの別称な。
「……検討するが、断る場合も理解して頂きたい」
「勿論ですとも」
「メーグリム侯爵が休まられる。
部屋の案内を」
「畏まりました」
1人、応接室に残ったカーライザスに声を掛ける。
「何故、即座に断らなかった?」
「恩師の紹介で、門前払いが出来なかったんです」
「……大変だな」
「そう思うなら助けてくださいよ~」
「……そうだな。 領主館が煩かったらソフィアが困るしな」
「それじゃあ……」
「ああ。 助けてやる」
「ありがとうございます!」
カーライザスからのお礼を聞いた後、俺はダンマスの能力を使い、メーグリム侯爵の部屋を盗聴した。
「お父様、どうでしたか?」
「やはり、予想通りで乗り気では無かったな」
「やっぱり……」
「なあに、気にする事は無い。
あの若造は大公閣下と持て囃されているが、所詮はまだガキだ。
ちょっと薬を飲ませ、誘って既成事実を作れば簡単に認めるだろう」
「任せてよ、お父様。 例え、3番目でもアールスバイドの名は絶大よ」
「そうだな」
「……流石に元王女の正妻には媚を売る必要は有るけど、直ぐに2番目を蹴落としてやるわ!」
「その意気だ。 私は適当な理由でも作って薬を飲ませるから、後は……分かっているな?」
「大丈夫よ、お父様」
……世界の次元を越えても、数百年経とうとも「ハニトラ」は健在か。
「どうでしたか?」
「定番の既成事実」
「……やっぱり。 令嬢も同行していたから、もしや……と思っていました」
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