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「やっと会えたな、我が娘よ!」
「無事に会えて良かった………」
目の前にいるのは三十代後半の男女。
男性は【いかにも】な貴族の格好、女性は【え?ここ自宅じゃないの?今からパーティにでも行くの?】って感じのドレス。
その向かい側に居るのが私、24歳独身一人暮らしの事務職 佐野 日奈子………からの、孤児院育ちのリューシー……からの、男爵令嬢リリアーナ・ランベリズ、14歳。
物心ついた頃から孤児院で育ったんだけど、この国の成人、15歳になると、院を出なきゃならないから、就職先を求めてダメ元で男爵家のランドリーメイドの面接に来たの。
そこで面接官の執事さんに、
「あ……あなたは……………!!」
などと言われて連れてこられたサロンで話を聞くところによると、なんと、私ってこの男爵家の誘拐された末っ子令嬢なんだって!
特徴的な髪の色と瞳の色で身元発覚、感動の親子対面、その衝撃で記憶覚醒。
はい、腐るほど読んだネット小説でありがちな、異世界転生ですね。
記憶があれば笑えるほどのご都合主義。
男爵領の孤児院に14年居たんだよ?
しかも、一目見て男爵家の子供ってわかる見た目をしてんだよ?
なーのーに、なぜ今まで気付かない?!
髪の色は母親譲りの珍しいピンクゴールド、瞳の色は父親と同じ金色に近い琥珀色。
そんな派手な見た目で誰も気づかない時点でおかしいでしょ?!
暫くして思い出したのがもう一個、今更かよな事なんだけど、ここってゲームの世界みたいなんだよねー。
何故って、
「子供が見つかりました」
って、王宮に挨拶に行ったんだよ、私の親父……父親。
たかだか男爵が、王様に簡単に会えるの?
しかも、そこになんで同席している美少年’S。
第一王子、金髪碧眼、第二王子、銀髪碧眼、宰相の息子、青髪青眼、騎士団長息子、赤い髪………。
なにそのカラフルさ、青っぽい黒髪とか、赤みの強い茶髪とかじゃなくて、子供の絵の具で塗った様な【青】!【赤】!
主張が酷すぎる。
テンプレ過ぎて、逆に今時ナイワ!
って心の中で突っ込んじゃったよ。
それに、子供だと認めて一月で全寮制の学園に入れられちゃいましたよ。
孤児院育ちで貴族の礼儀も知らんのに。
まあ、前世は一応地元では名門と言われた大学に通っていましたから、普通の礼儀はわかるよ。
でも貴族ってそれだけじゃダメっしょ。